ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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2話 過負荷誕生、よろしくねっ!

 

ぱちりと目を開く。

 

目が覚めた。

 

目が覚めたのだ。

どういうことだろう、僕は死んでしまったはずだ。

多分、いや、確実に。

 

 

 

 

 

周りを見渡す。

見知らぬ沢山の人が集まって僕を見下ろしている。

 

 

 

んん?待って、人、大きくない?

 

というか、ここ日本じゃないんだ。海外だ。どこなんだろ。

 

 

 

自分の手を見ると小さな小さな手で、あぁ、これって輪廻転生とか、そういうやつなのか、と思った。

 

死んで生き返るとか、アニメや漫画の世界じゃん、と思った。

 

漫画ねぇ、漫画といえばやっぱり週刊少年ジャンプでしょ。

 

 

 

 

 

隣で元気よく泣いている赤ちゃんがいる。

あ、僕は双子なのか。

あの子は今生まれたから僕はお兄ちゃんだ。

 

天真爛漫に笑顔を作る僕を、何か不快なモノを扱う様な手つきで、見たくもないって顔で、大人によって雑に温かい湯に入れられて、少しゴワゴワとした布で拭かれて、両親に抱かれて顔を見る。

 

可もなく不可もない、普通の家庭っていう感じだ。

 

でも、両親は僕のことなんて居ないかの様に見てすらいなくて、抱いてくれている手も、離したがっている様で、弟にするみたいに笑いかけてくれることなんてなかった、ふうん。

 

 

 

 

 

いや、そうする原因は何となくだけれど分かるよ、変な感覚だけれど、僕って、僕だけじゃあないなあ、と思ったからね。

 

僕の中には混ざり物がある、そう感じたんだ。

 

両親とは違う、みんなとは違う、普通とは違う。

 

だからみんな疎ましそうにしているんだ。

 

 

 

でもその存在は僕と一緒に居てくれる、この感覚は一体誰なのかなあ。ぼんやり考える。

 

そして、それは案外早く判明した。

 

生まれて暫くしてから、親が湯に入れてくれる時に水面に映る顔を見たんだ。

 

白に毛先に行くにつれて薄紫に変わる髪、大きな紺青の瞳、ニコニコとした笑顔。

 

 

この見た目、僕は知っている。

これは幼い頃の球磨川禊だ。

 

禊ちゃんだ。

 

 

僕に混じっていたのは、僕の生前好きだった、週刊少年ジャンプに出てくる、めだかボックスのあの負完全で過負荷の混沌より這い出すマイナスこと球磨川禊、その人だった。

 

 

僕は中途半端に、それこそ不完全に"負完全"な球磨川禊になっていた。

 

なぁんだ、分かったぞ!だからみんな僕のことを気味悪がっていたのかあ。

 

 

両親どちらとも違う髪と目の色にこの笑顔。

味方になれば頼りになって、敵に回せば不愉快極まりないそんな存在。

 

ってことは、家族とか他の人にとっては僕は忌むべき存在ってことか。

 

 

そりゃあ、あんな目をするのも頷ける。

仕方ないよね!

 

 

 

 

 

 

前世で、僕の人生は、とても幸せだったから、どんな不幸な人生でも受け止められると思うって、次の人生は不幸でもいいって言ったのはだーれだ?

 

そう、僕でーす!いえーい、自業自得!

 

 

しかし、マイナスになるとはね、笑っちゃうぜ。

 

あはは、僕は"過負荷"になったのか。

これじゃあまるでカフカの変身じゃあないか。

 

まあ、実際僕は禊ちゃんになっているんだから、お笑い種だね。

 

これじゃあ「言葉使い」スタイリストもびっくりだよね。

 

 

 

でも、それで良いんだよ。

転生なんてさせてもらえると思わなかったし。

 

あは、逆縁なんてして親不孝者だった僕は今世は不幸せな位が丁度良いんだよ。

 

 

 

 

僕の考え方や能力は、元々の"僕"の要素をベースにしてはいたものの、まぁ、殆どそっくり、禊ちゃんになっていた。

 

能力は「大嘘憑き」そう、かの有名なオールフィクションだ。

 

因果律に干渉して、何かを"なかったこと"に出来る。

 

自分に対してはしっかり使いこなせるが、他の人対しては本家の様な力をまだ上手く使えない様だった。

 

攻撃とか、危害を加えることは出来るのだけれど、例えるなら、自分の死をなかったことにするのは出来るけれど、相手には通じない。

完全になかったことには出来ない、みたいな。

 

今使ったとしても死んでしまった者を生き返してもそれはもう"者"じゃあなくて、ただの肉塊でしかなくて、人格だとか、魂だとかはない"物"になってしまうだろう。

 

傷をなかったことにするとかは、まあ死んでいなければ出来ると思う、多分だけれどね。

 

そうだな、体感、自分以外には半分くらいの出力って所かなあ。

まだまだ分からないことが沢山あるし、色々実験しないとだね。

 

過負荷って良くも悪くもどんどん進化するものだし、経験を積んでレベルアップさせるのもドラクエとかポケモンとか好きだったから全然苦じゃないよ、むしろ大歓迎。

 

 

なんと、それに加えていくつか記憶している他者のスキルも使える。

 

相手を傷つけてしまうものもあったけれど、殆どはそんなんじゃあなくて、まあ使い方によっては出来るけれども、守ったりする為の、そんな感じのやつ。

 

ふうん、スキルって、便利だなあ。

僕が生きていた頃にあったら生活の質が上がっていただろうに。

 

 

まあ、プラスもマイナスもないまぜになっている中途半端な半端な僕には丁度良い、勿体ないくらいの力だった。

 

 

 

 

 

僕の双子の弟のレグルスは、存分に可愛がられて、たっぷりと愛情を受けてすくすくと育っていっていた。

 

うんうん、赤ちゃんってそうじゃなきゃね。

 

 

僕といえば、いつも笑顔で、ニコニコとしていて、人懐っこそうな丸くて大きな目をしていて、いたけれど、誰も見向きもしなかった。

 

村に居る異常として、家庭に混じる異物として、愛情なんてこれっぽっちも向けられなくて、でも別に気にしていなかった。

 

 

 

 

 

 

僕の持つ異常性が人々に見える形で、はっきり現れたのは、いつからだったか。

 

確か、そう、喋り出した頃からだったかな。

普通に比べてだいぶ早い時期に話せるようになった、というか生まれてすぐに話せていたけど面倒だし隠していたというか。

 

さて、皆が言うに僕の発する言葉が、単語が、文法が、脈絡が、あっているのにどこか気持ち悪いらしい。

 

嘘をつかれている様な、本音の様な、何処か歪で、そう、気持ち悪い、気味が悪い。気分が悪くなる。話していると何だか気分がおかしくなる、と人々は言った。

 

年齢の割に大人びた言葉を使うのも奇妙に感じたんだろうな。

 

僕が話しかけると、側に寄ると、みんな顔を顰めてどこかへ行ってしまう。

村の人たちに、家族に、みんなに影で不気味だ、とか、あれは人の形をしているが、人ではない様な気がするとか、そう言われていた。

 

 

 

酷いなあ。傷ついちゃうなあ。悲しいなあ。

 

 

 

 

なーんてね!まっ、何とも思わないんだけれど!

誰からも無視されて、それでも僕はいつも笑顔で、過ごしていた。

 

 

『だって世界には目標なんて無くて』

 

『人生には目的なんて無いんだから』

 

 

4才位だったかなあ、それとも3才位だったかなあ。

あ、でも少し前にレグルスの3才祝いをやったから3才だ。

 

まあ、僕は誕生を祝われたことがないから分からないしどっちでもいいんだけど。

 

ある時、「大嘘憑き」で家の納屋が壊れかけていたのをなかったことにして直した僕を見ていた大人が居たらしい。

 

そうして、僕の持つ力を知った大人が僕のことを持ち上げ出した。

奇妙な見た目も、その力も、話し方がどこか不気味なのも、"天からの使い"に違いない、とか、そんな馬鹿みたいなことを言って。

 

 

あはっ、あはは、頭が足りないね。

いやぁ、奇妙な僕への恐怖と畏怖と利用価値がまぜこぜになって、不快だけど便利だから閉じ込めておきたかったのかもなあ。

 

僕は、家族から引き剥がされて、半ば強引に小屋に監禁されてることになった。

 

家族は特に何を言うでもなく、というか、ようやく重荷を下ろせた様な顔をして、ただ興味がなさそうに、関心がなさそうに、僕から目を逸らしていた。

 

 

お前が言うことを聞かなかったら、お前の家族を目の前で1人ずつ殺してやる、なーんて脅しを受けて、こんなに小さい子にそんなこと言うなんて物騒だなあと思った。僕が本当にこの年齢の子供だったら、トラウマもんだよ。

 

勝手に天の使いだとかに仕立て上げて、それでこの仕打ちだなんてちょっとさあ、野蛮じゃあない?

 

さて、散々無視してきた僕に、物を直したり、病気を治したり出来る力があると分かったら、お前が"天の使い"なら人の為に役立つことをする義務があるだろうと言って、今まで関わってこなかったのをなかったことにするみたいに、それこそ"手のひらを孵す"様に、利用価値があるからって奴隷みたいに使い潰し始めた。

 

僕は、僕の持っている知識と能力を与え続けるだけの存在になった。

 

 

僕は村人たちに何も感じていないよ。

 

なにせ馬鹿はなーんにも考えていないから、

悩まないし困らない!

僕のことを下に見て、それで自分が優位に立ったと思っている。

自分より優れた人がいなければ嫉妬にかられることもないし、ご飯食べて寝てればそれでみーんな幸せだからね。

 

僕みたいな底辺の、地面を這いつくばって生きていくことが決められた負完全な僕が、幸せですって過ごしている人たちに頼りにされるなんて。

 

あは、笑える。

 

面白くも何ともないつまらないジョークだ。

 

 

 

 

小さい小さい場所に監禁されていて必要な時だけ出してもらう、みたいな生活が随分長いこと続いた。声は聞きたくないから、必要時以外は喋るな、だって。

 

本当、勝手だよねー。

 

 

時々気晴らしとして外に出してもらえる。

気でも狂って、自殺とかされたら困るから、らしい。

 

逃げたら家族を殺してやるって念を押されるけどさあ、そんなことなんてしなくても、僕はちゃんと戻って来るってば。

 

そもそもこんな子供が逃げられる範囲なんて限られているし、頭回らないのかな。

実際逃げなんてしないよ。

 

父さんと母さんを心配させたくはないからね。

 

 

一応、こんな人生でも、居ないものと無視されても、家族は大切だからね。

 

 

レグルスが酷い風邪をひいた時も、辛そうに目を閉じてはあ、はあ、と荒い息をする体に「五本の病爪」ファイブオブフォーカスを使って治したりしたなあ。

きちんと治って、スキルが年々上手く扱えるようになっていっていることが分かった。

 

レグルスの幼馴染だというかわいい子の家の壊れかけの傷んだ家を直したりもした。

 

僕の幼馴染でもあるはずなんだけど、大人たちが僕と他の子との関わりを絶っていたから、見たことはあるけれど、話したりしたことはなかった。まだ家に居た頃に見たレグルスと幼馴染ちゃんはきゃらきゃら笑って、仲良さそうだったなあ。

 

 

レグルスと幼馴染ちゃんだけは2人揃ってちゃんとお礼を言いに小屋に来てくれた。

 

でも小屋の鍵は村長が持っているから声だけだった。

自分たちの名前と、ありがとうございましたって言ってくれた段階で、僕が話す前にすぐに大人が来て近づくなって怒っていたから、ほんの少しだけだったけれどそんなことされたのは初めてだなぁ、と思った。

  

 

 

あぁ、こんな村にも"本当の意味で"幸せな人って居るんだなあって。

 

 

 

 

村の近くに魔獣が出たら駆り出されて、螺子伏せて村を守ったりした。

子供にやらせることじゃないでしょ、こんなの。

 

「荒廃した腐花」ラフラフレシアで村の荒れた土壌を腐葉土に変えて作物を育てられる様にした。

 

何週間も雨が降らなくて、干ばつが始まった時に「破天荒な髪型」センセーショナルヘアで天候を変えて雨を降らせ、飢餓で人死が出ない様にした。

 

何をしても、感謝の言葉をかけてくれたのはあの2人だけだった。

 

そんな生活が、何年も続いた。

 

 

 

何年経ったかなんて分からないよ。

ま、どーでも良いからね。

どれくらい経ったかなんて気にしていないし、分かる物なんてここにはないから、別に良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レグルスにとって、兄という存在の記憶は殆どない。

 

物心がついた頃には、もうこの家には居なかったからだ。

朧げながら、覚えているのは、深い紺色の大きな目で、いつもニコニコしていて、白っぽい不思議な髪色…だった気がする。声も思い出せない。

 

 

ただ、優しい手つきで撫でられたことだけははっきりと思い出せる。

 

 

他は話で聞いただけだ。

 

家族からは、アレは見た目が普通とは、違うから、理解し難い力を使うから、不愉快だから、不快だから、家族ではない。居ない者として扱う様に、と言われていた。

唯、逃げ出したら私たちが殺されてしまうから、そのまま村ために、私たちの為に尽くして欲しいと良く言っていた。

 

自己中心的で利己的でクソみたいな考え方だ。

 

 

村で、兄さんの噂は聞く。

 

あの家族たちと見た目が違うから、話しているとおかしくなりそうだから、居ない者として扱っているけれど、奇妙な力を持っているから、もしかしたら"天の使い"なのかもしれないと嘲笑しながらそんなこと絶対ないと分かっていながら、馬鹿にして、見下して言っていた。

 

そして、何をしても、何を言われても、ニコニコしていて気味が悪いから必要な時以外は誰も気を向ける気にもならない、けれど、何かと便利だし、逃げられたら困る、だから軟禁していると。

 

 

 

そんなこと、あってたまるかと思った。

 

 

あいつらが当たり前にしていることは差別でしかない。

兄さんという1人の人間の尊厳を無視した恐ろしい行動を取る村人にも、それを受け入れて、普通に過ごす家族にも吐き気がした。

 

両親に兄のことを聴こうとすると、酷く嫌がって、思い出すことすら不快だと言ってお前が気にすることじゃないと教えてくれなかった。

 

 

そんな奴らと、同じ人間だとは思いたくもなかった。

 

だから僕は、僕と幼馴染だけは姿が見えなくても、大人に阻まれて会話ができなくても、何かしてもらったら感謝を伝えるようにしていた。

 

兄さんが外に"出される"時には、みんな必要がなければ家に篭って徹底的に兄さんを見ない様にしていた。僕もそうされていた様に。

 

だから、あの日、幼馴染と一緒に森の中へ散歩に行った時、レグルスが見たその人が兄だとすぐには分からなかった。

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