ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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3話 『だから』 『僕は悪くない』 『だって』 『僕は悪くないんだから』

 

その日は夕方頃に、久しぶりに外出のお許しが出て、少し森を散歩して、花畑を見つけたから、夕焼けの光が包み込んで良い景色だなぁと伸びをして、綺麗な花をぐしゃりと踏みつけて寝転ぶ。

 

花に囲まれて、レグルスたちは元気でやっているのかなあ、なんて思ってそうしてのんびりしていたんだ。

 

 

そしたらさあ、森の方から言い争う声が聞こえてきた。

 

僕は平和主義だからさ。

 

もう、やだなー、別の場所に行こうかなって思って、よいしょっと横を向いてそっちを見たんだ。

 

 

 

 

そこには何人かのグループの子供たちと、髪が白くなったレグルスと幼馴染ちゃんが対立するように向かい合っていた。

 

 

「あんなの人間未満だって何回言ったら分かるんだ?"頭が良い"レグルスさぁ、教えてくれよ!だから好きに使い潰して良いって、父さんたちがそう言っていたんだ。アレはこの村の、この村に尽くす為だけの奴隷なんだ。大人の中にはアレを"天の使い"だなんて言う人も居るけど、そんなの理解できない異常者を理解したくないから言っている言い訳でしかないよ。あの頭のおかしい奴から目を背けているだけさ!家族を人質にするって言ったらごめんなさい、何でもしますって言って、僕はそれを隠れて見ていたんだけれど、惨めだったなぁ!面白かったよ!あの不快な、不愉快なニコニコとした顔のまま、地面に這いつくばってさあ!」

 

げらげらと笑いながら喋る彼らに、レグルスは言い返す。

 

 

「君たちがやっていることは同じ人間とは思えない様な恐ろしいことだって理解してる?理解できていないからそんなことを平然とやってのけられるのか。頭がイカれているとしか思えないよ。人1人を、僕の大切な兄さんを、奴隷の様に扱って、村の奴らも、家族も普段なんて居ないものとして扱うくせに、必要な時にだけ小屋から引っ張り出して利用するなんておかしいと少しでも思わないのか?──あぁ、そう。君たちは全く間違えているよ。君たちだけじゃない、僕の家族も、村の奴らも、みんな異常だ。僕は、僕と彼女はずっとおかしいと思っている。あんなの、人間が受ける仕打ちじゃない。都合良く利用して、家族を人質にとって、兄さんがお前らが言うことを享受しなくてはいけない様な状況を作り出して、自分たちはお礼の1つも言わないで、それが当然だと言う様に振る舞うなんて。僕には頭がおかしいとしか思えない。普通に生活する、なんて、生きていく上で誰しも持っていて当たり前に守られるべき権利を奪っている最低な行為だ。権利の侵害も甚だしい!」

 

 

 

「あのね、レグルスのお兄さんは本当に良い人よ、あんな酷い仕打ちを受けているのに、私たちの為に色々手助けをしてくれていて……それなのに、どうしてみんなそんな酷いことを言えるの?普通に、幸せに、一緒に暮らしていけば良いだけじゃない!話したことも見たこともないけれど、話し方とか、表情だとか、雰囲気が私たちと違うだとかそんな些細なこと、私たちはそもそも気にしない。そうやって思ったこともないわ。そうやって迫害するのはおかしいよ…文句の1つも言わないで、不思議な力を村の為に使ってくれるなんて、心が優しくないと出来ないことよ!」

 

 

 

 

ああ、僕のことなんて気にしないで生きてくれれば良いのにな、と目を細める。

 

子供たちが続ける。

 

 

「お前たちの方がおかしいよ、あんな便利な道具を使ってあげているんだから、アレには感謝して欲しいよね。生かしておいてもらっているのだって、有用性があるからでしかない。それとも、あの人間もどきに当てられて頭がおかしくなっちゃったのかな?そうじゃないとアレを庇うなんてそんな気持ち悪いこと出来ないよ!」

 

僕には何を言ってくれても良いんだ。

 

 

でも僕の家族に、心優しい言葉をかけてくれた心の綺麗な2人に向かってそんな汚い言葉をかけるんだ。

 

 

 

あっそ。

 

 

本当に久しぶりにレグルスたちを見られて、最高の気分だったのが最低の気分になったのを感じる。

 

むくりと花畑から起き上がって、体についた花びらを叩き落としながら歩き出す。

 

 

 

 

さく、さく、と草を踏み締める音が対立する子供たちに近づいてくる。

 

 

みんなの意識がこちらへ集中する。

 

 

 

僕を見た子供たちが、あ、おい!奴隷だ!相変わらず気味が悪いよ。

何だよ、近づいて来るなよ。

珍しい、外に出してもらっているのか、村長は優しいな、とか、そうしないと自殺されたり狂われたりしたら困るだろ?とか何とか言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

レグルスは暫く思考が止まって、そして認識した。

 

にいさん、そうだ、兄さんだ。

奴隷奴隷って、クソが。

ボロボロの服に、裸足、確かに格好だけ見れば奴隷のソレだった。

髪の色が変わっている、僕と同じだ、酷い扱いを受けたせいに違いない。

家の家系ではありえない濃紺の髪、大きくてまんまるな紺青の瞳、ニコニコとした笑顔。

そうだった、兄はこんな見た目をしていた、大きな目でこちらを見つめて、優しい手で頭を撫でてくれた、僕は、あの手が好きだった。

自分よりも下に見ているから、見下しているから、優しくしてやっている、そういう自分に酔っている自分本位の、自分が優位に立っているからしてやっているに違いない吐き気がする他の奴らとは違う、僕の幸せだけを本当に望む様な、不幸な者がそれでも慈しむ様な手が好きだった。

 

確かに僕たち家族とは髪色とか、見た目が違うけれど、そんなことなんて気にするか?

僕だって白髪になったんだ、それなのに兄さんだけ虐げるなんておかしいだろ。

 

 

 

僕の呟いた、兄さん、という声を拾ったのだろう。

 

兄さんは明るく答える。

 

 

『大正解!レグルス、僕は君のことがだーいすきなお兄ちゃんだよ!』

 

『久しぶりだねっ』

 

『勿論そっちのかわいい幼馴染ちゃんのことも大好きだぜ!』

 

『あのね、彼らが言っていることは、実際そーだよ。僕は最底辺の人間だからね』

『この扱いだって全然気にしないよ』

『大丈夫!レグルスちゃんと、幼馴染ちゃんは気にしないでいーよ!』

 

『僕はね』

『2人が幸せならそれでいいんだ』

 

レグルスと幼馴染ちゃんは、僕を見て、それから改めて向き直ってあなたたちが言う様な、気味悪いとか、不気味だとか、全然思わない!と言う。

 

 

そんなことをしている、そんな風に振る舞うあなたたちの方がおかしいと。

 

2人は優しいね、僕はそんな風に言われたことなんてなかったよ。

 

 

 

僕たちを囲ってきた奴らは、何だお前たちそんな気持ち悪い奴の味方して、そいつと同類じゃないか、と次々に馬鹿にする言葉を投げかけるが、僕が2人の前にゆらりと出て、ニコニコしながらじっと見つめていたら勝手に気味が悪いと蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。

 

残された僕らは、気持ち悪いんだよ!とかばーか!とか、そんな幼稚な罵声をあびせながら、それでもこちらへ振り向かずに逃げる彼らを見つめて、そしてくすくすと笑いあった。

 

それが、2人とのきちんとした出会い。

 

 

そこから僕が外に出してもらえる時は、3人で過ごすことが多くなった。

 

まあ、殆ど出してもらえないから、なかなか会えないけれど、村に居られない僕が行く場所なんてたいてい森や花畑やら限られていたから、そこに行けば僕に会えるって分かったんだろう。

僕が外の世界を満喫している所へ2人が来ることもあれば、僕が行く前に2人が先に過ごしていた所に僕が合流することもあった。

 

2人の話を聴きながら森を散歩したり、花畑で寝転んだり、川で涼んだり。

 

 

転んで怪我をした幼馴染ちゃんの怪我をなかったことにしたり、花を成長させて花束にしてあげたり、家の壊れたものを持ってきてもらって、なかったことにして直したりしたり「骨折り指切り」ベストペインで宙返りだのパルクールもどきを見せてすごいすごいと楽しそうに喜んでもらったりした。

 

 

 

2人はこんな僕にも懐いてくれて、兄さん、兄さん、お兄さま、お兄さまとよく話しかけてきては、何かあるごとに僕に頭を撫でるのをせがんできたりして、かわいかった。

 

2人が僕と過ごしているのを見た人たちは、2人に関わるのをやめるように何度も強く注意したらしい。

 

僕も、2人がそうして嫌な思いをすることなんて望んでいなかったから、これっきりにしようと言っても、レグルスは僕たちが自由に過ごす、自由に選択して思考して行動できるというのは僕たちの当然の権利なんだから、あいつらにとやかく言われる必要もない、そもそもあいつらの言う馬鹿みたいな話を聞き入れる義務もないと怒っていたので、2人が良いなら、まあ、良いかあと、そのまま過ごすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い生活の間で、髪の毛はだいぶ伸びて、結い紐で後ろで1つに括ってある。

 

いつからだったか分からないけれど、レグルスたちと会う前にはもう僕のよく知る禊ちゃんらしい紺青と黒を混ぜた様なあの色に変わった。

 

いやあ、随分それらしくなったじゃあないか。

 

 

レグルスは昔は白かったのに、とお揃いの白髪じゃなくなったことを不満気にしていたけれど、うーん、僕のせいじゃないからなあ。

それより双子っていう他にはないかけがえのないお揃いがあるじゃないかと笑って頭を撫でたら機嫌をなおしてくれた。

 

 

 

 

そんなことが何年か続いたある日の夕暮れ、冬の入りで空気が冷えていて、夕方からあっという間に暗くなってきたから、森から3人で村へ帰る途中だった。

 

茂みからガサ、ガサリと音がして、周りから沢山の大人が出てきて取り囲まれる。

 

縄や鎌なんかを手にして、じりじりとこちらへ距離を縮めてくる。

 

 

横にいた2人を背の方へやりながら、首を傾げて見渡す。

 

『えーと』

『誰?』

 

じいっと見つめる。

 

その中に、村で見たことのある人が混じっていた。

 

 

 

 

あー、分かってきたぞ!

 

『あれ』

 

『おじさん』

 

『こんな所で何やっているんですかあ?』

 

 

この状況下ですら笑顔の僕におじさんはたじろいだ様子だったけれど、すぐに平静を装って話し出す。

 

「お前の話をしたら、買いたいって人が居たんだ。お前1人だと思っていたが予定が崩れた。仕方がない。儲けが増えたと思えば良いさ、ガキ共まとめて売り飛ばす!」

 

 

はあ、なるほど。やっぱり、人攫いかあ。

 

 

そりゃ僕の能力を"プラス"に見るなら、見てしまうなら欲しがる人も多いだろう。

 

それでお金に目が眩んだってところかなあ。

 

 

僕は良いんだよ、僕は。

何とでもなるから。

 

でも、僕みたいな奴に優しくしてくれた2人を、大切な人を傷付けようとしただなんて、そんなの赦せないよね。

 

血も涙もない酷い話だよ、まったく。

 

 

 

『2人とも振り返らずに村まで逃げるんだ』

『何とかするからさ』

 

『僕のことは気にしないで』

 

 

2人に伝えるが、足がすくんで動けないでいる様だった。

 

そうはさせねぇと大声を上げながら僕たちを囲っていたうちの1人が鋭い鎌で切りつけてきて、咄嗟に2人を庇った僕の腕がざっくりと切れた。

 

 

もう、いったいなあ。

 

でもさあ、威嚇ならまだしも、仮にも売り物に傷を付けようとするとか、あはは!馬鹿かな?

 

ああ複雑すぎて馬鹿には理解出来ないか。

 

 

 

ボタボタと地面に垂れる血を見て、幼馴染ちゃんが、青ざめた顔で血が、血が……と言って震えている。

レグルスもその白い肌が更に白くなって、血の気が引いている。

 

 

 

 

あーあ、女の子に刺激の強いものを見せるなんて、人として失格だね。

 

僕も、お前も。

 

 

血が出たって気にしないよ。

なかったことに出来るし、何より2人が傷付くことの方が僕は嫌だ。

 

 

『お兄ちゃんはだいじょーぶだよっ!』

 

『だから』

 

『ほら、2人はこんなこと忘れて帰りな』

 

 

と安心させる様に笑いながらとん、と背中を押してあげて、声をかける。

 

僕と目があって、僕が頷くのを見たレグルスが現実に戻った様な顔になって幼馴染ちゃんの手をとって森の入り口の方へ縺れる足で走り出す。

 

 

 

さて。

 

血塗れの鎌を再び構える馬鹿に一瞥もくれずに近くの木に手足を螺子で貫いて磔にする。ッぎゃああと叫ぶ声のうるさいこと、うるさいこと。

 

僕を取り囲む大人たちが、どう見ても不利のはずなのに笑顔の僕を見て、うっ、と身構えるが、数で攻めりゃこっちのもんだろ!このガキを捕まえたら顔を見られちまったから逃げたガキも捕まえなきゃなぁ!と襲いかかってくる。

 

 

あは、馬鹿だなあ。

 

一瞬で周囲の木々に手足や腹に螺子をぶち込んで足で螺子をぐりぐりと踏みつける。

 

 

『僕のことなんてどうでもいいけれど』

 

『2人に手を出そうとするなんて』

 

『大人としてどうかと思うよ』

 

『ね』

 

『おじさん。』

 

 

喧しい絶叫をあげ続ける裏切り者に囁く。

 

森の奥の方へ歩いて行って、残党が居ないか確認する。

 

ひー、ふー、みー、よー、10人。これで全員か。

ああ取り逃がしが居なくて良かった。

 

 

それにしても、大人のくせにぎゃあぎゃあうるさいなあ。

 

いやー、元気だね。

 

 

地面が僕から垂れ続ける血と、磔にされた大人から流れ出る血で侵食されていく。

 

 

絶叫を聞きつけて森へ慌てて大人たちが集まって来た。

2人は森の入り口でぺたりと座り込んで松明を持った大人に保護されている。

良かった良かった。

 

 

ね、知っている?

明るい方からは暗い方が見えにくいけれど、その逆は良く見えるんだよ。

 

 

 

僕にはその様子が良く見えた。

でも村人たちからは森の奥に居る僕のこと、まだ見えないだろうなあ。

 

 

 

 

 

 

木々に磔にされて、血に濡れている人たち、あぁ、あとは裏切り者の村人もか。

それを見た大人が狂った様に叫ぶ。

 

なんだこれ、おい、見ろ、リカルドの奴がやられてるぞ!

相打ちになったのか!?

ひでぇ、どうなっていやがる!?

 

村への襲撃だ!!!武器を待て!もっと人を集めろ!

女子供は外に出るな!!!

 

 

 

 

 

 

 

慌てふためく大人たちの声を、静かに、抑え込む様に、ゆったりと、なんてことない様に、日常の一幕の様に、森の奥からぺちゃ、ぴちゃりと歩く音がして、声がする。

 

 

暗い森故に、その姿は未だ見えない。

 

 

 

『いいや』

 

『村への襲撃や相打ちじゃあこうはならないね』

 

『それにしては数が少なすぎる』

 

『それに、リカルドさんも、他の人も、全員同じ様に串刺しにされている』

 

『どんな魔法だろうと自分で自分を串刺しにするなんて不可能だよ』

 

『これは明らかに第三者の仕業に違いない』

 

『一体どういう目的があってこんな面白半分の惨状を演出したのかはさっぱりわからないけれど』

 

だれだ!と松明と各々の武器を構える。

血濡れの地面を歩く裸足の足元が、ボロボロの服が段々と見えてくる。

 

 

『おおっと!』

 

『早とちりしないでおくれ』

 

『僕が来た時にはもうこうなっていたんだよ』

 

 

大人たちは聞いた。

本当に久しぶりに口を開いた、その口から紡がれる不快で、不愉快で、歪んだ、聞くだけで身の毛のよだつ様な気持ち悪い言葉を。

 

不快だからと口を開かない様に言いつけていたから。

だから、声を聞くことなんてめったになくなったから、誰も、誰が話しているかすぐに分からなかった。

 

でも、鳥肌が立つのを感じる。肌で、気持ち悪さを実感する。

 

 

大人たちは見た。

 

そして、真に戦慄した。

 

森の奥からなんてことはない、散歩でもする様にのんびりと、こちらに向かって歩いて来る姿を。

 

 

磔にされている物と同じ、腕ほどの大きさのある螺子を、血まみれのそれと、血に濡れた顔と、手と、服を纏ったニコニコと笑いながら、話す、その姿を。

 

 

 

 

 

『だから』

 

『僕は悪くない』

 

『だって』

 

『僕は悪くないんだから』

 

 

 

笑顔で、手を広げて、信じてよ!と言わんばかりに無邪気に笑うその狂気を。

 

 

村人たちは恐れ慄いた。

こいつは、コレは、普通の人間じゃない。

 

不思議な力を持っているからといって、利用出来るからと、ほんの少しだけでも信用したのが間違えだった。恐れから理由をつけてのうのうと生かしてやっている場合ではなかった。

 

 

こいつは人の皮を被った、人間未満の、怪物だ。

 

各々、僕を睨みつけて、鎌や斧を構える。

 

 

『しつこいなあ』

『信用してよ』

『僕を』

 

お前の言葉など信じられるか!!

誰が見たって一目瞭然だろうが!

 

リカルドが、何の罪もない仲間が酷い怪我を負っているんだぞ!!!

 

お前が殺そうとしたんだ!!

 

仇を討たなければならん!!!

 

口々に言う。

 

 

『だーかーら僕がやったんじゃないって!』

 

『けどまあそうだね!』

『気持ちは分からないでもないかもだし?』

 

『じゃあこれでおあいこってことで。』

 

ぶしゅ、ぐじゅり。

 

笑顔のまま、自分の頭に持っていた螺子を突き刺し、平然と言ってのける。

 

これでおあいこでしょう?と可愛い顔をこてん、と倒して、倒した先からボトボトと血が落ちるのも構わずにニコニコと話し続ける。

 

化け物だ、人間ですらない、怪物だ、と声がいくつも重なる。

 

これだから嫌んなっちゃうよ。 

仕方ないなあ。

 

 

『「大嘘憑き」』

 

 

螺子伏せたことをなかったことにした。

ほらこれで綺麗さっぱり元通りになった。

 

村人たちはリカルドさんの所へ一目散に駆け寄ると、息をしている、無事だった、良かった、苦しかっただろう、痛かっただろうに、と泣いている。

 

リカルドさんは一丁前に、あいつらは子供を狙った人攫いだ、と裏切りに裏切りを重ねている。

 

あはは、彼、相当な"大嘘付き"だね。

 

 

それ以外の人は、気絶している大人をロープで拘束し始めた。

 

良かったじゃん。

 

それをにぱにぱと笑って見ていると、落ち着いてきた大人たちがこちらを睨みつけて、憎悪の目で見つめてくる。

 

 

僕に注目が集まる。

 

 

そして、誰かさんが言った。

 

こいつは、天からの使いでも何でもない、唯の化け物だ、怪物だ、と。

 

  

さすがに酷いよね、人攫いに囲まれて、2人を逃す為とはいえ鎌でざっくり切られて、しょうがなくおあいこでこうしてあげてさ、流れる血も傷もだぁれも見えていないフリをして。

 

ひどーい。

 

 

 

 

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