ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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4話 それでもへらへら笑うのが僕だ

 

結果から言うと、『「大嘘憑き」』を使って元に戻った僕は小屋から今度は家畜用の檻に移された。制裁だとか何だとか。知らないけど。

 

 

そうだな、それは僕が、いわゆる体育座りをして、少し余裕があるくらいの狭い檻だった。横になって寝る時は体を胎児のように丸めないといけない。

 

だから檻から出してもらうと、いつもうーん、と、固まった体を伸ばすことがルーティンになっていた。

 

 

 

見せ物の様に檻はみんなに見える所に出された。

首には鎖付きの首輪が付けられて、用事があるとそれをぐいぐい引いて歩かされるから、歩きにくいったらないよ。

 

というか殆ど引きずられて移動させられている。

伸びた髪の毛を引っ張って引きずっていく人もいたなあ。

 

 

ゴミを見るみたいな目付きで用件だけ伝えて、さっさとやれ、早くしろ、と急かす。

 

ちょっとでも気に食わないことがあるとすぐ殴られたり、蹴られたり、罵倒されたり、そういうのが前より酷くなった。

というか進行形でどんどんエスカレートして行っている。

 

この村の人たち不満たまりすぎじゃあない?

 

お腹を蹴り飛ばされて壁に体を強かに打ち付けながら思う。

 

 

 

 

 

僕が、僕自身の怪我もなかったことできるとあの一件で分かった人たちは、日々のストレスを僕にぶつけてくる。

 

やれ嫁の飯がまずいだの、お気に入りの服が汚れただの、作物の育ちが悪いだの、子供が言うことを聞かないだの、本当にくだらない内容で暴行を加えてくるからたまったもんじゃないよ。

 

それを聞いたお嫁さんとか、子供からまた暴力を振るわれる、嫌な無限ループだよまったく。

 

 

 

気に食わないことがなくても暴力を振るわれる。

今日はいい天気だけど、お前が居るから殴る。

昨日の夜は良い夢を見た、けれどお前が居るから殴る。

昼ごはんが美味しかった、だから殴る。

特に何もない、だからお前を殴る。

 

いやはや、宗像くんもびっくりな内容だよ、まったく。

 

 

僕に暴力を振るわれた〜なんて、檻に入っている僕には出来もしないことを嘘泣きしながら親に言いつけてそれを分かっている大人が僕に子供の報復として殴ったりしてきてさぁ、少し考えて行動した方が良いと思うんだけれどなあ。

 

 

 

ご飯なんて、前はまだパンとか、そこそこ食べられる物だったからいいけれど、今なんてぐちゃぐちゃになった残飯だ、お皿があるだけマシで、地面に乱雑に打ち捨てられたそれを仕方なく食べる。

 

檻は小屋と違って、夜はとても冷えて、くしゃみをしながら丸まって眠る。

 

 

 

レグルスも幼馴染ちゃんも、軽率に僕に近付くと、誑かしているとかそんな理由で僕が酷い目に遭うと分かっているんだろう、遠目から大人たちをじっと見つめて、そうして我慢しているみたいだった。

 

そうそう、そうやって僕に関わらない方が君たちの為でもあるから、そこいらの大人よりずうっと頭が良いよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日、かなりの規模の行商人の一行が村に来た。

 

 

僕は勿論、村の汚点だとか何とかって言われて小屋に戻されて"なかったこと"にされた。

 

見られたくない様なことしている自覚があるのなら、最初からしなければ良いのにね。

 

 

 

暫くして、悲鳴だとか、怯えた様な声が沢山聞こえてきた。

 

 

 

うーん?何事かな、と思って良く耳を澄まして聴いてみる。

 

 

 

 

ああ、なーんだ。

 

 

行商人の一団だと思っていた人たちは、なんてことはない、ありたいていに言うと行商人に扮した盗賊の集団だった訳だ。

 

金目のものを出せ、とかそんな声が聞こえる。

 

 

 

僕は小屋でじっとしていた。やることもないしね。

 

あ、レグルスたちが酷い目に遭わされる様なことがあればドアなんて螺子でぶち壊して助けに行くけれども。

 

 

 

しけてるな、この村、ハズレだと言う、多分団長さんの声が響く。

本当にこれだけしかないのか?何か価値のある物を隠しているんじゃないか?そんなことをしてみろ、皆殺しにしてやるからな、と脅している。

 

 

 

残念ながら、この村に価値のある物を期待するのは、どだい、無理のある話だ。

 

 

 

僕が助けに出ないと行けないかあ、と螺子をくるりと準備する。

 

そうしたら、村長が、慌てた様子で、お待ちを、どうかご勘弁ください、お、おい、アレを連れて来い!と誰かに伝える声がして、バタバタと足音が近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

なんだ、アレって、僕のことかよ。

 

 

 

 

 

 

ガチャガチャと鍵を荒っぽく開ける音がして、

早くしろ、と首の鎖を引っ張られて引きずられる様にみんなと盗賊の間に放り出される。

 

 

コレは、不思議な力が使えます、物を修復したり、怪我を治したりできます、いかがでしょうか、と見たことのない様な低姿勢で村長が伝える。

 

 

この人が団長さんか。団長さんが、ジロジロと僕を見て、顎を掴んで顔をあげさせて、顔も悪くない、髪の色も珍しい。

 

不思議な力が使えると言ったな、じゃあ何かやってみろ。

 

 

はっ、そうだな、金をだせ、金、黄金をな。と僕に言う、どうせ出来やしないだろうと嗤いながら。

 

出来なければ首と体がおさらばすると思えと添えて。

 

 

 

 

 

うっわー、見せしめじゃん。

無理難題をひっかけてさ、どこぞのかぐや姫じゃあないんだから。 

 

 

金を出せ、か。

 

そんなこと、出来るわけが、まあ、あるんだけれど。

 

 

仕方ないなあ。

生き返るとはいえ、僕は無駄に死にたくない。

 

だから金を司るスキル「雲の上の富裕層」ゴールデンクラウドを使ってそこら辺にあった石をぎゅっと手を包み込んで、金の塊を生み出す。

 

驚いた様子で僕の手から金の塊を摘み上げ、じっと見た後、顎に手をやりながら、こりゃあ、本物か、大したもんだ、良いだろう、こいつを貰って行くからお前らは見逃してやると言い放った。

 

 

『僕なんかで良ければ喜んで。そうすればみんな助かるんでしょう?僕みたいな地面を舐めて醜く生きている様な人間でもお役に立つなら光栄だなあ!』

 

いつも通りニコニコと笑いながら、なんてことはないという様に話す。

 

 

 

金を搾り取れるだけ搾り取って、国1番のでかい屋敷に住む変わり者の貴族に売り払おう、あいつはこういう見た目の奴が好みだろうし、こんな有用な力があるから高値で売れるぞ、と満足げに笑いながら話している。

 

 

 

 

 

 

その一方で、村長は、何で、何でだ!?

そんな力を使えるなんてワシらは知らなかった、何故、金を出せるのに今までそうしなかったんだ!?

この村を豊かにする為にその力を使わなかった!?

なんのためにお前を生かしておいてやったと思っているんだ!!!と怒っている。

 

やれやれ。

  

 

『まったく』

『なんの為だなんて』


『みんな大人のくせに』

『的外れだよねえ』

 

『人間は無意味に生まれて』


『無関係に生きて』


『無価値に死ぬに決まってるのにさ』

 

呆れた様に、喚き続ける村長を見つめながら言う。  

 

そもそも言われてもいないことをやらないよ。

 

 

村人たちは、僕の家族も含めてみーんな怒っていた。

 

お前が使えないから、それでも仕方なく使ってやっていたのに、だとか、ここまで生かしておいた恩を忘れたのか、だとか価値のないお前がそんなことを出来るなら何でしなかったんだとか、そんなことの繰り返し。

  

 

つまんなーい。

 

 

チラリとみると、レグルスは家族を、村人を憎悪の目で睨みつけていて、幼馴染の彼女は服を握りしめて、涙を堪えている様だった。

 

 

ああ、女の子を泣かすなんて最低だな、でもこの場合僕のせいなのか、その他の人たちのせいなのかなと思っていたら、鎖をぐっと引かれて、体勢が崩れる。

 

 

盗賊たちは、お前らにもう用はない、と言って僕をぐるぐる巻きにして竜車にほっぽりこんだ。

 

竜車の揺れに合わせて首の鎖がカチャカチャと鳴る。

 

 

 

村へ目をやると、レグルスと幼馴染ちゃんが大人たちの間をすり抜けて、静止を無視して走って来て、そして轍に足を取られて転んだ。

 

転んだ傷をなかったことにしてあげる。 

 

 

顔をあげたレグルスと幼馴染ちゃんと目が合う。

ああ、君たちはそんな目をしなくて良いんだよ。

 

 

胸の前で拘束されていても唯一動かせる指で口の片側の端をぐっと持ち上げ、笑う。

 

『思い通りにならなくても』

『負けても』

『勝てなくても』

『馬鹿でも』

『踏まれても蹴られても』

『悲しくても苦しくても貧しくても』

『痛くても辛くても弱くても』

『正しく無くても卑しくても!』

 

"それでもへらへら笑うのが僕だ!"

 

『だから大丈夫だよ』

 

2人は遠ざかる僕を見ながら泣いて、抱きしめ合っていた。

そうして僕は国1番の大きなお屋敷に売られた。

 

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