ここだけレグルスに兄がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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5話 変態絶対反対委員会委員長は僕でーす!

 

やっほー!みなさん、こちら禊ちゃんもどきです!

 

僕が売られたお屋敷、すっごいでっかいよ!

 

『うっわー!おっきなお屋敷!』

 

『僕こんなの初めて見たよ』

 

 

国に着いて、盗賊の持っていた物を満足するまで金にしてあげてから、僕は国1番の大きなお屋敷に連れてこられた。

 

 

首の鎖を引かれながらきょろきょろと見渡す。

 

誰かがこいつの情緒どうなっているんだよ、気持ち悪りぃと溢す。

 

 

だって、売られちゃったのはもう仕方ないじゃーん。

 

 

このお屋敷の旦那さまの前に突き出される。

旦那さまは僕をじっくり、じっとりと眺めて、うんうんと頷いてから、笑顔で盗賊に随分重そうな袋を渡していた。

 

僕にそんな価値ないと思うんだけれど。

 

お前は今日からここで使用人として働いてもらうよ、と言われて鎖とロープを解いてもらう。

 

僕はその後、使用人さんたちにお風呂に連れて行ってもらって、体をピカピカに洗った。

 

 

 

あーさっぱりした!

 

やっぱりお風呂はいいね。お風呂は心を潤してくれる。

リリンの生み出した文化の極みだよ。

そう感じないか?碇シンジくん。

 

あ、作品が違う?

 

ごめんごめん。

あれ、というかレグルスの声ってカヲルくんにどことなく似てるね。

おもしろーい。

 

 

村ではお湯じゃなくて水で申し訳程度の石鹸を使わせてもらって洗っていたからさ。

 

そうして良い香りになった僕は、用意された服を着ようとする。

 

使用人として働くって事は執事服だよね。

蛾々丸ちゃんみたいな感じの服かな、モノクルとかつけちゃってさ。

勿論武器はトランプじゃないけれど(笑)

 

 

そう思って手に取った服は、所謂、メイド服と呼ばれる物だった。

 

僕は思考停止する、思考なんて明後日の方向へ放り投げる。

 

 

 

何で????

 

 

 

 

クラシカルなメイド服を前に固まる。

 

わあ、旦那さまってそういう趣味をお持ちなんですね。

 

きゃっ、変態っ!

 

ワンチャン僕の性別を間違えている可能性がある、僕のおめめは大きくてくりくりしているし、可愛らしい顔立ちをしているし、背もそこまで高くないからね。

 

それまで着ていたボロ布は処分されてしまっていたからとりあえず、メイド服に袖を通す。

 

 

 

うわ、うける。様になってる。

旦那さまの所へ改めて連れて行かれる。

 

それまでに見た使用人たちはみんな僕と同じ服の女の子だった。

えーっと、きっと、それがノーマルだよね。

 

旦那さまにお風呂と、服のお礼を伝える。

 

それから、おそれながら、申し上げます、僕は男なのでこちらの服ではなく、執事服なのではありませんか?とたずねる。

 

 

旦那さまはさも当然かの様に、男の子だって分かっているよ、勿論。

 

こんな可愛い子が執事服なんて着るのは勿体無い!

お前にはその服が似合うよ、うんうん、私の見立てはあっていたなぁと言う。

 

 

あ、これマジもんの変態だ。ニコニコしながらドン引きする。

 

 

 

原作では裸エプロンだの手ブラジーンズだの考えていた僕は、流石に女の子にそんなことをして欲しいとは思わないよ、前世の"僕"の影響が混じっているからね、女子には紳士たるべしと。

 

まあ?禊ちゃんも女子には紳士だったけれども。

 

 

うーん、ま、世の中には多種多様な性癖を持っている人もいるかあと思って、仕方がない、諦める。

 

今日は疲れただろう、もう部屋で休みなさい。と髪を触られながら、言われる。

 

 

うっわー、サラッとボディタッチしてくるんだあ。

変態!はんたーい!

 

 

そうそう、長かった髪の毛は切ってもらった。

すっきりして、おー、原作の禊ちゃんの見た目だ!とテンションが上がる。

 

切られた髪の毛は旦那さまが持っていきました。

何に使うか考えたくもありませーん。

 

 

次の日から、先輩使用人を付けてもらって、仕事を教えて貰うことになった。

 

ベッドメイキングだとか、掃除の仕方だとか、料理だとか、皿洗いだとか、洗濯だとか、旦那さまの買ってきた物の整理整頓だとか、庭の手入れだとか、旦那さまの仕事の付き添いだとか次々に教えて貰う。

教えると言うより、早口で質問する間もなく言いたいことだけ言って僕のことなんてまるっきり考えないで言っている感じだなあ。

 

 

あっそ。

 

別に構わないよ、前世でだてにブラック企業で働いていた訳じゃあないんだからこれくらい覚えるのなんて赤子の手を捻る様な物だよ。

マルチタスク大好きでーす、いぇーいピースピース!

1人暮らししていて良かった、料理も何とか出来そうだ。

 

 

前世ばんざーい!いや、もう戻りたくないんだけれどね(笑)

 

 

教えてもらった次の日から、テキパキ与えられた仕事をこなす。

 

いやこれ新人にさせるには多すぎるでしょ。いびりかな?

 

 

まあ、普通に終わって、余裕があるから他の使用人の手伝いをする。

 

僕は出来る男だからね。

 

女の子には優しくしないとね!

 

 

 

 

そうして随分、長いこと働いた。

んー、僕の体は高校生のあの禊ちゃんの体から歳をとる事はなくなったみたい。

過負荷なのにさあ"異常"だなんて笑えるよ。

 

メイド服も板について、特に気にならなくなっていった。

 

 

 

いやあ、長い雇用期間の間色んなことをされたよ、先輩たちには。

 

言葉によるいじめは日常茶飯事でさ、男なのにそんな服を着て気持ち悪いだとか(そんなの、旦那さまに言いなよ)気持ち悪いから必要以上に喋るなとか、貼り付けた様な笑顔が気色悪いとか。

後は僕がやり返さないって分かっているから、僕がお茶を運んでいる時にわざとぶつかってきたり、足をかけられたり、僕がそれでもやり返さないでヘラヘラ笑っているからまあ、叩かれたり蹴られたり、村と殆ど変わらない扱いだったよ。

 

僕の服がビリビリに割かれていたり、靴が生ゴミを捨てる所から出てきたり、僕だけご飯がないとか、旦那さまの仕事の付き添いに選ばれることが増えると更に酷くなっていった。

 

もう、パワハラはんたーい!

 

それでも関係ないよ、なかったことにして毎日仕事をこなしていくだけ。

 

 

村の方が酷かったしね。

 

"プラス"の彼女たちはそんな風に僕という"マイナス"を虐げていないといられなかったんだろうなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時、旦那さまの交渉の仕事に付き添った後、仕事が終わったら私の部屋においで、と言われた。

 

なんだろ、いじめに流石に気付いたのかなあ、何て考えて、まっ、何でも良いかと残りの仕事をこなした。

 

今日はやけに僕のことを見てクスクスと嘲る様に笑う子たちが多いなあ。

おおかた、僕が呼び出されたのを聞いていた子が僕が怒られるとか、解雇になるんじゃないかとかそんなどうでも良い理由で旦那さまに呼ばれたんじゃないかとか聴こえてくる。 

 

 

くだらなーい。

 

 

夜になって、旦那さまの部屋に行く。

 

 

こちらへおいで、お茶をしようと言われたので紅茶を淹れようとすると、今日は私が淹れてあげようと言われてお言葉に甘えて座って待つ。

 

僕は紅茶を飲むのが好きだ、今日の紅茶は何だか美味しい、日頃の働きに対する労いで、ちょっと良い紅茶を用意してくれたらしい。

 

 

どうでも良い話をぐたくだと聞きながら、僕はテキトーに相槌をうって、旦那さまは美味しそうに紅茶を飲む僕を満足そうに見つめてくる。

 

 

 

ところで、さっきから感じている違和感がある。

旦那さまは淹れた紅茶に手を付けていない。

内容のない、無駄な話。

 

時間を稼がれている?と思っている時だった、視界が、思考がブレる。

 

 

 

 

あれ、僕、これ知っている、この感覚、前世の終わりに感じた、睡眠薬の……

 

 

ぐらりと椅子から傾く僕の体を支えて、ベッドへと連れて行かれる。

 

 

あぁ、可愛いなぁ、お前は本当に可愛いなぁ、他の奴らとは違うよ、お前は特別なんだ、分からないって顔している所も可愛らしい、生娘の様だ、たまらない、たまらないよと言いながら髪の毛、頬、首筋、と撫でてくる。

 

 

 

こいつそういう趣味かよ、いやそういう愛の形があるのは分かるけれど、それってお互いの愛と信頼によって成り立つものでしょ、これは違う、ボディータッチがやたらと多いとおもったら、僕に欲情していたのか、と思うけれど、いかんせん、ねむい。

 

 

とろんとした目もかわいいなぁ、と言いながら、僕の服のボタンを外していく。

おい、まじでやる気かよ、僕の貞操の危機じゃん。

 

 

『「大嘘憑き」』

 

 

僕の睡眠薬による眠気をなかったことにした。

 

一気に覚醒する。

 

 

ベストペインを使って身体能力を引き上げて鎖骨を撫でる手を掴み、引き寄せながら胸を蹴り飛ばして押しのけて、股間に一発蹴りをお見舞いする。

 

 

声にならない声をあげながらよろよろと退がる腹にもう一発蹴りを螺子込み、外へ向かって走り出す。

 

普通に螺子で貫けば良かったなあ、と思うけれど、咄嗟だったから仕方ない。

 

 

スカートをたくし上げて走る、走りにくいったらないよ、背後からそいつを捕まえろ!!!と怒号が飛んできて、通路に居た使用人たちが立ち塞がろうとするが螺子で壁に服を縫い止めて動けない様にして逃げる。

 

 

ただ、僕は体力が絶望的にないのが致命的だ、ベストペインは使うと急激にお腹が減るんだ、カロリーの消費が激しいんだよ。

しかも夜ご飯がパン1切れだったから、もう、お腹ぺこぺこで、ベストペインの効果が、切れちゃう、ぜ。

 

 

ぜぇぜぇ言いながら、階段を駆け降りて玄関のドアを開いて外に出る。

 

僕に続いて旦那さまと使用人たちがなだれ込む様に出てくる。

国の外へ出ないと、と思って、大きな通りへ向かって走り出すが、大通りに出る角を曲がる時に段差に躓いて盛大に転けた。

 

 

あちゃあ、やっちゃった。

 

みんなに追いつかれて、屋敷に引きずられながらどうしたもんかと呑気に思っていた時だった。

 

 

 

 

 

城門の方から、ズズンッという大きな地響きと共にとんでもない衝撃波が襲いかかって来て、きゃあ、と僕を掴んでいた手を離してその場にみんな蹲る。

 

何が起きているんだろう?地震、じゃないよね。

 

 

あ、護衛兵団かな、よく見えないけれど、空の方の何かに向かって攻撃加えてるや。

 

 

あー、分かった。

国が攻め込まれているんだ。

わあ、叛逆?戦争?内乱?物騒だねー!

 

 

そう考えていると、何かを更に迎え打つ様にアル・ヒューマやらウル・ゴーアらしきものが飛んでいくのが見える。

そんなもの気にしないかの様に、放たれた魔法ごとヒュパッと城壁まで切れ目が入る。

 

ケーキを切るかの様にすっぱり、家も、何もかもが切られて崩壊していく。

あちこちで悲鳴が聞こえて、それが不協和音みたいに重なって、うるさいなあと思った。

 

 

火の手があっちでもこっちでも上がって、ゴウゴウと燃え広がっていく。

あ、そういえば禊ちゃんは学校を燃やしたことがあるんだっけ、なんてぼんやり考える。

 

 

どう見たって攻め込んでいる側が有利だった。

どんどん建物を壊しながら、叫び声を上げる人々を物言わぬモノにして黙らせながらこちらへ侵攻して来ている。

 

それはそうだ、お屋敷があるのは国の中枢部に近い所なんだから、こっちに来るのは自明の理だ。

 

 

僕の後ろで旦那さまと使用人たちは固まって動けないでいる。

かくいう僕も下手には動けない。

死んでも、死んだことをなかったことにできるけれど、無駄に痛い思いはしたくないし、死にたくない。

 

 

 

瓦礫となった家が崩れ落ちて、立ち込めた砂煙が炎によって上がっている煙と合わさって視界を遮る。

とても煙い。けほりと咳き込む。

 

 

 

逃げようと走って城門の方へ走って行った家族が焼け崩れた柱に押しつぶされて甲高い叫び声を上げている。

体が上下で半分こになった人が何かを呟きながら血をダラダラと流しながら、ずり、ずりと這いずって、力なくパタリと伏せる。

瓦礫に足を潰されて、必死になって抜け出そうとしている人の頭上にズズッとズレた石造りの壁が落ちてきて脳だとか腕だとか血を撒き散らしてあっという間に死ぬ。

 

 

さあて、どうしたものかなあ、戦わなくちゃいけないだろうか、いや、ここまでの規模の侵攻だから、真っ向からぶつかるのは避けて逃げるのもあり、だな。

 

じゃあ、逃げよーっと、と立ちあがろうとすると、ぐっと後ろに引かれる。

 

見ると、這いつくばって震えている旦那さまが僕のスカートの裾を掴んで離さないでいる。

 

 

 

はあ、めんどくさいなあ。

 

 

腕に螺子をぶち込もうとした時に、声がした。

 

 

聴いたことのある、酷く懐かしい声だった。

 

 

 

「レグルス!!レグルス!!!お兄さま居たよ!!ほら見て!」

 

 

それは、とても嬉しそうなレグルスの幼馴染の、あの子の声だった。

 

咄嗟に振り向く。

ありえない、だってこんな場所に居るのはおかしいもの。

 

 

「ああ、良かったよ!あの愚かな盗賊が情報を残してくれなかったらもっと色んな場所を探さなくちゃならなかったからね。

兄さん、助けに来たよ。遅くなってしまったことはごめん、僕は自分の非はしっかり認めて謝ることが出来る誠実な人間だからね。

でも、僕は強大な力を手に入れたんだ、この僕は完璧で完全で個として満たされた完成された存在になったんだ。だから兄さんのことをクソみたいな扱いで非道で残虐で恐ろしい仕打ちをしていた村の馬鹿どもと、散々アレは"家族じゃない"と、居ない者として扱って来て見て見ぬ振りをし続けて来たくせに、兄さんが連れて行かれてしまうその最後の最後に、金が出せると分かった途端、よりにもよって"家族なのに"何故利益をもたらさなかったのかとかいう自分達のことしか考えられない人として最低な淺ましい人間未満の家族も皆殺しにして来たから、安心してほしいな。その後は、僕たちの貧困にあえぐ村のことなんてこれっぽっちも気にしないで過ごす領土の奴らを、町ごと落として、あぁ、本当にあっけなく落ちたよ、本当に馬鹿らしい。それで兄さんを助けるついでに国も落としに来たって言う訳だ。

もう誰にも搾取される必要なんてない、僕と妻と一緒に3人で暮らそう。兄さんにはその権利が有り余るほど、ある。それで?その後ろにいるのが"旦那さま"か。私利私欲のために人の大切な兄さんを利用して、赦されないことだ。本当に目障りだなぁ。うるさいし、喧しく叫ぶことしかできないの?はあ、これだからまともに話し合いが出来ない奴は嫌になるんだ。

あのさぁ、これから自分がどうなるのか分かってる?

もう助からないんだよ、お前は。

というかさ、そんなことより!なんで兄さんが女物の服を着させられているのかなぁ!?いや、もちろん、趣味は人それぞれあると理解しているとも。僕は寛容な人間だからね。でもさぁ、お前のそういう趣味を、立場上拒むことができない兄さんに強要している所は赦せないよ、そうやってみんな、みんな兄さんを下に見て、卑しめて、いつだって兄さんは食い物にされ続けてきたんだ、本当に反吐がでる!

そもそも何でお前たちは兄さんをそんな風に取り押さえようとしていた訳?

って、はぁ!!?兄さんの服がはだけているじゃあないか!!!

僕らの大切な兄さんの肌がお前らの目で穢される!!ふざけるなよ!!!

あぁ、弁解なんていらないよ!耳が腐る、喋るな。どうせ、顔が良い兄さんを油断させて襲おうとしたんだろう、下衆が。それで反撃されて逃げ出した兄さんを捉えに来たって所だろ?恐ろしくて、吐き気がするよ、人様の大切な兄さんの貞操を狙う奴なんて生きている価値なんてない、死ぬべきだ。死ぬ以外に選択肢なんてない。僕にはその権利があるし、お前は甘んじて僕に殺される義務があるってこと、その何にも詰まっていないからっぽで足りない頭でも分かるよねぇ!?」

 

 

レグルスも居るのか、というか、そうか、幼馴染ちゃんだけなはずがないもんね。

 

 

レグルスの話を聞いた旦那さまと使用人は僕にくっついて来て、殺されない様に必死になっている。

 

 

ああ、まったく醜くて見辛くて、救い難いね。

 

 

「お、おま、お前!あいつの家族なんだろう!?頼む、私を殺さないように説得してくれ、お前にしようとしたことは謝る、謝るから、頼む、私はまだ死にたくない!!!」

 

 

 

へー、ふーん、そう。

 

僕はね、好きな相手と一緒に駄目になる、愛する人と一緒に堕落する、気に入った者と一緒に破滅を選ぶんだ。

それが僕の強固で緩い仲間意識なんだよ。

それがさあ、可愛い弟とその幼馴染ちゃんだっていうならなおのことだよね。

 

 

旦那さまにいつもの笑顔で笑いかけると、あはは、勘違いしたんだろう、ありがとう、助かっただとか何とか言っているけれどさ。

 

掴んでいる服を、力尽くで振り払って2人の方へ歩みを進めて、旦那さまの方へ向いて言う。

 

『ざーんねん!僕は2人の味方だよ』

 

『だってさ』

 

『こっちの水は、甘依存』

 

 

こてん、と首を可愛らしく倒して喋る。

 

助からないと分かった馬鹿が使用人を前に押し出して盾にする。

 

もみくちゃになって、そうしてまで自分だけでも助かろうとするなんて愚かだなあ、情けないなあ。

 

『やーだ旦那様ってば』

『女の子に庇ってもらって情けなーい!』

 

『でもいーんだよ、それで』

 

『落ち込まないで元気出して!』

『情けなくて、みっともなくて、恥ずかしい』


『なーんにもできない役立たずの弱い奴』


 

『それが、あなたのかけがえのない個性なんだから!』

 

『無理に変わろうとせず、自分らしさを誇りに思おう!』

『あなたはあなたのままでいいんだよ』

 

あは、絶望した間抜けな顔がおもしろーい。

 

レグルスを見上げて、にぱっと笑うと、レグルスが手をスッと薙ぐ。

みーんなの上半身と下半身が綺麗に別れて、地面も切り裂かれる。

 

 

おお、すごい力だ。

 

感心していると、レグルスと彼女が降りてくる。

 

というか、さらっとやっているけれど、空に浮いているのとか、今の真空波みたいなの、どういう能力なんだろう。

 

 

『助けてくれてありがとね!』

『2人を忘れたことなんてなかったよ』

 

と笑うと、2人が抱きついて来た。

 

僕には2人を支えられるほどの力なんてもうないから、べしゃりと3人で地面に倒れる。

 

不思議と痛くない。

 

「兄さん、さっきも伝えたけれど、ずっと助けられなくてごめん。僕には兄さんを助けてあげられるだけの力がなかったんだ。病気を治してくれたり、壊れた家を直してくれたり、兄さんは僕たちの為に色々してくれた。3人で一緒に過ごした日々もかけがえのない大切な思い出だよ。それに、あの日、あの森で僕たちの命を助けてくれた事を忘れた日なんてなかったよ。本当にありがとう、僕たちだけじゃ駄目だった。兄さんのおかげで助かったんだ。でも、感謝もまともに伝えられなくて、その後もあのクソ共のせいで、思い出したくもない様な惨たらしい扱いを受けて……いや、もう居ない奴らの、兄さんの気分が悪くなる奴らの話は止そう。そうだな、歩きながら、これからの、先のことの話をしよう」

 

「お兄さま、私たちのことを、大事に思ってくださって、ありがとう。お兄さまのおかげで助けていただいたことばかりで、感謝してもしきれません。お兄さまに酷いことをする人たちはもう居ません、レグルスが私の分まで気持ちを乗せてやってくれたの。私たちもお兄さまのことがとっても大切なんです。だれにも縛られない、自由な生活をいたしましょう、ね?だからこれからは3人で楽しく暮らしましょう」

 

 

先に立ち上がった2人に手を取られ、起き上がる。

 

まずは洋服のボタンをとめましょうか、えっと、目に毒です……と恥ずかしそうにしながら彼女が言うので慌てて直して、まるでピクニックに行くみたいにはしゃぎながら僕の手を引く2人と一緒に崩落した建物の瓦礫を横目に、足元に広がる血溜まりやら誰かさんの腕をひょいっと避けながら、燦々たる有様になった道を進んでいく。

 

 

国だった場所を出て、暫く進んだ所にあった家を覗く。

 

慌てて出て行った様子で、ドアは開きっぱなしになっていて、2人分の食べかけの冷めた料理がそのままになっていた。

 

多分持ち主はこの混乱の最中死んでいるかもね。

死んでいなくても、危険な場所にはもう戻ってこないでしょ。

 

 

なにぶん、会うのが久しぶりだったから落ち着いた場所で色々話しを聴きたかった。

 

ということで、ここで過ごすことになった。

 

 

 

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