アインクラッドの英雄   作:夕方の月

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本当にこれであってんのかな


1 プロローグ

 第50層フロアボス戦、それは普段のボスとは異質だった。もともと25層のボスでは軍の精鋭がほぼ全滅し、攻略組の中でクォーター・ポイントごとに強力なボスがいるのではないかと噂されていたが、噂通りというべきかボス部屋に入った攻略組が目にしたのは≪The Last Number≫鋼鉄でできた千手観音のようなおぞましい姿だった。

 

 「盾持ちは全員前に出ろ!!絶対に下がるな!!」

 

 50層ボス≪The Last Number≫を前に、このボス戦に参加していたプレイヤーの実に6割近くが結晶を使い緊急脱出した。残っているメンバーは一部の精鋭と『血盟騎士団』そして、今まさにほかのプレイヤーに指示をとばしている男が団長として率いる『剣槍連盟』だけだった。

 

 「イエロー以下は全員後ろに下がって回復!!、まだグリーンの奴はkobのアスナのところに行け!イエロー以下になったらすぐに下がってこい!!」

 

 男は自らも銀色に輝くツーハンドソードをふるいながら支持をとばす。そしてボスの後方では長槍を持ち髪を水色に染めた男が数人の剣槍連盟メンバーとともに少しずつではあるがダメージを与えていた。

 

 ボスが後方へヘイトを向け、攻撃をしようと身じろぎをした瞬間、血盟騎士団副団長アスナ率いる攻略組のダメージディーラーたちがタンクたちの脇から突貫しソードスキルを放っていく。その中には黒ずくめの剣士も含まれていた。

 

 「ヒースクリフさんここお願いします!……回復してるのやつらはグリーンになり次第俺と一緒に横から叩く!回復途中の奴らも何かあったら動けるようにしとけ!………いくぞ!!」

 

 メンバーの6割近くが離脱した、現実の軍隊では全滅とも言っていいような状況で、いまだ攻略組が持ちこたえているのは、最前線で多くの攻撃を受けなをグリーンを維持しているヒースクリフと、後方で回復していたプレイヤーを引き連れてボスの側面から攻撃を仕掛けている男の指示があったためである。

 

 「帰った奴らがもどってきた!!…このまま押し込む、気合い入れてけ!!」

 

 人々は彼を英雄と呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の帳は深く降り、決して都会とは言えないこの町ではコンビニやパチンコ屋という一部を除いて静寂に包まれていた、光といえば、かすかに家の窓から漏れ出る光、街灯に照らされた一部、そして空に浮かぶ大きな満月とその光によっていつもよりかすむ星空だろう。決して明るいわけではないが様々な光によって照らされたほの暗い道を一人の男急ぎ足で歩いていた。

 

 「これワンチャンまにあわないかもな…一応、連絡でもしとくか」

 

 急ぎ足で歩いているにもかかわらず男の口ぶりには焦りの色が見えなかった。歩きながらも履いている色褪せた紺色のジーンズのピスポケットからスマホを取り出すと、緑のアイコンをタップし30分ほど前に連絡を取り合った相手へとメッセージを送るため文字を打ち始めた。

 

たのしみだな

 

どうせ当たらんよ

 

わからんよこればかりは運だから、最近俺運いいし

                              

今日

ごめん今外出てるから今日は11時からでオネシャス

                              

しょうがにゃいな~まってるよ~

すまん

 

ごめんけどもうちょっと遅れるかも

 

 家に帰ってシャワーを浴びる、洗濯機の電源を入れて明日の朝ごろに動くように設定しておけば今日しなければならないことは全て終った。冷蔵庫から出したキンキンに冷えた麦茶を持ちながら最近買ったちょっと良い椅子に座れば、ちょうど良い反発感が腰と背中を包み込む。良い買い物だった。一息つきながらペットボトルの中に入っている麦茶を飲む。パソコンのロックを解除してゲームが起動するのを待つ間にどうやらもう11時を過ぎていたようで待たせていた相手からの着信とコール音が響いた。

 

 「もしもし〜いやごめんね結構待たせたでしょう」

 

 「遅いからもう1人で回してるよ、まあよく遅れる僕が言うのなんだけどもね、ていうか優斗が遅れるの珍しくない?」

 

 「いやまあ色々あったんだよ色々ね」

 

 「色々って?」

 

 「ああ」

 

 「だから俺遊戯王知らんって」

 

 「知ってるじゃん」

 

 通話相手は一人、モニターの左上に表示されている数画で書かれた猫のような犬のようなそんなアイコンが時折点滅する。

 

 通話相手の名前は宗田蒼(そうだあおい)、高校からの友人で大学生になってもよく遊ぶ中だ。いつも同じゲームをしているわけではない、何をやるかは決めてなくていつも気分で決めたり何個かのゲームをハードすらまたいで数時間遊ぶ、そういう中だ。高校で出会ったときは友達の友達ぐらいの距離感だったのが、今では一緒にゲームをする以外にもカラオケをしたり、釣りに行ったり、いろんなことをする仲だ。

 

 昨日と今日、夏休みだということをいいことに一日中ゲームをしている、それこそ俺も蒼も本来ゲームを始める時間のほんの前までバイトをしていたし、俺は明日もバイトだ、ただ、だからといって数時間で終わるつもりはない。それが今の俺たちの平常運転だ。

 

 今起動しているのはFPSで2.3年前からリリースされて今もプレイヤーが増え続けている最高にHOTなゲームだ。

 

 「ヤベー、2パーティーだ、いったん様子見しよう」

 

 

 「あれ漁夫行けるんじゃね」    

 

 「漁夫られた、奥の建物に2と目の前に3」

 

 「いや両方フルパだ、やばい死ぬ」

 

 「すまん死んだ、いや行ける相手起こしてる、いけるいける」

 

 「俺復活!野良サンキュー!」 「すまん死んだ~」

 

 「ナイスチャンピオン!GG」

 

 

 

 

 遊び始めて数時間が立って、日付が変わってもう1時間ほど経った頃、さっきまでとは別のゲームを始めていく、FPSを数時間するのはさすがに疲れた。

 

 今やっているのは簡単に言ってしまえばハクスラだ、敵を倒したら武器や鎧を落とす。それらを拾って強くなりまた、今度はさっきより強い敵を倒す。かなり大雑把だがようはそれを繰り返すゲームだ。

 

 極端に旧いゲームないわけではないのだが、操作方法はFPSと比べると少し古臭く感じるかもしれない。マウスを右クリックして移動して、左クリックして攻撃する。QとかWとかを押してスキルを使う、さっきまでのFPSでWASDで移動だったのからかたまに混乱する。

 

 モニターの中で俺のキャラクターが氷の剣を投げて、敵に当たれば分裂して、それでより多くの敵は倒れていく。ザコを蹴散らしながらモニターの向こう、正確には二駅遠くの町に住んでいる相方に話しかける。

 

 「そういえば、ソードアート・オンラインの抽選ってどうなったん?」

 

 「いやさすがにまだでしょ、まだ抽選開始して一週間だよ…それに昨日もLINEで言ってたじゃん」

 

 落ちた武器や防具を選別しながらも話を続ける、もはや作業といってもいい。

 

 「いやでも、やっぱり気になって」

 

 「いや確かに俺もめっちゃ気になるけど、さすがに気が早いって、どうせ当選してもサービス開始はもっと先だしどうせ当たらないんだからw」

 

 「なんだ〜、冷笑系か〜」

 

 「いやいや」

 

 自分でも気が早いと分かっているし当選する確率は低いことも知っている。けれどもこの感情は押せられない、何週間も前、もしかしたら1月か2月も前、あの日の夕方電車の中であの広告を見てから俺の心は剣の世界にうばわれた。飯を食べる時も、講義を受けてる時も、風呂に入っているときも、寝る時も、時間があればずっとソードアート・オンラインの事ばかり考えてしまう。

 

 「なんかいいの落とした?俺今日めっちゃしょっぱいんだけど」

 

 「さっき氷属性の片手剣落ちたけど見る?」

 

 蒼のアバターが落とした剣を拾い自分の今つけてる剣と見比べる。

 

 「うーん、微妙に今のほうがつよい、まあありがと」

 

 「あちゃ~」

 

 「あ、そういえば昨日結構よさげな弓手に入れたからあとで見てよ」

 

 「いいじゃん、なら早くこのステージ終わらそう」

 

 結局蒼は武器を変えて、それからもゲームを続けていく。なにか目的があるわけでもなく、しいて言えば惰性だろうか。その後も意味のある話をしているわけでもなくゲームの片隅に思い浮かぶ適当な言葉を脳から垂れ流しながら画面の中のエネミーは倒していく。

 

 初めてからもう大体5時間くらいたっただろうか心の片隅で明日のバイトだとか宿題と称してあの禿のあんちきしょうから提出を求められたレポートだとかを考えながらも友人との意味のない、寝ぼけたような会話を続けてしまう。Bossを倒しふと時計を見ればもう3時だった。

 

 「明日ってゆうかもう今日だけど、蒼はなんか予定ある?」

 

 「昼からバイト」

 

 「なら今日はそろそろやめる?」

 

 「いやもうちょっとやろう」

 

 

 会話といってもたまに指示があったり、机で足を打った報告だったり、それを煽ったり、一言二言の指示以外、無言でいる時間もあったり、今日の運のなさを笑われたり、そんな仲がいいのか悪いのかよくわからない会話が続いてゆく。ただそれがお互いにとってちょうどよかった。

 

 そんなこんなでだらだらとつづけて、結構な時間がたったと思う。さすがに眠くなってきてやめようかと思っている時、外からバイクの音が聞こえてきた、パソコンの画面の右下にある時計を見ると4時32分と表示されている。

 

「さすがにもうやめるわ、お休み」

 

 だらだらと6時間以上続いた通話は、その一言で終わり、通話履歴に記録が一つ増えた。

 

 ゲームを終えた俺はパソコンを閉じそそくさと布団にくるまる。眠りに落ちるまでの間俺の頭に浮かぶのはとあるゲームのCMだ、「ソードアートオンライン」かの天才茅場彬彦が作ったVRMMO、最近はVR機器を使ったゲームも増えてきたがVRでMMOというのはかなり珍しい。そしてこのゲームを語る上で最も重要なのはこのゲームはただのVRゲームではなく、フルダイブ技術を用いた特殊なゲームだということだ。俺自身VR技術に詳しいわけではないがフルダイブ技術がどれだけ素晴らしく革新的なことなのかはわかっている。

 

 一応インターネットを通した抽選や電気屋での抽選にも応募しているがおそらく当選確率はかなり低いだろう、範囲は日本に限られているとはいえ日本のゲーム人口はコア層だけでもかなりの数で彼らがこの革新的なゲームに飛びつかないわけがない、それにあんなに大々的な広告を出しているんだごく一部のコア層だけではなくより多くのライト層だって求めるだろう。ただ可能性はある、それだけで俺は夢を見ることができる。

 

 まだ見ぬ世界に思いをはせながら俺は深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

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橘優斗 様

 

この度は株式会社アーガスの「ソードアート・オンライン」抽選販売にご応募いただきありがとうございます。

 

厳正なる抽選の結果、橘優斗様は【当選】となりました。

 

■ご購入手続きが可能な期間

2022年〇月△日(月)午後1時以降~〇月×●日(金)午前11時まで

 

購入手続きページのURLや購入手続きに関する詳しい情報については、後日改めてメールにてご案内いたします。

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MMOって大学生が一番多いって聞くけどSAOで大学生のプレイヤーってあんまり登場しなかったよね。
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