「いくぞ!」
ディアベルを先頭にそれぞれのパーティーがボス部屋になだれ込んでいく。パーティーごとに分かれどのパーティーもすぐに戦闘ができるよう警戒している。
他のパーティーに続いてボス部屋に入ると、迷宮区のほかの部屋とは違って天井は高くとても広い空間が広がっていた。視界にはいわゆるボスバーとでもいうべき存在と『Illfang the Kobold Lord』今回戦うボスの名前が映る。ただこの薄暗い大広間にボスの姿は見えない、各々警戒しながらもゆっくりと歩いていくと、広場の中央、俺たちの先頭を歩くディアベルの前に雄たけびと同時に何か大きな存在が着地する。
その瞬間薄暗かった部屋は一気に明るくなり、あちこちにコボルトとその派生のMOBたちがリスポーンする。おそらくあれらがボスの取り巻きなのだろう。出てきているモンスターはすべてこの迷宮区で見たことがあるモンスターだ。
ディアベルとコボルトロードの剣が火花を散らすのを視界端に納めながら、俺たちのパーティーは広場のあちこちに散らばる取り巻きたちの対処に向かう。
「目の前の奴は俺とシアでやる、キリトとアスナは後ろの奴を頼む」
走りながら指示を飛ばす。事前に確認していたように俺とシア、キリトとアスナの二組に分かれてモンスターに対処する。
キリトとアスナが走るスピードを上げ目の前のコボルトをスルーして奥に走っていく、それを見ながらシアとアイコンタクト、走りながら目の前にいるコボルトを横なぎに切り裂く。
走っているそのまま俺もクボルトの横をすり抜け後ろに回ると背中側から複数の刺突音が聞こえてくる。シアのソードスキルの音だろう。
その音が鳴りやんだ後に俺もソードスキルを放つ、選んだの最近使えるようになったソードスキル『バックラッシュ』を放つ、から画を180度回転させ背面への水平斬り、これを走りながら使うとどうなるか、走っている体制はそのままにUターンができるのだ。
ソードスキルを使うとその後に体の硬直が起こるのだが、走りながらだと慣性があるのかなんなのか硬直が少なくなる。前にホーンベアーと戦った時に感じた違和感はこれだ。それを利用してポリゴンとなって消えてゆくコボルトの横を走り抜け、シアと二人で別のコボルト目掛けて最速で駆けて行く。
キリトとアスナの方も無事にモンスターを倒したようであちらも別のモンスターの方へ駆け出している。
今は2組で動いていて、特に不自由があるわけではないが今後何があるかわからない、あまり離れ過ぎないように気をつけなければ。
剣を振り下ろしあたりを確認する、ディアベルたちはいまだボスと戦闘中、少し離れた場所でアスナがソードスキルを放ちモンスターにとどめを刺している。俺たちがボスと戦い始めて何分が経っただろうか、時計などはさすがにないので正確な時間はわからないが、まだ30分はたっていないだろうか、あれから俺たちは合計で7体のモンスターを倒した。
今俺はハンマーを持ったコボルトと鍔迫り合いをしている。
相手が武器を使うモンスターで尚且つパワータイプではない時にたまにあることだ、この時の対処法は主に2つほかの仲間が横から攻撃するか、こちらが後ろに下がるか、だが今回おれがするのはそのどちらでもない、最近できると分かった3つ目の選択肢。
そうして俺がコボルトを力に任せて押し返そうとした時、大きな雄叫びと金属が地面に叩きつけられたような音が聞こえてきた。どうやらこの戦いもそろそろ終わりらしい。コボルトロードが持っていた武器を下ろし背中のやや歪曲した片刃の剣へとてを伸ばす。
それを受けてディアベルが集団から抜け出しソードスキルの構えを取った。ボスのモーションが変わる瞬間に飛び出し、硬直のあるソードスキルを使うというのは普通に考えれば非常識的な行動だがディアベルの事だ、何か考えがあるのだろう。
「ダメだ!!——全力で後ろに跳べ!」
その光景はスローモーションのように見えた。武器を入れ替えたコボルトロードは素早い動きで縦横無尽に動きだす、その動きにコボルトロードと早退していたすべてのプレイヤーが対応することができず何もできないままコボルトロードはディアベルを2度切りつけ吹き飛ばした。
キリトが吹き飛ばされたディアベルの方へ走っていく、ボス担当のパーティーは誰一人としてボスの新モーションに対処できない。ディアベルほどではないがすべてのプレイヤーが被弾を重ね、ほぼすべてのパーティーは半壊状態だ。俺たちのパーティーは取り巻きの対処以外にも遊撃的立ち位置にある。ひとまずは俺たちがフォローをしてやらなければ、俺も早く動かなければ。
正直このまますべてがうまくいくと思っていたわけではないが、さすがに一気に崩れすぎだろ。もっとほんの少しのアクシデント程度にしてくれよ。
キリトは気づいているようだが俺には何が起きたのか分から無い、わかることといえばコボルトロードの動きがデアベルたちにとって予想外で誰も反応できない程度には厄介だということぐらいだ。だがそんなことは見てれば誰でもわかる。
さすがにガイドブックには細かいモーションなんて書かれていなかったし、どう対処した物か。
「シア、こいつ任せた! アスナ——」
さっきまで鍔迫り合っていたコボルトを無理やりシアに押し付けながらアスナの方へ振り向くと、アスナはすでに走り出していた。その速度は俺の全速力よりも断然速い。
コボルトロードの方へ走りながらキリトとディアベルの方を見る、すでにディアベルの体は光の粒子となって崩れかけている。ディアベルはいい奴だ、初対面の俺たちにはじまりの町のクエストや第一層でできるいいコル稼ぎを教えてくれた。会ってからまだ一月しかたっていないとはいえ一緒に戦ったこともある戦友だ、さすがに悲しい。
ユートが走りながらキリトとディアベルを見ている間にアスナはすでにコボルトロードに切りかかっていた。まだユートが追いついていないのを確認し、ソードスキルは使わずに3連撃をコボルトロードの胸に叩き込む。走りながらも剣を構えたユートを尻目にアスナに向けてカタナを下ろそうとするコボルトロードに対し、今度はソードスキルを放つ。
コボルトロードに対してソードスキルを放ったアスナの横を通り過ぎ、アスナへの反撃として振り下ろされるカタナに対しこちらの剣の切っ先を下に向け剣の腹を盾にして防ぐ。上からくる衝撃で下がりそうな腕を気合で保持し完全に防ぎきる。
初撃は防ぎ切ったがコボルトロードの攻撃は止まらない、間髪入れずに放たれる袈裟斬りに対して、体をひねり全力の横斬りで迎え撃つ。
ガギィと金属のぶつかり合う鈍い音とともに何とか防ぐ、が今度は完全に受け止めきれず数歩たたらを踏む。体制を崩してしまったところに3撃目、もう一度振り下ろしがくる。さすがに今回は防げない。
アスナはコボルトロードの攻撃に押し負ける、シアは新しくポップしたモンスターと戦闘中でこちらには来れない。ここからどうにか避けれるか。
無理だ。俺の
今までにない速さで脳が働く。無理やり振り上げた剣で受ければどうかと考えてている時、ふと後ろから足音が聞こえた。こちらに向かって走ってくる足音、誰かはわからない。だけど俺は賭けることにした。
決めたのならば即行動、俺は回避や防御の一切を捨てる。姿勢を低く地面に背中から落ちようかといった体勢で後ろに跳びながら叫ぶ。
「スイッチ!」
姿勢低く後ろに跳ぶ俺の上を飛び越えるように、キリトがコボルトロードの前に飛び出した。
キリトの持つ黒い片手剣が、コボルトロードの振り下ろすカタナを横に弾く。キリトの攻撃はそれだけでは終わらない。剣を弾いた姿勢からすぐさま体制を整え、剣に緑の光を纏わせコボルトロードの腹に向けて左右からの二連撃を放つ。
キリトの後にはアスナが続く。素早くコボルトロードの懐に入ったところで桃色の光を纏った鋭いに連撃をコボルトロードの胸元に突き刺す。
コボルトロードの反撃が来るがそれをキリトは巧みにいなす。
1撃目
2撃目
3撃目
4撃目にソードスキルを使いコボルトロードのカタナを上に弾き、そこにすぐさまアスナがソードスキルによる突きを差し込む。
俺もすぐさま立ち上がり2人に加勢する、アスナに続き、ソードスキルではないがコボルトロードを斬りつける。
コボルトロードの攻撃を俺とキリトの二人係で防ぎ切り、隙を見せたところにアスナが鋭い突きを繰り出す。3人とも一言も言葉を発さない。それでも今の俺たちはお互いの考えていることが完璧に分かるように感じてた。
コボルトロードがまた攻撃してくる。が今回は通常とは違う、振りのモーションが変わりコボルトロードのカタナは赤黒い光を纏っている。コボルトロードのソードスキルだ。
それに対してこちらが選択するのも同じくソードスキル。俺はシステムアシストと共に体を前に押し出し、速く、力を込め剣をふるう。
『サイクロン』
コボルトロードと俺の横回斬りが交差しお互いに弾かれる。本当にできるか半信半疑だったがソードスキルはソードスキルで相殺できる。
弾かれたコボルトロードにアスナが追いつきソードスキルを放つ。今までにない速さで繰り出される腹筋から胸元にかけての複数の連撃、後ろから見ていたがすべては追いきれなかった。
アスナに振り下ろされるコボルトロードのカタナをキリトがソードスキルのより上に弾く、それに続き俺もソードスキルを叩き込み、さらに俺の後ろから出てきたアスナがまたもやソードスキルを放つ。これによりコボルトロードのHPバーはかなり削れた。
3人の連撃によってひるむこともなく、ソードスキルにより反撃がしようとするコボルトロードの顔に見覚えのある長槍が突き刺さりソードスキルがキャンセルされる。取り巻きのモンスターを相手していたシアが投げたものだ。
がら空きのコボルトロードに対してアスナと二人でソードスキルは放つ。左右から袈裟斬りと強力な一突きが刺さりコボルトロードのHPは残りわずかになる。
アスナと二人でキリトに向けて合図を送る。使い初めてまだ1月ほどしかないというのにもはや言い慣れた口になじむ言葉を。
「「スイッチ」」
キリトの放つソードスキルがコボルトロードを切り裂き、HPをゼロになり青白いポリゴンとなって空中で消えていくコボルトロードの背後に着地した。
「しゃあ!! ナイスキリト!」
空中にCongratulationsの文字が浮かび。ボスと戦っていたすべてのプレイヤーが歓声を上げる。それを確認すると疲れが着たのかその場にへたり込みたい衝動に駆られるが、それを無視して俺はキリトの方へ駆けて行く。今の気持ちを一言で表すことは出来ないだろう。
駆ける勢いもそのままにキリトとハイタッチをする。力を込め過ぎたかキリトが手を振っているが気にしない。
「勝ったな! さすがだよ、てかあそこでキリトが来てよかった~」
「間に会ってよかったよ、でもあれはさすがに博打がすぎないか?」
「それな、てかディアベルは大丈夫なのかよ」
俺がボスの攻撃によって吹っ飛んでいったディアベルの事を聞くとキリトは顔を伏せ首を振った。
「そうか……」
ボスと早退していたパーティー半壊、その中でも特に苛烈な攻撃を受けていたのがディアベルだった。コボルトロードの攻撃力から考えてまず助からないとは思っていたが、もしかしたら、運が良ければ、なんて思いもした。がどうやらこの電子の世界ではそんな都合のいいことは起こらないらしい。
気づけば光り輝いていた広場も元の石の冷たさが残る場所に戻っている。
そもそもなぜディアベルはあの場面であんなハイリスクな行動をしたのだろうか、ボスモンスターのモーションが変わるタイミングでソードスキルを使おうとしたのか、まあ真相は本人のみぞ知る、これ以上は邪推になってしまう。
アスナの近くに行き声を掛ける、そういえば戦闘中は気にならなかったがフードを脱いでいる。——何か心境の変化でもあったのだろうか。
「僕は蚊帳の外かな?」
そう口にしながら槍を拾ったシアが近づいてくる。
「いやいやナイス槍投げ、よくあそこでこっちに投げたな」
こちらに歩いてくるシアともハイタッチをしようと手を上げるとあちらも上げる、そうして手を振ろうとする瞬間、昨日も聞いた声が広間に響いた。
今作で使用するソードスキルは、アットウィキ 【SAO】アインクラッドでおっかなびっくり生きる【安価】https://w.atwiki.jp/livinginsao/pages/88.html を参考にしています。こんな面白そうなことをしている人がいるんですね。
めでたいことに、とうとうこの作品のお気に入り件数が11件になりました!
2桁になったと思ったら、さらに1件増えていてニヤニヤが止まりません。
そして、とうとうこの作品にも感想が書かれました、もう狂喜乱舞するしかないね。
このことで調子に乗らず今後も誠心誠意頑張ります。
最後に「コボルト」と「コボルド」どっちが正しいんですかね?
やっぱヒロインっていた方が花があるよね、でも思いつかないんだ。
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アルゴルート
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シノンルート
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シリカルート
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リーファルート
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ヒロインなし