でも東京も大阪も遠いな~
抽選当たるかも分からないしな~
2層攻略が始まり早3日、今日は攻略をお休みってことにして各自自由行動をすることになった。まあ攻略をお休みするといってもおそらくアスナはレベル上げにいそしむだろうしキリトはそれに付き合わされるだろう。せっかくの休みにしたのだからリフレッシュでもしてほしいのだけども。
その点シアは第2層主街区ウルバスでの食い倒れツアーをするらしい。この世界ではどれだけ食べても満足感があるだけで気持ち悪くなったりしないのでいくらでも食べれるのである意味、今一番この仮想世界を満喫しているのはシアなのかもしれない。現実では食が細い分、ここでは毎日がっつり食べてるし。
まあかく言う俺もアスナたちのことをとやかく言えない立場なわけだけども。
今俺は、アルゴと合流するためにウルバスの路地裏を歩いていた。なぜ表の大きな道ではなくこの日陰が包む道を選んだのか、別のこの道が目的地までの近道というわけではない。集合時間まではまだ時間があるので探検をしているというだけだ。
探検といってもそこまで大それたものではない、目的地を目指しつつきになる道へそれたり建物を眺めたり、小さな水路をたどったり、あっち行ったりこっち行ったりふらふらしているだけだ。現実でも普段歩いたことのない道を散歩するのは好きだったのだが、仮想世界のそれもなかなか楽しい。むしろ異国風情のある分こっちのほうが楽しいまであるだろう。
だがついあら捜しをしてしまうのが人間というもの、道の端に置いている花瓶のポリゴンの粗さ、側溝を流れる水の挙動、手抜きをしたのかそれとも何か事情があるのか、茅場という男は完璧主義の人間だと思っていたが実はそうでもないのかもしれない。
そうしてやっと目的地に近づき、路地裏から明るい表街道へと出ようとしたとき、この世界に来た初日のことを思い出す、あの後は確かシアと2人で目的地もわからないまま走ったんだっけか。せっかくだしたまにはアルゴと2人で圏外に出て何か活動してもいいかもしれない。
「……は?」
そんなことを考えながら、影が落ちた路地裏から日の光のさす道へ、足を踏み出そうとしていた時、俺の前をフードを被ったプレイヤーが走っていく、その様子は何かに追われているようで焦っていたのだが重要なのはそこではない、走り去っていったプレイヤーの被るフードには見覚えのある、そうアルゴが普段かぶっているものだった。してちらっとだけ見えたアルゴの頬にはなぜか、見慣れない髭のペイントが施されていた。
アルゴが今回の俺の目的地、アルゴとの集合地点にしていた、シアが言うにはおいしいイチゴタルトを出すカフェ、とは反対の方向へ走っていくのを目で追いかけた後、時間にして数秒も空けずに2人のプレイヤーが走っていく。
おそらくアルゴを追いかけているプレイヤーなのだろうが少し様子がおかしかった、頭全体を覆うスカーフにこの世界では珍しい和風チックな上着、裾が絞られたゆったり目のズボン、そして地下足袋。統一感がありそうで全然ないその出で立ちは奇妙でありながらも10人に聞けば10人全員が忍者と答えるだろうそんな格好だった。
「いや、追いかけないと——」
癖の強い、言葉を選ばなければ珍妙な格好をした3人に、一瞬気を取られたがアルゴが謎の二人組に追いかけられていることは事実、あのひげは気になるし、忍者はもっと気になるがまずは追いかけて追いつかなければ。
呆けたことで緩んだ気を引き締め、表が移動に飛び出し3人のことを追いかける。……のいいのだが全く追いつけない。前に聞いた話だとアルゴはアスナよりも
うん。追いつける道理がない。
どうにか見失うことはありませんようにと祈りながら追いかける。露天商の並び時折怒号飛び交う市場を抜け、鉄の打ち付けられる音の聞こえる職人街いを抜け、アルゴは時折同じところを回ったり、フェイントをして別の道に行ったり、さっきの探検の成果か先回りができたことで何とか視界の恥にとらえ続けることには成功している。
「あ、そっちは——」
そうしてしばらく走った後、アルゴが裏路地に消えていき、忍者の2人もそれに続き裏路地に消えていく。だがそこは確か行き止まりだったはずだ、ここまで追いかけていながらもいったい何が起きているのか把握できていないが、アルゴが何かされる前に追いつかなくては。
「さあ、観念して情報を吐くでござる」
実際に息が切れるわけではないが、ひいこらと走り、こんなステータスにした過去の自分を恨みながら裏路地の入り口いにたどり着くと、忍者の1人、同じ背格好で同じ服装なので区別はできないがまあ仮として忍者Åがつかみかからんとする勢いでアルゴに迫っていた。
「もう逃げれはしないでござるよ、さあ、早く情報をよこすでござる。もしこれ以上抵抗するのであれば手荒な真似もやぶさかではないでござるよ」
「さっきも言ったダロ、この情報だけは幾ら積まれても売らないんダ!」
「てめえら何してんだ!」
「「何奴!」
「っふ」
裏路地に入るのと同時に声をかけると、同じ格好の2人が全く同じタイミングで振り向き、つぶやく。その姿はまるで時代劇のように大げさで尚且つ、同じ格好で同じセリフを吐いたことがちょっとツボに入りかけるもなんとか息が漏れる程度に抑えれた。
「だからこんな裏路地に女の子追いつめて何をしてるんだって言ってるんだよ」
「ふん、関係ないのなら引っ込むでござる。拙者たちが用のあるのはこの情報屋だけ、痛い目を見たくなけれb——」
「しかしイスケ、確かに今の拙者たち絵面がヤバイでござる、さすがにやりすぎでは……」
「黙るでござるコタロー、絵面を気にしてRPなどできるか! ——あのスキルは拙者たちの悲願に欠かせぬ。それに情報屋を名乗っておきながら情報を売らぬあ奴が悪いのだ。……いやしかし確かに」
「か弱きおなご一人裏路地に追いつめてはさすがにヤバイでござる。ここはいったん引いて——」
「誰がか弱きおなごだっテ?」
何か口論を始めた二人を横目に近づくとアルゴも口論に混ざり始めた。
「そもそもおぬしが《エクストラスキル》のことを売らないのが悪いのでござる」
「だから何度もいいってるダロ、この情報は売らないんダ」
「売ってやればいいじゃん」
「ユートは黙ってロ」
「そもそも理由もなしに売らないと言われても納得できないでござる! なあコタロー!」
忍者A、会話からしてイスケの言葉に忍者Bこちらもおそらくコタローがうなずいている。なぜこんなことになったのか、会話内容からして忍者二人の求める情報をアルゴが出し渋っているようだが、なぜだろう。
「アルゴはなんで情報を売ってやらないんだ? こいつらの熱意なら桁増やしても買っていきそうだけど」
アスナの時のように個人の情報を売らないというのはわかるのだがイスケの話していた《エクストラクラス》。どんなものかは知らないが個人のプライバシーな内容とは関係ないような気もするが。なぜ売らないのだろうか。
「だから嫌なんダ、オイラは情報は買っても恨みは買いたくなイ」
「情報を売られただけで恨むと思われているなんて心外でござる」
ややショックを受けようなイスケの言葉にまたもや後ろでコタローが頷いている。あの服装は自分たちでコーディネートしたのだろうか。
「そもそもアルゴはなんで恨まれてると思ってんだよ」
「《エクストラスキル》習得にはクエストを受ける必要があル、けどそれが少し、いやかなりメンドウなんダ」
「そのくらい拙者たちは覚悟のうえでござる。悲願のためならたとえ火の中水の中」
「たとえ矢が降ろうとも拙者たちはアルゴ殿のことを恨まないでござる」
「本当なんだナ」
「「誓うでござる!」」
「せっかくなら俺にも売ってくれない? その《エクストラスキル》ってやつ。普通に気になる」
「う~ん、そうだナ。ユートには何度か情報集めを手伝ってもらっタし、しょうがないユートに免じて話してやル。でも苦情は受け付けなイ、文句があるならユートに言えよナ」
「「やった~!!」」
アルゴの言葉で忍者二人は先ほどまで続けていた忍者口調も忘れたのか純粋に喜んでいる。もちろん俺もうれしい。《エクストラスキル》響きだけでほれぼれする。あの忍者二人の悲願が何かは知らないがきっととてもいいものに違いない。どんなものなのだろうか。
「じゃあ忍者2人は1人5000コルだナ、ユートは特別に1000コルでいいヨ」
アルゴの言葉により、もはや飛び跳ねて喜ぶ忍者2人に水を差したのもまたアルゴの一言だった。
◇◇◇
「俺はいいから、ミアはさっさと逃げろ——」
「無理だよ! ルークをおいていけない!」
アインクラッド第3層、主街区から遠く離れたアインクラッド外壁近くの森の中で、男女2人のプレイヤーがトレントの集団に囲まれていた。その数はパッと見ただけでも7体はいるだろうか、だが森の中で視認性が悪いこと、そして木に擬態しているトレントもいることも考えると2桁ほどはいるだろう。
「俺が隙を作る、だから早く! ミアだけでも!」
両手に鈍色の槍を握った少年がソードスキルを使用してトレントを突き崩し、左隣にいる唯一の仲間へと叫ぶ。がソードスキル使用による硬直に反応したほかのトレントがその根を伸ばす。
「危ない!」
ガツン!!
だがその攻撃は片手剣と小盾を持った少女がその右手に括り付けた小盾で防ぐ。赤と白の二色に塗られた木製の小ぶりの盾だ。縁などの一部は金属で補強されている。だがその耐久性は心もとない。
現に、すでに何度も攻撃を受けたその小盾はところどころの塗装が剥げ、ベルトは緩んでいる。トレントの攻撃を受けるたびに金属と木材のきしむ音が響いてくる。おそらくあと数撃も受けれ壊れてばしまうだろう。
「ダメ、後ろからも来た! 私たち、もう囲まれてる……」
小盾の無事を確認した少女があたりを見回して絶望を口にする。
すでに何体もいたトレントに加え。戦闘音を感知したのだろう、先ほどまでは安全だったはずの背後からも新たなトレントが姿を現し、2人は完全に囲まれてしまったのだ。
なぜこのような事態になってしまったのか、実はこの2人に原因はない、槍使いのルークと片手剣使いのミア。2人は近くの町でとあるクエストを受注し、必要なアイテムのためトレントを数体討伐するためにこの森に訪れた。
昼過ぎというには少し遅い時間、そんな時間に森に到着した2人は特段、問題もなく規定数の素材を集め終え、暗くなる前に帰ろうとしたとき、2人の前をある1人のプレイヤーが駆け抜けていった。
くすんだ白髪に曲刀を腰に下げたプレイヤーだったのだが、そのプレイヤーの容姿は関係ない。問題はそのプレイヤーが何体ものモンスターを引き連れていたことだろう。
モンスタートレイン。マップのモンスター数十体を引き連れ、それを別のプレイヤーに擦り付ける行為。MMOなどのゲームでしばしば迷惑行為として周知されているものだ、そしてそれはゲーム内での死が現実での死と直結されるこの世界では迷惑行為などと生ぬるいものではなく殺人と同義のものだった。
だが2人は決して弱くはなかった。2人は両方とも元ベータテスターだったのだ。最初に引き連れられたトレント数体はすでにポリゴンとなり消失している。それでもなぜ現在劣勢なのか、それは2人とも把握できていない。
この森に何かトラップが貼ってあったのか、それともベータテスト時とトレントの仕様が変わったのか。どちらにせよ数を増やし続けるトレントの群れに対してリソースの限られる2人は次第に劣勢になり、現在は撤退を選ぶことすら不可能になっている。
「ごめん、俺のせいだ。俺のせいでミアまで元ベータテスターだってこと、バレたから……」
「どうせバレてた! それはもう許したんだから——」
この二人、第2層に到達するまではそれぞれ別のパーティーに所属していたのだが、ふとしたことでルークが元ベータテスターということがメンバーにバレてしまいパーティーを追放された、そして厳密には理由が少し違うのだが同時期にモアもパーティーを追放されている。
だが幸いにも2人はベータテストの時から知り合いであり、お互いに実力も確かだった。コンビを組むことで攻略には参加できているのだ。
バギッ
「まず——」
だがそれれもここまで、トレントの攻撃を受けたミアの小盾がとう派手な音と共に崩れ落ちポリゴンと化していく。
それにより吹き飛んだミアはそのHPバーをレッドになるまで減らし別のトレントの根本に転がる。
「ミア!」
別のトレントへ向けてソードスキルを放とうとしていたルークがそれを中止し反転するも、もう間に合わない。ルークがミアのもとに駆け付け庇うよりもトレントがその枝を根本に振り下ろすのが早いだろう。
ガツン
ルークが自分が不利になるのも承知の内で槍を投げようとしたとき、トレントが横一線に切り裂かれ、上下に分かれたその体はポリゴンとなって消えていく。
それだけではない、今まさに背後からルークに振り下ろされようとしていた枝を黒いコートを着たプレイヤーが切り裂く。槍を持つプレイヤーと細剣を握ったプレイヤーが別のトレントに連続突きを放っている。
「あっぶね~生きてっか? てかなんでこんなモンスター多いんだよ」
切り裂かれたトレントだったポリゴンの中から現れたのは全身に金属鎧をまとった両手剣使いだった。
元々書いていた話に大幅な修正を入れて、それにプラスしてこの話を追加していたらめっちゃ遅くなりました。
それとここからオリキャラを増やしていこうかなと思います。