アインクラッドの英雄   作:夕方の月

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本来なら17話程度でもう74層まで行ってる予定だったのに……
ドンドン文章量が増えていく、書きたい話が増えていく。


17 ディエルと色々

 モーションは見えなかった、とっさに顔を左に傾けると鋭い何かが耳をかすめる。おそらく何か投げてきたのだろう。アルゴのビルド的にはピックかナイフだろう。そこまで大きくなかったしピックかな?

 

 現在この世界で確認されている遠距離攻撃は投剣スキルと武器の投擲だけだ。正確には武器の投擲はスキルでもなんでもなく、うまくやれば敵のモーションをキャンセルするぐらいには使えるが攻撃力はないに等しい。

 

 さらにはメイン武器を手放さなければならないので攻撃手段に含むのは論外、よって現在ソードアート・オンラインに存在する遠距離攻撃手段は投剣だけになる。

 

 一言で投剣といっても使える武器は様々だ、ピックと言われる針状のものから投げナイフ、珍しいものだったらチャクラムなんかも投剣スキルの対象内だ。それこそ知り合いの鍛冶師がトマホーク作ってた。

 

 いろいろと言ったが実際に投剣スキルを使うプレイヤーはかなり珍しい。なぜなら自分のメイン武器に加え、投げる武器、それもほとんどの場合使い捨てになる武器を携帯する必要がある。

 

 たとえ重量制限に余裕があるとしても、投げナイフやらピックやらをじゃらじゃらと持っていくのは少しめんどくさいし、補充するのに必要になるコルも馬鹿にならない。

 

 このような理由で投剣スキルは使用者か極端に少なく、そもそも死を避けなければならない都合上、他のゲームと比べてもPVPがあまり行われていないこの世界では、その対策もあまり考えられていない。

 

 今回反応できたのは単にこの前キリトに同じようなことをされたからなならない。

 

 その時も今回と同じように、先に相手に1撃を当てた方が勝ちというルールで戦ったのだか、開始早々キリトの投げたピックに反応しきれず肩に当たって、それが一撃判定で負けた。なんとも情けない。シアなんて爆笑してた。

 

 今回も別に対策があったわけではなく、知っていたから反応できたと言うだけで、もしこれが胴体を狙った攻撃なら今回も避けきれなかっただろう。

 

「あっぶねえな」

 

「なんダ、よけちゃったカ」

 

 避けた瞬間全力で走りだし、アルゴの方に前進しながらも緩く両手剣を握る。やや大ぶりに横薙ぎに、反時計回りに振るうがこれはアルゴの右手に握られた短剣で、上に逸されてしまう。

 

 火花も出ないような軽い接触と共に晒されたが、両手に目一杯の力をこめて固定、さらに一歩踏み出しながら今度は時計回りにアルゴの足元に向けて振るう。

 

「てか、ナックルはどうしたんだよ、せっかくクエスト手伝ったのに」

 

「今も使ってル、でも対人はこっちの方が便利なんダ」

 

 声を掛けたら多少の隙ができるかと思ったが、まるで縄跳びをしているように剣の上を軽くジャンプしながら躱わされる。

 

「それよりもユートはその剣、そろそろ新調しなきゃだロ」

 

 着地だ同時に身を屈め、いつな間にか逆手に持っていた短剣で切り上げてくる。

 

「それな、今でもギリギリなのにこのままじゃアスナのレイピアよりも攻撃力が低くなっちまう。——この層の攻略が終わったらインゴットにでもしようか、な」

 

 アルゴの短剣を無理やり引き戻した剣の鍔で受け止めて、ガラ空きになった腹に向けて前蹴りを突き刺す。アルゴは派手に後退したが、妙に軽い

 

「当てがないなら紹介してやろうカ、もちろん有料デ」

 

「当てならあるよ、ほらアルゴも会ったことある、あの妙に短い両手槍作った人」

 

 ディエルが終わっていないことを,考えると上手く透かされたか。当たる前に後ろに飛んだな。

 

 一撃当たれば勝ちのルールとはいえ、その一撃は確実に当てなければならない。武器や盾で防がれたり、掠った程度の攻撃ではシステムが一撃だと認めてくれない、そしておそらく今回もそれだ。

 

 空中で一回転して着地したアルゴは低い姿勢のままこちらを伺ってきている。俺もアルゴがいつ突っ込んできてもいいように気を配りながら剣を下段に構える。

 

 このまま小さなぶつかり合いが続けば対応力の差、具体的にいえば武器の取り回しの良さ、によってどこかで必ず隙を晒してしまうだろう。ならば、短期決戦あるのみ。

 

 そして確実に攻撃を当てるには、カウンターだろう。

 

 たった一拍にも満たない一瞬で、アルゴが身を低くした瞬間、こちらに突貫してくる。決めるならここだ。

 

 剣を持ち上げ、大上段から振り下ろす。躊躇なんてない。振り下ろされた剣をアルゴはしっかりと目で追っている。

 

 紙一重、そんなギリギリでアルゴが身を捻り剣を躱わす。それにより体勢が少し崩れるが、アルゴにとってこの程度、俺に一撃を入れるのに何も問題はないだろう。

 

 アルゴの手が伸び、その右手に握った短剣を下から突き上げてくる。

 

「よしきた!」

 

 アルゴの手が伸びたのを確認すると、即座に両手を剣から離し左の拳をギュッと握る。そのまま体重を移動して左フックの構えをとると、体が若干軽くなり、システムアシストを全身で感じながらもさらに左の拳を押し込む。

 

 理想的なとは言い難いが十分だろう、普通に戦っていただけならアルゴはここまで隙のようなものを見せない、俺が隙を晒して誘ったからこそアルゴは無理な体勢でも攻撃をしてきたのだ。

 ただ実際、本当にアルゴが俺の誘いに騙されたとは思わない。そもそもベータテスターだったアルゴの方が、この世界でのPVPの経験があるだろうし、こんな簡単な誘いに騙されるような人間じゃないのは少し関わっているとわかる。

 

 なのにこうしているのにはおそらくアルゴなりに勝算があるか、それとも俺と同じ様に今ここで決めるために博打を打ったのか。

 

 互いの腕が交差する、互いの体はすでにシステムアシストにより現実ではありえないような加速をし、それは生半可なプレイヤーが放つソードスキルよりも速かった。

 

 2つのソードスキルは一瞬にして相手の体を傷つけポリゴンの血しぶきを発生させる。

 

「思ったんだけど、普通に俺ら相性悪くね」

 

 先ほど刺されたはずの顎を手でさすりながら、頭上に浮かぶ「WINNER」の文字を眺める。その文字の下には俺とアルゴ、2人のハンドルネームが並び、俺の方は灰色に、アルゴの方は光っていた。

 

「ニャハハ、言い訳はなしだロ」

 

「いやまあ、そうなんだけどさ。てか普通首狙うか? 殺しに来てただろ」

 

 この世界、モンスターによっては攻撃すると確定でクリティカルになる場所がある。わかりやすいのはボスモンスター、それ以外でも目とか首とか頭とか。そしてそれはプレイヤーにも適応される。

 

 首への攻撃は何とか逸らしたが、顎に突き刺さったアルゴの短剣は俺のHPの大体4分の1近くを削っていた。もし首にあったっていたら確実に、俺のHPバーは黄色になっていただろう。

 

「それならユートだっテ、こんな幼気(いたいけ)な女の子の顔を殴ろうとしてたじゃないカ」

 

「お前、自分で幼気(いたいけ)とかいうタチかよ」

 

「これでもオイラはちゃんとオンナノコなのにナ〜、オイラ傷ついちゃったナ〜」

 

 アルゴが自らの体を両の手で抱きしめ、くねくねしながら適当なことを言う。言葉とは裏腹にその声色は普段彼女が誰かを揶揄う(からかう)時のような、声色が少し高くなりどこか楽しさすら感じられる言葉だった。

 

「へいへい、そういうのいいから」

 

「なんだヨ、つれないなァ」

 

「ま、俺ができる範囲なら何でもするってのは嘘じゃない。精々とびっきりのを考えとけよ」

 

「やっぱユートは太っ腹だナ~」

 

 そんなことを言いながら、アルゴはにゃはにゃはと笑っている。普段の成熟とした女性然とした、あくまで本人の言ではあるが。それとは真逆のまだ幼さを感じるような、それこそ友達と遊んでいる子供のような可愛げがある。

 

 それにつられて一緒に笑ったり、さっきの戦いの感想戦なんかをしていると。耳に独特な通知音が響いてくる。それはチャットに通知が来た時の通知音を変更した、俺独自のものなのだが最近はちょっと飽きてきて、変えようかな。なんて思っていた音だ。

 

「ごめんアルゴ、もうちょっと付き合ってもらうことになった」 

 

kirito

緊急 ダンジョンの中でレッドプレイヤーと遭遇した。戦闘にはなってない。アスナが会話を聞いたらしくてそのことで話がある。もしアルゴも居るなら連れてきてくれ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「いいとこで寝てんじゃん。隣、良いか?」

 

 さっきまで入っていた風呂のすぐ近く、小高い丘の上でキリトは両手を枕に横になっていた。斜面いっぱいに生えた草原は背が低く、風が通るたび波のように揺れている。

 

「ああ、もちろん。今日は天気も良いし昨日のことがなかったらここで一日ゆっくりしていたいよ。——そういえばシアは?」

 

「あいつはもうちょっとゆっくり……、まあ今日は1日中あそこだろうな。キリトも別にゆっくりしてもいいと思うけど」

 

 シアの自由さに笑いながらキリトの隣に腰掛ける。遮るものが何もない丘の上だからか、暖かい風がほほを根でそれに目を細める。確かに今日はいい日かもしれない。

 

「そうはいかないさ。いまあの情報を知っているのは俺たちだけ、俺たちで何とかしなきゃ」

 

 そういいながらキリトは起き上がり、まじめな顔になる。昨日の夜、アルゴを連れてキリトが借りている部屋に言った後。アスナに聞かされたのはとんでもない情報だった。

 

『ALSの主力はカウントダウンパーティーをバックレて単独での迷宮区突破を狙う』

 

 キリトとアルゴにそんなことが可能なのかを聞いてみると2人そろって可能だといった。普段俺たちは安全マージンを取ってボス戦に挑んでいる。それは数レベル程度の小さなものではなく。レベルだけスキルレベルだけでみると数層先でも通用する。そんな莫大なマージンを取って、尚且つフルレイドでボス戦に挑んでいる。

 

 そしてベータテストにおいて。もちろんベータテスト時もボス戦にフルレイドで挑むのが常識と考えられていたが、な数パーティーで突破した層があるそうだ。それも1層や2層という話ではなく何層も。それこそ終盤は前線にいるプレイヤーも少なくフルレイドはなかったらしい。

 

 これらの情報に元図いてキリトとアルゴの二人の元ベータテスターは、ALOの主力である3パーティーで第5層迷宮区を攻略化のであるという結論を出した。

 

 ではなぜALSはそんな博打をするのか? 攻略できる可能性は低いどかろかむしろ高いとはいえフルレイドで挑むよりも危険なのは変わりない。それにもし攻略ができたとしても、合同イベントをすっぽかされた、しかもフロアボスの報酬を独占されたDKBは黙ってないだろう。確実に関係の悪化が予想される。

 

 そうまでしてこのような行動を起こす。もちろん組織内にまぎれたレッドプレイヤーの誘導もあるのだろうが、あのキバオウがそれだけで首を振るとは思えない。

 

 その疑問に答えを出したのも元ベータテスターの二人だった。アルゴが言うには5層ボス、……名前なんだったっけ? ——まあボスのゴーレムが落とすアイテムの中には1つレア武器があるらしい。そして詳しくは知らないそうだがベータテストの時、その武器をめぐってギルド同士で大きな争いが起きたらしい。

 

 そして武器の詳細はキリトが知っていた。《ギルドフラッグ》 武器種はロングスピアだがその攻撃力は最低。そして持ち主が行動できなくなるが、一定範囲内にいる同じギルドのメンバーにバフをかけることができる。そしてぢルドフラックに登録できるギルドは1つのみ、変更はできない。

 

「一応、アルゴが調べる予定だけど。キリトはどうすんだ?」

 

「俺は合同イベントの責任者に会いに行こうと思う」

 

「連絡は取ってんの?」

 

「ああ、それに思い切ってキバオウにも連絡してる」

 

「なかなかに思い切ったな」

 

「ユートも来ないか? アスナも誘うつもりなんだ」

 

「いや、悪いが俺は別の用事があるんだ、キバオウのとこへは2人で行ってくれ」

 

 手をふってキリトの提案に理を入れる。正直ついて言ってやりたい気持ちもあるがそれとこれは話が別だ。うまくいけば必要ないかもしれないが、やっておきたいことがある。それに今日はアルゴの手伝いをすると約束したしな。

 

「ま、キバオウならキリトのことを無碍にはしないだろうし頑張れ。それとPKには気を付けろよ」

 

「それならユートだって、それこそ昨日はアルゴに負けたんだろ」

 

「ぎりぎりでな、そもそも武器もビルドも相性悪いんだから接戦になってるだけいいだろ」

 

「でもこのまえは俺に瞬殺された——」

 

「あれは違うだろ」

 

 キリトに反論しながらも少し前のキリト同様寝転がり青い空を見上げる。初見殺しに引っかかった俺が悪いとはいえさすがにあれをほかのディエルと同列に扱われたらたまったもんじゃない。

 

 まじめな話はいったん終了だ。

 

「てかさ、なんで女子の風呂ってなんで長いんだろうな」

 

「さあ、まあ髪の手入れとかいろいろあるんじゃないかな」

 

「さすが妹持ちは言うことがちがうねえ。でもこの世界(仮想世界)でそんなのはないだろ」

 

「まあ、もしかしらそれに準ずる何かがあるのかも」

 

「それにしても遅すぎるだろ、——もしかしたら中でチャンバラでもしてたりしてな」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 受けていたクエストがちょうど終わり、アルゴと2人で昼食を食べている途中メッセージの通知音が入る。通知は2件、キリトからは俺たちでALSよりも先にフロアボスを討伐する。信用できる人がいたら誘ってくれという旨の内容だった。

 

「食事中のコンソール操作はマナーが悪いゾ」

 

「ああ、すまんすまん。すぐやめる」

 

 そして2件目を開いたときに思わず笑みがこぼれた。

 

 

kibaou

お前んとこの2人が来た、こんな忙しい時期にいきなり呼び出すとかどないなっとんや。お前も年末に変なまねはすんなよ。




ちょっとだけ筆が乗りました。内心無理だと思いつつもこんなペースで執筆をつづけたい。

「Echoes of Aincrad」の試写会

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