アインクラッドの英雄   作:夕方の月

2 / 22
2 剣の世界

 頭全体をすっぽりと包む、ややずんぐりむっくりとしたフルフェイスヘルメットのような黒い機器「ナーヴギア」を被って、ベットで横になる。そう俺は抽選確立という勝負で当選という勝利をし、ソードアートオンラインというトロフィーを手にしたのだ。それに当選したのは俺だけではない、蒼もまた当選した。俺たちの大勝利だ。

 

 当選のうれしさからか何かテンションがおかしくなっているような気がするがそれは気にしない。ナーヴギアの側面にあるボタンを押すと耳もとにあるからかいくつかの機械音とうるさいファンの音が聞こえてくる、そのままいくつかのゲームの中からソードアートオンラインを選択する。……ああ、そういえばこう言わないといけないんだったな。

 

 「リンクスタート」と、

 

 

 

 

 

 視界いっぱいに光を感じ、気づけば俺は中世風の町に立っていた、あたりを見回せば広場になっていて、俺と同じようにあたりをきょろきょろと見まわしている漫画やアニメに出てくる冒険者風の男女が大勢いた、大きく違う箇所は武器くらいか。自分の服装を見てみると周りの人々と大して変わらないような服装で、違う要素は背中に大剣を背負っていることくらいだろう。

 

 普段の服装やそもそも現実の体格よりも細く作ったはずなのに違和感は少なくて、さわって見るとちゃんと布を触っている感触と服越しに触られているのを感じて、完全なVRというものへの感動とそれを体験できているといううれしさで胸がいっぱいなる。…たしか蒼は噴水で集合って言ってたし噴水の縁にでも座ってコンソールやらUI類でもいじりながらゆっくりしようかな。

 

 少しの間噴水の前でジャンプしたり伸びをしてみたり暇をつぶしているとしていると槍を背負った水色髪の女性アバターのプレイヤーがこちらに歩いて来る。

 

 「ごめんログインに手間取った、結構まってた?」

 

 水色髪の女、いや蒼はこ知らに歩きながらも軽く手をあげて謝罪をしてくる。その声は普段俺が知る蒼の声と同じで普通なら女の見た目に男の声とおかしなことになりそうなのだが、もともとの声が高いおかげがハスキーな声の女性として通じるような声だった。

 

 「いやあんまり、てかおまえVRでもネカマすんのかよ………」

 

 「いやだってせっかくなら可愛い女の子でいたいじゃん」

 

 蒼のアバターをまじまじと観察してみると全体的にキレイ系の見た目に整えられていて、アバター作成時に最初からあるテンプレートのどれとも似ていないことからかなり凝って作ったというのを感じ取れる。もともと蒼本人はキレイ系よりも可愛い系の方か好みだと思ってたからキレイ系に整えられたアバターは結構意外だった。

 

 「それじゃさっそく外行こうぜ」

 

 「え〜せっかくだし街見てから行かない?」

 

 「じゃあそこらへんウロチョロしながら西門でも目指ししてみるか」

 

 「なんで西門?なんかあるの?」

 

 「特に理由はないよ、しいていうと慣れてそうな人はみんな西に行ってたってだけ」

 

 蒼を待っていた間、べつに数10分も待ったというわけではないがそれでも人の流れを観察するのには十分な時間があった。ざっと見た感じこの広場には、あたりをきょろきょろ見てどこに行こうか悩みながら移動していくプレイヤー、俺と同じように誰かと待ち合わせをしているプレイヤー、そしてまるで最初から知っているように迷いなく動くプレイヤー、の3種類のプレイヤーがいて最後の一つはベータテスターだろう。そして推定ベータテスターの多くは西にいったという感じだ。

 

 「え~じゃあ東に行こうよ~」

 

 「逆張りかよ、まあいっか」

 

 蒼はこういう時よく逆張りをする、まあゲームなんだからいいも悪いもないんだが。こういった時にどうするかというのは人によると思うのだが、俺は蒼のこういうところ実は結構気に入っている。ってことで俺たち二人は広場の東に続く道に歩きだしたのだった。

 

 はじまりの町とはよくいった門で割と変わり種のないオーソドックスな街並みなのだと思う。道は基本的にレンガのような長方形のブロックが敷き詰められており端の方へ側溝だろう低いくぼみができている。道の脇には露店だろうテントが軒を連ねておりにぎやかな様相を呈していた。露店一つ一つにも特色があり、夏祭りで見るような軽食を売る店もあれば、服やアクセサリーを売る店、たこ焼きのようなものを売る店に遭遇したときは思はず買ってしまった。

 

 ただ俺たちが一番驚いたのはこのタコの入っておらずやけにもそもそしたたこ焼きもどきなどではなく、買い物をする客だった。多くの露店が出ているがそれと比例するように露店で買い物をする客も多い。そしてその客のほとんどは買い物をしながらも店主と楽しげに会話していた。その様子はまるで現実の市場での光景だった。 

 

 露店で買い物をする客の服装は今俺たちが着ていて、そして今ほとんどのプレイヤーのアバターが着ているだろう初期装備のシャツではなく多種多様。腰や背中には武器を下げていない、そしてこちらから話しかけても定型文しか返ってこない。この楽し気に買い物をしている人たとはプレイヤーではなくノンプレイヤーキャラクターすなわちNPCだった。これだけNPCがいるのだから何かのイベントなのかといろいろなNPCに話しかけてみるが特にそのような手掛かりはなくこのキャラクターたちはただ町の雰囲気づくりのためにこんなにいるのだという事実に俺たちは圧倒された。

 

 市場のような場所を通り過ぎると今度は落ち着いた町が顔を出してくる、俺たちはまるで観光客やお上りさんといったような雰囲気できょろきょろとあたりを見回しては新しい発見を積み重ねていく。街並みは現代の日本とも、去年大学の実習でいったイギリスとも全く違うような、普段俺たちが想像するような中世チックな、それでいて実際の中世ヨーロッパとは違うファンタジーとしか言えないような景観で、俺たちはそれに夢中になっていた。やがてその足は大通りからやや入り組んだ細道といったような場所に向かっていくがそこでも開いている店がたまにあ、りそして現実とは少し違った非日常がたくさんあった。歩きながら向かいの家の屋根の上、そこでくつろいでいる黒猫を目で追っていると蒼が話しかけてくる。

 

 「ここにも店あるよ……確かこれで5件目じゃない?」

 

 「数えてたんだ、確かにそごいよな、毎回内装も売り物も違ったし」

 

 町を少し歩くだけでいろんな店と遭遇する、食べ物の店だったり、雑貨屋だったり、家具を売る店なんかもあった、そのどれもがまるで現実の店のように細かくできていてそれらのおかげでこの町は生きているような本当に人々が暮らしている街を散策しているような感覚をより一層俺たちに与えていた。

 

 「そういえば俺たちが集合した場所の近くに黒いドームがあったじゃん」

 

 「え、そんなんあったけ?」

 

 「あったよ、ほらちゃんと見ろ地図にも書かれてる」

 

 さっき町の案内板の横を通り過ぎた時、ご自由にどうぞという看板と一緒に置いてあった手持ちの地図を広げて町の中心『国鉄宮』と書かれた建物を指さして見せる。

 

 「この建物なんだけどさ、絶対なんかあると思うんだよね」

 

 「なんかって、なに?」

 

 「隠しダンジョンとかありそうじゃない」

 

 「あるかな~、…ただの置物なんじゃないの?」

 

 「いやいや絶対なんかあるね、……まあ根拠はないだけどね」

 

 そうしてやいのやいのと町の感想を蒼と話し合いながら歩いていくと建物に囲まれた細道の終わりが見えてくる。細道と大通りの境目を超えた瞬間一気に視界が明るくなったように錯覚してしまうほど視界は開けた。どうやらもう町の端のほうまで歩いてきていたらしく左の方、かなり遠くの方に国鉄宮の黒いドームが見えた。右手を見るとすぐ近くに町の外に出れる大きな門がすぐ近くにあって、ちょうどいいやと俺たちは意気揚揚と町の外に繰り出していった。

 

 町の外では猪のモンスター確か名前はフレンジーボア、と戦うプレイヤーが何人もいた、その中の数人はソードスキルを使ってすぐに処理していて、その姿はどちらかといえば始めたてというよりも昔していたゲームの操作方法を思い出しているように見えた。とはいえそのようなプレイヤーはごく一部のようでほとんどのプレイヤーはソードスキルを思うように使えずに苦戦しているようだ、どうやらソードスキルを使いこなすのはかなり難しいのかもしれない。

 

 「ソードスキルだけ試していく?」

 

 「いや別に大丈夫でしょ、どうせ道中で戦うことになるだろうし」

 

 「やっぱり先に試してみたくて」

 

 少し移動すればフレンジーボアはすぐに見つかった、剣を中段に構えながら近づくと相手もこちらを認識したようで前脚を搔き、牙を突き出し威嚇してきた。威嚇にビビらずに剣を下段に構え直し、警戒しながらもゆっくりと近づいていく。

 

 お互いの距離が目測で大体4.5メートルほどに近づいた時、フレンジーボアが頭を下げ突進してきた。ただ思ったよりも早くはなかった、やはり最初の町のすぐそばにいるモンスターだからだろうか、猪の突進にしては初速はなく迫力もかけていた。

 

 思っていたよりも迫力のない突進に拍子抜けしながらも左によけながらすれ違いざまの横腹めがけて剣を払う、が思ったよりもダメージが少ないフレンジーボアのHPは2割削れたくらいだろうか。

 

 「やっぱ普通に攻撃したもあんまダメージでないな」

 

 「普通最初はこんなもんじゃない?……もしくはその剣がしょぼいとか?」

 

 少し離れた場所でこちらを観察する蒼と会話しながら今度は剣を上段に構える。フレンジーボアは腹を切られた後も減速せずに3メートルほど走っていき急停止、こちらに旋回すると前脚を掻き始めた。おそらくこれは突進の予備動作なのだろう。さすが最初に接敵したモンスター分かり易くてありがたい。

 

 「初期武器だしな~いやでも初期武器でも普通3割ぐらいは言ってもいいんじゃない?」

 

 前掻きをやめ突進をしてくるフレンジーボアに対して今度は正面から、今度は構えを意識して剣を振り下ろそうとする、すると剣が光り体が勝手に動き突進してくるフレンジーボアを頭から真っ二つにした。初めて使うのであってるかはわからないが多分大剣のソードスキル『コラプス』だと思う。大剣で頭から切られたフレンジーボアはポリゴンになってきえていった。

 

 「ビビった~これソードスキル使うと体が動かんくなるわ、……ダメージデカいけどなれんない内に使いまくったら被弾増えると思う」

 

 「え~結構むずい感じ?」

 

 「いや多分判定自体は結構緩いと思う。タイミングが結構大事になるのかも」

 

 「タイミングって…さっきのもうまくやれてたとも生んだけどな……あ、次は僕だから」

 

 そんなこんなで二人合わせて5体倒して体が勝手の動く以上に大事になりそうなソードスキルの弱点を見つけた。ソードスキルを使った後には硬直がある、具体的にどのくらいかはまだわからないけれどこれからはパーティー内でこの硬直をどうにかカバーしていかないといけないのかもな。あ、そういえば町でしようと思ってて忘れてたことがあった。

 

 「すまん忘れてた、パーティーになってなかったな」

 

 「あ、このゲームにもそうゆうのあるんだ」

 

 「いや普通あるでしょ」

 

 そんな会話を続けながら蒼にパーティー申請をするとすぐに視界の端にCiaの文字とHPバーが付く。

 

 「いつもどうりCiaなんだ、……じゃ、これからはシアって呼ぶようにするよ」

 

 「優斗だっていつも名前そのまんまじゃんYu_toって」

 

 痛いところをつかれてしまった。毎回独自の名前を付けようとも思うんだが俺はネーミングセンスがあんまり内容で毎回この名前に落ち着いてしまっている。小学生のころからの悪い癖みたいなものだ。

 

 「そういえばユートは次の目的地って知ってんの」

 

 「いや知らん、名前すらも知らんしあるかもわからん。たぶん最初の町でクエストとか受けると分かるんじゃない?」

 

 「フラグとか大丈夫なん?」

 

 「まあ大丈夫でしょ、知らんけど」

 

 そうして俺たちは道沿いを歩き始めた……はいいもののモンスターとちょくちょくエンカウントするのが面倒になって、2人して走り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 道沿いに走っていく、たまに正面や横の茂みから跳び出してくるオオカミのようなモンスターがいるもののシアもいるおかげか走りながらでも処理ができる。武器を買い替えたおかげかソードスキルの倍率が高いのか苦戦はしなかった。

 

 そのせいか案外暇で、時折会話をしたりする。大学の講義の事だったり、課題やレポートの事だったり、走りながらでもいつもの調子で会話ができる。さすがにフルダイブでも息切れなどは再現できなかったのかどれだけは走り続けても息が切れない。そもそも走っているのになんだか暇だと思ってしまうのこれのせいだ。実際に自分は走っているのにまったく疲れないのは違和感に感じる。普段俺たちが画面の向こうから操作しているキャラクターもこんな感じなのかもしれないな。

 

 「ほんとにこの道で会ってんの?結構移動したとおもうけど」

 

 「いやしらんよ、でも道は続いてるしきっとどこかにつながってるでしょ」

 

 本当に何もない、もう少ししたらこの世界の外壁についてしまいそうだ。

 

 「やっぱ逆張りがよくなかったんだって……」

 

 そんなこんなで30分ほどモンスターを倒しながら道沿いを走っているが一向に町は見えないし看板すらない、ぽつぽつモンスターがいる以外何もないそんな面白みもない行軍に飽きてきてちょと休憩しようと大きな岩のそばで立ち止まり、シアに話しかけようと振り返った瞬間、突如リンゴーン、リンゴーンという鐘の音が鳴り響いた。

 

 鐘の音を聞いて俺たちはすぐにあたりを見渡すがやはり何もない、ボス接敵したわけでもイベントのフラグを踏んだわけでもないようだ、隣にいるシアと目を合わす。

 

 「おいユート、サービス開始日ってイベントあったっけ?」

 

 「告知はきてなかったしサプライズでなにかあったりするのかも?」

 

 俺たちはのんきなもんでどんなことが起きるのだろうとわくわくしていた、お互いの体がブルーの光の柱に包まれてても。




誤字脱字めっちゃ怖い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。