アインクラッドの英雄   作:夕方の月

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投稿遅れて本当に申し訳ない。1月いっぱいはこんな感じかもです。

1/21 抜けていたセリフを追加しました


6 討伐クエスト

 「これとかどうよ、結構似合ってるんじゃない」

 

 昼飯を食べた後、クエストまで時間があるので装備の新調をしようと俺たちはNPCメイドの装備屋に着ていた。町の中心にあるシンメトリーな建物に武器屋と防具屋、両方の看板が屋根からぶら下がっており、右の扉から入れば武器屋、左の扉から入れば防具屋と面白い場所だ。

 

 「そうだね、似合う云々はともかく、追ってたより安いし僕もそれにしようかな」

 

 今俺が試着しているのは、《ボアの皮鎧》という、この店で一番防御力の高い装備だ。見た目はシンプルな茶色い鎧だ。実際に皮鎧を見たことがないのでリアルかどうかはわからないがかなりディティールが良いと思う。装備を新調するうえで多少の出費は覚悟してきたが、思ったよりも安く済んで万々歳だ。

 

 性能面で言えば初期装備から防御力が1.5倍近く伸び、装備条件に多少のSTRとVITを必要とするがシアはともかく俺は全く問題ない。シアはVITがギリギリのようだが装備することに問題はない。それにレベルが上がれば解決するだろう。

 

 防具が飾っているマネキンの前に浮かぶコンソールを操作し防具の代金を払う。さすがに仮想世界で防具を買う体験はしたことがなかったのでちょっとドキドキした。そのままメニューの装備画面からワンボタンで着替える。

 

 着替えや買い物に関しては現実よりも仮想世界の方が幾分か楽だな。

 

 「なあ、このアクセサリーATK上昇だってよ、強くね」

 

 「は、鎧よりも高いじゃん、そんな金ないよ」

 

 シアはアクセサリの値段を確認すると興味が落胆したような顔になり、別のアクセサリーに目を移した。

 

 「へそくりとかないの」

 

 「あるわけないだろ、まだ2日目だぞ」

 

 いい感じの効果をもった装備を尻目に武器屋から出れば時刻は大体2時半、まだクエストの標的が出現するまではかなり時間がある。

 

 まだ2日目、そこまで焦らなくてもいいとは思うがどうにも気が逸ってしまう。そもそも現実のようにスマホやゲーム機器があるわけでもないので時間を潰す方法も限られてくる。そういえばこの世界はゲームだった。

 

 「ま、ひとまず夕方までレベル上げでもしとくかな」

 

 「そうなんだ、がんばってな」

 

 「え、シア来ねえの?」

 

 「嘘だよ、さすがにユート一人でいかさないって、ていうか先にクエストの目的地、下見しに行かない?」

 

 いったんクエストの目的地、ホーンウルフがポップする箇所を確認して、その後は町の近くをぐるぐるとさまよいながらモンスターと戦った。昨日の行軍中にレベルが上がったのもあって、2人いれば基本苦戦はしない。レベル以外に昨日よりもこの世界の使用にある程度慣れたってのもあるだろう。

 

 「スイッチってなんでスイッチって名前なんだろうな」

 

 「さあ」

 

 そうして俺たちのレベルはさらに1上がり、シアは余裕をもって装備を装着できるようになり、俺の火力はさらに上がり、夜を迎えることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 空はもう暗くなり始めるような頃合いに俺たちは目的地である北の麦畑に到着した。ちなみにここ以外にもいくつかポイントがあるんだがここに来たのには理由がある。

 

 クエストでモンスターが出現する箇所は、村の北の麦畑、西の風車、東の麦畑の3か所だ。その中でも俺たちの標的は北の麦畑にポップするホーンウルフだ。ちなみにほかの二か所ではこのクエストで指定されるモンスターはホーンラビットとホワイトエルクが出てくるらしい。

 

 実はこのクエストの面白い所はここにある。3種類のモンスターがいるが実際に討伐しなければならないのはどれか1つでいいってことだ。そして倒したモンスターによって報酬は変わる。これを昨日知ったときはなかなかユニークで面白いクエストだとおもったよ。ただ残念ながら3種類すべてを討伐して報酬総取りなんてことは出来ない、そこがすこし残念なくらいかな。

 

 麦畑に到着し、後はモンスターを倒し後日村長に報告する。それだけでよかったはずなのだが少しあたりの様子がおかしい。

 

 「モンスターいなくね」

 

 「ユートが場所間違ってるんじゃないの?」

 

 シアの疑問にいいやと答えながらもあたりを見回す。本来なら子の麦畑の四方に合計5頭いるはずのホーンウルフのすがたは見つからず、麦畑には風の音以外が存在していない。いやほかにもおかしなことがある、虫の声が聞こえないのだ。

 

 シアの方を向くと彼も困惑したようで肩と両手をあげている。

 

 もう一度あたりを見渡すが特にこれといった以上は見当たらない。しいて言えば麦畑の中央、丁度麦が植えられていない少し開けたところに何か土なのか落ち葉なのか、茶色い小山があることぐらいだろうか。

 

 「昼に来た時ってあれあったかな?」

 

 「いやどうだっけな、あったようななかったような……あんまおぼえてないな」

 

 この場所へは確かに言われてみればあの時はあんなのなかったような気がしてくる、ただはっきりとなかったとも言いかねる。昼確認したのは畑の周りや木陰になる場所ばかりで明らかに開けてて死角になるような場所がない畑の中心はあまり確認していない。

 

 いやでも確かに昼はなかったと思う。さすがにこの山を覚えてないってのもないだろうしやっぱなんかおかしい。もしかしたらあれが何かのフラグになっているのかもしれない。

 

 シアと目を合わせうなずきあう。一応念のため二人とも武器を抜き茶色の小山の近くまでで歩ていくことにする。

 

 身長にゆっくり近づくといった感じはなく剣を持ってはいるもののそこまで警戒はしていない。近くにモンスターの気配は無いしポップするとしても何か合図はあるだろう。それにキリトから聞いた話ではこのホーンウルフはそこまで強くないらしいからそもそもそこまで経過しする必要はない。

 

 そうしてすぐ近くに近づいて気づいたことがある。これは何かが積まれてできた小山じゃあない。これは毛皮で覆われた何かデカい奴だ、そして動いてる。近づきすぎた。

 

 うかつにも近づきすぎた俺たち二人の前で毛皮で覆われたモンスターは動き出す。デカい分鈍重だったりを期待するが別にそんな風でもない。

 

 二足で立ち上がりようやくこいつの正体がわかる。熊だ、それもかなりデカい。目測で2.3メートルはあるだろう。

 

 熊が顔をあげ、両手をあげて吠える。熊の咆哮を聞いたことがないので現実のものとはどうかはなんてことはわからない重低音の不気味な声だ。吠え終えるとアクティブになったのか頭上には≪HornBear≫と2本のHPバーが浮かぶ。

 

 咆哮を終えたホーンベアーは両手を下ろしこちらを見下ろす。

 

 「僕の記憶が確かなら熊じゃなくて狼のはずなんだけどなっ」

 

 ホーンベアーが動き出したのを確認してシアは軽くバックステップをして俺の斜め後ろに下がる。夕方までレベル上げついでに少し練習したフォーメンション。前衛は俺の仕事で少し頑張らなけばならない。

 

 「ぐッ……」

 

 迫りくるホーンベアーの右フックを前に、腰を下ろし真正面から両手剣の腹で受ける、案外行けるかと思ったが無理だ、かなり重い踏ん張るのがやっとだ。何とか両足を踏みしめ押し倒されるようなことはないようにこらえるが足が滑る。何とかこらえたが10センチほど後ろに押された。このまま真正面での殴る愛は無理だろう。

 

 「力がやばい、回避優先でいこう」

 

 「りょ」

 

 何とかホーンベアーも腕を弾き飛ばし声を出す。防具を更新していてよかった、それだけじゃないレベルも上がっていなかったら今ので吹き飛ばされていたかもしれない。

 

 シアの了承の声と共に俺の体の右側、ちょうど肩のあたりから槍が飛び出ていく。そのままホーンベアーの左脇あたりに突き刺さるのだが、ソードスキルではないただの刺突、クリーンヒットといっていい一撃であってもHPの減りは微々たる物だ。

 

 「これ駄目だ、ソードスキルじゃないとダメージでない」

 

 「倒せると思うか?」

 

 「まあこのまま順当にいけば……このままやるか?」

 

 動きながらしゃべるので時折声が跳ねる。撤退も視野に入れたシアの言葉に否と答えながら左からの薙ぎ払いを全力のバックステップで回避する。剣は中段いつでもソードスキルを使えるように構え、ホーンベアーのモーションに注視する。

 

 「俺が隙を作ってシアがスイッチ」

 

 「おけ」

 

 薙ぎ払いの左手が目の前を通っていくのと同時に、剣を持ち上げまだ動いている左手の方から近づき上段からの大ぶりな一太刀で肩を浅くではあるが切り裂く。が、ダメージはあまり入らなかったのかモーションを中断することは出来ない。見た感じかなり防御力が高い印象を受けるがそれ以外にも深い毛皮と厚い皮膚がこちらからの攻撃の勢いを減衰させてくるように思う。

 

 左手の裏拳をしゃがんで躱し、脇下に向かって斜め下からの一閃、少量ではあるがホーンベアーのHPバーが短くなる。シアは俺の後ろから時折槍を伸ばして攻撃している。後々のスイッチの事を考えて前に出てくることもないが着実に攻撃を当てていく。

 

 「これ」

 

 ホーンベアが体をこちらに向けながら右手を突き出してくる。向きは多少悪い俺も体の向きを変え地面を踏みしめ姿勢を整えながらシアに合図を送る。

 

 こちらに向かってくる右の張り手に合わせて、構えを取るとシステムアシストが俺の体を動かし始める。選択したソードスキルはシンプルな横旋回斬りの『サイクロン』。システムアシストに身を任せながらも完全に脱力はしないそんな塩梅ですると気持ちうまくいく。

 

 「スイッチ」

 

 青色のエフェクトを纏ったソードスキルの一撃で今度は完全にホーンベアーの攻撃をはじきホーンベアー自身にもいくらかダメージが入る。右の張り手をはじかれよろけたたらを踏むホーンベアーの顔、眉間のやや左側を今度はシアの放った光を纏う突きが襲う。

 

 完全なるクリーンヒット。通常攻撃よりも大きなダメージエフェクトとともにこの一連の攻撃で一気にホーンベアーのHPバーは5割ほどが削れた。これで1本目はほぼ全損まだ油断はできないがまだ1撃も貰って無いしかなりいいペースだ。

 

 「ナイス」

 

 ソードスキルの硬直がなくなったのでおまけ程度に横腹を横なぎに切り裂く、この一撃1本目のHPバーがは完全に灰色に染まり微量ではあるが2本目のHPバーが短くなる。

 

 「このまま押し切る」

 

 このまま押し切ってしまおう。俺はさらにホーンベアーのそばに近寄り姿勢を低くする、だが左からの薙ぎ払い、できるだけ姿勢を低くしてスライディングのような姿勢になろうとするが何かおかしい。さっき見たのよりもかなり早い。ホーンベアーの一撃は俺の頭を打ちぬいた。

 

 

 

 

 「あ、やべ」

 

 「ユート!!」

 

 ホーンベアーの一撃をまともに食らったユートはこちらから見てホーンベアーのすぐ右、もうすでに収穫を終えその隙間から細長い黄緑色の葉を少量生やす麦株の中へ倒れていく。

 

 いまだ1撃も攻撃を受けていないという油断、1本目のゲージを消費しきったという慢心がホーンベアーの一撃によるHPの6割減という形で帰ってきたのだ。

 

 それを見たシアの行動は速かった、すぐさまユートとホーンベアーの間へ割って入るように前へ出て倒れたユート追撃として振り下ろされた一撃を体を張りかばった。

 

 シアは槍の穂先を下に向け、両手で持って体も前に斜めに構える。自身のHPの3割を代償にシアはユートを庇いホーンベアーの攻撃をそらすことに成功したのだ。だがホーンベアーの猛攻はそれだけでは終わらない、そしてユートはいまだ動かない、シアは一人で先程までより速くなったホーンベアー攻撃に対応し続けることになったのだ。

 

 ユートの失態により先ほどまで緑色だった両者のHPゲージは黄色になり、ユートの方ははもはや赤寸前の状態になったのだ。なおホーンベアーのHPは先ほどから微々たる程しか減っていかった。

 

 

 

 

 視界がぼやける、油断していた。焦ったんだそれがいけなかった。あの時とっさに剣を左手だけで持ち、右手で頭を庇ったが効果はあるかわからない、視界の端自分のHPバーを見ると6割、下手したら7割近くが灰色になっている。色はギリギリ黄色だが実質もう赤同然だろう。それにシアのHPバーも黄色くなるほど削れている。

 

 目の前には俺の両手剣、どうやら手放してしまったらしい。転がる両手剣へと手を伸ばす。が、体が動かない、慌ててもう一度HPバーを確認するとその上へ見慣れぬ3つ星のアイコン、この状況から予測するにおそらく麻痺もしくは脳震盪だろう、そう考えているうちに3つ星は点滅しだす、だがそれと同時にシアのHPゲージも少し削れた。

 

 アイコンの点滅が終わり消えるのと同時に弾けるように動き出す。まず目の前にころがっている剣を掴み、起き上がる反動を利用して出来るだけ後ろに飛ぶ。

 

 そのまま数歩後ろに飛び退きコンソールを操作する。回復ポーションを手元に出し、そのまま一気に喉に流し込む。ここは仮想世界どれだけ一気飲みしようが苦しくはならない。

 

 視界の左端、HPが少しずつじわじわと回復し始めるのが見える。このままシアの手助けをしに行きたいが本当にそれでいいのか、未だHPバーの半分以上が灰色になっている。次同じ一撃を喰らったらゲームオーバーだろう。

 

 ゲームオーバー、実際に片足を突っ込んで改めて感じる死の恐怖。初日に2人で町から飛び出したときとは違うよりリアルな感覚で、だが昔感じたものよりも現実感は薄い。この仮初の世界がそうさせるのか。

 

 どのタイミングで飛び出すか悩んでいるうちに事態はさらに進展する。目の前でシアが回避は無理だと、ホーンベアーの一撃を槍の柄で受け止める。それによりシアのHPは目に見えて少なくなりノックバックで弾かれる。

 

 行くなら今しかない、俺は自分のHPのことは後回しにして前に出る。その助走の勢いすら利用してシアに振るわれるホーンベアーの左腕に対してソードスキルを発動した。




戦闘描写むずすぎない?

やっぱヒロインっていた方が花があるよね、でも思いつかないんだ。

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