アインクラッドの英雄   作:夕方の月

8 / 22
2月になったのに更新が早くならない。
申し訳ない、書きたい話はいくらでもわいてくるのやる気が出ないんだ。


8 ガイドブック

 俺たちが仮想世界に閉じ込められてから1週間と少し、俺たちは今日も変わらず倉庫掃除のクエストを受けていた。もちろんあれから《グレートソード》は出ていない。いったい俺たちはいつになればここから解放されるのだろうか、あれから店売りではあるものの一応新しい大剣に新調したし、いったんあきらめてしまってもいいのかもしれない。

 

「シアあっち頼むわ、俺こっちやっとく」

 

 毎日やっているせいか所要時間はどんどん短くなっているのだがそれでも30分はかかるし結構めんどくさい。それに何が嫌かって毎回ゴミや荷物の内容と配置がランダムなところだ。それに二人で協力しなければSTRが足りないとかで持ち運べない荷物だってある。普通にだるい。……まあ正直この一週間は基本町から出てないからこんなことでもないよりかはましなんだけど。

 

 そうあの突然ナーヴギアの電源が切れた日、事件か事故かよくわからないけどまあ事件と呼ぼう。あの日から俺たちは今まで1週間は町の外、いわゆる圏外と呼ばれる場所に出ることを控えている。なぜあんなことが起きたのか、結局1週間たっても把握は出来てないし、もしモンスターとの戦闘中にまたあれが起きたらと考えるとゾっとする。

 

 もちろん1週間なにもせずただぼーっとしていたわけじゃない、町から町まで移動するときはできるだけ気を付けて移動して、街中で完結するクエストをいくつか受けて、はじまりの町で情報収集もして、その結果フレンドも幾人か増えた。そのなかにはベータテスターも何人か居て有益な情報をいくつも教えてもらった。

 

 あの事件、実は俺たち以外のほとんどのプレイヤーに起きたらしい、時間や日にち、電源が切断されている時間はそれぞれのプレイヤーで異なるそうだが、みんな同じような体験をしたそうだ。

 

 で、いったいあれは何だったのかといろんな人が噂をするのだが、その内容はみんなばらばらだ、中には笑っちゃうぐらいばかげた話もあるのだが、まあこんなところに閉じ込められてるんだからそんなバカげた話もしたくなるか。

 

 この事件の原因は何だったのか、現在は主に3つの考えに分かれている。

 候補一、現実で茅場が逮捕されてSAOから救出される予兆。候補二、早期解決をあきらめて現実の俺たちの体を病院に搬送した影響。候補三、日本全体で停電もしくは災害が起きた。後は実はSAOプレイヤーは異世界に転移したのだ、なんて馬鹿げているような少し面白い話もある。

 

 最後のは置いといてどれもありうる。

 個人的にはさっさと救出されたいのだがまあないだろう、この現象はプレイヤーごとにばらばらに起きたのか、仮想世界の中から真相を知ることは出来ないがシステム的なものだったら全プレイヤーほぼ同時に起きる……と思う。

 

 そして病院搬送だがそんなスムーズにいくものだろうか、あの日はSAOサービス開始からまだ3日しかたっていなかった。行政だとか救急だとかの仕組みはそこまで詳しくないがそうは役にSAOプレイヤーを全員搬送するなんてできないような……気がする。

 

 停電か災害はまあありえないだろう。もし仮に日本全国でそんなことが起きるようなことがあったとして、それが20分程度で復旧できるようなことはないだろう。もしそんなことがあるとすれば問答無用で30分を超過SAOプレイヤーは全滅だろう。まあそんな子と考えたくはないが。

 

 まあ現実のことがわからないとはいえ情報収集はこれからも大切だろうな、そもそもこれからのSAO攻略においてベータテスターの情報は必須だし、ベータテスター以外にも、もしかしたらサブクエストが重要なキーになるようなこともあるかもしれない。

 

 そうそう、情報といえば最近情報屋と知り合った。まあまだ自称でしかないそうだが、もしかしたらこれから彼女には世話になるかもしれないな。

 

 そうあれはキリトにメッセージで「クエストの内容が効いてた話が違う」って連絡をした次の日だったかな。キリトから謝罪の連絡……まあこれは別にいいんだが、それと一緒にとある人にあってほしいといった旨の連絡がきた。

 

 ひとまず集合場所のはじまりの町まで行くことになったのだが、いかんせんあの事件が起こった後だ、圏外に出るのには及び腰になってしまう。まあいつかは行くしかないのだから遅いか早いかの違いしかないのかもしれないが、だがまあ怖いものは怖いのだ。

 

 と、いうことで今居るホルンカからはじまりの町までは全速力で走っていくことにした。幸いこの二つの町はすぐ近くで徒歩で行っても十数分程度で簡単に行き来できる。現実とは違い息切れもスタミナ切れもないこの仮想世界の体なら走れば数分で到着するだろう。もちろん油断しているわけでもないし最大限警戒して接敵も最低限にするつもりだ。

 

 

 

 と、いうことで道中何事もなくはじまりの町に到着して少し暇つぶしに町を散歩して、夕方に黒鉄宮でキリトと1日ぶりの再会した、あってほしい人とは?と聞くとどうやら別件で遅れるらしく俺たちはひとまず3人で夕食を食べることになった。

 

 まあ夕食といっても、もそもそとした黒パンにとあるクエストで入手したクリーム?バター?のようなものをつけてかじりつくといった質素なものだったのだが。3人とも間食した後、遅れたやってきたキリトのいうあってほしい人がやってきた。

 

「単刀直入に言うガ、今オイラはベータテストの知識をもとにガイドブックを作ってル。コルナールのクエストの事、詳しく教えてくれないカ」

 

 右手に持っている革張りの本をひらひらとさせながらそんなことを言う、やや語尾がわざとらしく、特徴的な軽装備にフードを被ったプレイヤー、声の感じからして恐らく彼女は自らの事を情報屋のアルゴと名乗った。

 

 どうやら彼女もキリトと同じく元ベータテスターだったらしい、ただキリトとの違いがあるとすれば、彼女はそのベータテストの知識を本にまとめ、全SAOプレイヤーへ配布しようとしていることだろうか、べつにキリトやそれこそ昨日はじまりの町で知り合った数人の元ベータテスターたちが情報を独占しているというわけではない、もちろん中にはそういったことをいようとする人間もいるのだろうが少なくとも彼らは聞かれれば快く答えるだろう。

 

 彼女のすごい所はその知識を本にまとめようとするところにある。一見すればある程度ネットゲームに精通したベータテスターならだれでもできるように感じるかもしれないが、そんなことはない。そしてガイドブックの中身を軽く見させてもらったが、第一層の事だけとはいえかなりの情報がまとめられている。これはSAOのサービス開始からまだたったの3日しかたっていないことを考えれば破格の情報量だ。

 

 あの後、情報交換以外にもかなり遅くまで4人で話し込んだのだがかなり面白い人だった。一通りあれたちが知ってるクエストの事を話したら、情報料って言ってコルを払おうとしてきたのだが断った、確かに情報屋としてやっていくなら情報のやり取りはしっかりしなくちゃいけないのだろうが、まあ俺たちと同じように初見でホーンベアーと戦うってのはきついだろうしタダでいいだろ。

 

 あれから何回か一緒に行動する機会があったりメッセージをいくらかやり取りしている。それにガイドブックは直接もらった。外から見ただけでもかなりの努力家のようだしこちらから何か手伝えることがしてあげないとな。

 

 そんなことを考えながら作業を進めるとあっという間に自分が受け持っていたスペースの清掃が終わりやや手持ち無沙汰になる、いつもならシアの方が早めに終わってこっちを手伝ってくれるか、二人いないと持ち運べない大物があって俺だけが先に終わることはあまりないのだが今日はそうなった。いや訂正4日ぐらいあった。

 

 いったんクエスト受注の爺さんNPCの横で何かメッセージが着ていないか確認しようと思ったのだが、確認する暇もなくすぐにシアも終わったようで倉庫から出てきた。

 

「ありがとうございます、年のせいか重い荷物ももう持てなくなってしまいまして本当にありがとうございます。」

 

「このセリフも結局変わらなかったな、何か隠し要素なりアイテムによってセリフが変わったりするかと思ったけど」

 

「まあある方が珍しいだろうし、そもそもこのクエスト自体あんまり重要なものじゃないしね」

 

 手持無沙汰に剣の柄をいじりながら適当に思いついたことを脳髄から垂れ流しにしていると、特徴的なファンファーレとともに、もはや見慣れたクエストクリアの文字が空中に浮かびあがる。

 

「お約束どうり少なくはありますがコルと、粗末なものですがこれは倉庫にあったもう使わない物ですのでどうかあなたが代わりに使ってください」

 

 毎朝、聞きなれたセリフと共に少額のコルが振り込まれそれに続きにインベントリにアイテムが追加される。正直、期待していると言えば噓になる。ここまで1週間以上続けても目当ての《グレートソード》は出てこない。そもそも《グレートソード》以外のハズレですらダブりがないのだ、正直もうあきらめてしまいたい。

 

「あ――でた」

 

 そんなことを考えながらも追加されたアイテムを確認するとそこには両手剣を示すアイコンと共にキリトに話だけ聞いた時から切望していた《グレートソード》の文字がたたずんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「カンパーイ」」」」

 

 第一層迷宮区の攻略が始まってしばらく、迷宮区に比較的近い町の居酒屋で俺、シア、キリト、アルゴの4人はご飯を食べていた。

 

 もう何回も同じクエストを受けないでもよくなった日から大体2週間、四捨五入すれば3週間がたつだろうという時期、二人のベータテスターに言わせれば順調とはいいがたいらしいがSAOプレイヤーは実に3桁は上回るだろう犠牲を払いながらも一層と二層を結ぶ柱の根元、迷宮区にたどり着き、ボスモンスター発見も時間の問題だろう。

 

 今日は迷宮区帰りにばったりとキリトと鉢合わせ、その後もたまたまアルゴともであったのでこのメンバーでご飯を食べることになった、まあおおざっぱに言えばこんな流れだ。

 

「てかアルゴ、おまえ未成年だろ、酒飲んでもいいのかよ」

 

「そういう細かい所は良いんだヨ、それに仮想世界には警察も法律も無いしナ」

 

 店に入って早々、なんちゃらエールを頼んだのだがそれに続きアルゴも当然のように同じものを頼んだのだ、今まで話した感じアルゴは多分中学生あたりだろうから一応聞いてみたのだがこの返答だ。まあ俺自身そこまで気にする性質(たち)でもないしいいんだけども。ちなみにキリトとシアは麦茶みたいなものを飲んでいた。

 

「なあユート、現実の酒もこんな味なのカ?」

 

「いや正直全く違う、現実の方がもっとまずい。こっちは実質ジュース」

 

「え~なんだか現実に戻るのがちょっと嫌になったナ」

 

 ちょくちょく野菜炒めのような料理ををつまみながら最近会ったことだとか、ただで教えてもらえる情報だとか、現実を懐かしむ会話だったりとかを交える。

 

「そういえば、フードを被った細剣使いのプレイヤーって知ってるか?」

 

 キリトが聞いてきた人物、フードを被った細剣使いなんて知り合いにはいない、そもそも細剣を使うプレイヤー自体あまりいないし、それにフードを被ったと言われてもな……そういえばこの前迷宮区で見かけたあの妙に早かったプレイヤーはフード被ってたな。

 

「あ――もしかして赤いフードだったりする?」

 

「ああ、もしかして知り合いだったりするか」

 

「いや、べつにそんなことはない。いつだったか3日ぐらい前に迷宮区で見かけたぐらいかな、ソードスキルの出が妙に早かったから覚えてる。で、そのプレイヤーがどうしたんだ?」

 

「俺も今日、迷宮区で見かけてな、遠目に見ているだけでも妙に焦っているようで、まるで自分を顧みないような戦い方だったから気になって」

 

「あ~それは確かにきになるわ、てか隣で何も言わすに聞いているアルゴは知ってるのか?

 

 キリトの質問から一切口を開いていないアルゴに向かってキリトと共に顔を向ける。ちなみにシアは今トイレに行っている。こういうところは現実と変わらないんだから全く困ったもんだ。

 

 まるで空気になるように気配を消していたアルゴは少し悩んだようなしぐさをすると口を開く。

 

「オイラは知ってるヨ、でも教えない。この情報はたとえ金を積まれても話さないって決めてんダ」

 

「そうか、――まあ知り合いならその人にあまり無茶しないように伝えてくれないか」

 

「そんぐらいだったらお安い御用ダそれにキリトの話を聞いてたらオイラも怒らなきゃナ」

 

 キリトはそれだけ言うと納得したようにコップに注がれた麦茶を飲んだ。こいつ結構年下なのに結構気が利くというかなんというか多分現実でモテてただろ。

 

 会話が終わるのとほぼ同時にシアもトイレから帰ってきて、もうみんな食事も終わっていたので店から出て宿までの道を4人で歩く、このメンバーの中で宿が被っているのは俺とシアだけなのだが途中まで同じ道なので一緒に行くことになった。

 

 キリトと別れて少し、シアは朝御飯を買ってくるとか言ってどっかへ行って2人だけで歩いていく、分かれ道の前でアルゴが嫌にまじめな顔でガイドブック、それもまだ見たことのないおそらく新刊を差し出してきた。

 

「ユートには先にこれを渡しとク。まだ2冊しかないレアものダ、大事に使えヨ」

 

「いきなりどうしたんよ、そういうのは情報屋としてしないんじゃなかったのか」

 

「一緒に戦ってると勘違いするけどユートとシアはベータテスターじゃなイ。だからボス戦は初めてだと思ウ、ボスはほかのモンスターとは勝手がちがウ。――だから情報屋アルゴの出血大サービスダ、オイラはボス戦に参加しないけど、2人はこれをちゃんと読んで生き残ってくれヨ」

 

 さっきまで真面目な顔をしていたと思ったら今度はしおらしくなった、まあ死んでほしくないってのはわかるがそれでもアルゴが自分の心情を曲げてまでこれを渡してくるのは意外だった。

 

「そうか、――ならちゃんと読み込んでからボス戦に挑むよ、ありがとう」

 

 普段流通しているものとは少し違う、革張りではあるのだがどこか少し作りの甘いガイドブックを受け取ると、アルゴはじゃあナと言って背中を向けるとそそくさと分かれ道の右の方へ歩いていく。その背中がどこか疲れているようで俺は思わずその背中にむけて声を掛けた。

 

「なんかあったらまた飯を食おう、それこそ今度は第二層で。それとアルゴもあんまり無理すんなよ」

 

 アルゴはこちらに背を向けたままありがとうとだけ言いそのまま歩いて行った。

 

 あれでよかったのかはわからない、そもそも俺はそこまで年下の女の子と話したことはない。まあせめてあれであってることを祈るぐらいだ。……年下の中学生の子がこんなに頑張っている。キリトの言ってたフードのプレイヤーの事もある。だが特別親しいわけでもない俺にできるのはせいぜいが見守ることぐらいだろう、まあ兄貴分としてかっこいい所見せないとな。

 

 そうして夜の闇を照らす街灯の下でガイドブックをざっと流し見してからインベントリに入れると俺は分かれ道を左に曲がっていく、おそらくボス戦までもう1週間もないのだろう、なんの根拠もないがそういう予感がある。覚悟みたいなもんは持っとかないとな。てか朝御飯勝ってくるってこの時間に空いてる店なんてあっただろうか、あいつどこ行ったんだ?




プログレッシブはスキップしようと思っています。
それに伴い今作ではミトは登場しません。彼女のファンの方には申し訳ない。

やっぱヒロインっていた方が花があるよね、でも思いつかないんだ。

  • アルゴルート
  • シノンルート
  • シリカルート
  • リーファルート
  • ヒロインなし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。