3話 合同訓練の作戦
正義実現委員会との合同訓練を前日に控えた今日この日。私は団員の皆さんを団長室に集めています。本来であればもう既に全員揃っているこのタイミングで私が作戦を発表しています。しかし暫く私は沈黙の姿勢を貫いていました。そこで団員の一人から、こんな声が聞こえてきました。
「だ、団長?全員揃ってますけど……」
ここで、今年の正義実現委員会との対戦成績をおさらいします。
5戦全敗です。全て判定負けに終わっています。このままではいけないという事も分かってはいます。
「……。はい、本来であれば皆さんに作戦をお伝えするのですが……」
「今回私は作戦を考えていません」
私がそう発した瞬間、団員達の戸惑いともとれる声や反応が一斉に返ってきた。当然ですよね……。団員が私に任せてるというより、私が買って出ているようなものですからね。
「……ですが、勝つ気がないわけではありません」
「むしろ絶対に勝たなければならないのです」
いつもの合同訓練であればここまで意気込まないのですが……。
「ライ……。今回の作戦、貴方が考えてもらえますか?」
私が居る位置とは真反対の壁に寄りかかり、何故か腕を組んでこちらを見ています。しかし何故でしょうね、どこか納得していない様に見えます。
「………」
答えが返ってきません。やはり何かに納得していないのでしょうか……。
「せっかくミネちゃんが時間かけて作戦考えてたのに?」
確かにこれまでは私が考えてました。ですがそれは、これまでの話です。今回はどうしても勝たなくてはならない理由があります。
「……明日、ティーパーティー代表の御三方が合同訓練をご覧になるそうです」
「………」
まだ納得していません。ライは私の意見を凄く尊重してくれます。いえ、凄くでは足りませんね……。"もの凄く"が正しいですね。
私が"やる"と決めた事を全て任せて見ててくれます。それはとてもありがたいのですが……。
「確かに救護騎士団は本来、そこまでの戦闘能力は求められていません」
その役目こそ、正義実現委員会が主役を取るからです。
「ですが、救護する相手が
「我々は相手がどのような人物や組織であっても、救護すると決めた時、救護しなければならないのです」
「………」
「そこで我々が
団員達のざわめきが少しずつ大きくなっています。ええ、分かっていますよ。恐らく私は少しおかしなことを言っていると思います……。矛盾した事を言っているのですから。
単純にティーパーティーの皆様の前で良いところを見せたいだけなのかもしれません。もしくはせめて1勝だけでも欲しいのでしょうか。
「……もう一度言います」
「今回の作戦、ライが考えてもらってもいいですか?」
ライの表情は、変わらない。相変わらず納得していない顔です。
「………」
ですが私は知っています。誰よりも、城羽ライという人物を。
「いいよ。ミネちゃんのお願いだもんね」
最終的に私のお願いを、断るような方ではありませんから。というか断ったところ見た事ありませんね。
「で、でも!明日もう合同訓練ですよ!?」
団員の一人が声を上げる。確かに、今から考えているようではとても時間が足りません。ですが、ライの事です。
「大丈夫ですよ。もう作戦は考えてあります」
団員達から驚きの声がそこら中から上がる。当然でしょう。誰しもが今回の作戦を考えたのは私だと思っていたはずですから。
「それでは、早速お伝えしましょう。明日の作戦は_______」
そして翌日、正義実現委員会との合同訓練が始まる。
「さて、前に出るのは久々ですね」
二年生の時以来でしょうか。副団長を任されてからは後方支援を担当する事がほとんどでしたから。それに、ミネちゃんが最前線しか担当しませんからね。
"肩書という制約"が存在しなかった去年と一昨年は堂々と前線を張ってました。ミネちゃんほど前に出るわけではありませんが……。
あ、そうそう、作戦ですね。
ミネちゃんがこれまで考えていた作戦を否定するわけではありませんが、正義実現委員会相手にミネちゃん一人で太刀打ちしようとするのはやはり無理がありました。たとえミネちゃんが勝てても、他で負けてしまう……それで今まで全部判定負けで終わっています。私も後方支援に回って助けていましたが、やはり前に出るのとはわけが違います。それだけ、正義実現委員会に実力者が揃っているんです。まあ、ミネちゃんが頑なに私を前に出さなかった理由も……なんとなく検討がついているんですけどね。
「ライ副団長!全員配置につきました!」
前回の訓練は正義実現委員会から自由に動き始めるという規定だったので、今回は救護騎士団から動けます。なので先手を取れるわけですね。とはいえ不意打ちする事は出来ませんから、まずはミネちゃんを前に出して開戦の合図と行きましょうか。
「ミネちゃん!昨日伝えた通りに!」
「はい!」
そう、自由に始めれる。私の配置も、全て自由です。私は建物の屋根に居ます。
ここから約1100m程度でしょうか?
開戦前に一通り見渡していましたが、この位置からほんの少しだけ見えるんです。恐らく……いえ、間違いないでしょう。正義実現委員会期待の一年生、静山マシロさん。ミネちゃんと直接対峙する味方を援護するためにあの場所を陣取ったのでしょう。
ですが、私からしてみればまだまだ甘いです。スナイパーであれば
やっと使用できますね。後方支援の時は私の持ち武器は使うなとミネちゃんに言われていましたから……。
はい。
まずは一人目。
パァンッ!!