「ハスミ先輩!いつも通り、ミネ団長がまっすぐこちらへ向かってきます!」
「予想通りではありますが……皆さん、油断の無いように」
……とはいえミネ団長の実力は私やツルギ並の強大なもの。合同訓練という場ではありますがしばらくは手が付けられないでしょう。合同訓練だからと、手加減の出来るような方ではありませんから……。
『ハスミ先輩。マシロです』
「マシロ、どうしました?」
『………』
「マシロ?」
『……ダウンしました。すみません』
「な、なんですって!!?」
まだ開戦して30秒も経ってないはず……。一体どこから……!?
「マシロ、どこから撃たれましたか?」
『それが……背にしていた障害物の方向から、障害物ごと撃ち抜いてきまして……敵の特徴などは何も……』
しかし狙撃されて一発でマシロがダウンしてしまうとは。まさかではありますが……。
『頭を打たれたわけではありませんが、急所部分を正確に一発で仕留められてしまうとは……』
「聞きましたか!? ツルギ!!」
間違いありません。彼女がとうとう出てきてしまったのです。救護騎士団の真の恐ろしさは、彼女が前線に出てくる事……。
『もう少し様子を見る』
そう、我々もその事を予想していました。ここまで救護騎士団が全敗している事、今日はティーパーティーの御三方がこの合同訓練を直接謁見される事。ツルギが開戦直後から前線に居ない理由が"それ"です。
『奴は長距離から短距離を自在に移動できる。次の狙いを見てからでも遅くは無い』
「分かりました!イチカ、聞こえますか!?」
『一通り聞いてたっすけど、とりあえずスナイパーに気を付ければいいんすね?』
「マシロ程射程距離があるわけではありませんが、ただのスナイパーではありません」
『了解っす。とりあえずスナイパー見たら報告します』
次の狙いは恐らく私かツルギ。普通に考えれば私でしょうか?彼女の事は一年生から見てきていますが、まるで予想が出来ません。
『ハスミ先輩、一つ質問いいっすか?』
「構いません」
『ミネ団長がこちらに向かってきた場合、どうします?』
「私がフォローしましょう。ミネ団長は今どこに?そちらから見えますか?」
『あー……今すぐフォロー欲しいっすね』
「わかりました!!」
ミネ団長がイチカを狙うという事は、やはり私かツルギの二択。いえ、私の配置がイチカに近いと分かればほぼツルギで決まりでしょうか。とりあえず今すぐイチカのフォローをしましょう。私やツルギであれば彼女から一発貰ったとしても対処が出来ます。それからでも遅くはありません。
「救護ォー!!!」
ハスミ先輩がフォローに入るとはいえ、あれをまともに相手していたらさすがに持たない……。かと言って逃げ道もなければ上手い罠があるわけじゃない。なるべく攻撃を受けないようにしないと。
ダンッ!
「……ん?」
ミネ団長のあの態勢、あれはいつもの大ジャンプする時の……。まさか私の上から攻めてくる気っすか?これじゃあ逃げ道どころか避ける気さえも与えないつもりっすね……。
パァンッ!
その時私は、遠くから鳴った銃声を聞いた。私の視界にはスナイパーなんかいない。正面にはミネ団長が居て、今にも跳ぶところ。だから、その甲高いその音をまったく気にも留めなかった。目の前の事に集中しなきゃいけなかったから。
目の前の事に……集中していたはずだった。ミネ団長が跳び上がった直後、私の視線は本来ならば上を向くはずだった。だが向かなかった……いや、
ガァンッ!!!
……。
直撃だった。
急所めがけて、正確な狙撃。
いや、こんなんあり得るんすか……?あんなの阿吽の呼吸で片づけられないっすよ……。あの銃声、ミネ団長がギリ跳ぶ前に聞こえたじゃないっすか……。どれだけ互いの事を分かってないと出来ないか……?
「あ…ははは。ハスミ先輩、すんません……。ダウンっす」
ハスミ先輩から、返答は無かった。そういえば私の近くにミネ団長が降りた音がしないっすね……。
『見つけたァ…!』
「くっ…!!」
まさかイチカをフォローしに来た私に向かって跳んでくるとは……!! ですがミネ団長であれば私が対処できます。それに……これで彼女の狙いは……。
「イチカ!私と一緒にミネ団長を……!?」
「イチカ…!!?」
『すんません……ダウンしてます……』
「なっ……!!?」
まさか、たった今ミネ団長が跳んでいる時に……!? ありえない……ありえませんが……。
やはりそれを覆してくるのが"彼女"です。まずいですね……。私がミネ団長に抑えられ、ツルギまでもが彼女に抑え込まれては……。
「ハスミさん。私から目を逸らしている余裕があるんですか?」
恐ろしい方です。城羽ライさんは……!!
さて、仲正イチカさんを撃ち抜いたのはいいものの。命中したと同時に感じた一つのとてもとても大きな気配。間違いないですね。剣先ツルギ委員長さんのお出ましです。
本来ならSG相手のSRは分が悪いところですが、ツルギさん相手であればそれが良いとこ五分五分まで持ってこれます。
「けひゃひゃひゃひゃっ!!!!」
ガァンッ!ダァンッ!ガギャンッ!!
パァンッ! ガギィンッ!!
相変わらずとてつもないスピードと威力ですね。本来ならこの方の相手はミネちゃんが好ましいのですが……。今回は作戦の関係上致し方ありません。
「随分と遅い登場ですね」
「お前が出てくると分かっていた。だからこそ慎重にならざるを得なかった」
ツルギさんの強さはほぼチート級です。真っ向から戦ってもいいのですが、それでは正義実現委員会そのものの罠に嵌ってしまいます。昨日ミネちゃんには伝えていましたが……少々賭けをやってみましょうか。
「キャハハハハッ!!! お前は私の数少ない本気を出せる相手だからなァ……?」
「ええ、どうぞ本気でお願いしますよ」
どれだけ流せるか、どれだけ受け止めらるか。どれだけ……待てるか。
ガギャンッ!バギンッ!!!
おおよそ銃同士の戦いの音ではありませんね……。
ガンッ!
痛ッ……!
一発、受け止めるのも精一杯です。賭けをしなければ流すのですが、少しでも後で楽をしたいですからね……。
パァンッ!
バギャンッ!
間違いなく命中していますが、ツルギさんの頑丈さで耐えてしまいます。まだです……まだ近いんですよ。
ダァンッ!バゴーンッ!!!
ここが屋外で助かりました。屋内であれば逃げる場所もあまりありませんから。
「キャハハハハ!!!」
そうです……いい調子ですよ……!
バギャンッ!!
流し……きれませんでしたが……。良いんです、これが狙いですから……。
ツルギさんが私を掠め、オーバースピードで建物に突っ込む。ツルギさんであればこのまま何事も無く起き上がってきますが、この瞬間を待っていました。流すつもりで受けたのでダメージはそこまでありません。
ダァンッ!
私は懐からサブ武器であるHGを取り出し、狙いを定めて一発撃ちました。その狙いは……。
羽川ハスミさんの左後方です。私はツルギさんと戦いながらずっと時間を計っていました。ミネちゃんとタイマンで戦っているハスミさんが、
しかし、この賭けに勝てば……ハスミさんの急所を、銃弾の半分をかすめて通過するでしょう。後は、ミネちゃんが倒してくれます。
ガッ!
「なっ……どこから……!?」
「救護ォー!!!!」
「しまっ……!!!」
ダァンッ!!
「ケケケケ……。私が言えることでは無いが……」
「お前も大分、化け物だな」
「ええ、どういたしまして」
さて、もう少しですよ。