もう少しとは言いましたが、やはりツルギさんの相手は骨が折れます。一つの油断も許されない、まさに極限状態と言いましょうか。ですがそれはまともに相手をした場合です。可能な限り流しながら戦う、先ほどまでの戦い方と一緒ですね。
「ライ」
「どうしましたか?ツルギさん」
「一つだけ、勘違いをしているな」
勘違い……ですか。
「正義実現委員会副委員長、羽川ハスミを舐めてもらっては困る」
「……」
ツルギさんに対する警戒心を解かないまま、ミネちゃんとハスミさんが戦っていた方を見てみました。私の銃撃によって体制を崩され、ミネちゃんから至近距離で確実に撃たれたはずでした。私の予想であれば、ハスミさんはダウンし、ミネちゃんがツルギさん以外を掃討する、その予定でした。
ですが結果はどうでしょうか? ハスミさんはまだ立っていました。そのせいでミネちゃんもその場を離れることが出来ていません。
少しではありますが、まずいですね。ミネちゃんの動きを封じるというのは、ミネちゃんの"強み"そのものを半減させてしまいます。幸いミネちゃんの武器はSGなので近接戦向きではあります。ですがミネちゃん特有の破壊力は、ミネちゃん自身を
ほんの少しだけ、作戦を変えましょう。
「ミネちゃん!!」
ミネちゃんはこちらへ向く事はありません。ですが構わず続けます。
「"反射"させてください!!」
返答はありません。聞こえていないわけではないでしょうから、返答を待ちはしません。
「また余計な一発でも撃ち込むつもりか?」
「私が二度も許すと思うか?」
「許さないでしょうね」
私がミネちゃんにわざわざ声を掛けたのにはわけがあります。本来であればこの程度の作戦変更にはミネちゃんに伝えなくてもいくらでも対処できます。どんなやり方であれ、ハスミさんを打ち倒せばいいわけですから。
「ですから、無断で撃たせてもらいます」
「いひひひひひひひ……楽しみだなぁ!!」
ですが、ツルギさんの前で
ある意味、行動も予測しやすいんですよね。
「きゃははははは!」
しばらくはタイミングを見計らう為に流し続けなければなりません。ツルギさんの動きはミネちゃんを上回ります。一瞬でも気を逸らしたらいけません……その中でハスミさんを撃たなければいけませんが。
そう思った矢先、ツルギさんから仕掛けてきました。相変わらず予測不能な動きをしてきます。左右にジグザグに動きながら迫り、目の前まで来たと思ったら通り過ぎ、その背後から直接銃口を向けてきました。この間2秒もあったかどうか分かりません。相変わらず速いですが、まだ私は捕捉出来ているので冷静に対処しましょう。そちらがそのような動きで来るのであればこちらも。
左足を前に思いっきり蹴り、背を向けながらコケるようにツルギさんの懐に潜り込みます。
「けひゃひゃひゃ!!」
とても楽しそうですね、嬉しい限りです。ここで引き金を引かず、SRの先端で顔付近を思いっきりぶつけました。少なからず効果はあったようで、多少よろけました。
今、ですかね。とっさにHGを左手に持ち、狙いを定めます。
「させるかぁ!!!」
やはりですね……横から耳を通って脳に直接響くような殺気に気が滅入りそうになります。ですが私はその狙いを変えないまま、一発放ちました。
パァンッ!
今の私はツルギさんを見ていません。ツルギさんから見れば完全に無防備の状態です。ですがツルギさんは私に攻撃をしてきませんでした。
さすが、ですね。
私も、ツルギさんならそう動くと思っていましたよ。ツルギさんは私に目もくれず、私がHGで放った一発目掛けて走り出したのです。ツルギさんは私の何が恐ろしいのかをよく分かっている証拠です。そしてそのまま私の放った弾に追いつき、見事にその弾をはじき返してしまいました。
ええ、
ツルギさんが弾をはじいた時、私は持ち武器であるSRで、もう狙いを定め終わっていました。あとは、ミネちゃんの動きに合わせてタイミングよく引き金を引くだけ。
2……1……
……。
今ですね。
パァンッ!!
くっ…まだまだダウンするわけには……。
私の身体は、つい先程ミネ団長から受けた銃弾が強く響いています……。かなり動きは鈍くなってしまいましたが、ミネ団長をここで封じなければ
そう思った瞬間、ミネ団長は地面にヒビを入れ、いつもの大ジャンプする体制を取りました。来ましたね、勝機がッ!!
ミネ団長が高く跳び上がるその瞬間、私も気力を振り絞って跳びました。結果的に、ミネ団長とほぼ同等の高さに跳ぶ事が出来ました。
「これで終わりですッ!!」
私はそう叫びました。ミネ団長はこの攻撃をする時、SGではなく自身の持つ盾を構えています。かといって私も空を飛ぶために跳んだ訳では無いこの空中に居る間は、狙いを定めて撃つ事までは出来ません。その時とは、団長が地面を盾で破壊し、その直後に私が地に足を突けた時。一瞬で狙いを定め、ミネ団長をダウンさせます!
これら一連の流れを考え、ミネ団長を倒すビジョンが見えたその時、何を思ったのかミネ団長は盾を下へ投げ捨てました。
「なっ!!?」
「終わり、ですか」
ガキィンッ!!
「それはこちらのセリフです!」
その瞬間、私は一つの大きな衝撃を受けました。
「!!!!?」
下から"何か"が飛んできて、私の顎下を直撃しました。思いっきり"何か"に打ち上げられた私の身体は、そのまま抵抗する術なく地面に倒れ伏してしまいました。
「な……何が起きて……」
すみません……ツルギ……。
もう起き上がれそうにありません……。
明後日の方に向かっていた弾をはじき返し……。いいや、はじき返してしまった私が見たのは、とても信じられるような光景では無かった。
振り返り、ライの方を見ればSRを持ち狙いを定め、3秒後に一発放った。その先に在るのは、互いに一進一退の攻防を繰り返すミネ団長とハスミだった。0.2秒後、ミネ団長は高く跳び上がり、いつもの攻撃態勢に入ったと思った。ほぼ同時にハスミも跳び上がり、その攻撃を阻止する様が見えた。0.3秒後、ハスミが最高点に達した瞬間にミネ団長は自身の持つ盾を地面に投げ捨てた。
そして、0.1秒後……。
地面に対し、斜めに突き刺さっていたミネ団長の盾を"反射"し、ハスミを撃ち抜いたのだ。
これら一連の流れが全て狙って出来たものだと言うのか?とても人間業では無いな、
ピィーーー!!!
その瞬間、今の私には聞きたくなかった音が聞こえた。
「両陣営、そこまで!!!」
今回の合同訓練、終了の知らせだった。両陣営のトップがダウンしていない場合、両陣営のダウンしていない人数が多い方が勝ちとなる判定になる。だが私は、この音を聞いた瞬間に確信した。
ああ、負けたな…と。