Unlimitedに転生してしまったんだが!   作:全自動髭剃り

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いや〜やっぱ二次創作がいいんですよ〜


207訓練小隊

「遅いぞ、タカムラ訓練兵! 何時だと思っている!?」

 

 朝、神宮寺まりもなる軍曹が我が部屋にやってきて、遅刻している旨を怒鳴られた。

『アル』の調整をしていたと説明しようとしたが、問答無用で運動場へと引き摺り出されて、軽い説明とともにトラックを走らされることになった。

 

 お察しの通り、訓練兵として俺も207訓練小隊に混ぜられたのだ。

 そして早朝のランニング。周回遅れの白銀はついに膝をついていた。

 

「遅れてるのはオレだけなんだから、オレ一人だけ残ればいいじゃないですか!」

「ふざけるな! 戦場で貴様が死ぬのは勝手だが、そのせいで分隊を全滅させるつもりか!? 足を引っ張りたくなければ1秒でも速く走れ!」

 

 叱咤激励をされて、なんとか立ち上がり走り始める白銀。

 明らかに他の隊員とは基礎体力に差があるようだ。

 話を聞くに、俺が隊に所属する数日前に加入したらしい。ならば仕方ないのだろう。

 

「神宮寺教官! 白銀訓練生が遅れているため、彼の手伝いをしたいです!」

「え!? ヤマト、お前……」

「ダメだ! 余計な世話をする暇があったら、隊列を守れ! そんなに余裕があるのなら、追加で10周走れ!」

 

 なんて怒鳴り返された。

 ……可哀想だから申し出たはいいけど、却下された。その上罰までついた。

 言わなきゃよかったわ。つーか、なんで言っちまったし。

 

「返事は!? タカムラ訓練兵!」

「了解!」

 

 仕方なく、少女4人の後ろについていく。

 記憶喪失やら世界転移やら面倒な話は置いておいて、どうやらこの体はこれくらいの運動には問題ないくらいには仕上がっているらしい。

 若干息は上がっているものの、ある程度は余裕だ。

 

 おそらく朝の走り込みよりきつい練習が午後にたんまりとあって、このランニングはたいした強度の訓練ではないだろう。

 内容も、何も持たずに走るってだけだしな。

 この後は朝食を平らげて、座学らしいので、午前は訓練兵として動けってことなのだろう。

 

 おそらく午後も訓練兵としてさらに扱かれ続けるであろう白銀に心で合掌をしつつ、俺は無心で走り続けることにした。

 

 

 †

 

 

「遅いぞ、タカムラ少尉! 何時だと思っている!?」

 

 昼食後、自室で『アル』の調整に難航していると、デジャヴュのような光景に遭遇した。

 朝と同じパターンである。今回は神宮寺教官ではなく、伊隅だ。

 

「貴様の戦術機教練のために何人が待っていると思っている!?」

 

 なんて、昨日からは考えられないような怒気の孕んだ声にたじろぎながらも、シミュレータールームにやってきた。

 そして昨日と同じくシミュレーターにぶち込まれる。

 安心していい、今日の昼食は中盛りだ。

 

「貴様には今日中に動作教習応用過程Dと教練シナリオを終えてもらう。失敗した際は、貴様を佐渡島ハイヴに単騎で投下することになっている!」

「は!? 何言ってんですか、伊隅さん!?」

「伊隅大尉だ! 貴様も軍属となったのならば、言葉遣いを直せ!」

 

 佐渡島ハイヴってあれだよな!? BETAの大本丸の一つ、日本に残ってるフェーズ4のハイヴ。

 午前中の座学で学んだので、さすがに知っているが。

 そのまま俺を焼却炉にぶち込む宣言だろ。

 

「さあ、死にたくなければ死ぬ気でやれ。以上だ」

 

 と、言いたいことを言うだけ言って、伊隅さん……伊隅大尉はルームから出て行ってしまった。

 

『こちらアルファ・コマンド。搭乗者、準備は完了しましたか?』

 

 まだ顔も見たことのないCPの声を聞きながら、俺は戦術機の教習に取り組むことになった。

 

 

 †

 

 

「遅いわよ、タカムラ! 何時だと思っているの!?」

 

 夕食後、自室で『アル』の調整を諦めかけていたら、白銀が俺の部屋に来て、香月が呼んでいると知らせてくれた。

 なんとか動作教習応用過程Dと教練シナリオを数個終わらせていたので、佐渡島にぶち込まれることはないだろうと思いながら副司令室に入ると、香月が机を叩きながらこちらに怒鳴ってきた。

 

「あの」

「いい? こっちにも仕事があるのよ。と言っても、忙しいってほどでもないけど。……それで何? あんたから何かあるなら、そっちから話を片付けましょ」

「せめて、何時にどこに行けくらいの指示はくださいよ……」

 

 今日は3連続で遅刻した扱いにされたのだ。

 朝からずっと。

 神宮寺教官に、伊隅大尉に、目の前の香月副司令に。

 

「あれ? 教えてなかったっけ?」

「何も聞いてませんよ……」

「あんたに返したアルファ・エンジンに入力したんだけど……」

「は?」

 

 なんて意味のわからない返事に、素っ頓狂な返事をしてしまった。

 

「アルファ・エンジンに入力したんですか!? どうやって!」

「共通規格のIO(入出力)機関がなかったから、あんたが無理やりつなげた撃震、戦術機経由でやってみたんだけど」

「スッゲーっすね……。1日でセキュリティが破られるとは思いませんでしたよ」

「いや、セキュリティは破れていないわ。量子演算機のテストでやってみてもよかったけど、まさかノイズ付きの線形暗号だったし、数ヶ月はかかるわよ」

 

 てか、そこまでバレていたんならもはや突破されたも同然だ。

 ……俺の知識が正しければ、安定した量子演算機はそうそうあるようなものじゃないはずだが、さすがは国連軍の副司令ってだけはあるってことか。

 

「『アル』だっけ? その子に言って伝えてもらおうとしたんだけど」

「……それも知ってんですね。まあ、確かに『アル』なら間違えずに俺に伝えてくれるでしょうけど……」

 

 今日は色々あって、まだ『アル』の声が聞けていない。

 

「朝から調整をしていたんですけど、過去のデータを折り畳んで保存したはずの電子神経回路が、なぜかどんどん容量が下がっていく状態になってて……」

「……? 話を続けなさい」

「え? あ、はい。『アル』の人格って、電子的な精神回路を模倣(エミュレート)して作られているんですが、その神経回路にはその分データが蓄積していくんですよ。不可逆的な蓄積で、回路データから記録を取り出すのは不可能なんですけどね。だけど、今日起きてから回路をいじっている間、ずっとデータが不自然に消えてて」

「ふーん……」

「先ほど確認した際には、おそらく知識として入力した事実ベースのデータ以外は、……つまり"俺と『アル』が過ごした過去の経験"のデータがすっかり消えたんですよね」

 

 正直この件についてはかなり凹んでいる。

 数年間一緒に過ごした友達が、自分のことを忘れてますってなっている状態だ。

 

「幸いなことに、なぜか人格自体は変わらず保たれているんですけどね」

「……あら、そう。貴重な話だわ」

「? そうでしたか。てっきり、香月さんは斥力フィールドにしか興味がないと思っていたんですけど」

「そっちにも興味はあるわよ? というか、あんたをここに呼んだ理由でもあるけどね」

 

 と、香月は一度息を吸う。

 

「戦術機にもその斥力フィールドを実装して欲しいの」

「……、アルファ・エンジンを、ですか?」

「いいえ、そっちはいらない。鉄屑同然の戦術機を曲がりなりにも歩かせるような繊細な作業をさせる頭脳は、ひとまずいらないわ。副産物の、斥力フィールドだけでいい」

 

 斥力フィールドを副産物だと言い切る香月。

 ……確かに今の俺にとってはそうかもしれない。『アル』の方が大事だ。

 それに、『アル』を再現させられるほどの電子回路も存在しないだろう。

 

「わかりました。ですが、軍事機密の塊を、素人の俺が根本からいじるのは……」

「とある筋から、新型の戦術機を手に入れることになったの。それも、あんたが好きなようにいじっても壊してもいいやつが」

 

 立ち上がりながら、香月は続けた。

 

「ついてきなさい」

 

 

 †

 

 

 新たなセキュリティクリアランスをもらい、随分と深い場所にまでエレベーターで下された。

 数回の曲がりくねった道を通って、やっと通された場所は……。

 

「第25番格納庫。機能整備と研究開発用に用意された場所だけど、アクセスの不便さから使われていない場所よ」

 

 確かにそうかもしれない。

 ここに運び込むのも、ここから出るのも苦労しそうだ。

 

「機密保持のためとはいえ、やりすぎもどうかって話よね。それに、もっとひらけた場所も用意できたし」

「……では、俺の仕事も極秘扱いとかですか?」

「未公開の技術の実装が大っぴらにできると思うのなら、極秘じゃないんじゃない?」

 

 ……、つまりは極秘ってことか。

 

 見上げる巨体。数回乗らされた吹雪のシミュレーション個体より、刺々しい形の装甲が多い。

 山吹色の戦術機。吹雪よりはかなりこじんまりしている。

 機体脚部と、肩部装甲がない。固定砲台みたいな形で鎮座している。

 

「これ以外の部品は完成次第納品される予定よ。……どれほどかかるかはわからないけど、神経回路に干渉できる電極と、メインコンピュータさえあればどうにかなるわよね?」

「極論、そうですけど……」

「ならここで開発をしなさい。必要な工具類や、操縦者はこちらが用意するわ」

「……わかりました」

 

 そして、香月はさっさと立ち去っていってしまった。

 残された俺は、自室からアルファ・エンジンの筐体を持ってきて、作業を始めることにした。

 

 

 † 1週後、10月30日。

 

 

「タカムラ、そなた、少しやつれていないか?」

 

 という言葉で、少し顔を上げた。

 ……俺は飯を食っていたのか。

 合成食品の最後の一口が、箸に乗っかっているし……。

 

「体調管理は衛士の基本中の基本よ。……それにしても、体力のあるはずのあなたがそんな様子なのはちょっと驚きね」

 

 周りを見回してみる。

 ……ぼんやりと見えた時計は正午過ぎを指していた。

 

「先ほどから様子が変です……。体調不良なら医務室に行った方が……」

 

 周囲に座っている顔を見ると。

 207小隊の人たちが俺の顔を覗き込んでいる。

 

「……連れていく?」

 

 どうやら何か話しているみたいだが。

 多分、白銀の話題だろう。あいつ、1週間経ってるというのにまだ訓練についていけてないしな。

 ほら、あそこでヘトヘトになりながら飯を食ってる。

 

「ごちそうさま」

 

 トレイを片付けないと。

 集合時間に遅れたら、また伊隅大尉にどやされるし、CPを務めてくれている人にも迷惑がかかるだろう。

 

 そう思いながらシミュレータールームに向かう。

 あれ? 今日は珍しいことに伊隅大尉だけじゃない。もう一人いるみたいだ。

 一人……? よくみてみたら、4人もいる。

 

「伊隅大尉、ただいま到着しました」

◯⬜︎◯⬜︎△◯⬜︎(おい、タカムラ)△◯◯⬜︎⬜︎◯(どうしたんだ)?」

 

 初めての顔も一種類あるし。

 自己紹介をしないと。

 

「初めまして、高村ヤマトです」

⬜︎△◯(タカムラ)!? ◯⬜︎△◯(何をやって)……! △◯◯⬜︎⬜︎(早く医務室に)!」

 

 ……、何か叫んでる。

 ……?

 

 シミュレーターの方に歩き出そうとして。

 なんだか景色が一気に崩れて――。

 

 

 †

 

 

「はぁ、……この様子じゃ、今日の模擬戦は無理だな」

「ですねぇ……」

 

 二人の少女、みちると水月は点滴を受けている少年、ヤマトを見下ろしていた。

 気を失ってからまだ回復する様子はないが、衛生兵からはただの過労だからじきに目を覚ますと言われている。

 

「どうやら午前中は訓練小隊に混ざって座学を受けているそうだが、……それでこんなになるものなのか?」

「座学……? こいつって、少尉じゃないんですか?」

「事情があって、特務少尉という扱いだ。だからと言って体力に問題があるわけでもなさそうだったのだが……」

 

 現に倒れているのだ。

 何かしらの事情があったのかもしれない。

 

「私との戦闘シミュレーション後もケロッとしていたのだ」

「なんでそんな奴が座学を……」

「軍としての常識のなさを叩き込まれているらしい」

 

 今はすやすやと眠っている。

 軍としての常識の叩き込みが不十分だったのか、……神宮寺教官に限ってそんなことはありえないはずだがと思う二人。

 

「いずれにせよ、本日の予定は繰越にしよう。速瀬中尉、午後は自主訓練だ」

「はい、了解しました」

 

 

 †

 

 

 ある程度の教練シナリオをこなして、シミュレーターコックピットから出る。

 水月にとって今日の錬成は、予定と違ったこともあって若干の不完全燃焼だ。

 

 大尉から、大尉自身よりも回避行動が上手いやつと戦わせてもらえると聞いてワクワクしたものだったのだが。

 当の本人はルームにつくや否や青い顔で倒れたのだ。

 

「あの……」

 

 少しため息が出る。

 別にサボるわけじゃないが、このまま続けたとしてもいい結果が出そうにないのは目に見えている。

 だからこそ、少しリフレッシュを兼ねて顔を洗ってこようと思ったわけだが。

 

「伊隅大尉は……」

 

 ルームの扉の前で、困ったように立ち尽くす男の陰が見えた。

 先ほど命懸けで自己紹介の挨拶をするだけして倒れたやつで。

 自分が医務室に担ぎ込んだやつである。

 

「タカムラ!? あんた医務室じゃ……!」

「え? あー、すみません、お手数をかけてしまいました?」

 

 片手には点滴、もう片手を膝に乗せてやっと経っている様子だ。

 

「医務室を抜け出したの!? バッカじゃないの!?」

「す、すみません……。だけど遅刻するのはやばいので……」

「遅刻も何も、あんたの今日の練習は中止になったわよ! 早く医務室に戻りなさい!」

「それはできないですよ……」

 

 まるで幽霊のようにシミュレーターにしがみつく。

 ただならない状態に多少たじろぎながらも、さすがは衛士、力ずくでヤマトを引き剥がす。

 

「あのねぇ! そんな体調で模擬訓練なんかできるわけ……!」

「ダメなんです……! やらないと俺は、……俺は佐渡島ハイヴに……」

「佐渡島!? なんで急にそんな……」

「俺は、殺されて……、死んでしまって……。う、……うわぁっああっぁっ!!」

 

 意味のわからないことを言い出しながら、再び崩れ落ちるヤマト。

 そしてそのまま、再び気絶したのだった。

 

 

 †

 

 

 もう一度ヤマトを医務室に運び込んだ水月は、ドレッシングルームでみちると話していた。

 

「……まさか、発破をかける為の言葉を真に受け止められるとはな……」

「なんでそんな発破のかけ方をしたんですか……」

「いや、とある筋から、この男が異様に『死』に対して恐怖していると聞いてな……。まさかここまでとは思わなかった」

 

 その筋というのは間違いなく香月夕呼だが、一応守秘義務があるためにぼかしたみちる。

 

「はぁ……。新兵、……にしてもここまでしますかね」

「ああ、普通、人間とはある程度受け入れるものだ。たとえ訓練されていまいとも、"現状命の危機がなければ、なんとかなる"と思うはずなのだが……」

「BETAを目の前にしているわけでもないのに、ここまでというのは見たことがないですね」

 

 一応看護兵には彼への伝言として、副司令から今日は休んでいいとのお達しが来ていると伝えてある。

 流石にそこまで言われればこの男の行動も止まるだろう。

 

 衛士の指揮官としてはともかく、訓練兵に近い心理状態の男相手に何かいい指導の仕方を持っているわけではない。

 なので、神宮寺軍曹に任せることになるだろう。

 そう思いながら、みちるは水月とともに医務室からさることにした。




 書き溜めはここまで! ゆっくりTDAとAFとかやりながら書いていきます〜
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