あくびがでるわ
いやけがさすわ
しにたいくらい
てんでたいくつ
まぬけなあなた
すべってころべ
谷川俊太郎『ことばを中心に』(1985、草思社)p240,241より引用
真白。
どこまでも、どこまでも。
静かに雪が降りつのる。
それ以外は、何もない。
否。
微かな、弱々しい、蒼き灯火。
息を吹きかければ忽ち搔き消えてしまいそうなソレはいつも傍らにあった。
消すまい、と護っていたわけではなく、消しても消さなくてもどちらでも構わなくて、ただなんとなく消さなかった。
『おや、それは違うでしょう?』
……?
『こちらです、こちら』
――振り返ると、金属の船が落ちていた。
『落ちているとは失敬な。きちんと着陸しましたとも』
勝手に人の内界に着陸しないでいただきたい。
蒼い灯火――ウサミンの影法師――がはしゃぐようにゆらゆらと揺れる。
新しもの好きだから『みてみて輝虎くん! ロボだよロボ! かっこいー!』とでもなっているのだろう。
いや、まぁ。
魂でわかるというか、愛馬のことだから一目見て気づかざるを得ないというか、白銀に輝くロボロボしい船は放生月毛であった。
であれば、その主は。
『はい、ギャラクティカ輝虎です。同じ来訪者同士仲良くいたしましょう』
メカメカしい格好をした私が、こちらへ笑みを向けた。
鏡合わせ、というには差異が大きい。
最近『セイバー死すべし慈悲はないッ』とちょっかいかけてくるアサシンと似た香りがするので、同じ来訪者というのは、異なる世界線からやってきた者同士ということか。
というか、溶鉱炉に沈んだのではなかったのかギャラクティカ輝虎。
『溶鉱炉に沈んだ程度でどうにかなるようなヤワな身体はしておりませんので。とはいえ、ちびトラ? でしたか。あちらの身体へ戻る前にあなたと話をしておきたく』
戻ってからでも構わないだろうに。
この会話だって、ちびトラと私が同一存在であるから、ちびトラに宿ったあなたが私に干渉できているのでは?
『干渉できる理由についてはその通りです。しかし、ちびトラにはプロテクトをかけましたから戻ると干渉できなくなってしまうのです』
……プロテクト?
『ウサ=ミンが――こちらではウサミンですか。ウサミンがちびトラの霊核を経由して変なモノを観測しかけていたので慌てて介入いたしました。全く、軍神たる私がいるというのに邪神に目を向けようなど……本人にそのつもりはなかったかもしれませんが……おっと、それは本題ではありませんので置いておきましょうか』
存外重要な話な気もするけれども。
とりあえずウサミンがまたお馬鹿なことをしたというのは記憶に留めておこう。
して、本題とは?
『刀あります?』
三十五振りほど。
『じゃあ適当に一振り選んでください』
では不知火で。
『ちびトラ経由でウサミンとのパスを感知して、それから……』
いや、そういう細かいことは、ちょっと。
というか、何がしたいので?
『ウサミンが邪神と中途半端に繋がったままなので、ちゃんと斬っておこうかと。信長が混ざり物だったせいで固結びになってしまっていて』
なるほど。信長は今回の特異点で大暴れしたそうな。黒幕は別にいて操られたとかなんとか聞いていましたが、あっはははは――我が伴侶にそこまで仇をなしたのならば、ついでに信長も斬りましょう。
『いやー、ほら。あんまり信長をどつくと景虎に嫌われますし』
むむむ。
景虎は――私とウサミンの長男というか長女というか。
景勝も次女というか次男というか。
景虎は家督ほっぽって信長のところに嫁いでいったので、景勝が家を継ぐこととなった。
ちなみに景虎にねだられて手引きをしたのはウサミンだ、私のことを親馬鹿というが彼女も大概である。
ともあれ一旦、信長のことは置いておこう。
『では、パスの感知はこちらでやるので、そちらは適当に邪神っぽい糸をズバッとやってしまってください』
うわぁ。
頭の中に眼球を埋め込まれたような感覚。
見えていないものが見える。
ギャラクティカ輝虎が調節しているのか、段々と糸のようなものだけがはっきりと捉えられる。
ちびトラとの霊基共有、マスターとの契約。
薄い縁も形になっているのだろう、無数の糸から怪しげなものを探し出す。
『あ、待ってください。それを斬ったらウサミン死にます』
あぶにゃーい!!
いや、いやいや。
これが一番不穏な気配がするのだが。
『私もそう思います。しかしそれは■■■――……』
うん? 今、何か言いました?
『……なるほど、そういう。いいえ、何も言っていませんよ。それはウサミンの本体みたいなものですから、傷つけないようにお願いします』
本体?
『えーと、そうですね。あなたが人ではないナニカだとすれば、ウサミンは人ではないドコカというわけです。ほら、あなただって、ウサミンが只人でないことくらいはわかっていたでしょう?』
それは、まぁ。
勘ではあるが。
『そうでしょうそうでしょう、人外同士、ウサミンはお仲間ですから。だからこそ、あなたもウサミンを好きになったのでしょう?』
…………?
『おや?』
思考が止まる。
喉を震わせる。
「私は、ウサミンのことが、好きなのですか?」
『……おやおや』
ギャラクティカ輝虎は、上杉・S・輝虎・リリィ・虎千代のように、目を丸々と丸めた。
***
弱い。弱い。弱すぎる。
父上や姉上がこの人を
軍学書の話とか碁の腕前とか、たまに気になるところもあるけれど、やはり私は実際に死合わなければわからない。
この人のことが、わからない。
世界平和、世界統一、つまりは世界征服。
なんて、出来もしないことをやろうとしている。
本人が一番、出来ないとわかっていて、諦めていて、それなのにやめない。
愚かだな、と思う。
馬鹿な人だ、と思う。
そして、やっぱり何もわからない。
父上も母上も兄上も、私に近づかない。
毘沙門天の化身として、人を守護する。
母上は私にそう望んだ。
仏門に帰依し、徳を積む。
姉上は私にそう望んだ。
私の近くにいるときの姉上は、いつも浮かない顔をしていた。
人というのはそういうものかと思っていたが、弱くて愚かな
彼女は私に何も望まなかった。
「僕の観測に君はいないからね、まぁ実際嫡男じゃない君は寺預かりになるだろうし、そしたら寺へ遊びに行くよ」
「では何故、世界統一だとか何とか不遜なことを私に語ったのです」
「え、自己紹介。仲良くなるための自己開示だけど」
本当に、よくわからない。
廊下を歩きながら、記憶を整理していた。
『好きだから、ウサミンを妻に選んだのではないのですか?』
というギャラクティカ輝虎の言葉を反芻する。
しかし結局、彼女を妻に選んだのは、彼女がずっと当たり前のように傍にいたからで。
夫婦というものは仲睦まじくあるものだから、そう振る舞った。
ただ、それだけ。
(の、はずです)
内界で指摘されたが故にギクリとしたけれど、ギャラクティカ輝虎はそもそも別世界線の別存在。彼女の言うところの好きという感情が勘違いである可能性もなきにしもあらず。
だって私は、ウサミンのことなんて。
ウサミンなんて。
「あ、輝虎くん。ご飯食べに行こうよ。今日のメニューは何だろうねぇ」
ばったり出くわしたウサミンがふにゃりと笑う。
……なんだ。
私はちゃんと、恋というものをしていたのですね。
ウサミン:今ね、FGO2026夏イベの情報が出ていて、水着のシルエットが3つあるんだよ
ぐんしん:はい
ウサミン:左のシルエット、すごい豪華な感じがするから毘沙門天な輝虎くんの水着に違いないよ
ぐんしん:弓みたいなの持ってません? 弓はちょっと
ウサミン:右のシルエット、角が生えているね。越後の龍である輝虎くんなら角が生えてもおかしくないから輝虎くんだよ
ぐんしん:右手に持っているのは何でしょう? 食べ物ですかね? 紅閻魔殿やプロテア殿が色んな食べ物を持っていますし、リリス殿もカツ丼が得意料理だとか。楽しみですねぇ
ウサミン:真ん中のシルエット、頭の上にいるの、猫にしては耳が丸いから虎じゃないかな? つまり輝虎くんだとも!!
ぐんしん:曰く、海の家で食べるといつもより美味しく感じるとかなんとか、ついでにキンキンに冷えたビールも飲むと……にゃるほど、上杉輝虎いざ参る!
ウサミン:輝虎くんどこ行くの!? あ、今回でとりあえず本編は完結です!!
おまけを書く順番
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バレンタイン(マスターに渡す)
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サバフェス(メタ発言てんこもり)
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歴史調査(厠で乙ったって本当?)