越後の百合夫婦   作:白虎しゃも

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期間限定イベント『ぐだぐだ越後幕府』中編

 

一期は夢よ ただ狂え

 

『閑吟集』

 


 

 我が伴侶と出会ったのは、ほんの幼い時分のことです。それはもう、人が分からぬということすら分からぬほどの年頃でした。

 

 それでも私は、彼女を一目見て()()()()()()と思いました。

 どうにも、ひたすらにココではない何処かを見つめている。

 

 遠く遠く、遥か遠く。

 手の届かない何処か。

 

 そんな彼女がいる場所は春日山城内。人気の無い庭とはいえ、いや人気の無い庭だからこそ異様でした。もしや曲者かと思うほど。とはいえ怪しい者ではございません。家の者が彼女を案内している様は何度か見かけていましたし、父上とよく話をしていました。

 ちなみに、私と彼女は同い年――実は誕生日も同じです――なので、家が幼女を丁寧に応対していた様はともすれば怪しい物でしたが、当時はそういうものかと思っていましたし、種も仕掛けもあることですから、そのあたりの話はおいおい、ということで。

 ともあれ、その時の私は彼女の様子が気になったので、兄上たちの稽古を真似て振り回していた棒切れを肩に担ぎ、声をかけました。

 本当は棒切れで小突こうかとも思っていましたが、少し前に同じようなことをして叱られていたので止めたのです。

 

 かくして、彼女の蒼き双眸はこちらを見ました。

 

 目と目が合った瞬間、私は気づきました。

 はて? なんだかとっても弱そうだ、と。

 

 なんと、先ほどの気配は一体? と訝しくてたまらなくなり、試しに棒切れで小突いてみれば、実際余りにも弱すぎました。カブトムシにも負けるのでは? と思うほど。なのでもう、紅くなった額を両手で抑え、涙を浮かべた蒼き瞳でこちらを呆然と見つめる彼女に、私の興味は失せていたのです。

 

 我ながら何たる所業。

 

 いえまぁ、今だからそう思えますけど、当時は何も分からず、暫くは何故人が泣くのか怒るのかが分からず、いや今もちょっと怪しいところが……あはははは! はい、この話おしまい。

 

 

***

 

 

 

 特異点における春日山城内にて。

 

「む、カルデアのマスターが来たようだ」

「おや、それでは少し様子でも見に行きましょうか」

「……出来れば将軍にはじっとしていてほしいなー、なんて」

「わかりました! いってきますね!」

「おっと、人ソレわかってないと言う。あぁ行っちゃった……」

 

 

 

***

 

 

 

 現実は戦で乱れている。

 未来は戦争で終わっている。

 

 どうして。

 500年後に滅亡が来ると分かっても、人一人に出来ることなんてたかが知れているのに。

 ただ悪い夢を視てしまった、と忘れてしまえれば良かった。/毎日夢に出てくるから忘れる間もなくて。

 そんな未来のことなんて知らないね、と吐き捨てたくもなる。/赦してはならない、決して赦してはならないことだ。

 せめて体系的な未来の知識とかくれないものかな。/断片的な光景。戦争が始まり、人が死ぬ。殺す。殺される。そればかり。

 

 どうして。

 母の胎内にいる頃から500年後の未来とはまた別の未来観測が出来た。未来観測、と言っても決まった未来を視ているわけじゃなくて、体験型だ。

 例えば武家の娘として平凡に生きるとしよう、若くして病で死ぬ。うまいことやって(このうまいことが分かるまでにたくさん死ぬ)病を克服しよう、戦のドタバタで死ぬ。地球統一の前提かつ生き残るためにも越後の平定は必要だよね、もちろん死ぬ。

 こんな風に僕が死ぬまでの未来を体験することが出来た。500年後にチラと視えたコンピュータによるシミュレーションのようだから、これらの処理を演算と呼んでいる。

 最初の頃はこの力があれば地球統一も夢じゃないさ! とテンション高めだったけれど(だって一瞬で人生を何度もやり直せるようなものだ、演算一回にかかる時間は瞬きにも満たない)、越後は不安定だし武田の騎馬隊強すぎるし小田原城は堅すぎるしアイエエエエ!? ニンジャナンデ!? ニンジャ!? だし。

 凡人がいくら頑張っても敵わないと不貞腐れ、気分転換にオカルトへ手を出したこともある。なんと、それなりに演算回数を消費したものの、便利なものを身につけることが出来た。これで勝つる、まぁ死ぬんだけどさ。

 しかし妖術だとか魔術だとか、神秘というものに関われば関わるほど、演算に負荷が掛かる。一瞬で終わっていた演算が、数秒、数分と掛かってしまう。これまで考えもしなかったことを考えでもしているような感覚だ。……大丈夫? これまでの演算って本当に信頼できる?

 一応、現実でも演算と同じ言動をすることで父母を説得出来ているし、オカルトも上手く作用している。例えば、認識改竄の術で周りに自分を父と誤認させることができていた。しかしまぁ、何回演算を繰り返しても日本国内の統一すらままならない。

 演算内の最善手と思われる振る舞いをしながら、目的を果たすことができる筋道を探す。何度やっても見つからない、何をやっても見つからない。

 

 殆ど惰性で演算を回す。せめて越後くらいは平和にしたいな。そのためには、日本くらいは統一しなきゃいけないんだけどさ、越後を平定しても越後以外が荒れてたら平和にならないんだもん。

 

 はぁ。

 情けない限りだ。

 

 このまま僕は、道半ばで死ぬことが分かったまま、その終わりまで生きていくのだろうか? また死にながら、そんなことを思った。

 

「一体何処を視ているのですか?」

 

 演算では、ここに誰もいないはずだった。

 演算には、彼女は何処にもいなかった。

 演算して、やはり彼女はいなかった。

 

「……えーと、君は?」

「虎千代と申します!」

 

 次の瞬間、幼女の筋力から出せる威力を遥かに超えた一撃を額に喰らった。

 

 ――えっ、どうして? 滅茶苦茶痛いよ? あの子、そのままどこかへ行ったよ??

 

 ジンジンと痛む額を抑える。わからない。彼女が何を思っているのか。わからない。彼女が次にどう動くのか。正直怖い。手のひらに血がついていた。

 

「そういえば、わからないって怖いことだったっけ」

 

 500年後ならばともかく、列車も飛行機もない時代、出会う人の数なんて限られる。何度も繰り返していれば、その人たちがどんな人間か把握できていたし。もし新しい人と会ったとしても都度、色々と調べたりした。ウチにもニンジャはいるからね。だからまぁ。

 

「くふっ、はは、あはははは! あぁ、知りたいなぁ理解(わか)りたいなぁ、君のこと!」

 

 だって、君とは一度きりしか生きられない。

 愉快、愉快。こんな風に笑ったの、一万年ぶりくらいかもしれない。

 

 

 

***

 

 

 

「上杉アルトリアです」

「誰だい君は!?!?」

 

 山を下り、春日山の麓の町で一息つこうとしたら上杉を名乗る金髪碧眼甲冑騎士と出会った。顔を見れば特異点Fで出会った英霊と同じ顔をしている。

 

「青いアーサー王だ」

「あっちが黒いんですよ」

「あれ、もしかしてカルデアのアーサー王だったりする?」

「いいえ、上杉アルトリアです」

「そっかぁ」

 

 そういうことらしい。

 キャス湖は未だに目を白黒とさせていた。

 

「ようこそ、越後せんべい王国――ではなく越後どらごん王国へ。私が王です」

「確か、キャス湖さんの話だと越後幕府が聖杯を持ってるんだよね? じゃあ上杉アルトリアさんが聖杯を?」

「いえ、越後どらごん王国は越後幕府とはまた別となっています。独立しました」

「しないで……」

 

 キャス湖の呟きはワイバーンの羽音にかき消された。エクスカリバーしてから話を続ける。

 

「私はこれから越後ロシア村――ではなく越後どらごん村にウジャウジャいるゴーストをエクスカリバーしに行くところです。手伝っていただけるなら褒美が出ますよ、幕府から」

「そこは王国からじゃないんだ」

「越後どらごん村は幕府直轄地なので」

「ゴーストがウジャウジャいる幕府直轄地is何」

 

 キャス湖は頭痛が痛そうな顔をして、深々とため息を吐いた。

 

「はぁ、何がどうなっているんだ……せめて演算さえ出来れば……宝具封印は悪い文明だろう全く」

「キャス湖さん、手伝いたいんだけどいいかな?」

「……そうだね、手伝おうかマスターくん。城下町に一度拠点を設えるためにも褒美は魅力的だ」

 

 そうして、上杉アルトリアの後についていく藤丸立香とキャス湖、その後ろ姿を伺う行人包姿の人影が微かに揺れる。

 

「なんとまぁ。驚き桃の木毘沙門天。まさか彼女があちらにもいるとは――」

 


 

アイテム交換所

キャス湖

イベントボイス1

「やぁ、越後の何でも屋へようこそ。これが本当の越後屋ってね。お主も悪よのぉ――って言われる側かコレ。ともあれ、ここはホワイトな越後屋だから安心してよ」

イベントボイス2

「兵站の確保は戦の基本だ。腹が減っては戦は出来ぬ、だろう? さ、たくさん用意したからどんどん持っていくといい! お代はいただくけどね!」

イベントボイス3

「インフォメーションには目を通したかい? 兵は拙速を尊ぶといえど、事前情報くらいには目を通しておいた方がいいよ。決して『他の人がチェックしたからヨシ!』とかしないように」

イベントボイス4

「ひぃ、ふぅ、みぃ、はいどうぞ。さて帳簿を付けたら、品出ししてから発注かけて、と。え、随分手慣れてるって? こういうのも僕の仕事だったからね、えいや! って押しつけられたとも言うけど」

イベントボイス5

「それを選ぶとは流石マスターくん! 正解だ! 目の付け所が越後だね!」

 

ポイント交換

謎のタイガーX(ちびトラと交代制)

イベントボイス1

「越後幕府勘定所へようこそ! へ、ちびトラがでかトラになってる? あはははは、なんのことやら! 私は謎のタイガーXですとも、にゃんにゃん」

イベントボイス2

「こちらでは集めたポイントに応じて物資を支給しています。ちびトラでも出来るよう品出し準備がされているので、私も余裕のお渡し。これには老中もにっこり」

イベントボイス3

「立て札もといインフォメーションは確認していますか? うちには突拍子もないことをやらかす軍師がいますから、きちんと確認しておいた方がいいですよ?」

イベントボイス4

「ちびトラだったり謎のタイガーXだったりで混乱する? Don't Think, Feel! ですね。はい、こちら次の支給品でーす」

イベントボイス5

「そなたは働き者ですねぇ、どうです、このまま越後幕府で正規雇用というのは。えーと、雇用条件は忘れましたが、アットホームな職場ですよ!」

 

キャス湖:前後編のはずが百合夫婦のイチャイチャが足りずに中編を生やしたけれどもイチャイチャ出来なかった、とのこと。

ぐんしん:殴打はイチャイチャに入りませんかか?

キャス湖:入るかな……入るかも……あ、あと目次に表紙が追加されたよ! よろしくね!

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