越後の百合夫婦   作:白虎しゃも

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お中元イベント『戦国のメリークリスマス~月下に舞い翔る白銀のサンタクロース~』 プロローグ

 ここを越後幕府カルデア奉行所とする。

 そんな宣言をした場所はカルデアのボイラー室横であった。宇佐美定祐こと僕にとって一番都合の良い場所であるためそうしたのだが。

 

「うぅ、暑いなぁ……」

 

 ボイラーの熱気がとてもよく伝わってくる。辟易としながら机に向かって作業を続けていると、輝虎くんがコンコンと壁を叩いた。

 

「そうですねぇ、外まで壁をぶち抜いたら涼しくなるのでは?」

「天才の発想だ、絶対やめてね」

 

 僕が今やっている作業がパァになる。というかココは南極だ。涼しくなるどころか凍えてしまうよ。

 

 さて、なぜ僕がボイラー室横を選んだのかを語っておこう。

 僕の魔術というか神秘の取り扱いには中心あたりに方術体系も含まれていて方角が割と重要っぽくて……うん、細かい説明は省こう、出来ないし。

 ざっくり言うと、携帯電話を使うときとかに電波の良し悪しってあるだろう? 一番電波の通りが良いところがこの部屋だったんだ。

 僕が元いた世界線と今いるの世界線、それをつなぐ宝具を魔改造して特異点にしてしまった中継点。今は特異点が解消して、中継点としての役割だけを果たしてくれているが、カルデア技術部(主にダヴィンチくん)監修のもとでメンテナンスを行っている。この中継点がなくなっても僕たちが召喚できなくなったりとかはしないけれど、上手く使えば当初の予定通りある程度のリソースをカルデアに提供可能だと判断され、実際そろそろ準備が完了しそうだ。

 

 というわけで、もう一頑張り……するには暑いなぁ!! 輝虎くんは大丈夫かと目を向ければ、涼しげな顔で刀の手入れをしていた。

 

「輝虎くんは暑くないの?」

「暑いには暑いですが『心頭滅却すれば火もまた涼し』かと。む、そのように例えるには暑さが足りていませんね。もっともっと熱くして、それこそ我慢大会でもしたら楽しそうです」

「人体の限界まで熱くしそう、身体に悪いよ」

「ウサミンは駄目ですね、死にます」

「限界超えちゃったかー」

「晴信なら耐えるでしょう、いけますいけます」

「軽く言うなぁ。まぁ確かに武田のノッブならね、いけるいける」

 

 本人がいたら「やめろ、誰がやるか」と言いつつ、なんだかんだ付き合ってくれるはずだ。

 

 しかし暑い。暑すぎる。

 

 そう言えば、少し前に涼しげな格好をしたサーヴァントが増えていた。無人島がどうのこうの、いや、あの格好自体は特異点関係なかったはずだ。

 

「んー、ルーンで霊基を弄って、だから、エーテル配列、分解、再構成、いや違うかな、参照先をズラして反映させた感じ? じゃあ弄るべきは霊核の――」

「えいっ」

「ミ゚」

 

 思い出しながら再現しようとしていたら、一陣の風が吹いた。

 

「あの、輝虎くん? 旦那様? 我が主? どうして刀を僕の目の前に投げちゃったの?」

「ウサミンが思いつきで愚行に走って死にそうな気がしたので」

「よしよし、僕が何をしようとしていたか説明するとしよう、だからもう刀は投げないでね」

「説明によっては投げます」

「投げちゃうかー」

 

 輝虎くんは理由なく暴力を振るったりしない。理由があればホイホイ振るうけど。さっきのは、おそらく魔力の動きに反応したのだろう、しかし今回のこれは何の危険もない行為だ、きっと話せばわかってくれるはずさ!

 

「ちょっと水着になろうと思って」

「駄目です」

「なんでェ?」

 

 二本目が壁に刺さった。これは説明しながら魔力を動かした僕が悪い。でもここカルデアからの賃貸みたいなものだから、壁に穴を開けるのはやめようね!

 

「水着よりも鎧の方が強いです」

「そうだね」

「身体よわよわなウサミンが水着を着たらどうなるかなんて考えずとも明らかです、要は死にます」

「水着を着たら死ぬのか僕……」

 

 流石にそこまで貧弱じゃないと思うけどなぁ。ま、わざわざ輝虎くんの鎧を脱ぐのともない。彼シャツみたいで気に入ってるし、鎧と紐付いているちびトラくんも可愛いし。

 

「にゃ?」

 

 膝の上で丸くなっているちびトラくんを撫でる。ニコニコ笑顔でこちらを見上げている。とても可愛い。

 

「あ」

「……今度は何を企てましたか?」

「とても良いことだとも!」

 

 ちびトラくんを抱き上げて、輝虎くんに掲げて見せる。

 

「ちびトラくんに水着を着せよう!」

「はぁ」

「僕に貸してもらってる輝虎くんの霊基は鎧で固定されているから、鎧から転じたちびトラくんは姿形が変わっても根本の仕様は変わらないんだ。ようは、水着になっても強いままってね!」

「ふむ、そのナマモノのことはよくわかりませんが、そんな感じはしますね。私から生まれたものならばそうそう弱体化しないでしょう、知りませんけど」

「でしょ! えへへ、じゃあ早速してみよー、ちびトラくんもいいかい?」

「にゃー!」

 

 元気な返事にウキウキとしながら、ちびトラくんの霊基を弄る。

 

「しかしそれでは、ウサミンの暑さ自体は変わらないのでは?」

「変わるよ、涼しい気持ちになるもん」

「そういうものですか」

「そうそう、身体の温度を下げるのも大事だけど、心を涼やかにするのも大切なのさ」

 

 そのまま生前のように薀蓄というか豆知識をつらつら並べようとして、ふと気がついた。

 

「そっか、生前は夏も涼しかったから、あんまりこういう話はしなかったね」

「確かに、夏はあまり。しかしその分、冬については色々と話していましたよ。寒さがどうこう、雪がどうこう。特に越後は、積雪すれば軍を動かすこともままなりませんから」

「あったねー、軍もそうだけど流通がねぇ。ソリを使うにしたって限度があるし、サンタクロースみたいに空を飛ぶソリとかがあればまた違ったのかもしれないけどさ」

「えぇ。ところでウサミン、手元を見てください」

「うん?」

 

 輝虎くんに向けていた視線をちびトラくんに戻す。膝の上には猫くらいの大きさのちびトラくん、ではなく、幼女くらいの大きさで甲冑付き白いミニスカサンタ服を身に纏った幼い輝虎くんが、僕の顔を覗き込んでいた。

 

「上杉・S(えす)・輝虎・リリィ(なので)虎千代! サマーにサンタな私が推参ですよ、(せんせい)!」

 

 再び輝虎くんの方を向く。

 

「あれ、またなんか僕やっちゃった?」

「あははははは! いつも通りの愚行ですね!」

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