一、至誠に悖るなかりしか
一、言行に恥づるなかりしか
一、気力に欠くるなかりしか
一、努力に憾みなかりしか
一、不精に亘るなかりしか
松本元『五省』
「では
「わわ、まって、ちょーっと待ってね」
ぐいぐいと顔を近づけてくる虎千代くんの頬に手を添え、じぃっと覗き込む。
……うん、念入りに視てみたけれど、催眠や洗脳の類いはなさそうだ。
「お、おかしい……この年頃の虎千代くんは僕に対して塩対応がデフォのはず……! だって為景くんや綾くんが口添えする前とかガン無視されてたもん!!」
「こんなわたしはお嫌いですか?」
「好き好き大好き超愛してる」
いやっほう! 虎千代くん可愛いやったー!
「んー……」
そんな僕達を横目に首を傾げる輝虎くん。ところでこれは浮気に入るのだろうか、同一存在セーフ? ちびトラくんを猫可愛がりしていたのと同じって考えていい? ――駄目かも!
「ぎ、
「はい? ……あぁ、元服前の童に手を出すのはそりゃ
「あはははは! 当世の価値観に染まりすぎではありませんか、
「って、いや手は出さないよ!?」
「……
「出しちゃうかも!!」
違うんだ。好きな子にしょんぼりされると笑顔になってほしくなるじゃないか。そういうことなんだ。僕はロリコンじゃないよ。
「そもそもウサミンは手を出される側でした、というのは置いておきまして……うーん、やはり
輝虎くんが目を細める。対して、虎千代くんは丸々とした瞳を丸めたまま、何ということもないように答えた。
「ギャラクティカ輝虎のことですか?」
「「ギャラクティカ輝虎」」
「Sはサマーであり、サンタであり、スペースでもあります」
「そっかぁ」
ははーん、さては僕、ちびトラくんにとんでもないことをしてしまったな?
「大丈夫ですよ、
「ねぇ最後」
銀河で一体何が起きたっていうんだ。
『緊急召集、緊急召集。キャスター宇佐美定祐は至急管制室に来てください。特異点が確認されました』
こっちでも何か起きちゃったかぁ!!
***
そうして、ウサミンと
「よもや
呼び出されているのがウサミンだけなので、私がレイシフト出来ない可能性は予測できていましたが、その場合は
『え、輝虎くんレイシフト出来ないの? 僕(上杉輝虎の鎧着用)や虎千代くん(ほぼ上杉輝虎そのもの)はレイシフト出来るのに?』
『うん、それも宇佐美くんの適性が100%に近いのに対して上杉将軍は0%となっている。加えて観測された特異点は太平洋戦争末期の東京、つまりは君達が参加していたという聖杯戦争の舞台そのもの。憶測にはなるが、聖杯戦争の参加者が宇佐美くんを呼び出しつつ、上杉将軍は来させないように細工した可能性がある』
ウサミンのメンテナンスしていた中継点が変質して再び特異点になったことと一緒にドクターからそんな話が伝えられました。
『輝虎さんとキャス湖さんが参加した聖杯戦争?』
『うん、軍が内部でドンパチしたのさ。もし関係者が関わっているから怪しいのは元々聖杯持ってた陸軍かなー』
『それをウサミンが持ち逃げしましたからね、しかも我々は海軍側のサーヴァントでしたし』
『アーチャーが最有力、ランサーもマスターがドイツと繋がっていたから対抗馬、大穴はセイバーかな』
『あれ、セイバーは輝虎さんじゃないの?』
『お、いいところに気づいたねマスターくん。輝虎くんは僕が勝手に呼んだだけだからセイバー枠としては他のサーヴァントがいたんだ』
『確か新撰組の沖田某でしたっけ』
『そうそう、だけどアサシンもセイバーを名乗っていたね』
『えぇ……?』
『話を戻しまして、海軍側を考慮から外すのは早計では? バーサーカーはともかくライダーについては情報が足りていませんでした』
『情報の足りなさで言ったらアサシンじゃない? 特にマスター、一般人が巻き込まれた感じだから拾いきれなかったんだよね。あ、そういえばアサシンのマスター、なんだかマスターくんに似てるかも』
等々、脱線しながら話をしつつ準備をして、いざレイシフトが終わった現在、通信が繋がらなくなっています。
マスターの観測は出来ていますが、それ以外はてんで駄目。これまでもあった事態のようで、職員達が復旧に向けて忙しく動いていました。
殴って解決しそうなことでもないので、私も大人しく、ウサミンを信じることとします。
ウサミンは身体自体よわよわですが、腐っても私の軍師です。マスターの助けとなり、此度の特異点もなんとかするでしょう。生前もその手腕を遺憾なく振るっていましたし――
『なんで晴景くん家督譲ったんだろ?』
『なんか変な顔をしながら「宇佐美がお前を見込んだのなら託すとしよう」とか言ってました』
『……そう取ったかぁ、つまり僕のせいじゃん』
『なんで関東管領というか上杉家の養子に……?』
『越山して関東に戦へ行って、終わった後にウサミンが色々調整して関東の人たちまとめてくれるじゃないですか、アレの評判が結構いいらしいですよ』
『……君の武力がなければまとまることはなかったから今回については半々でいい? 半分は僕のせいということで』
『なんで将軍なんで????』
『これについては私もさっぱり』
『みこーん、通りすがりのただの巫女ですが、何やらお殿様は身体の中に人ならざるものの欠片をお持ちの様子。そこを完全体としての両性具有に肉体改造をされることで神性マシマシ脳味噌焼き焼きといったところではないでしょうか?』
『はいはい僕のせい僕のせい――誰だい今の!?』
……まぁ! なんとかなるでしょう!!
***
「それで最後は、ギャラクティカ輝虎くんが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいって……おかげで聖杯が回収出来たんだ……!」
「にゃー……!」
「あっはははははははは! ――ウサミン、もう一度最初から全て説明なさい」
上杉さんちのタイガー道場
[道着に竹刀の上杉輝虎、ブルマ姿の宇佐美定祐]
ぐんしん:というわけで、デッドエンドの一つ目はウサミンが水着になる、つまりは自分の霊基改造を行う、です。
ウサミン:マジで死ぬんだ僕……
ぐんしん:二つ目は余所見をせずにちびトラの霊基改造を行う、です。
ウサミン:もしかして、霊基改造ってしない方がいい?
ぐんしん:というより生前の肉体改造と同じ方法でやればいいのに、外へ目を向けるから変なものを観測するんですよ。迂闊過ぎます、馬鹿ですか、馬鹿ですね。では馬鹿弟子、そこに直りなさい。
ウサミン:師範くん、令和に体罰はよくないよ――あいたぁ!?