ゴッドイーター/レッドストーム   作:アガラちゃん

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一章 配属初日
【初めての変革】


 ……緊張していた。

 

 冷たい金属の台に横たわり、伸ばした右腕が機器の上に乗せられる。

 

 上を見ると、クレーンのような大型機器の腕が、僕の右手首の上で静止。半輪の形状の部品の奥に大きな注射針の先端が(のぞ)いている。

 

「さて、心の準備は?」

 

 薄暗い室内に、男性の声が残響を(ともな)って耳に届く。

 

 足下へ視線を向けると、左目に眼帯代わりのバンダナを巻いた長身の男性がこちらを見下ろしていた。

 

 特に目を()いたのは、彼が右手に持つ巨大な剣。

 

 大きな機械仕掛けの赤い腕輪に、常人では扱えない機械と生物を融合した武器――神機(じんき)

 

 これが“ゴッドイーター”……初めて見た。

 

「……やはり恐ろしいか? 引き返すなら今だ。適正テストはクリアしたが、安全は保証していない」

 

 ここは、ゴッドイーターとなるための適合手術室。頭上のクレーンが下りると右腕に腕輪が装着され、同時に“偏食因子”とかいうものを注入される。

 

 注入が完了すれば全身の細胞が完全に入れ替わる……のだとか。全て問題なく済めば、僕も彼が持つような大きな武器……神機を振るうゴッドイーターとなるのだ。

 

 僕は湧き上がる不安をつばと共に飲み込み、足下の男性に告げた。

 

 ――問題、ありません。続けてください。

 

「そうか……では、始めよう」

 

 男性はそう言うと、室内のカメラに合図をする。

 

 すると、耳障りなモーター音を響かせながら、クレーンがゆっくりとこちらの右腕目掛けて下りてきた。

 

 ……これからどうなってしまうのか。全身の細胞が入れ替わるとはどういう意味なのか。飲み込んだ不安がふたたびせり上がり、両腕の指先が小さく震える。

 

 けれど、ここで逃げ出すわけにはいかない。

 

 この過酷な世界で生きるには――生きていくには、ゴッドイーターになるしかない!

 

 クレーンが下りると同時に、右腕の下の機器が稼働し、ガチガチと音を立てて連結していく。わずかに右腕が締め上げられる感覚。ゴッドイーターの腕輪が嵌まったようだ。

 

 同時に――ブツリ。

 

 右手首に鋭い痛み。巨大な注射針が刺さった。そして。

 

 ――うぅうううウウアァああああああぁぁッッ!!

 

 何かの液体が注入されると同時に、右腕から激烈な痛みがもたらされる!!

 

 そして激痛は右腕から徐々に波及する。右肩、胸部、左腕、首、腹部へと。血管を通じでまるで極小の針が細胞ひとつひとつに突き刺さるような猛烈な痛み。

 

 あまりの痛みに全身がわななき、自ら後頭部を何度も台に打ち付け続ける。全身は固定されていて逃げられない。この激痛から逃れることはできない!

 

 喉が裂けてしまいそうなほど絶叫し続ける。しかし、自分の声がだんだんと聞こえなくなる。視界も徐々に薄暗くなっていく。

 

 僕は焦った。助けを求めようと左右を見て――自分の右腕から、なにか黒い肉の塊のようなものがボコボコ出ているのを見た。

 

 怖い。痛い。痛い! 怖い――!

 

『失敗だ。切断しろ、レオナルド』

 

 スピーカーから冷たい声が響く。

 

 レオナルド、と呼ばれた男性ゴッドイーターは、それでも動かず僕を見下ろし続けた。

 

『レオナルド! どうした、早く処置をせねば……!?』

 

 痛みと恐怖の渦に飲まれる僕の耳に、レオナルドさんの冷静な声が届いた。

 

「受け入れるのか。拒絶するか。決めるのはお前だ」

 

 ……決める……?

 

「全ての痛みを受け入れ、これからあまたの痛みを受けとめ続け……それでも進む覚悟はあるか?」

 

 ……僕は……

 

 ……生きるために……全て受け入れて、進む……!!

 

 瞬間。

 

 急に視界が一気に明るくなり、全身を襲った激痛もウソのように引いていった。

 

 右腕から噴出した黒い肉塊も腕輪の中へと吸い込まれていく……一体何だったんだろう、あれは。

 

「いい産声だった。ようこそ――カイ・サクラダ・アウベス」

 

 レオナルドさんは改めて僕の名を呼んだ。すると適合手術室の扉が開き、台に乗せられた巨大な剣が運ばれてきた。

 

 もしかしてあれが――僕の神機……?

 

「神機は生きている。一般人なら触れただけで食い殺されるだろう。だが今のお前なら扱えるはずだ……握ってみろ」

 

 薄暗い室内灯の下でも鋭く冴え渡る大きな銀色の刀身。全長は150センチ近い大きさだろうか? 

 

側部に装甲板が付けられ柄部や鍔にあたる個所に機械類が埋め込まれている。

 

 そして装甲や機器の奥には、なにか黒い肉のような部位も見て取れた。一個所、オレンジ色に輝く宝石のような物体が印象的だ。

 

 ……触れただけで人を食べてしまう恐ろしい武器。

 

 もしも……この神機が僕を主と認めなかったら……

 

「自信を持て。お前はもう既に“ゴッドイーター”だ」

 

 背後のレオナルドさんが、そう声を掛けてくれた。

 

「その神機はお前と最も相性のいいベストパートナー。食われはしない。“握手”してやれ、お前の相棒に」

 

 僕は、おそるおそる神機の柄に手を近づけて。

 

 神機を――握った。

 

 …………!!

 

 不思議な感覚だった。

 

 手の平に吸い付くような感触、手に馴染むようなその重さ。

 

 台から持ち上げ、二、三回振ってみる。こんなに大きいのに自在に振り回すことができる。重さは感じるが苦は感じない。心地よい重量は、むしろいつまでも振っていたいとすら思えるほどだった。

 

 神機はゴッドイーターの相棒。そうか、これが……

 

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