ゴッドイーター/レッドストーム   作:アガラちゃん

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【黒いスフィンクス】3

 アレックスの神機(じんき)が化け物の脚部に命中! しかし、恐ろしく硬い毛皮に阻まれたのか、刃はあっけなく弾かれてしまった。

 

「クソ! クソっ!!」

 

 アレックス――生き残るためなら僕を蹴落とすとも言った彼が、何故……!?

 

「神機も持ってねえ奴がカッコつけやがって! 神機持ってる俺が逃げ帰っちまったら、なんのためにゴッドイーターになったかわかんねえじゃねえかよ……!」

 

 キュルルル……

 

 化け物がアレックスへ向き直る。まずいぞ。攻撃目標を僕から彼に変えたのか……?

 

「来いよクソッタレ! タダで食われてテメエのクソになると思うなよクソが!!」

 

 アレックスの挑発に対し、化け物は二つの(あご)を大きく開き、赤黒い2つの舌を(のぞ)かせた。まるで、こちらを嘲笑(あざわら)っているかのように。

 

「くっ!!」

 

 アレックスが大盾を展開。その刹那(せつな)

 

 ゴギィィン!!

 

 激烈な金属音が周囲に響き渡る。化け物の太い爪がアレックスの大盾を殴りつけ、彼を後方へ吹き飛ばした!

 

 アレックスは屋上から階下に繋がる塔屋に背中を叩きつけられ、反動で頭から地面に倒れ込んでしまった。

 

 神機の盾部分は大きくへしゃげ、黒い体液のようなものを流しながらバチバチと火花を上げている。

 

「ぐ、うううぐ……!」

 

 ぶるぶると震える両腕でゆっくりと体を起こすアレックス。頭からは幾筋(いくすじ)の血が流れ、ダメージでまともに立ち上がることもできないようだ。

 

 このままでは食われる――僕が注意を引かなければ!

 

 しかしその時、ヘリの上からまたしても声が届く。

 

「くたばれ! このクソバケモンが!!」

 

 ヘリから軍服姿の男性が体を出し、肩に担いでいたランチャーを発射!

 

 発射された弾は榴弾(りゅうだん)ではなく、一本の黒い杭だった。化け物は素早く身を(ひるがえ)し、目標を失った杭は地面に深々と突き刺さった。

 

「クソォっ!」

 

 あの杭は……もしかすると、ゴッドイーター以外の軍人が使う兵器なのか? たしか、偏食皮膜(へんしょくひまく)をコーティングさせた武器を使って、アラガミを追い払うとか……

 

 だとすればあれは……ヤツに対抗する武器になる!

 

 僕は刺さった杭に向かって全力で疾走した!

 

「馬鹿野郎! 出てくんじゃねえっ!!」

 

 アレックスの声。化け物がこちらへ振り返る。周囲の景色がスローモーションになったかのようにゆっくりと流れる。

 

 化け物がこちらへ駆け寄ってくる。恐ろしい二つの(あご)と牙を剥き、ゆっくりと僕の喰らいにやってくる。

 

 その牙が、僕の肩に触れるより先に――僕は地面に向かって跳んだ!

 

 牙が肩先をかすめ、服を肌を斬り裂き、おびただしい血が吹くのを視界の端で見た。けれど――取った!!

 

 寸前で化け物の攻撃を避け、同時に地面に刺さった杭を掴み、転がった勢いで引き抜いた!

 

 僕は素早く立ち上がり、杭の先端を化け物に向けて構える。流血する左肩。しかし痛みは感じない。痛がるよりも集中するべき相手がいるのだ。

 

 キュイイイイイイイルルルルル!!

 

 化け物が猛烈な勢いで突進!

 

 僕は――覚悟を決め、鋭く息を吐き、攻撃を繰り出した!

 

 ヤツの顔面――いや、ヤツが僕達を追うために酷使した、鼻の穴の奥へ杭を突き刺す!

 

 ギュアアアアアアッ!!

 

 僕は突き刺すと同時にヤツの腕、顔面から生える金管楽器のベルのような部位を蹴り、さらに頭を蹴ってヤツの突進を跳んで回避。勢いのまま空中で一回転したのち、片手をついて地面に着地した。

 

 化け物は鼻に刺さった杭の痛みに悶絶(もんぜつ)するように地面を転がり、怒りと憎悪を周囲にぶちまけるようにその太い腕と足で周囲の瓦礫(がれき)を吹き飛ばし続けている。

 

 ――アレックス!

 

 僕は急いで彼に駆け寄り、未だにダメージが残る彼の腕を引いてなんとか起き上がらせた。

 

 ヤツがダメージを負っている今だ。逃げるなら今しかない!

 

「こっちだ! 早く(つか)まれ!!」

 

 ヘリから先ほどの男性が身を乗り出し、ロープラダーを僕らの前に再び降ろす。

 

 アレックスは自分の神機を拾い上げてラダーに登る。僕も続いてラダーに掴まると、ヘリがゆっくりと上昇。高度を上げ、地面を転がるあの化け物からどんどん距離を取っていく。

 

 逃げられた……助かった!

 

 ヘリの動きと風に煽られながらも、僕はなんとかラダーからヘリの中へと辿り付くことができた。

 

 軍服姿の男性がラダーを回収し、ヘリの扉を閉めた時、温かな安堵感(あんどかん)が全身を包み込んだ。

 

 生きている……生きてまた帰ることができた……!

 

 近くには荒い息のままヘリの内壁(ないへき)に背を預けるアレックスと、顔を青くしたままブルブルと震えるイリアもいた。

 

「とんでもねえ……あんな化け物が第二支部の近くにまで来てたなんてよ……」

 

 軍服姿の男性がヘリの窓から外の様子を(にら)む。僕も立ち上がって見ると、夕闇の紫色に沈む街並みと、先ほどまでいた屋上で暴れるあの化け物の姿が見えた。

 

 ヤツは怒り狂ったように周囲を破壊し続け、ついに屋上の床面すら崩壊させた。化け物が落ちると同時に、広大なショッピングモールの建物はバキバキと歪み、ついには建物全体が崩壊してしまった……

 

 ……あの場に残っていたらと思うとゾッとする。崩落に巻き込まれて死んでくれれば良いのだが、あの化け物がそう簡単に死んでしまうとは思えない。

 

 ともかく逃げおおせることはできた。今後、あいつに出会わないことを祈るばかりだ。

 

「……お前ら、3人だけか? 他に仲間はいないのか?」

 

 軍服姿の男性が問うてきた。アレックスもイリアも口を開かない。なので僕が「そうです」と返答した。

 

 ……隊長は、もういないから……

 

「そうか……命が助かっただけマシだな。俺達は、衛星支部にアラガミが現れたってんで出動したが、このザマだ。アラガミの群れがいるなんて聞いてなかった。住民は逃がすことができたが……部隊で生き残ったのは俺だけだ」

 

 男性は悔しさに歯がみし、両手を強く強く握り締めていた。

 

 やがてゆっくりと顔を上げ、僕の方へ向き直り、己の名を告げる。

 

「俺の名は……フリードだ。ストレイドッグ隊を率いていた。お前達はゴッドイーターだな?」

 

 僕が(うなづ)き、自分の名前を伝えると、フリードさんは両手を腰に当て、大きくため息。

 

「お互い厄日(やくび)だったな……第二支部に着くまでまだ時間がある。ゆっくり休め」

 

 僕の肩の傷は(すで)に癒えており、アレックスの頭の傷も血が止まっているようだ。手当する必要はない。

 

 フリードさんの(すす)めに従い、僕は腰を下ろしてしばらく休憩させてもらうことにした。

 

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