ゴッドイーター/レッドストーム   作:アガラちゃん

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【酷薄】2

 大型アラガミ。あの化け物を倒すための方法……?

 

 また出会うとは限らないし、今後出会いたいとは全く思わないが……もしもの事はある。聞いて損はないかもしれない。

 

「おっ興味ある? へへへへ、んじゃあまず、そうだなぁ……中型以上のアラガミにはよう、体のどっかしらに装甲みたいに分厚くなってる場所があんのよ。まずそこを壊す。神機(じんき)の剣でも銃弾でもいい。集中的に狙ってブッ壊す。結合崩壊(けつごうほうかい)? って言うらしい? 専門用語で? うん、ブッ壊す」

 

 ……なんだか頭に入りづらいレクチャーだけど、それでも僕は一言一句逃さずディノの発言を記憶に刻む。

 

「んでだ! んで、ブッ壊した場所を目掛けて“捕食(ほしょく)”する! ただ噛みつかせるだけじゃダメだぜ? 壊れた装甲の奥の肉を目掛けて、捕食の顎口(がっこう)をネジ込み、(えぐ)り抜き、“()(つぶ)す”……こいつが重要だ。

 装甲の下のお肉は柔らかいんでよぉ~? タップリ神機に喰わせられっから、ガッツリこっちも“強化”できるってわけよ。おわかり? ついてきてる? アンダスタン?」

 

 なにも理解できてはいないけど、僕はとりあえず頷いた。結合崩壊とか強化とかよくわからないが、それはあとで聞けばいい。先に全容(ぜんよう)を聞いてから詳細を聞く方が、手順を把握(はあく)しやすいのだ。

 

「へへへへ、アラガミってのはどんだけダメージ与えても、放っとくとすぐに再生しちまう……これは知ってるよな? 結合崩壊した場所を“喰い潰す”とよう、“偏食物質(へんしょくぶっしつ)”かなんかの影響であいつらの体積もゴッソリ無くなっちまうからよー……2回だ。中型なら2回。大型なら多くても3回、喰い潰してやりゃあOKだ。

 2回以上喰い潰されるとなぁ~、あいつらの体の“核”が出てくる。あとはそいつを砕くなり捕食するなりすりゃあ完了だ。大概の化け物はくたばる。お仕事完了! あとは帰っておいちいビールで打ち上げするだけさ。簡単だろ? へへへへ」

 

 ……2回、あるいは3回“捕食”をすることで、大型のアラガミすら倒せる……

 

 隊長がやっていた捕食の光景を思い出す。どうすればあんな風に神機を変形させられるのか検討はつかない。

 

 けれど……今聞いた情報はかなり重要だったことはわかる。結合崩壊(けつごうほうかい)……捕食……二度喰い潰す……忘れないよう、何度も心の中で反芻(はんすう)した。

 

「おや? 君も第一部隊のお仲間かな?」

 

 ディノの視線を追うと、僕の背後にアレックスが立っていた。

 

 しかし、何やら様子が変だ。

 

「……それ、もしかしてパジャマかい? へへへへ、支部長に会うってのに随分(ずいぶん)ラフだねー」

 

「いや、制服は今洗ってて、どんな格好でもいいからすぐ来いって言われて……」

 

 アレックスは黒いスウェットにタンクトップ姿で、確かにラフ過ぎるとは思ったが、それ以上に妙なのは彼の態度だ。

 

 明らかにディノを警戒している……いや、恐れているようにも見える。アレックスはディノの事を知っているのか?

 

「はは、す、すんません、ちょっとコイツと話あるんで」

 

 言うや否や、アレックスは僕にヘッドロックをかまし、頭を無理矢理後ろへ向かせた。

 

(おい、お前相手分かってんのか? あの背中のオオカミ見たか? 赤いオオカミだったぞ!?)

 

 ……赤いオオカミ? 僕が疑問を(てい)すると、アレックスはさらに声のボリュームを絞った。

 

(黒い制服に赤いオオカミって言やあ、あの“ブラックハウンド部隊”だ。噂じゃあ、フェンリル本部の持つ最高戦力とも言われてるし、本部直属のゴミ処理部隊って言われたりもする……ただの噂かと思ったが、マジで実在してたんだな……)

 

 ブラックハウンド部隊……そんなに凄い人なのか。

 

 僕がそう聞くと、アレックスは忌々(いまいま)しい様子で眉根を寄せる。

 

(凄いんじゃねえ。()()()んだよ。言ったろ、本部のゴミ処理部隊ってよ。ゴミってのは本部が敵視しているアラガミだけじゃねえ。本部にとって邪魔な組織や人間、本部から離反したゴッドイーターも含まれてんだよ……

 アイツが本当にBH(ブラックハウンド)ならマジで近づくな。噂が本当ならアイツはアラガミだけじゃねえ、大勢の人間、ゴッドイーターも殺してるってことだからな……)

 

 アレックスの緊迫感が伝わり、僕は思わずつばを飲んだ。まともな人ではないとは思っていたが、そこまでの危険人物だったとは。

 

「おおい、いつまでコッソリ内緒(ないしょ)話してんだよー? 俺ともトークしてくれよなー」

 

 ディノがツカツカと無遠慮に僕達へ近づく。や、やばい、今の聞かれてないかな……?

 

 彼とこれ以上のトークなどごめん被りたい所だったが、恐怖の時間は思わぬ形で終わりを告げる。

 

 支部長室の扉が荒々しく開かれ、中から40代くらいの小男が怒り心頭といった様子で現れた。

 

「全く! 無礼千万!! 私を誰だと思っている!? 就任直後で思い上がりおって!」

 

「ディノ。お客様がお帰りだ。丁重(ていちょう)にお見送りするように」

 

 小男がぎくりとした様子でディノを見上げた。

 

「き、貴様……なぜ貴様のような者がここにいる!?」

 

「ん~なぜと申されましても? エル支部長にスカウトされまして? んでボスからもOKもらったんで? こうして雇われてるわけでございます?」

 

「おのれ、BH(ブラックハウンド)すら引き抜くとは、奴のバックにいるのは一体……」

 

「まあまあ、お見送りを命ぜられたんでバッチリ見送らせてもらいますよー。ホレホレ行った行った」

 

「う……や、やかましい! 私の肩を触るなっ!!」

 

 男は(おび)えるようにディノの腕を払い、さらに僕達に対し「邪魔だ犬どもが!!」と当たり散らしながら立ち去っていった。

 

 なんだったんだ、今の男は?

 

「……ああ、見苦しいものを見せた。第一部隊の者達だな? 入るといい」

 

 支部長らしい人から声を掛けられ、僕達はやや緊張しながら執務室へ足を踏み入れた。

 

 2人掛けの革張りソファー2つと黒檀(こくたん)のテーブル、その奥には公務を行うためのどっしりした琥珀(こはく)色の木製の長机と、モニターを二つ置いたパソコンが置かれている。

 

 調度品(ちょうどひん)はどれも豪奢(ごうしゃ)な作りだ、さすがこの第二支部の責任者の部屋といった感じだ。

 

 しかし……

 

「君達二人だけか? 帰還したのは三名と聞いていたが」

 

「先ほど連絡がありました。イリア・エバンズですが、部屋に閉じこもったまま出てこないと」

 

「……なるほど。無理もない」

 

 その高価な調度品に囲まれ、長机のパソコンを操作する人物は……

 

「では、改めて挨拶させてもらおう。僕はエリオット・ロバーツ。本日付けでここ第二支部の支部長に着任させてもらった者だ」

 

 明らかに――8歳か9歳くらいの子供だった。

 

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