「よう、時間あるか?」
声を掛けてきたのは、スキンヘッドに口ひげを
――あ、いや、これからご飯を食べようと……
「そりゃ
そうしてフリードさんと一緒に食堂へ入った。ちなみに今夜のメニューはサイコロステーキと、付け合わせに山盛りのジャイアントトウモロコシのバター炒めだ。
……メチャクチャおいしい。肉なんて久しぶりに食べたなあ。ちなみにこの肉は人工的に培養され、3Dプリンターで
オーガニックの肉に比べると変な甘みがあってマズいってよく聞くけど、正直全然気にならない。これ、おかわりできたりしないかな?
空になったお皿を持って立ち上がろうとした時、正面で笑みを浮かべるフリードさんと目が合った。
――な、何か……?
「いや、いい食いっぷりだと思ってな……あんなハードな経験したら、普通は食欲湧かなくなるもんだしよ」
バクバクご飯を食べるのは
「
――適任……?
「隊長を失ったお前達第一部隊だが、明日からお前が隊長代理――リーダーに就任してもらう」
は……?
驚きのあまり手に持ったお皿を取り落としてしまいそうになった。
僕が……部隊のリーダー!? なんで!? 新人として配属されたばかりなのに!? なんで、よりによって僕なんだ!?
「ああ。まあそうだな。いきなりんな事いわれりゃあ、誰でも気が動転するよな」
フリードさんは笑みを収め、真剣な顔をこちらに向けた。
「お前達より先に、俺もあの支部長に呼び出された。用件は、やられちまったお前達の隊長の代わりをやれって話だ」
フリードさんが僕達の新しい隊長に? いやまあ、僕がやるよりも妥当だと思うけど……
「俺はそこではっきりNOと言った。GEでもない俺じゃあお前達と一緒の戦場に行っても足手まといだ。そして、同じ戦地に行けない奴の指示に従えるほどできた人間も少ないだろう。
俺が隊長になったところでチームがダメになるのは目に見えている。
フリードさんはテーブルの上で手を組み、ため息を吐いた。隊を率いるというのはそんなに簡単なことじゃないのだろう。
じゃあ、なおさら僕なんかが
「そこで代替案が出た。お前達第一部隊のうち、一人を隊長代理として育成してやれとな」
――それは、OKしたんですか……?
フリードさんは歯を見せて笑い、「そうだ」と答えた。そんな、それで僕が隊長代理に選ばれたのか……!?
「お前達のことをしっかり見てきたわけじゃない。だが、AIがあの化け物と出くわした時のお前達の動きをまとめてくれてな。生き残った3人の内、適任はお前以外いない」
いや、そんな断言されても困る! 僕は自分がいかにリーダーに不向きなのかを身振り手振りを交えてこれでもかと力説してみせた。
フリードさんは最後まで黙って聞き、腕を組んだまま頷いた。
「うん。よしわかった」
よかった。分かってくれたみたいだ。
「やはりリーダーはお前しかいないな」
何も分かってくれてなかった!!
「なあカイ。リーダーに必要なのは戦闘能力でも、上っ面のリーダーシップでもない。冷静に周囲の物事を広く見定める“目”と、決してブレない“心臓”の二つだ
あの化け物との初遭遇で、お前は即座に逃げ出したり、無茶な戦いに挑まなかった。冷静に助けられる人間を見つけてそれを優先してみせた。
ヘリで救助しようとした時もそうだ。お前は
……いくらなんでも褒めすぎじゃないだろうか。あの時僕はずっと必死で、とても周囲の状況を把握して冷静に立ち回っているとはいえなかった。
了承できずに沈黙している僕に、フリードさんは何かを察したのか一つ頷いた。
「お前の課題はその自信のなさだな。いいかカイ、隊長やらリーダーやらってのはそんなに大変なもんでもない。仲間達から意見を問われたとき、ただこう言えばいい」
――それは……?
「“問題ない。俺達ならやれる”。自信をもって言うだけだ。簡単だ。誰でも出来るだろう?」
……うん。僕には絶対無理だ。
その後も結局フリードさんの決定は覆せず、彼はそのまま笑顔で立ち去っていった。
なんだか、今日は本当に色々な事が起こりすぎた。正直まだ現実感が追いついていない気がする。
けれど現実に……多くの人が命を落とし、そして大きな脅威が、あの化け物がいずれやってくるのだ。
ぼんやりと立ち止まってはいられない。少しでも強くならなければ……
よく冷えたコップの水を一気に飲み干し、僕はこの恐ろしく長かった一日を終えた。