ゴッドイーター/レッドストーム   作:アガラちゃん

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第二章 赫い少女
【任務発令】


 けたたましく鳴るラッパ音で、僕はベッドから即座に()ね起きた。

 

『起床の時間です。カイさん。すぐに制服に着替えてトレーニングエリア前に向かってください』

 

 ラッパの音源は携帯端末のフギンからだった。画面を見ると……ろ、六時!? まだ太陽も昇ってないじゃないか!!

 

『本日から他のゴッドイーター同様の訓練を受けることとなります。遅れれば懲罰(ちょうばつ) の対象となるため、お早めに出発してください』

 

 部屋にある小さな窓を見ると、外はまだ真っ暗だった。こんな時間から訓練するのか……

 

 ――ええっと、ご飯って今の時間から食べられる?

 

『食事は訓練後となりますので、今から2時間後となります。すぐに着替えて出発してください』

 

 ご飯抜きで2時間も訓練するの!? キツイなあ……

 

『食後は2時間のアカデミックトレーニングを行い、その後は1時間半の神機(じんき)整備の実習。昼食後はトレーニングエリア内で4時間の戦闘訓練を行い、武道館内で1時間の対人護身術の訓練を行います。夕食後にまた2時間の訓練を行うスケジュールです』

 

 ――ちょっと待って! ほとんど訓練漬けじゃないか!!

 

『もちろん、訓練中にアラガミの討伐指令が下されば、そちらを優先することになります。ちゃんと実戦も行いますので訓練だけということはありません』

 

 ――いやそういう意味じゃなくて!!

 

『朝の訓練開始は現時刻から14分後です。急ぎ着替えて向かってください。このままでは懲罰のリスクが――』

 

 ああもう、わかったよ!!

 

 僕は急いで制服に(そで)を通し、素早く歯だけ磨いてからフギンが示すトレーニングエリアまでダッシュで向かった。

 

 時間には間に合ったが、そこで教官から告げられた内容は、広い訓練場の走り込みだった。朝から走ってばかりじゃないか……

 

 40人近い数のゴッドイーター達と一緒に走り込みを行った。グラウンドは1周で500メートル近い広さらしい。以前の僕なら、5周もすればギブアップしてただろうな。

 

 けどゴッドイーターになった今は、なんだか走れば走るほど体の奥から活力が湧いてくる感じがする。10周、20周しても息も上がらず走っていられる。このままずっと走り続けられそうだ。

 

 すると僕の考えを読んでいたように、訓練教官がこう言い放った。

 

「よろしい、では全力疾走で30周だ! 時速40㎞以下は懲罰対象となるからそのつもりで走れ!!」

 

 ごめんなさいやっぱキツ過ぎます本当にすいませんでした。

 

 他のGE(ゴッドイーター)達に置いていかれないよう、僕は必死で走り続けた。やっぱりGEになってからも一般的な軍隊みたいな厳しい訓練するんだなあ。

 

 ……訓練の間、アレックスとイリアの二人と会うことはなかった。二人とも、訓練を無視して部屋に閉じこもってしまっているようだ。

 

 イリアは分かるけど、アレックスが顔を見せないのは、やっぱり昨日の支部長の話が原因なんだろうか。

 

 訓練をしてもどうせ生贄(いけにえ)にされるんだから意味がない……そんなことを考えているのかもしれない。僕としても、あの化け物、ニャルラテップに勝つ未来なんて想像もできない。

 

 けど、やるしかない。奴はいずれここに戻ってくる。何もしなければ何もできず喰われるだけだ。

 

 ならやるしかない。強くなれるならどんなハードな訓練でも受けるしかない。アラガミを狩ることが強くなる近道なら、どんなアラガミも倒して()らい続けるしかない。

 

 たとえ絶望的に強大な相手であろうとも。生き残る確率が高い方へ僕は賭けたい。目的は見えている。なら戸惑う理由は何もない……!!

 

 基礎体力を鍛える訓練は終わり、やっと朝食にありつけた時、携帯端末が鳴った。

 

 見ると……エル支部長本人からのメールだ。

 

 書かれていた内容は2つ。

 

 昨夜大勢の怪我人や死者が出た理由。小型アラガミが群れで衛星支部に現れたのは、人々を喰らうためではなかった……あのアラガミ、ニャルラテップに追われていたことが原因だったとのことだ。

 

 そしてニャルラテップは……観測結果に基づくAIシミュレートの結果、およそ四十九日後に再びこの第二支部に戻ってくると予想された。

 

 猶予はたったの1ヵ月半……いくらなんでも短すぎる。こんな短期間でどうやって強くなればいいんだろう? エル支部長や他のGE(ゴッドイーター)の人達、フリードさん……いや、あのディノにも詳しく話を聞いた方がよさそうだ。

 

 気が重くなるが、支部長のメールの最後の一文でさらなる重圧が僕の肩にのしかかる。

 

“PS. フリード大尉からリーダー職に()くと報告を受けた。本当に苦労をかけるが、大尉同様に僕も君には大いに期待をしている。第一部隊をよろしく頼む。”

 

 ……ああ。

 

 というか、その第一部隊のアレックスもイリアも顔を見せず、もう(すで)にチームは崩壊してるといっていいんだよなあ。

 

 もちろん彼らを放っておくわけにはいかない。本人の問題だとか、そういうことを言っている状況じゃない。いずれ僕達3人であいつに立ち向かうことになるのだ。みんなで強くなる以外の道はない。

 

 しかし僕が言ってドアを開けてくれるだろうか? 特にイリアは……うーんなんて声を掛ければいいんだか……

 

 しばらく携帯端末としかめっ面でにらめっこしてると、再び端末が手の平で鳴りだした。

 

 先ほどのメールの受信音とは違う。画面を見ると、“任務発令”とのシンプルな文面が映し出されている。

 

『カイさんを指名し任務が発令されました。内容は昨日の戦闘で遺棄(いき)した神機の回収作業とのことです』

 

 ……ああそうだよなあ。神機の整備や神機を使った訓練もあるから、これで手持ち無沙汰(ぶさた)にならずに済んだ……と喜ぶ元気はなかった。

 

 本当に気が重い。けれど行くしかない。隊長を失いあの化け物と出会った、あの街へまた向かわなければ。

 

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