――アレックス、どうして君がここに?
「どうしてってお前、KIA認定されてたんだぞ? 知らねえのかよ」
――ケーアイ……?
アレックスは力が抜けてしまったかのように肩を落とした。
「作戦行動中の戦死……つまり、第二支部じゃあお前は
な、なんだって!? 確かにあのコンゴウに襲われて死にかけてはいたけど、それでも死亡扱いは早すぎじゃあないか!?
「俺等の腕輪にはビーコンが仕込まれてんだよ。そのビーコンが消えたってことは腕輪を失ったってことで、そいつは俺等
フン、とアレックスは鼻を鳴らした。
「……俺はあの支部長を信用していない。そして、あの化け物を
腕輪。そこで直してくれたトリガーのことを思い起こした。
――いや、違うんだ。僕を助けてくれて、壊れた腕輪まで直してくれた子がいるんだ。
「ハア? 何言ってんだ? 全然壊れてねーじゃんお前の腕輪」
そうだ。いっそ彼女に会わせたほうが話は早いだろう。素手で神機を運んでみせたり、腕輪を修復して見せたり……彼女には謎が多い。まだ色々と聞きたい事もある。
僕は怪訝そうなアレックスを何とか説得し、彼女のいた廃屋へ戻った。
しかし――そこはすっかり、もぬけのからの状態だった。
「どこにいるんだよ、その……全身赤い女ってよ?」
何度か彼女の名を呼んだが反応はない。どこかに隠れているようでもないし……ほんの少し外を出た間に完全に姿をくらましてしまうなんて、よほど身体能力が高いのか――
「……なあ、お前頭とか強く打ってないよな? もしくは寝ぼけてたんじゃねえのか?」
あるいは、アレックスの言うように夢か幻覚の類いだったのか……こうなるとその可能性も否定できないんだよなあ。
まてよ……そうだ、フギンに聞いてみよう。あのトンボ型ロボットを通じて彼女の姿を録画しているかも。
『トリガーと名乗る人物ですか? いいえ、記録されておりません』
――えっ!? なんで!?
『カイさんがあのアラガミに接触した後、強力な電磁妨害を受けた痕跡があります。どうやらその影響で画像・音声の記録が途絶えていたようです……KIA認定を受けたというのもそれが影響しているかもしれませんね』
ええ……これもあの子の
「……まあ、よくわかんねーけど、とにかく無事で良かったぜ。それじゃあバイクに乗って帰ろうぜ。ケツに乗せてやるからよ」
そう言って、アレックスが外へと振り向いた――瞬間。
ドガァっ!!
上空からバイクを目掛けて大きなブロックが投げつけられ、バイクは車体を大きくへこませて横転した!
「なっ……!?」
僕は知っている。この手口。車体のエンジンを狙うあのアラガミの事を。
「や……野郎っ!!」
再びコンゴウが地面に降り立ち、僕達二人にゴリラのドラミングのごとき動きで
◆◆◆
「あいつ……中型種か!? バイクがああなっちゃ、ここで戦うしかねえじゃねえか!!」
アレックスが自らの大剣型の神機を構える。僕もまた廃屋内に安置された自分の神機を拾い上げた。
コンゴウに壁に叩きつけられ、殺されかけた記憶が生々しく思い出される。恐怖心が背筋に冷たいものを流した。
落ち着け……大丈夫だ。あの時はほとんど不意打ちのような形だった。正面から向かい打てば同じ結果にはならない。
それに今回は、頼もしい味方も一人いるのだ。中型種とはいえ、勝てる見込みは十分にある!
僕達は相手の動きを警戒しつつ、建物の外へ出る。
コンゴウはうなり声を上げながら、発達した太い両腕を地面につけて微動だにしない。
「カイ。お前の方が俺よりも身軽で素早い。俺が
アレックスの提案に僕は
僕はさっそく行動に移そうとしたが、しかし。
ググルル……
コンゴウは動かない。僕達を
……何か妙だ。あの体勢。何か企んでいる?
まるで、これから
これは……まさか!
――まずい! アレックス! 盾を展開するんだ!!
「は? どうした? なんで――」
戸惑いながらアレックスが大盾を構えた、瞬間!
パゴオンッ!!
激烈な衝撃音と共に、アレックスの大盾が何かの攻撃を防いだ!
拡散した衝撃の波が廃屋の壁に
「な、なんだ!? 野郎、一体何を撃ち込みやがった!?」
コンゴウが射出したものは影も形も見えなかった。弾丸のごとく何かを高速で射出したのか?
……いや、でも妙だ。衝撃の広がり方がおかしい。銃弾のようなものを撃ち込んだとして、壁にヒビを入れるほどの衝撃を周囲に広げるだろうか?
あんな風に壁にヒビが入るのは、盾に防がれて何かが破砕されて拡散していったからだ。であればそれは何だ? 拡散された何かは全く見えなかったが……
……見えない何かを飛ばした? ヤツは離れた場所からつむじ風を起こす技を持っている。風……空気!?
そうか! ヤツは空気の
――アレックス! あいつは空気の弾丸を飛ばしたんだ!!
「空気……? それが弾の破片すら見えなかった理由か……!?」
――足下から大きなつむじ風を起こす能力もある。地面に塩みたいな白い何かが撒かれていたらそこから離れて!
「お前、もしかして、あいつと戦ったことあるのか……?」