【イングリッシュ上等兵】
その日、僕たちはフリード隊長に呼び出され、センタースワンの
ここなら一階部分のロビー全体を見渡すことができる。朝日に綺麗なスキンヘッドをキラキラ反射させながら、フリード隊長から告げられたこととは――
「そろそろ極東から
僕たち第一部隊に配属される人を迎える準備をしろ、とのことだった。
いや、まだ朝の9時とはいえ、大勢の市民や職員が行きかうこの場でどう見つけろというのか。せめて特徴とか教えて欲しいところなんだけど。
「……なあ、フリードのおっちゃん。今から来る奴ってのは、フェンリル本部からの指示でやってくるのか?」
「隊長と呼べ隊長と。本部の指示かだと? 本人から転属
「……別に」
アレックスはそれだけ言い、複雑な表情で沈黙する。
無理もない。昨日ブラウン牧師からフェンリルに関する重大な事実を知らされたばかりだ。
彼は最後までブラウン牧師達を信じないと言い張っていたが、本部に対する疑念は
と、その時、イリアが階下にいた一人を指さした。
「ねえ、もしかしてあの人……?」
彼女が指した方角を見る。すると――ひとり、明らかに周りから浮いている人物が歩いてきていた。
僕達と同じゴッドイーターの制服に赤い巨大な腕輪をした少女。
薄い
しかしそれ以上に目を引いたのが――彼女の3倍はあろうかという巨大な荷物だ。何か不思議な模様の描かれた布で包んで背負い込んでいるが――あの布はもしや、極東で
「……あれか? あれなのか? フリードのおっちゃん?」
「た、多分な……じゃあ、行くか!」
僕たちが
「ゲッ! あいつら……!」
忘れたくても忘れられない。
「やあ君。君だよ君。カワイイね。ここは初めてかな?」
「……はい?」
少女は
「ここの中を案内してあげようか? 行きたい所をいってごらん?
隠しきれない性欲をにじませながら、さらに少女へ距離を
僕が二人を
「えっなんスか? キモ……半径3km以内に近寄らないで欲しい……」
少女が、その
「こ、こ、コイツッ! 二等兵のド新人のくせに、上官に向かって――!」
「オイ。何キレてんだ? 上官がなんだと?」
フリード隊長がブラッドたちを咎める。フリードさんの階級は大尉。ブラッド達よりも上官といえる立場だった。
「……フン。ゴッドイーターでもない一般人が偉そうに。なんだ? 第一部隊の新しい仲間だったのか? ハッ、何人増えようがお前らの未来は変わらない。せいぜい無駄な努力を
最後まで不快感たっぷりのニヤついた笑みを浮かべ、連中は去っていった。
「あ~よかった! あのキモイ二人が第一部隊の人たちだったらどうしようってマジで
少女はホッと胸をなでおろしながら、独特の言葉遣いで改めて自己紹介した。
「あたしは
カンナはそう自身満々に胸を張りつつも、しかしその目は
……ん? なんだか様子が少し変だな。何かとんでもない嘘を
「ようこそカンナ! 俺は隊長代理のフリードで、こっちはリーダーのカイだ。戦場ではコイツが部隊のトップになるわけだから、ちゃんと指示には
フリードさんが僕の背中を押して彼女の前に立たせる。僕が手を
「おおう? もしかしておんなじ極東出身っスか~? よろしくっスよリーダーさん!」
――いや、よく
「あ、そうなんスね? こっちの人は?」
「俺はアレックスだ。これからよろしくな」
アレックスとも握手を交わし、カンナが最後に残ったイリアに笑顔を向ける。
「あ……えっと、わたし……イリア、です」
緊張と
「うぃ~っす!! よろしくっスよ~!! おんなじ女子がいてくれて心強いっスね~!!」
「う、うん、よろしく……」
底抜けに明るいカンナの勢いに
「ようし。自己紹介が済んだところで、お互い聞いておきたいこととかあるか?」
フリードさんに
「じゃあ……極東って、OCアンプルを使わずに
OCアンプルとは、直接
「あ~それ本当っスよ。極東の回復錠は特別製っスから。
「おお、それは俺も聞いたことがあるぞ! 確かカンポーとかってやつだな?」
「漢方? ああそっスね~、隊長さんよくご存じで。その辺の知識も応用されてるっぽいっスねー」
へえ、回復錠だけでも支部ごとに特色みたいなものがあるのか……
「OCアンプルは極東で使ってる人全然いないっスね~。ほら、戦ってる時に割れたりしたら困るじゃないですか? だから使われないみたいっスよ?」
……アンプルは
それでも割れる心配をするとは、どれだけ激しい戦いをしているんだろうか、極東の人たちは……
ドン引きしつつも、アレックスが次に挙手をする。
「
「えーっと……あたしはやったことないですし、見たこともないんスけど、実際そうやって気絶した仲間を起こしてるって話は聞いたことあるっスね。
なんか、柔術の
……本当に肩ポンポンするだけで気絶した人すら起こせるのか。知れば知るほどとんでもない所だな、極東は……
「じゃあ、あの話は本当か? 極東に、
「ああ~そんな話聞いたことあるような……? うーんでも、あそこって新型アラガミが出ることは日常
「そうか……」
噂の
「リーダーさんはあたしに
そう問われ、ふと僕は彼女の服装が気になって
――その水色のケープコートみたいな服は?
カンナは僕達とは違い、GEの制服の上から、水色の
「あ、これっスか? 狙撃兵用のミリタリーポンチョっスねー。雨とか降られても全然平気ですし通気性もいいんスけど……特にデザインがカワイイじゃないっスか。ほら、GEの制服って変にピチピチしてて、体のライン出るから可愛くないっていうか……」
そう言いながら少し不快そうに
そう思った――その時だった。
「気をつけろ少年……! あの少女、ポンチョの下は何がとは言わんが相当デカイぞ……!!」
っ!?
耳元でそう
何なんだ……わざわざセクハラを言うために現れたのか? そして気をつけろとは一体何に気を付ければいいんだ……?
「あの変なマッチョの人知り合いっスか? で、質問タイムはおしまいでいいっスかね?」
――あ、それじゃあもう一つ。かなり英語が上手いけど、極東でもみんな英語を話してるの?
「え? いやフツーに日本語っスよ? あ、日本語ってのは極東で使われてる言語の事っス。“キョクトー語”とか言う人よくいるんスけど違うんで。そこんとこヨロシクっす」
――英語じゃないんだ。それなのによくそんなに
「フフン、いやー、ここに配属されるって知ったんで猛勉強したんスよ! そのかいあって今じゃあもうペラペラっスよ本当――」
『マイクから距離が離れています。マイクを近づけてください』
「オ~ウ、ワ~オ。ンーフー? イナフイナーフ……えーとこれをこうして……ハイハイオーケー、イングリッシュ上等」
……ああ。なるほど、機械で同時
なんだろう、その場のノリや雰囲気で適当なことを言ってくるこの感じ……これからこの子と一緒に戦場に向かうのがだんだん不安になってきた……
ニコニコ笑顔のカンナをよそに、僕達三人は未来を