第一部隊にカンナを加えた翌日、さっそく僕達にアラガミの討伐指令が下された。
『司令部よりアラガミの討伐作戦が
僕たちは訓練を途中で切り上げ、すぐに
「準備しながら聞け、作戦について話しておく」
フリードさんがタブレットを片手に説明を始める。
「迎撃ポイントはここから南西に20kmの地点だ。かつてのリニア
グボログボロ……なんだか妙な名前のアラガミだなあ……
「中型か。
「ハア……もう好きに呼べ。ほら、画像を
送られた画像を携帯端末で確認する。表示されたアラガミは、
そして頭部は巨大な角のように盛り上がっており、その
「……どこがワニなんだよ? 全然似てねーぞフリードのおっちゃん!? ほぼ魚じゃねーかおい!」
アレックスに続き、イリアもあごに手をやりながら意見を
「……深海魚とかにいそう。こんな感じの魚がいた気がする……」
確かに。なんていうか、チョウチンのついてないアンコウみたいな見た目だな……
「ワニに似てねえとか言われても知らねえよ! 言ってるのは極東の奴らなんだ! 俺じゃなくせめてカンナに
僕たちがカンナを見ると、彼女は
「あ、あの~……グボログボロって、ユーラシア大陸のアラガミっスよね……な、なんでこんなところに出現してるんスか……?」
「おっと、説明してなかったか? 最近ここいらじゃあ、極東並みに多種多様なアラガミが出現するようになってな」
「はああっ!? き、聞いてねーっスよ~!! アラガミ動物園に
恐ろしく下手な言い訳でその場を取り
ああ……なんだかこの子がどういう子なのか、だんだんわかってきた……
タクティカルベルトを装着し、ポーチに
ふと、隣のロッカーに入っていた
これは……“ホールドトラップ”だ。ケースの中には円盤状の機器が入っており、中心のスイッチを押すと円盤の中から無数の鋭いトゲのついたワイヤーが
トゲにはアラガミ由来の非常に強力な麻痺毒が塗られており、これが
ただし、この毒はアラガミだけではなくこちらにも有害だ。もしも刺されれば、ゴッドイーターですら1分足らずで心臓が
だから
……訓練で扱い方はしっかり学んだが、それでも危険性からこれを使おうとは思わなかった。
けれど、以前苦戦したティンダロスに関しては、このトラップがあれば有利に戦いを進められただろう……これからは、こういうのも使いこなせるようにならないと。
僕は決心し、ホールドトラップのケースを取り出し、リュック型の細いストラップに両腕を通した。
「銃型の神機使いのカンナが加わったことで、戦術の
銃型神機のエネルギー源はOA(オラクルアモー)、つまりアラガミの
後方にいる銃型神機使いへ受け渡しをする方法は学んでいる。神機を肩にかけた状態で剣の
ちなみに、銃と剣がセットになった新型神機使いであれば、銃口から遠距離の神機使いへ
「……いや、まあ、OA以外にもエネルギーを補給する方法はあるんスけどね。O(オラクル)アンプルとか使えば……」
なぜか口ごもりながらそう言うカンナ。何か都合の悪いことでも隠しているような態度だけど……
「それからな、銃型神機使いは特有の攻撃方法がある。OAを消化・吸収することでそのアラガミの細胞を
フリードさんに問われ、カンナはぎくりとした様子で肩を小さく跳ね上げた。
「そ、そーっスね~。なんか切り札的に扱われることもあるらしいっスけど……あ、あたし的にはそんなに期待しない方がいいかもっていうか……」
しどろもどろにそう答えるカンナとは対照的に、アレックスは期待を込めた瞳で彼女に振り向いた。
「マジかよ! そんな必殺技使えるのか!? じゃあ、お前に弾渡しまくればラクに倒せそうだな!」
「い、いや! そんな連続して撃てねーっスよ!
一体どうしたのだろうか。来た当初は「自分に期待してくれていい」と
いざ実戦となると急に自信なさげに
――カンナ、出撃前に確認しておきたいことが――
「よ、よ~し準備完了っ!! ほらほらリーダーさん、皆さんも! 早くしないと指定されている時間に遅れちゃうっスよ!! ワッチャゴナドゥ!? 早速爆走レッツ&ゴーっスよ!?」
半分やけくそみたいな勢いで、カンナはスナイパー型神機を手に保管庫を飛び出していった……
やはり何か隠しているな。本人が何も語りたがらない以上、戦闘中は彼女の動きにも注意したほうがいいかもしれない……
◆◆◆
迎撃ポイントに着き、大型の軍用トラックの荷台から降りると、巨大な構造物が僕たちの前に
砂漠の中に現れた、
これは、かつてロサンゼルスと呼ばれた都市まで伸びていたリニア車用の高速道路の成れの果てらしい。
リニア車とは、超電導状態をエネルギーなしで長期間維持できる“
まるで
「アラガミはまだ来てねえみてえだな。ここで待ってりゃいいのか?」
キョロキョロと周囲を見回すアレックスに、オペレーターのレインさんが答える。
『こちらから
「今じゃアラガミ専用の道路ってわけかよ……どうする? 俺らも陸橋上がって迎えにいくか?」
アレックスがそう提案すると、
「……あの陸橋の上だと逃げ場は限られてる。前に戦ったティンダロスみたいに、防御ができない攻撃をする相手だと危険だと思うけど……」
イリアがすぐに
『この場においてはリーダーの意見を
僕は二人の意見を
イリアの言う通り、ここで待ち
だが……相手は2kmも先だ。しかも相手はアラガミ。道草を食わずにこちらへまっすぐ来るとも限らない。
ぼやぼやしていれば日が落ちる。街灯もない、夜の闇の中でアラガミと戦うのだけはなんとしても避けたい……!
――日が落ちる前にこちらから迎撃に向かう。
『了解いたしました、
――カンナも、それでいいよね?
「ふぉっ!? あ、あー、いいんじゃないっスかね? ええ? えへへ?」
キョロキョロと周囲を見渡しながらそう言うカンナ。あからさまに
――あのさ、戦闘前に聞いておきたいんだけど、君、なにか隠し事が――
「ひ、日が落ちちゃうっスよ!? さっさと行かなきゃダメなんじゃないっスかね!? さっさと行ってチャチャっと片づけるっスよ!?
……ダメだ。ここで
レインさんから陸橋へ上がれそうなポイントを教えてもらい、僕たちは瓦礫を足場に巨大な陸橋の上へと登った。
高さは5メートル以上はあるんじゃないだろうか。黒い
水平線へ沈みつつある太陽を横目に、
しばらくすると――遠くで動く何かを発見する。夕陽を反射する青いウロコをした生物。目標のグボログボロで間違いない!
「野郎も俺らに気付いたみたいだな。真っすぐこっちに突っ走ってきてるぜ……!」
一
「大丈夫……わたしは大丈夫……シミュレーションと同じ……大丈夫……」
自分に言い聞かせるように、小剣型神機を構えるイリア。オオグルマの教えに従っていたあの頃とは違い、その瞳には恐怖を、己自身を
――カンナは大丈夫?
僕はそう彼女に声を掛けた。が、返答がない。
――カンナ!?
振り返る。しかし、いつの間にか彼女の姿はどこにもなかった。
『カンナさん? リーダーがお呼びです。返信を』
すると、マイクが切り替わったのか、彼女の側から何やら奇妙な音が発信された。
パリパリ、ボリボリと何やら固い何かを食べているような音。
『……え? あ、あ~ハイハイ。ちゃんと聞こえてるっスよ~。こっちは位置に付いてるんで、いつでも始めてOKっスよ~』
「……オイちょっと待て、お前……」
アレックスの鋭い声に、カンナが
『い、いや違うっスよ! おせんべいを食べてたのはアレっスよ!? 脳に栄養を与えてパフォーマンスをモリモリ上げるつもりだったんスよ!? サボってお菓子食べてたわけじゃ断じてないっス!!』
「違えよ! いやそっちもおかしいが、それよりもだ! お前今どこにいんだよ!! 敵がこっちに向かって来てんだぞお前っ!!」
『え、え~と……こ、ココっス! 皆さんから左斜め後ろの、でっかい立体駐車場
振り返ると、遠くにそびえ立つ巨大な廃墟の頂上に、彼女の神機である銃身3メートル近い銀色のスナイパー型神機と、ぴこぴこ手を振る豆粒のように小さい彼女の姿が見て取れた。
「はあっ!? お前なんで一人でそんなとこに逃げてんだ!? さっさとここまで来いよ!!」
『逃げたわけじゃねーっス!! あたしはスナイパーっスから、遠くで狙い撃つのは当然じゃないっスか!!』
「いやお前フリードのおっちゃんの話聞いてたか!? そんな場所からどうやって
『……えっ? カンナさんは何かの作戦のために別行動しているのではなかったのですか!? カンナさん!! 至急現場へ
『ここがあたしの持ち場っス!! 遠距離支援がスナイパーの
……なんてことだ。ここに来るまでずっと挙動不審だったが、どうやら彼女はずっとこのことを隠していたようだ。
他の銃型神機使いのように部隊に
『目標アラガミ、30メートルまで接近! まもなく
……敵は目前。やるしかない……!
僕とアレックス、イリアは腹をくくり、巨大な牙を