「俺が受ける! お前らは回り込め!」
シャアアアッッ!!
グボログボロがアレックス目掛けて突進し、その巨大な
アレックスは後方へ
――イリアっ!!
彼女は僕の意図を理解し、僕たちは無防備なグボログボロの
しかし――グボログボロはこちらへ振り向かず、なぜか空に向かって
すると――ドヴォッ!!
くすんだ緑色の液体を大量に吹き上げた! あれは……?
『あれは強酸です! 酸の雨が来ます、頭上を防いでください!!』
酸の雨!? 僕とイリアは即座にシールドで頭上を
そのすぐ後に、レインさんの言った通り周囲に強酸の雨が降り注ぐ!
まるで熱したフライパンに水を
『あなた達のブーツは強酸にも耐えられる作りですが、制服はブーツほど酸に強くはありません。また頭部に直撃すれば深刻なダメージを負います! 足元より上は決して酸を浴びないようご注意ください!!』
くっ……この酸の雨が止むまで手出しできないというわけか……!
盾を頭上に
まさか、こいつっ!!
『攻撃が来ます! 避けてくださいリーダーっ!!』
グボログボロがまるで路面を
体当たりの衝撃で強酸の雨が降る
「このっ!!」
雨が落ち切ったタイミングで、イリアがグボログボロへ切り込もうとした。
だが。奴は僕たちが想定していたよりも手ごわい。
すぐにイリアの方へ振り返ると、彼女へ向けて大量の強酸を放出!!
「うっ!?」
すんでのところで盾で防ぎ、素早く距離を取るイリア。
僕たちを遠ざけた後、グボログボロは再び頭上へ大量の酸を放出した。
……決して僕たちを近づかせず、自身の安全を確保したうえで、酸や体当たりの攻撃でジワジワとこちらを
しかしまずいぞ、放置しつづければいずれ酸で
「グウッ……!」
歯がみするイリアの瞳に、凶暴な怒りの色が
――落ち着くんだイリア。
「リーダー……ありがとう。わたしは大丈夫……!」
「スナイパーは何してんだ!? 今あの野郎にダメージ与えられるのはお前だけだぞ!?」
アレックスの抗議に、
『さっきから撃ってるっスよ! でもいくら撃ってもすぐ再生されちゃうんス!! どこか、
「……結合崩壊か……」
アレックスは深く息を吐き、やがて決意したように目を大きく見開いた。
「どの道あの
そう言うや否や、アレックスは大剣型神機の切っ先を地面に向け、ブレード部分を
加熱したブレードの周囲に空気の
しかし、どうやって足止めを行う?
スタングレネードでかく乱するか? いや、この酸の雨による大量の煙の中では使用しても十分な効果を発揮できない。たとえ奴の視力を
背中のホールドトラップを使うか? いやダメだ。地面の強酸でトラップのワイヤー自体が溶かされる恐れがある。強酸のない場所に
ならばとりうる手段は、神機で直接奴にダメージを与えて動きを抑え込むほかはない。
強酸の雨が止み、奴が再び強酸を降らせるまでのわずかな時間に、大ダメージを与える手段とは……
……彼女しかいない!
――イリア! あの技は使える!?
「あの技……?」
――君が支部長の
「……! わかった、やってみる!」
そう言うと、イリアは
OCアンプルは大量の偏食物質によりゴッドイーターの怪我を瞬間的に
イリアが盾を展開すると、その盾からネバついた煙がゆっくりと彼女の体を包み込んでいく……
そして、彼女は唱えた。
「……アジン……ドゥバ……」
一つ唱えるごとに空気が重く感じた。唱えるごとに彼女の内側から怒りと殺意が膨れ上がる。だが同時に、それらを
強酸の雨が降り止んだその瞬間、イリアは
「トゥウウリイイイーッッ!!」
刹那。まさに一瞬。
一瞬のうちに、イリアが僕の隣から
グボログボロの左のヒレが切り落とされて宙を舞い、
攻撃が完了したことを認識した瞬間――音と衝撃波が遅れて
Boooom!!
前方から迫り来る衝撃波を腕でガード。目を細めながら前方を見ると、グボログボロもまた衝撃波に打ちのめされ、陸橋
……以前戦ったティンダロスに引けをとらない、凄まじい威力だ。
のちにあの技は
……と、ダウンしていたグボログボロが再び動き出そうとしている。この
僕はヤツの元まで疾走し、残った右ヒレを神機で突き刺し、地面に
これでしばらく動くことはできない。あとはアレックスの攻撃で砲塔を潰せば――
そう思った、その時だった。
シャアアオオッ!!
邪悪な
馬鹿な――まずい!
『アレックスさん! 敵が来ます! 逃げてっ!!』
左右のヒレを一瞬で再生させ、グボログボロが巨大な
「く、クソっ――」
瞬間。
カアァァン!!
グボログボロの砲塔に、一発の弾丸がめり込んでいた。
……カンナだ! 彼女の遠距離狙撃によりグボログボロが体を大きくのけぞらせ、一瞬だけ動きを止めたのだ!
「っ! そおぉぉこかああっ!!」
そして、アレックスは
……アレックスの一撃もすごいが、真に
たった一発だ。複数の弾丸を当ててひるませたわけではない。たった一発の弾丸であのグボログボロの突進を止めて見せたのだ。
適切なタイミングと完璧な角度で撃ち込まなければああはならない。
彼女は
なんて考えていたら。
『むほ~っ!! 見ました今の~!? さっすがカンナちゃん!! 大天才~っ!!』
「よっしゃ! 行くぜ!!」
アレックスは神機を
あふれだす膨大な
アラガミは体内のエネルギーが
ゆえにアラガミとの戦闘では
喰潰は、そんなゴッドイーターの戦闘を一変させる技だ。一撃で致命的とすらいえるダメージを与えることで短期決戦へ仕向けることができる。中型なら2回、大型なら多くて3回喰潰を行うことでアラガミをコアだけ残して
……しかし。
『敵アラガミ、身体を急速再生! これは……!?』
安全・確実・効率よくアラガミを倒す。そんな夢のような方法はない。
喰潰によって致命的なダメージを負ったアラガミは、危機感からか身体を大きく
『
グボログボロは地の底を
潰れた砲塔の代わりに、
あの体の形状からいって、先ほどのような強酸を使った攻撃は行わなさそうだ。突進能力をさらに伸ばしたような攻撃方法を行うのかもしれない。
……背中のホールドトラップの使いどころかもしれないな。
僕がそう考えていた時――オペレーターのレインさんから、予想だにしない報告がもたらされた。
『待ってください! 無数の小型アラガミが接近! カンナさん!! 6体のザイゴートがそちらに近づいています!! その場から離れてください!!』
『ほげぇっ!? へ、ヘルプ!! ヘルプっスよ~っ!!』
「……ザコの相手はそっちでしてろ。こっちはこっちで
アレックスが
この場で最も大きな脅威は間違いなくグボログボロだ。アレックスの判断は当然とも思えた。
しかし……僕は知っている。無数の小型アラガミに蹂躙され命を落とした銃型神機使いのことを。
「お、おい! どこ行くんだリーダーっ!?」
――カンナの
「えっ、なに……?」
僕は背負っていたホールドトラップのケースを彼女へ向かって投げ渡した。
――多分それはヤツに効く! アレックスの援護を頼む!!
「……! わかった、そっちも気を付けて……!」
――ポチっ!!
僕は神機をオオカミのような形態にし、その背に乗って
『ちょっ! な、なんスかこいつらっ!! 撃とうとしたら別方向から
『カンナさん! 一時退却を!! あなたの神機で近接戦闘は
『逃げるってどこ逃げたらいいんスか~っ!? どこ行っても回り込んでくるっスよ~っ!!』
……状況はかなり悪いようだ。ここは一気に向こうへ渡らなければ……!
――ポチ!
グルアアッ!!
ポチは
全身を襲う浮遊感。真下は10メーター近い高さ。そのまま落ちれば大怪我は
しかし!
――スラストっ!!
僕の声に反応し神機はさらに変形。ザイゴートのコアから獲得した
ザイゴートの下部に垂れる白い女性のような部位を思わせる、純白の
しかし飛翔とは
すると――見えた! カンナの周囲を囲む茶色い球体状のアラガミ。この勢いのまま切り捨てる!!
――ポチ! 戻れっ!!
スラスト形態から元の
勢いのまま回転する体。背後に迫るコンクリート壁――だが問題はない!
――テイルっ!!
瞬間、僕の神機からオウガテイルの尾を思わせる白い
グギュアアアっ!!
僕の神機に
ザイゴートの体を蹴り、神機を再びスラスト形態にする! こちらへ反応する
グオオオッ!!
最後の1匹が巨大な口を開けて正面から襲い掛かって来た! マズイっ!!
シールドを展開しようとしたその時――1発の銃声が周囲を
カンナだ。体を貫通した弾丸がコアも傷つけたらしく、ザイゴートは空中で砂のように砕け
スラストを駆使して彼女の元に戻ると、カンナがこちらへと走り寄って来た。
「い、い、命の恩人さま~っ!!」
顔から涙や鼻水やよだれをダクダクに
『リーダーがいてくれて本当によかった……やはり、カンナさんも他の部隊のように近接神機使いに
「うっ……でも、それだといままでみたいに正確に狙撃できないっていうか……」
ばつが悪そうに視線を落とすカンナ。と、彼女の足元に転がっていたザイゴートの
両断された体の奥から、オレンジ色のコアと――そのコアにへばりつく、赤いヒルのようなものが見て取れた。
寄生型アラガミのウェンディゴ……だとすると、このザイゴートは
一体このアラガミはあとどれくらいいるんだろうか? もしも増加を続けているのだとしたらかなり危険だ。他のカテゴリーCアラガミ同様、一気に
『っ! グボログボロの撃破を確認! これで付近のアラガミは全て
「えっ!? じゃあミッション終了っスか!? ふい~どっと疲れた~」
――そうだね。とりあえずザイゴートのコアを回収してから二人に合流しようか。
「あっ、まだ一仕事残ってた……リーダーさん真面目っスね……」
メンドくさそうな顔を
――二人とも怪我はない?
イリアが
「うん。リーダーの言ったとおり、トラップで動きを
「トドメを
僕とイリアが満場一致で頷くと、「悪いな、サンキュー!」とアレックスは嬉しそうに笑った。
「皆さん、神機を強化するのがシュミなんスか?
素晴らしく他人事のようにうんうん頷くカンナ。あのねえ……
「……とりあえずお前、帰ったら説教な?」
「なっ!? なんでっスかーっ!? あたしが狙撃したから助かったようなもんじゃないんスか、アレックスさん!?」
「それとこれとは話が別だ! 俺らと離れて戦おうとするからザイゴートなんかに囲まれる事態になったんだろうが!」
「それとこれとは話は別っスよ~! あんなレアケース二度と起きないっスから!! たまたまっスよたまたまっ!!」
……こんな感じで、アレックスとカンナは迎えのトラックが来るまで激しく言い争っていた。
それを見ていたイリアが一言。
「仲がいいよね。いつの間に仲良しになったんだろ……」
――それ、絶対二人に言わないほうがいいよ。
「……?」
こういう時はどうするべきか。部隊のリーダーがまとめなければならない。つまり僕の仕事だ。ハア……
トラックの車中でも言い争うカンナとアレックスを見て、僕は今後の部隊の未来に頭を抱えそうになった。