ゴッドイーター/レッドストーム   作:アガラちゃん

48 / 50
【ダメダメ狙撃手の運用会議】

 センタースワン内に戻った後、僕はフリードさんからメールを受け取った。

 

 呼び出された先は、第二層のメインストリート近くで営業をしている、立派なレストランの中だった。

 

「よう来たな。先に注文してるから、食いながら話そう。ここのメシはうまいぞ?」

 

 そう言いながら、フリードさんはいつも(ふところ)に忍ばせているウイスキー入りの水筒(確かスキットルだったかな?)の中身を少しだけ口に流し込んだ。

 

 ――あの、わざわざここに呼んだ理由は……?

 

「ああ。基地内じゃあ聞かれる恐れもあるからな……カンナのことだ」

 

 ああ。やっぱりその話か……

 

「AIがまとめたレポートに目を通した……リーダーであるお前の意見に(したが)わず、勝手な行動ばかりしていたようだな?」

 

 ――はい……正直予想外すぎましたけど……でも、狙撃兵ってそもそもああいう立ち回りをするものじゃないんですか?

 

「まあな。俺の認識でも遠距離支援や優先目標の排除が従来の狙撃兵の役回りなんだが、ゴッドイーターの場合はそうもいかないらしい。近接(きんせつ)神機(じんき)使いと行動を共にし、アラガミの攻撃を避けながら撃ち続けるのが基本の戦い方のようだ」

 

 ――その、従来の運用方法自体に疑問を感じています。銃型(じゅうがた)神機使いは僕たちのように盾を使うことができないのに、近接と一緒に行動しててもいいのかって……

 

 銃型神機に近接のような装甲板は付けられていない。理由は銃型神機が近接神機に比べかなりの重量を持っているからだ。盾用の装甲までつけてしまうとさらに重量が増え、素早い敵を狙い撃つことすら困難になってしまう。

 

 一応側面には金属板が付けられているが、これは神機自体を衝撃などから守るものであり、神機使いの身を守るものではない。だから銃型神機使いはアラガミの攻撃に対し、素早く身をかわし続けるしかない。

 

 大型アラガミはかわすことすら困難な大規模攻撃を繰り出すと聞いたことがある。もしも戦うことになれば、盾を使える僕達ならいざしらず、ろくな防御手段のないカンナを同じ場所に連れて行くのは流石に危険すぎるように思えた。

 

「そうだな……カンナをお前たちから離しておけば、部隊の全滅も防げるかもしれん。例えば、お前やアレックス、イリアが強力なアラガミによって倒されたとしよう、カンナが残っていればアレが使える。回復柱(かいふくちゅう)、とかいう広範囲で怪我を治癒する道具がな」

 

 回復柱。それは衝撃を与えることで周囲一帯(いったい)粉塵(ふんじん)状の偏食物質(へんしょくぶっしつ)を放出する治療薬だ。遠くから見るとまるで巨大な緑色の柱が現れたように見えることから、回復柱なんて呼ばれている。

 

 ……もしも遠距離から回復柱を投げ込んでくれたのなら、確かに全滅する事態は避けられそうだ。カンナのように遠距離からの支援役も必要なように思えた。

 

 しかし……

 

「OA(オラクルアモー)が届かないんじゃあ、銃型神機の一番の役回りを果たせないからなあ……お、来たな」

 

 店員さんが手慣れた手つきでテキパキと料理を運んでくれた。温かな湯気(ゆげ)が立ち上るクラムチャウダーに、小皿に入った生ハムのサラダ。そしてメインのお皿には、ジュウジュウとおいしそうな音を立てる焼きたてのステーキが乗せられていた!

 

 ――あ、あの、いいんですかこんな豪勢な料理を食べても!? かなり高いんじゃ……

 

「ああ気にするな! 俺一人じゃあ酒代くらいにしか金は使わんからな。大いに食ってパワーを()め込んでいけ! さあ冷めない内に食った食った!!」

 

 フリードさんは上機嫌でステーキをナイフで切り、分厚い肉の一切れを豪快(ごうかい)にほおばった。

 

 うーむ、これ基地の食堂で出されるプリント肉じゃない、オーガニックな肉だよね? 初めて食べるかも……ちょっと緊張するな……

 

「それからな、カイ、お前に一つ言っておきたいことがある」

 

 ――なんですか?

 

 ナイフで食べやすい大きさに切り、フォークで肉を口に運ぼうとしたとき、頭を抱えてうなだれるフリードさんが目に入った。

 

「周囲に聞かれるとマズイかと思ってお前をこの店に呼んだんだが……失敗だったかもしれん」

 

 ――えっ?

 

 ふと、ガラス窓の外から店内に影が()しているのに気づく。

 

 僕は振り返り――驚きのあまりフォークを落っことしそうになった。

 

「ぐぎぎぎぎ……夕食を食べずに出かけるから怪しいと思って後をつけたら(あん)(じょう)! 二人だけでそんな美味しそうなの食べるなんてズルいっスよ~っ!!」

 

 そこにいたのはカンナだった。

 

 まるでヤモリのように窓ガラスにへばりつき、ガラスに押し付けたほっぺたからヨダレを()れ流している……だから汚いって!

 

「ハア……放置してたら市民になんて思われるかわからんな。もうお前も入れ、みっともない……」

 

 聞くや(いな)やカンナは跳ねるように喜びながら店内へとなだれ込んで来た。

 

 フリードさんは彼女の分まで注文したが、カンナは待ちきれない様子で隣の僕の皿のステーキをなめまわすようにガン見してきた。

 

 食べづらいことこの上ない。仕方ないな……

 

 ――ひとくち、食べる?

 

「えっえっいいんスか?! 最初の一口をあたしが食べちゃっていいんスか!? むほ~っ! なんか催促(さいそく)しちゃったみたいで申し訳ないっスね~!! ムフフっ!!」

 

 何を今さら言ってるんだか……

 

「ふはあ~お肉なんて久しぶり……! お肉ちゃん! あたしに会いたかったっスか!? あたしも会いたかったっスよ~!」

 

 に、肉に話しかけているっ!?

 

「ではでは……っ! うぅ~~ん!! おいすぃ~!! ()めば噛むほどジューシー! 甘~いお肉の(あぶら)五臓六腑(ごぞうろっぷ)()み渡っていくっスよ~っ!!」

 

 カンナは肉を口いっぱいにほおばりながら満面の笑みを浮かべた。しかしなんてイイ顔でご飯を食べるんだ……

 

「で? それでお二人はなんでこんなところでコソコソご飯食べてるんスか? 何かナイショ話とかしてたんスか?」

 

「……ああ、お前のことを話してたんだよ……」

 

 フリードさんは頭を抱えながらそう答える。

 

「おお~う! 話題の中心はやっぱりカンナちゃんなんスね~! で? で? 主にどんな事話してたんスか!?」

 

 ――ああ、遠距離で戦う君のスタイルにも強みがあるんじゃないかって……

 

「ぬほっ!! わかってくれましたか!? 遠距離からクールにバシっと決めちゃうカンナちゃんの素敵さが!? さっすがリーダーさんっスね~! どっかの頭悪そうな赤毛のヤンキーとは大違いっスよ~!」

 

 アレックスのことだろうか? 別に君のことを()めてたわけじゃないんだけど……

 

「まあ、そうだな。映像を見たが腕前はかなりのもんだ。あれを生かすにはやはり適正(てきせい)な距離が必要なんだろう」

 

「フホホホッ! いやあ~それほどでも? ないような? あるような? ウフフもっと言っちゃっていいっスよ隊長さん~!」

 

 すごいな……僕と同い年くらいなのに、ここまで小学生並みに増長(ぞうちょう)できるのは……

 

 なんか、だんだんストレスが()まって来た……

 

「褒めてるわけじゃない! 狙撃の腕前は認めるが、それでAP(アポトーシス)弾が撃てないんじゃあ片手落ちだ!」

 

「うぐっ!」

 

「それにだ、一番の問題はこの事をリーダーや仲間に隠し、勝手な行動を取ったことだ!! お前のやったことは明らかな命令違反だ! 減給どころか懲罰房(ちょうばつぼう)にブチ込まれてもおかしくないんだぞ!!」

 

「ううう……で、でも……あたしも……一応活躍しましたし……」

 

 先ほどとは打って変わって、カンナはシュンと肩を落として小さく(ちぢ)こまる。

 

 ……本当に精神が子どもみたいだな、この子は……

 

「でもでもっ! アラガミの攻撃を避けながら正確な射撃をするのなんてあたしにはできないんスよ!! 冷静に、心を落ち着けた状態じゃないと完璧な狙撃はできないっス!! 隊長さん、リーダーさん! そこんとこをどーか! よろしくっスよ~!」

 

 両手を(にぎ)りしめながら必死な様子でカンナは熱弁(ねつべん)した。

 

 彼女の熱意にほだされたわけじゃないけど……カンナの強みを消してしまうのは、部隊にとっても損失になるだろう。

 

 ――ようは、OAをカンナに届けられないのが問題なんです。ここさえクリアできれば、この子のスタイルは僕達にとっても心強いものになります。

 

「ここさえっつってもなあ、そこが一番のネックなんだが……一応、あのドクターにでも相談してみるか? アラガミだけじゃなく神機にも精通してるらしいしな」

 

 ドクターQ・Oか……確かにあの人に()けば、喜んで研究に着手してくれそうではあるけど……

 

「おおっ! ありがとうございます~!! このご恩は働きでお返ししちゃうっスよ~!」

 

「浮かれるな! 話はしてみるが、もしも技術的に不可能であるなら、お前も他の銃型同様に近接隊員と行動を共にしてもらうからな!!」

 

「……はい」

 

 カンナはしょんぼりとした様子で了承する。

 

「お待たせいたしました。こちらお料理となります」

 

「ぬほ~っ! 来た来た来たっスよあたしのお肉ちゃん~!! それでは! いっただきまーすっ!!」

 

 料理が来た瞬間にテンションをブチ上げた。表情がコロコロ変わるのは見てて楽しいけど……疲れるなあホント。

 

 料理は確かにおいしかったけど、隣のハイテンションなカンナに終始(しゅうし)押されっぱなしで、ゆっくり味わうこともできなかった。

 

 僕とフリードさんとの話し合いは、彼女に対する大きなため息で()めくくられることとなった。

 

 

 

 

 ……そんなことがあってから、3日後。

 

 カンナにとって大きな試練(しれん)(おとず)れることになる。

 

 座学を行っている僕達の頭上から、突如(とつじょ)けたたましい警報が鳴り響いた!

 

『第二層Cブロックエリアに中型アラガミ“シユウ”が現れました。第一部隊は至急現場へ急行(きゅうこう)してください。繰り返します。第一部隊はただちに――』

 

「なっ……中型アラガミだと!? なんでいきなり街中に……!?」

 

 ――それどころじゃないアレックス! このままじゃ街の人が危ない!!

 

 格納(かくのうこ)庫から神機だけを受け取り、僕たちは現場へ向かって全速力で走る!

 

 第二層の人々はパニック状態に(おちい)っていた。悲鳴と怒号(どごう)が飛び交い、現場へ向かう僕達を押し返すように人の波が押し寄せる……!

 

「わわわっ! 人多すぎっスよ~!!」

 

「くっ……ぜんぜん進めない……!」

 

 あまりの人の多さに身動きのとれないカンナとイリア。すると、襟元のスピーカーからレインさんの声が届く

 

『11時の方角にある階段を使ってください! そこから隣の建物の屋根に移り、屋根伝いに移動を! 現場までのルートを送ります!!』

 

 僕達4人は指示に従い、急いで階段を上り隣の屋根に飛び移る。

 

 腕輪にはめた携帯端末が、目標アラガミのいるエリアをホログラムで表示した。

 

 だが……

 

「オイ……リーダー、ここって……!」

 

 愕然(がくぜん)とした表情でアレックスがホログラムを見つめる。

 

 指し示した先は――ブラウン牧師のいたファームと目と鼻の先だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。