【戦力アップの秘密マシン】
『……次のニュースです。ラスベガス第二支部がアラガミによる超高高度からの襲撃を受けた件について、現支部長であるエリオット・ロバーツ少将が以後の対策について報告されました。
議場では軍事衛星の使用を
エリオット少将は対策として、無人観測カメラの数と範囲の拡大と共に、万が一再び同じ方法で侵入するアラガミに対し、高濃度の
しかし委員会メンバーの中には、アラガミが再び高高度からの
僕は食堂で朝食を乗せたトレーを受け取りながら、ニュースの内容に耳を
ブラウン牧師が亡くなってからもう4日。しばらく落ち込んだ様子のカンナだったが、ようやくいつもの明るさを取り戻しつつあった。
席に向かうと、朝から騒々しく何事かを言い合うアレックスとカンナの声が届く。
「オイいい加減にしろよ! そんな奴いるわけねーだろ!」
「ウソじゃねーっス! あたしちゃーんとこの目で見たんスから!!」
真剣な表情で訴えるカンナ。一体なんの話だろうか?
「本当に極東支部でオッパイの下半分丸出しで歩いてる人がいたんスよっ!!」
本当になんの話っ!?
おもわず朝食のトレーを落としかけ、話の
「ああカイ、いや、俺が極東のエースって言われてる、第一部隊の隊長の話を振ったんだよ。どんな奴なのか知ってるかってな」
「それであたしが、それっぽい人とすれ違ったかもって話をしたんス。で、その隊長さんと親しげに話している女の人の格好がヤバかったんスよ! 3度見しましたからねあたし!?」
ああ……なるほど……いやその隊長の話よりそっちの話で盛り上がってるのおかしくない?
「まあ、ここと違って服装自由な支部も多いけどよ……つったって、どう戦うんだよそいつよ?」
「あたしが聞きたいっスよ! 絶対ポロリもあるじゃないっスか!?」
――ま、まあ服装なんて人の自由なんだし、そんなに面白がって話すのも……
「いやいや何言ってんスかリーダーさん!
とりあえず下ッパイっていうのやめようか?
「……でも、極東って湿気がすごいって聞いたことあるし、ムレ対策のために開けてるのかも」
イリアがそう
「いや他にやりようがあるんじゃないっスか? 下丸出しにする必要性あります?」
「……正論……!」
即座にカンナに論破された。もう少し粘ろうイリア。名前も知らないその女性ゴッドイーターが可哀想だ。
「ていうかアレって下どうなってんスかね? 普通のブラは構造的にムリっスから、水着みたいなので上から押さえつける……いやでもそれにしては形が……
まさかノーブラ? いやでも……ハッ! わかった!! ニップレスっ!!」
答えを導き出した喜びからか、指パッチンしながらそんな単語を大声で口走るカンナ。朝っぱらから何言ってんだ!?
周りでは男の
……いや、メモなんか取ってどうするんだか。メモの用途は気になるが聞いたら絶対後悔するだろうな……
と、その時だった
『第一部隊の
唐突に館内放送でカンナに呼び出しがかかる。クオリオ・オールティン博士……って、ドクター・Q.Oのフルネームだったっけ。
――状況はわからないけど、緊急性が高そうだね。カンナ、すぐにそのご飯は下げて――
「ムオ~ッ!
カンナは残っていた朝食を
お皿の食べ物を全て食べ尽くした彼女は、ハムスターの
「グフっ……ご、ごふぉーふぁふぁ~(意訳:ごちそうさま)」
そしてドタバタ足音を響かせながら、彼女は
「……せわしねえ奴……」
両手で口を押さえながら突っ走るカンナの背中へ、アレックスが
……それから20分くらい経った後。
センタースワンのロビー内にいる僕達の元へ、カンナがなにやら騒ぎながら大急ぎでこちらに向かってくる。
「天才天才天才天才てんさ~いっ!!」
「落ち着けよ。変態はテメーだ」
「誰が変態じゃい! それよりリーダーさん見てくださいコレっ!! 革命っスよ大発明っスよ~!!」
そう言い、なぜか両手に手袋をはめた彼女が床に降ろしたのは――巨大な銃、のようなものだった。
斜め40度くらいに角度をつけた、全長1.5メートルくらいの銃身。床に固定できるようになっており、金属部の
これは……神機?
カンナにそう
「フッフッフ! これはっスね~、OARL、正式名称、オラクルアモー・リレーランチャーっス!! すごくないっスか!?」
えっ? どういうこと? 何がすごいの? と聞くと、「やれやれ何もわかってないな」といわんばかりの得意顔でニンマリ笑いながら鼻を鳴らすカンナ。くっ……ストレスが……!
「ふふふっ! それではこのアイテムの用途をご説明するっスよ! このマシンを設置すれば! 半径約60メーター
フフッ、これがどういうことかわかります? つまり! 遠距離狙撃特化のカンナちゃんでも! これがあれば他の銃型神機使いみたいにAP(アポトーシス)弾をブッパできちゃうってわけっス!! フホホホ! あたしの時代がキタ! これで勝つるっス!!」
――つまり、これからは君もアラガミ弾……AP弾で支援できるようになったってこと?
「YES! いえ~すザッツライト!! ふふふ、これからバリバリ活躍しちゃうっスよ~!!」
……そういえば、フリードさんが以前カンナへOA(オラクルアモー》を提供する方法をドクターQ.Oに相談してみるって言ってたっけ。なるほど、それでカンナのために開発してくれたのか。
得意絶頂でその場で
すると、そばで聞いていたアレックスが疑問を口にする。
「OA弾を発射……ってことは、コイツも神機みてえなもんなんだよな? 神機は
「いやいや! 狙撃兵のあたし自ら皆さんの近くまで行って設置してたら意味ないじゃないっスか! なので、これはリーダーさんに運んで設置して欲しいっス!!」
え、僕がっ!?
「いやー、だってコレ、リーダーさんの神機細胞を元に作ったものらしいので、リーダーさん以外触ることもできないんスよ。だからあたし今、神機整備班が使ってる
あ、そういえばドクターに
……あの人は……実験をする時は僕も
まあ、勝手に培養したポチの細胞ならポチをいじっているわけじゃないから、実害はないんだけど……なんだかモヤモヤするなあ……
そして、このOARLは僕が運搬することになるのか……結構な大きさだし、運搬も大変なら設置するときもアラガミに壊されずかつ僕たちがOAを渡せる範囲に置かないといけないしで、結構大変そうだな。ハア……
「あっ、ちなみにこのOARLはリーダーさんの神機にガッチリ
わあ、素敵な
「おっと、そろろそ次の訓練始まるぞ。トレーニングエリアで実習だから、そろそろ移動しないとヤバいぜ」
アレックスが携帯端末で時間を確認し、僕達にそう告げた。
けれど……すぐに行動に移すことはできなかった。理由はイリアだ。
朝食の後、彼女はずっとロビーのゲージ内で飼われている子猫のミーオをうっとりした様子で
というか、訓練の合間合間にミーオのところへ通っているらしい。ミーオの存在はここを利用する市民や職員の
僕たちが話している間も、イリアは一時もミーオへ視線を外さず、床に突っ
――イリア。移動しよう。次の訓練が始まる。
「まだ間に合う」
――いやもうギリギリだから言ってるんだよ! ホラ立って!
「大丈夫。わたしなら間に合うから」
そう言って
――そう言って間に合わなかったこともあったじゃないか! ホラ立って……うっ!?
僕は彼女の両肩を抱きかかえるように持ち上げようとしたが、動かない。
理由は、イリアが両手で力いっぱいカーペットにしがみついていたからだ。
――うぐぐっ! 早く立つんだイリアっ!
「あと五分。あと五分だけだから」
――だから前もそういって遅刻してたじゃないか!! 早く立ちなさいみっともない!!
「わたしはどう見られようと
――それが信用できないって言ってるの! どうしてネコの事になると僕の言うこと聞けないの!?
「あと五分……あと五分……」
――ああもうっ! どうしてこう聞き分けがないのこの子はっ!!
「オカンかお前は」
アレックスのツッコミが背後から掛けられる。
「わー……イリアさんってネコキチだったんスねー……が、頑張ってください……?」
カンナのドン引きした声まで届いてきた。ていうか見てないで手伝ってよ! この子をカーペットから引きはがすのを!!
その後、なんとかイリアをネコから引きはがし、時間ギリギリでなんとか僕とイリアは間に合った。ちなみにアレックスとカンナは途中で
……こうしたつかの間の
その日の午後、僕達第一部隊へ、新たに緊急の作戦が言い渡されたのだ。