センタースワン5階の作戦指令室に呼び出され、僕たちはフリードさんから作戦の詳細を聞かされた。
「まずはこれを見ろ。ここセンタースワンから40キロ離れた地点にある、地下の研究施設だ」
指令室中心にホログラムが浮かび上がる。深さ200メートルのすり鉢状に掘られた穴の奥に、複数のブロックに分けられた研究施設が表示された。
この穴は、この第二支部が
地底であれば電力を使用しても電磁波が地表に届きにくくなるため、アラガミに
……誤算だったのは、その地底からアラガミが現れたことなのだという。
「現れたアラガミの種類は不明だ。もしかするとまた新種かもしれん。見つけても手を出すなよ。お前たちの今回の任務は生き残りの研究者と
「ゴッドイーターの保護……? そのアラガミにやられたのか?」
「ああアレックス……やられたかどうかはわからんが、少なくとも通信ができない状況にあるらしい」
――なるほど。それで、どの部隊の人ですか?
フリードさんは眉間にシワを寄せて小さく
「……第四部隊。あのブラッドとロブだ」
あの二人か……
「チッ。あいつらかよ。放っといてもいいんじゃねえの?」
「あー、あたしがここにやって来た時に
「気持ちはわかるがな。だが連中も第二支部にとってみれば貴重な戦力だ」
「戦力? 新種の中型にビビり上がってトンズラかます腰抜け共がか?」
「……お前たち、以前提出してただろ? ウェンディゴの危険性に関する報告書を。そのウェンディゴを最も多く
そういえば、金になるとかいう下世話な理由であのアラガミを討伐していたな。
個人的な感情としては、あの二人のために新型アラガミがいるかもしれないというリスクを負うのは気が進まない。
しかし……
「……今は、個人の感情は抜きにして任務に集中するべきだと思う。生存者がまだ残っているかもしれない状況で、迷っているヒマなんてないはず」
正論だ。僕がイリアの
それから僕たちは神機を受け取った後、ヘリに乗り現場へと急行した。
◆◆◆
ヘリから降りて神機を
カンナから渡されたリレーランチャーは刀身に
しかし軽い。いつもよりも神機が軽く感じる。というか、体全体まで軽くなったような気がする。腕や足がいつもより機敏に動かせるようだった。
そんな僕を見て、アレックスとイリアが小さく笑う。
「この間
そうだった。
以前
この感じなら、取り残された救助者も速やかに助け出せられそうだ……!
「わー……すっごい深い……近くで見るとヤバいっスねー……」
数メートル先にある地下研究所の穴を見て、カンナが恐ろしげにそう
と、遠くのテントから軍服姿の男性がこちらへ走り寄ってきた。
「よく来てくれた……! ここにいた研究員は63名。うち52名は救助した。残り11名と警備に当たっていた
そこで、男性は視線を落とし、重々しく口を開く。
「……おそらく亡くなっている者がほとんどだろう。遺体は運ばなくていい。遺族のため、確認用に画像を残してくれると助かる……もし生存者がいたら、頼む、すぐにこちらまで運んでくれ……!」
周囲には複数の救護用ヘリと
ヘリのような動力を持つ機器があれば別のアラガミが寄ってくる恐れもあったが、周囲は第二部隊に所属するGE達が展開している。これで僕たちは救護に集中できそうだ。
「任せてください! 生存者は最優先でここまで運び上げるっスから!!」
カンナが
「ありがとう……! 向こうに研究施設に続くタラップがある。そこから下へと降りてくれ」
僕たちは指し
タラップの下には
足場は僕達4人と神機を乗せても問題ないほどしっかりとしていた。だが、歩くたびに振動が足場全体に響く感じがして、少し心臓に悪い。
金網の下をのぞき込むと、10メーター近い所に別の金網状の足場がある。そのさらに下には底が見えないほどの暗黒が広がっていた……
恐怖でわずかに足がすくみ、足の裏から
僕たちは狭い足場の上を小走りで駆け、何度もタラップを降りて地下の研究施設へと向かった。
下に近づくと、遠くに立ち上る黒煙と炎の明かりが見て取れた。おそらく、アラガミが暴れた後なのだろう。
目撃者の話を聞いたところ、
「……見えたぜ。あれが研究施設の入り口だな」
先頭を走るアレックス。彼の視線の先に、戸の開け放たれた大きな建物があった。
最後のタラップを降り、ブーツの靴底が金網の足場からしっかりした地面を踏みしめる。
――まだアラガミはここに残っているはずだ。ここからは足音を立てず、敵に見つからないように行動しよう。
アレックスとイリアが無言で
「あ、あたしは向こうの足場を上って施設全体を見渡そうかと思うっス! あたしが着けてるスポッターモノクルは
すると、服の
『そうですね。近辺の調査は三つ目トンボを通じて私が行います。施設全体の状況確認をカンナさんに任せるのは合理的です』
――わかった。任せるよ。
「お任せくださいっス!」
カンナは力強くそう
「うっし、じゃあ行くか……!」
緊張の
建物の玄関は特に
白い壁で囲まれた廊下。緑色のリノリウムの床を、僕たちは土足のまま歩く。足音を立てないよう動いているつもりだが、ブーツの音が廊下で
「……あ、あれっ!」
イリアが指さす方角。突き当りの角に、人の腕のようなものが伸びていた。
だが――その腕は、流れ出る血の上へ力なく伸びている……
『……こちらで確認しました……すでに、息を引き取っているようです。画像はこちらで保存いたします……』
やはり手遅れだったか……
「……ごめんなさい……」
イリアが小さな声で間に合わなかったことを謝罪する。
「……もう死んじまってる奴のことはいい。今は生きてる奴を探すのが先決だ」
そう言うアレックスの横顔は、冷静そのものだった。いや、感情を表に出すよりも、生存者を見つけることを優先する、そんな意思を秘めた表情だった。
「うん……」
イリアは頷き、再び生存者の探索にあたる。
施設内の
その後、6名の研究者を見つけたが、いずれも事切れた後だった。
最初に見つけた研究者は積まれた機材の
……周囲に火の手がないことを見るに、これはアラガミによって負わされた怪我と見ていいだろう。
炎、あるいは熱線を操るアラガミだろうか? ここが地下となると、一酸化炭素の
と、その時だった。
ガタリ。
遠くで物音。振り向くと、チカチカと
「誰だ、生存者か!?」
アレックスの声に、二つの人影が動きを止める。
再び灯る室内灯が、人影の顔を明確に照らし出した。
「……フン、誰かと思えば……