――その
僕が
「それ以外に何がある? ここの研究者にでもやられた傷だと思うのか? マヌケ」
「減らず口叩けんなら助けはいらねえな。とっとと消えろクソ共」
「……助けはいるさ。お前が死ねば精神的に大助かりだ」
『止めなさい! あなた達はこんな時まで……!』
アレックスとブラッドの
『突然アラガミの襲撃を受け気が立っているのかもしれませんが、そんな怪我で強がっても
「……ふざけるな! こんな奴らに助けられるくらいなら死んだほうがマシだ!」
「お、おいブラッドよう、ものそのくらいにしたほうがいいぜ……回復錠も
「黙れよロブ……! 俺は
床にいくつもの血のしずくを
……プライドだ。僕達に前で
しかたないな……
僕は自らのメディカルポーチを開け、回復錠を二粒彼らに差し出した。
「……なんだ? これは? なんのつもりだ……? まさか憐れみのつもりか? 俺たちに救いの手を差し伸べる聖人気取りか?
――これが僕達の任務だ。負傷者の救援・救助を最優先とする。これは第二支部からの指令だ。所属するあなたにも
「ははは、いいな。第二支部の命令を
『……第四部隊、隊長のブラッド・ベイカー。これ以上の
ブラッドはレインさんへの返答の
本当に手のかかる連中だ……
――じゃあこうしよう。生存者の情報と現れたアラガミの情報を引き
「今度は取引ってわけか? 必死だな。そんなにアラガミが怖いのか? またネズミのようにコソコソ逃げ回って生き
――ああ、もうそれでいいさ。この取引に乗るのか? 乗らないのか?
「…………」
ブラッドは、僕の手のひらの回復錠を
どうしても僕の手から回復錠を受け取ることができないらしい。
ハア……
――イリア。これを彼らに渡してくれ。
「……えっ? なんで、わたしが……?」
――いいから。君から手渡して欲しい。
「……? わかった」
イリアは言われた通り僕から回復錠を彼らに手渡す。ブラッドは彼女の手からだとためらいなく受け取り、ニタニタと
「うんうん、君は本当に優しいねえ~? ついでに俺たちと一緒に地上へ戻らないか? たっぷりお礼がしたいからさ……」
――情報は?
手を
ブラッドは彼女とのスキンシップを邪魔されたことが気に食わないのか、
「たかが回復錠ごときで偉そうに……生存者の情報と、アラガミの情報だったか? 生存者か……おそらくだがもう生きている奴は残っていないだろう。アラガミが暴れて施設の一部が
なるほど。ブラッドの頭部の怪我はそれが原因か。回復錠やOCアンプルも、その崩落に巻き込まれて失ってしまったのかもしれない。
「次はアラガミの情報か……? 見たこともないアラガミだった。全身が炎に包まれているガイコツのバケモノ……間違いなく新種。それも大型種だ。お前らじゃあ勝てない。どんな奇跡が起きようとな……」
新種の大型種……!
大型種を討伐する場合、第二支部では複数の部隊と
……僕達にはいまだに大型種の
「情報は伝えた。俺たちは地上へ向かう。いもしない生存者をまだ探したいというなら好きにするといい。ミイラ取りがミイラになるマヌケな
「いちいちこっちの神経逆なでするのはテメーの趣味か? とっとと地上に行けよ
「……」
立ち去ろうとするブラッド達だったが、ふと足を止め、こちらへ振り向かずにこう
「……感謝はしてやる」
――えっ!?
「回復錠サンキューな! 助かったぜー!」
「馬鹿かロブ! 余計な事を言うな!」
「うえっ!? でもブラッドは――」
そんなことを言い合いながら、二人は施設の出口へと向かっていった。
「やべーなあいつら……大丈夫か?」
「……頭のダメージが深刻なのかも……」
二人ともひどい言いようだな。特にイリア……まあ、感謝の言葉に
「そんな事よりもだ……大型アラガミがここにいるって話だが、どうする?」
緊張の
まさか……
「ピンチかもしれねえが、これは大きなチャンスだぜ。倒してコアを手に入れられれば、一気に戦力アップだ!」
大型種、しかも新種を相手にしようというのか。これまで大型種と戦った経験もないのに――危険すぎる。
『いけません! 現在あなた達に大型種の討伐許可は下りていません! あなた達の任務は人命救助です!! アラガミとの交戦は許可しません!!』
レインさんの声に同調するように、カンナもまた声を上げる。
『そうっスよ! 神機強化したいのは知ってるっスけど! 今やることっスか!? まずは隊長にお願いして、それから大型種の討伐に参加させてもらうのがスジじゃないっスかね!?』
正論だ。カンナの言ったことが本来のプロセスのはずだ。
しかし――アレックスは彼女達の意見に真っ向から反抗して見せた。
「許可がない? まっとうな手続きを踏め? そんなことわかってんだよ……でもよ、それでいつになったら大型のコアが手に入るんだ? 俺たちにそんな
アレックスの
「……お前らもわかってるだろ? あいつは普通のアラガミじゃねえ……ちんたら神機を強化して勝てるような相手じゃねえんだぞ……?」
彼の言いたいことはよくわかる。ニャルラテップは……
接触禁忌種とは、単体でも攻められた場合、支部が
どの個体も恐ろしく好戦的であり、下手に接触した場合、支部まで巻き込まれる恐れがある。だからこその“接触禁忌”を冠する存在なのだ。
ニャルラテップはかつて、アレックスの盾を一撃で破壊してみせた。彼の盾は“タワーシールド”と呼ばれる非常に
十分に強化されていないとはいえ、並みのアラガミなら大型種の攻撃にもビクともしない盾だ。それを一撃で簡単に粉砕してみせたあのニャルラテップの力は底が知れない……
「俺たち3人の神機はすでに中型種で強化をしている。今なら大型種とも渡り合えるはずだ……! リーダー、イリア! こんなチャンス、逃す手はねえだろ……!」
ニャルラテップはいずれここに戻ってくる。確かに僕達に時間の余裕はない。それを考えると、アレックスの考えも間違いじゃない。
しかし……
「相手は新種。どんな奴かもわからない……危険すぎる。わたしは戦うべきじゃないと思う……」
「チッ、危険なんざ百も承知なんだよ……リーダーはどうだ……!?」
――僕は……
考えたが、やはり危険すぎる。アレックスのやり方は無謀だ。ほとんど賭けに近い。
戦場で賭け事なんて
だが……そのアラガミの近くに、もしも救助対象の人々がいるとしたなら。
怪我をした人の生存率は時間とともに徐々に失われる。迅速な救助の延長線上に、もしもそのアラガミが立ちはだかるのであれば――
――僕達の任務は人々の救助だ。アラガミを探して討伐はしない……けど、救助者の前にそのアラガミが立ちはだかるなら、戦わざるを得ない……!
「……ああ、わかった。OKだ。それでいいぜ……戦わざるを得ない状況なら……!」
アレックスは己の戦意を高めるように、大剣型神機の
『承認できません……できませんが……もしも避けられない状況なら、私も全力でサポートさせていただきます』
『も、もし戦うことになったら! アラガミを建物から外へおびき出してくださいね!? 建物の中だとあたしの狙撃弾も届かないっスよ!!』
そしてイリアは、
「……問題はチーム全体で解決する、だよね……みんなのために、力を
そう言い、信頼のこもった瞳を僕へ向けた。
いや、彼女だけじゃない。
アレックス、カンナ、レインさん――言葉こそ発しないが、彼らの信頼と期待が僕へと集まっているような、そんな感覚を覚えた。
リーダーか……今こそ、その
――最優先は人々の救助だ。アラガミを倒すためじゃない、自分たちの都合のためじゃない。まだ助けを求めている人がいると信じて――行こう!
「おう!」
「了解」
『承知いたしました』
『ウイッス! 了解っス!!』
4者それぞれが応え、僕たちは改めて研究室の奥へと進む。
……これまでにないチームの一体感を覚え、僕は心のどこかで、少しだけ浮かれたのかもしれない。
もしも大型種アラガミが現れても、今の僕達なら難なく倒せる。そんな期待を抱いてしまった。
……だが。実際に僕の目の前に現れたアラガミは、僕のそんな