『回避を――!!』
冷静さを
ボゴオオオッ!!
凄まじい熱量とともに、巨大な
数メートル離れていても肌を灼くような熱風。直撃した地面はドロドロに溶け、まるで
これほどの高熱。直撃すれば
『だ、第
20メーター以上の頭上に浮かぶアラガミ。中心部の白熱球体から、再び灼熱の弓矢が生成される。
「クソっ!
頭上をにらみ
そこで僕は思い
そうだ。彼はあのアラガミを捕食した。ならば渡せる。カンナに
――アレックス! 弾をカンナに渡すんだ!!
「それは――チイっ!」
アラガミからの第二射だ。二つ目の火柱が吹き上がり、僕たちは
このまま攻撃を
僕は自分の神機上部にセットされていたリレーランチャーを素早く設置。アレックスへと呼びかける。
――やるんだ! アレックス!!
「よし、ちゃんと受け取れよ……!」
アレックスが神機を肩に乗せ、
すると――神機の
大きな
と、同時にリレーランチャーの一部が
銃口の先にいるのは、カンナだ。
ドシュッ!
再び重い射出音。
『無事届いたっス!
「よっしゃ! できるまでムダ弾撃つなよ! お前が狙われたらお
『分かってるっス! 一撃で撃ち落としてみせます……!!』
AP弾がどれほどの威力かはよく知らないが、一撃でアラガミの
だが……
腕や足とは違い、
あんな体の構造をしたアラガミに、弾丸の小さな狙撃弾を当てて、致命傷を与えることはできるのか?
今奴にまともに攻撃を与えられるのはカンナのみ。もしも
『生成完了っス! これで――』
――待つんだカンナ!!
『えっ!?』
考えなければ。確実に奴をカンナの一撃で
そもそも奴は、なぜあんな体の構造をしているんだ?
体の中心部にあるあの巨大な白熱球体。球体から発生される熱にアラガミ細胞が耐えられず、かろうじて焼かれない
あの球体は……プラズマなんだろうか? 物質第四の状態で、その温度は数千から数億度ともされている。
いかにアラガミとはいえ、それほどの熱を帯びているものに触れることはできない。だから体から少し離すようにプラズマ球を浮かばせ、それでも余った熱は炎として全身に逃がしているのか……
先ほどの攻撃から見ても、奴はあのプラズマを自在に操ることができるようだ。プラズマとは電子やイオンが超高温で運動している状態、と何かの本で読んだことがある。
それを制御する方法とは……そうか!!
「おいリーダー、どうした? さっきから黙って何を考えてるんだよ?」
――いや、問題ないアレックス。奴を一撃で倒す方法がわかった。
「何っ!?」
――イリアっ!!
アラガミからの三度目の攻撃。イリアは吹き上がる火柱を回避し、なんとか僕の元まで来てくれた。
「なに……?」
僕はあのアラガミを倒すため、
「……えっ? なんで、そんなの……?」
――奴を倒すために必要なものだ! ここが研究所なら絶対にある!! 探してカンナに渡してくれ!!
「……了解。必ず見つけ出す……!」
イリアは力強く
すると、その動きを
やらせるわけにはいかない!
――ポチ! スラストっ!!
ポチが
僕は空中の青く燃えるアラガミへ一直線に飛んだ!
グオオッ!
低くうなり、すぐに僕へと向き直るアラガミ。よし、このままひきつける!
――スパイクっ!!
小型アラガミのコクーンメイデンから得られた能力だ。僕は
だが――敵のアラガミは全く意に
――くっ!
僕はスラストを解き、同時にシユウから得られた能力の火球を放つ。反動で体を逆方向へ逃がし、プラズマの弓矢を空中で何とか回避することができた。
ボジュアアアッ!!
『うわわわわっ!?』
頭を守りながら逃げまどうカンナの姿が遠くで見えた。しまった、彼女に流れ弾が行かないよう動いていたはずが、離れていた彼女にまで被害を与えてしまうとは。
『リーダー! 敵の追撃です!!』
まずい! 地面に降りた僕はポチを呼び、背中にまたがったまま攻撃を回避!
間一髪。背中を襲う猛烈な熱と風圧が死の予感をよぎらせ、熱が引くと同時に氷のような冷たさが背筋を駆け
「クソっ! 逃げることしかできねえのか!? このままじゃ……!」
悔しさをにじませるアレックスの声。
と、その時だった。
『イリアさん! どうしたんスか!?』
遠くにカンナの元へ走るイリアの姿が見えた。どうやら見つけ出してくれたようだ。
『カンナ! これっ!!』
『え……なんスかこれ、じ、磁石……?』
――カンナ! それを
僕は
『じ、磁石をっスか!? どういうことっスか!?』
――いいからやるんだ! 狙うのはあの光る球体のほうじゃない、球体から最も近い部分を狙うんだ!!
『ええ……?』
『リーダーの指示に従ってくださいカンナさん! 考えがあっての指示です!!』
『ええと、わ、わけわかんないけど了解っス! 消化せずに弾に
カンナはイリアから受け取ったネオジム磁石を神機に食わせ、3メーター近い巨大な
『AP弾、発射っ!!』
パアアアン!!
その瞬間――アラガミの体に異変が起きる。
グオオオオオウウゥゥオオォォ!!
胸の巨大なプラズマ球が一度大きく
同時に、自らのプラズマで体の右半身を
『これは……』
――
レインさんをはじめ、
――プラズマとは超高温の電子やイオン。つまり……ある意味では
『……! ではリーダー、先ほどカンナさんに渡した磁石は……!!』
レインさんの問いに、僕はうなずく。
――イリアに探させたのはネオジム磁石。磁石の中でも最も強力なものです。研究施設なら機器や装置にも使われるはず。それを弾丸と共に放てば、弾丸の回転エネルギーと共に、砕かれたネオジム磁石の粉末が奴の体内で
……もっともらしくは言っているけど、正直あの磁石は単純なダメ押しに過ぎなかった。
AP弾があのガイコツのようなアラガミに対してどれだけ効果を及ぼせるかわからなかったから、
ここまで上手くいくとは思ってなかったけど、ともあれ奴を倒すことができたのだ。素直に喜ぼう。
『なるほど……アラガミの特性を分析・
え……な、なんかレインさんの僕の評価が異様に上がってる!?
――い、いや違いますよ! あ、あれはたまたま思い付きで……!
身の
『えーと? よ、よくわかんないんスけど……決まり手はカンナちゃんの
『うん。カンナも頑張ったと思う。ごっつぁんです』
『お、イリアさんオスモウ好きなんスか? よく知ってるっスねー』
緊張感が解けたのか、スピーカーからほんわかした会話が届く。僕も神機を置いて腰を下ろそうかと思った、
その時だった。
グオオオォォ!!
落下しくずおれたあの燃えるアラガミが、再び動き出したのだ。
ほとんど骨のように見える体組織へ、ヴァイオリンの
まずい、復活を阻止しなければ! 僕が
「いい加減、くたばりやがれ!!」
アレックスだった。
体に残っていたオーバーバーストの力を結集させ、
僕は身をかがめてアレックスの攻撃をかわし、再び立ち上がると――そこには、偏食物質の影響で砂のように
……倒した。
大型アラガミを。しかも新種を。誰一人欠けることなく、倒した……
僕達四人で、倒した……!
『や、や、やったぁ~っっ!!』
スピーカーから、カンナの喜びの声が届いた。
『大型……倒せた……わたしたちが……!』
カンナの隣で、喜びをかみしめるようなイリアの声も聞こえた。
「ハア……」
どすん、とアレックスが自身の
「大型
バーストが切れたの影響だけでなく、日に二度も
残っていたあのアラガミの身体の破片も、捕食の瞬間に消失した。これで……討伐は
『みなさん、お疲れ様でした。救助用のドローンを要請するので、しばらくは建物内に待機してください』
『ハア~、マジチョー疲れたっスよマジで~!』
「施設の中はまだエアコン効いてたっけか? 休みがてら
あの大型アラガミを倒したことでテンションが上がっているのだろう、カンナとアレックスがしんどそうにしながらも、どこか嬉しそうな声でそう言った。
僕としても彼らと喜びを分かち合いたかったし、救助の大型ドローンが来るまでのんびりしたかったのも事実だ。
けれど……僕達の任務がそれを許さない。
――僕達の任務は残された怪我人の救助だ。敵アラガミを排除した。これより本格的な救助活動に入ろう……二人とも、大丈夫?
そう呼びかけると、案の
『了解。まだ助けを待ってる人がいるかもしれない。全力で捜査する』
頼もしいイリアの声が、“
ありがとう……イリア本当にありがとう……
『……救助者捜索に全力を
『……うーす』
「おーう……」
ヘロヘロ状態のカンナとアレックスをよそに、僕とイリアは天井が崩落したエリアの
……残念ながら、先に救助した女性の研究者のほかは、全員息を引き取っていた……
『照会できました。これで施設内にいた職員は全員確認できました……お疲れ様です。救護用ドローンが、皆さんを出口まで運びます』
全長四メートル近い巨大ドローンが、消火用ドローンと入れ替わりで鎮火した地面へと次々に着陸する。
どうやら神機を抱えたままでも問題なく飛行できるようだ。ドローンが吊り下げていた
……結局、ここで救えたのは、あのブラッド達を除外すればたった一人だけか……
消火剤によって白く染まった地下を
もしも、もっと早く駆けつけることができたなら。
もっと早くあのアラガミを倒すことができたなら、もっと多くの人を助けることができたのだろうか。
ふと、足元よりさらに下を飛ぶドローンが運ぶ、唯一の生存者だった研究者が視界に入った。
意識は失っているものの、命に別状はないらしい。大けがをしているが、眠っているように瞳を閉じている。
……
けれど“仕方ない”だけで全部片づけられるほど、僕の心は単純かつ
大型アラガミは倒せたが……救助者を一人でも多く救うという任務は、失敗だったかもしれない……
『リーダー』
『やれることはやったんだから、なんて開き直ることは言わない。でも、一人は助けることができた……これは事実だから。
わたしたちの力が及ばなかったことも事実。でも、助けられた人がいたことまで否定して欲しくないから……否定しすぎないで欲しい。たった一人でも、人の命を救えたこと。それはすごいことだと、わたしは思うから……』
…………
僕の心を理解しているかのようなイリアの声に、僕は何も答えられなかった。
否定したいような、喜びたいような、それも
僕を乗せたドローンは、