隊長から手渡された昼食は、チューブに入った栄養補給ゼリーだった。
味はイチゴ風味でそんなに悪くはなかったけど……今日消費したカロリーに比べて、得られる栄養が見合っているようには思えない……
アレックスもそう思っていたようで、手渡されてガッカリし、食べて2度ガックリ来ていた。
「こんなゼリーでもある程度腹は膨れる。元気出たろ?」
隊長の発言に、同意したのはイリア以外いなかった。
「……お前さ、技能試験の成績、何位だった?」
アレックスがイリアにそう話しかけた。
イリアは彼の方を見ず、手の中のチューブを見つめながら、
「……別に、後ろのあたりにいたと思うけど」
――技能試験?
僕がそう疑問を口にすると、アレックスは両手を広げ呆れたような声を上げる。
「あの
は、初耳だ……!
『技能試験の成績は試験を受けた全ゴッドイーターに公表されています。カイさんの成績もお教えできますが、いかがですか?』
人に何かを教えることに生きがいを感じているのか、フギンはイキイキとした口調でそう尋ねた。
うん……あんまりいい成績じゃなかった気がするから、いいや……
「俺の成績はトップだったはずだ。けど、お前は俺より明らかに強え……成績が俺より下なんてありえねえだろ。手え抜いてたのか?」
アレックスの問いに、イリアは沈黙を貫く。
「答えろよ。お前、もしかしてわざと無能なフリして内心俺らを
「……わたしは、そもそも……戦うのとか好きじゃないから……」
発言に、僕もアレックスも
「じゃあなんでゴッドイーターになったんだよ……」
呆れたようにそう言うアレックスに、返したのはレオナルド隊長だ。
「イリアは、確か“ロースクール”出身だったな。あそこは卒業すればほぼ自動的にゴッドイーターにならざるを得ん。おおかた、自分の意思とは別にあそこに預けられたんだろう」
ロースクール……確か、未来のゴッドイーターを育成するため、
学問として高みを目指さず、フェンリルという“法”の元、地に足をつけた技術や知識を学ぶ場所……それで“ロースクール”なんて呼ばれてたっけ。
「なるほど。学校……つうか親か? しがらみに縛られたままここまで来たってことかよ。なおさら疑問だぜ。そんなマシンみてえな生き方、なんで続けられる? お前、本当に生きてる人間か……?」
「……」
ジロリとイリアを見据えるアレックス。微動だにせず、
あれ……な、なんか、不穏な雰囲気……!?
「やれやれ……」
レオナルド隊長が呟く。これは、隊長がビシッと言ってくれる流れかな?
そう思った僕の期待は次の瞬間に爆散した。
「それではここで……とっておきのジョークを披露しよう」
…………
キリリとした表情でそう言うレオナルド隊長に、全員の時が止まった。
え、え? 今なんて? レオナルド隊長?
「ある男が嬉しそうに語った。『俺が家に帰ると決まって愛犬が喜ぶように飛び跳ねるんだ』と」
えっ!? 続けるの!? こ、この空気のまま続けられるの!?
「それを聞いた同僚はこう応えた。『それはいいね。奥さんが帰った時も飛び跳ねて喜ぶんだろう?』……そして男は家に帰る前に靴の消臭剤を買ったそうだ」
…………
ええっと……うん。なるほど。愛犬は靴の臭さで
絶句する僕とアレックスを見て、レオナルド隊長は
「……まさか、スベったと言うのか……? しまった、ここでスベッてしまっては次のトークにつなげられんぞ……こういう場合はどう対処する……?」
レオナルド隊長が焦ってパラパラと愛読していた本を見返した。タイトルは“これで君もプロムの主役!激モテコミュニケーション術”……うわ絶対ダメなやつ!!
「オイなんだよその本っ!! 絶対ダメなやつだろそれ!!」
アレックスの至極まっとうな指摘に、しかし隊長は全く意に介さず本のページをめくり続ける。
「これは俺にとっての教科書だ。隊長に任命されたからには、
「小粋……さ、さっきの絶妙につまんねえジョークのことか!? 笑ってる奴なんて1人もいないからな!?」
言われたレオナルド隊長が、確かめるように僕とイリアをチラリと見る。
僕とイリアはそっと視線を
「そうか……よし、じゃあこれはどうだ? ある床屋は悩んでいた。客がいつも急に横を向いてしまい髪が切りづらいと――」
「トライし直すんじゃねえ! 唐突に変なジョークかまされて笑うやついねーよ!!」
「いや、だがこの本には――」
「捨てろ! それが全ての元凶だろ! 捨てちまえ!!」
……ま、まあさっきの
「よし。これは俺の課題だな。この失敗を
キリッとした顔で隊長はそう宣言した。やっぱダメそう。
僕達は三人揃って大きく肩を落としたのだった。
◆◆◆
「さて、そろそろ今回の訓練の総仕上げといくか」
休憩を終え、日が傾き始めた時刻。レオナルド隊長はそう切り出した。
「まだ訓練やるのかよ……いい加減帰ろうぜ……」
ぼやくアレックスをよそに、隊長はバッグから何やら円盤状の機器のようなものを取り出した。
「俺がこいつを設置したら、そこの建物の陰に隠れろ。健康に良いものでもないからな」
一体どういうことなのか? あの機械はなんなのか? 質問する前に隊長がさっさと機械を設置しに行ってしまい、僕達は仕方なく言われた通り隠れるしかなかった。
10秒くらい経った後、“ボシュッ”というストロボを
「よし出てこい……さっそく出てきたぞ」
隊長の声に従い外へ出ると……僕達は
アラガミだ。
廃墟の群れと化した街並み、ヒビだらけの車道の奥から、一直線にこちらへ走ってくる。
白い外骨格に覆われた、鬼を想起させる
たしか、オウガテイル、とかいうアラガミだ。体長は2メートル程で
……いや。十分にデカい。大型犬より一回り大きいんじゃないか? 口から伸びる鋭く大きな二本の牙が、夕日を反射し危険な輝きを放っている。
まさか……あれと戦え、っていうんじゃ……?
「アラガミは強いエネルギーを発するものを求めて食らう性質がある。さっきの電磁パルス爆弾なんておびき寄せるのにぴったりの代物だ。
……さあ、訓練の総仕上げだ。奴を始末しろ」
グルルォォ!
オウガテイルが僕達に気づき、