深夜。執務室にて。
1人パソコンに向かい仕事をこなすエル支部長のデスクへ、スミスが近づく。
手に持っていたのは紅茶のポッドではない。一枚の写真だ。
「職員から届けられました。落とし物です」
エル支部長が視線だけを向ける。
写真には、快活な笑顔でバーベキューを焼く壮年の男性と、その傍らにて肉が盛り付けられた皿を持つスミス。写真の端には男性の子供と思しき二人が写っていた。
9歳くらいの女の子の隣にいる、5歳くらいの男の子――まぎれもなく、かつてのエル支部長であった。
「……わざわざお前の手で届けてくるとはな。挑発のつもりか?」
「
「……なぜ、僕がこの写真を持ち歩いていると思う?」
「さて。あなたの心を推し量るは無礼と心得ておりますゆえ」
エル支部長はキーボードを打つ手を止め、静かに写真を見下ろした。
「写真を見返すというのは、過去の思いを振り返るということだ。僕はこの写真を見るたびに初心に立ち返ることができる」
「……」
「あの日の。理不尽と絶望。そして怒りを」
燃えるような憎しみを秘めた瞳が、スミスを射すくめた。
「第54代、最後の大統領。
スミスは無言を貫き、ただ、エル支部長の憎悪の視線を一身に受け止め続けていた。
「フェンリルに最後まで抵抗していたアメリカという国も、父の死を契機に終わりを告げた。指揮系統は乱れ市民は混乱のるつぼに陥り、そこでまるで救世主のごとく現れたフェンリル本部に人々は
「…………」
「決して忘れることはない。断じて許すことはできない。手段を選ばず父を母を姉を奪った連中のことを。連中の
スミスの顔には一切の感情はない。ただ、死者への
「簡単に死ねると思うなよ。お前は生きたまますりつぶすように殺す」
「……心より、お待ち申し上げます」
深海のごとく重く冷たい沈黙が下りる。
それを破ったのは――慌てた様子で執務室の中へ転がり込む一人の職員だった。
「き、緊急のご報告です! インスマスより巨大な地上フロート型戦艦のようなものがこちらへ向かっております!!」
エル支部長は素早くパソコンへ向かい情報を確認する。
「これは……移動要塞、なのか? インスマス支部のものか? あの支部でこのようなものが作られているとは聞いていないが」
「あちらから事前の連絡はございますか?」
スミスの発言にエル支部長は首を横に振る。
「事前の通告もなしで、このような仰々しいものをこの支部へ向かわせている……この状況はまさしく……」
「支部同士の、“共食い”……ですか」
デスクの向こうにいた職員の顔が一気に青ざめた。
エル支部長は
「明日の10時、