「見ろよ。旧型神機使いの部隊だ。こりゃあ楽勝だな?」
僕達の前に、四人のゴッドイーター達の部隊が現れた。
全員僕達と同じ十代くらいの若者だ。しかも後方には、ガトリング型の神機を抱える10歳くらいの子供までいた。
「運が悪かったな。こっちは新型神機使いが2人。しかもお前らはたった3人だけだ。今なら見逃してやる。さっさと尻尾巻いて逃げたらどうだ?」
インスマス支部所属の濃紺の制服と、同色のキャップを被った男がせせら笑う。
嘲笑まじりの警告に、アレックスが堂々と応じた。
「……新型だのなんだのうるせえぞ。買ったばかりのナイフ振り回してイキり上がるガキんちょかテメー」
「第一世代のロートルは脳の中まで化石か? 俺たち第二世代の神機はお前たちのポンコツに比べ出力は1.5倍。当然この肉体もお前たちの能力を
勝てるわけねえんだから警告したのによ……あーあ、お前ら、死ぬしかねえな」
キャップ男が視線を向けると、リーダーらしき紫髪の男がわずかに口元を緩めた。
「
そう言い、目の前で長剣型神機を変形。カキン、と硬質な音を共に一瞬でガトリング型の神機に早変わりした。
新型神機使いはこの紫髪の男とキャップの男の二人だ。後方に控えるハンマー型神機を携える少女と、ガトリング型神機の少年は僕たちと同じ第一世代のようだった。
僕とアレックス、イリアは神機を構え
……対人戦闘の訓練は何度も受けている。だがそれは街中の暴徒の鎮圧や護身を目的としたものだ。本気で殺すための訓練は受けていない。
神機を
やれるのか……?
いや、やるしかない! 街の人たちを――何より、この部隊のみんなを守るために!
気合を新たに、4人のゴッドイーター達と向き合った。
その瞬間。
ドオオオウウッ!!
間近に落雷が落ちたかのような
あれが――レインさんの言っていた、第二支部の主砲……?
相手のゴッドイーター達も突然の事態に思わず動きを止め、戦いは一時中断される。
「な、なに!? 今の光っ!? わたし達の支部の方に行ったの!? インスマス支部は大丈夫なの!? ヴェント!?」
緑髪の少女が明らかにうろたえ、その後ろの少年も血の気の引いた青白い顔でリーダー格の男――ヴェントを見つめる。
「待て、今本部と通信を繋ぐ――」
冷静さを保っていたヴェントの顔が、
「……動力部は蒸発。作戦の続行不可……ラスベガス支部からの侵入者2人と交戦中……!?」
「さ、作戦続行不可っ!? どうすんだよ隊長!!」
「黙ってろユージーン! ……支部内の
「ねえ! 今発信されたの、これって帰還命令だよね!? 戻ろうよヴェント!!」
「ああ! もう作戦どころじゃねえだろ!! 撤退だ、隊長!!」
「…………」
ヴェントは仲間たちの声を無視し、冷や汗をにじませ、しばらく通信を聞き続けていた。
その後、震える手で、通信機器から手を離した。
「……本隊が壊滅した。じきに支部長も
「嘘だ!! そんなはずねえっ!! いくら何でも早すぎる!! 侵入者二人っつったか!? 大型アラガミの間違いじゃねえのか!? 人間技じゃねえぞ!!」
「……ユージーン。半分アタリだ。小型アラガミの群れが支部内に侵入しているらしい。ゴッドイーター部隊が全滅した今……市民を守る術はない……」
「そん……な……お父さん、お母さん……!」
「待て、クラウディア!!」
急いで引き返そうとする緑髪の少女を、ヴェントは即座に引き留める。
「行っても間に合わん! お前の親はすでにアラガミの腹の中だ! 行っても本隊を壊滅させた侵入者の二人に殺されるだけだ!!」
「離して! 離してよ!! お父さんが! お母さんが!!」
クラウディアは両目から涙を流し、髪を振り乱しながら抵抗するも、ヴェントは彼女を捕らえる手を決して離さなかった。
『……あなた達の戦いは終わりました。戦闘を停止し、速やかに神機を捨て
声は僕が所持していた端末から。レインさんが彼らへと呼びかかけたのだ。
それを聞いた少年が、絶望の
「お姉ちゃん……僕達、どうしたらいいの……?」
「……帰る場所が無くなっちまった……どうすんだよ……投降、するか……? ラスベガス支部に……?」
「…………」
ヴェントはしばらく沈黙し———両目を見開いた。決意に満ちた目を。
「投降して俺たちの身の安全が保証されるとは限らない……市民まで手に掛けた連中だからな……それよりも交渉がしたい」
――交渉……?
すると、ヴェントの視線が僕へと向けられ、こちらへ神機の切っ先を突きつけながらこう告げた。
「オペレーターの女。そちらの支部長へとつなげ。話がしたい」
『なんですって……? あなた達、自分たちの立場を――!?』
「聞け。いいか、俺たちは今からそこの三人を殺す」
なに……!?
「この場にいるということは、この三人は新兵じゃないんだろう。
俺たちがそこの3人を殺した
正気なのか……? 僕はヴェントの提案に
僕達を殺して、その
しかし、僕のそんな思いは即座に裏切られた。
『――話は聞かせてもらった。いいだろう。そこの者たちを倒せたのなら、君たちをこのラスベガス第二支部へ迎え入れる』
声は間違いなく、支部長からのものだった。
「オイ! 何言ってんだ!? 冗談のつもりか!? ふざけんじゃねえぞ!!」
「……そんな……!」
『ウソっスよね……? ウソって言ってくださいよ、支部長……!』
アレックスの
『……第一部隊。君たちは覚悟を持って作戦に参加し、そこに立っているはずだ。僕からの命令は何一つ変わらない。次は君たちの覚悟の
そして無常に通信は切られ、「クソったれ!」とアレックスが吐き捨てた。
対して、ユージーンというキャップ男はにんまりと顔をほころばせた。
「流石だぜ隊長……こいつらさえぶっ殺せば、俺たちは晴れて第二支部のゴッドイーターだ! 悪いが俺たちが生きるためだ。死んでもらうぜロートル第一世代!」
「……許さない。あんた達のせいよ。あんた達さえいなければ……お父さんとお母さんは……! 殺してやる、殺してやる……!!」
クラウディアと呼ばれた少女は、涙をにじませた憎しみの瞳を八つ当たりと共に僕達へ向ける。
「オイ、ロメロ! お前はどうだ!? やれんのか!?」
ロメロと呼ばれた少年は、瞳にわずかに戸惑いの影がよぎるが――次の瞬間、口元を真一文字に引き
「お姉ちゃんを守る……そのためなら、どんな奴が相手でも倒す……!」
「よし。それではインスマス第五部隊。これより敵勢力の
——くっ!!
ヴェントとユージーンが神機をガトリング型に切り替え、さらにロメロの神機も加わったガトリング3砲がこちらへ向き、キュラキュラと不穏な音で回転しだす。
即座に僕とイリアとアレックスはその場を離れる。その瞬間。
BLLAAAAAAAAAAMM!!
まるで爆薬でも弾けたかの如く地面は砂煙を上げて粉砕! それほどの怒涛の弾幕。僕達は辛うじてその弾幕から身をかわした。
「逃がすか!」
ヴェントが神機を長剣に切り替え、素早く僕へと切りかかった!
僕はとっさに己の神機でその一撃を振り払う! ガギン! という神機同士がぶつかる重々しい音が轟き、目の前で一瞬火花が散った。
しかしヴェントの攻撃は止まらない。左右
たまらず盾を展開した瞬間――目の前からヴェントが消えた。
「かかった」
足元に影。頭上か!?
仰ぎ見ると、ヴェントが空中で神機を変形。ガトリングの砲口が真下のこちらを向いている――まずい!
敵が引き金を引く方が早い! 身をかわせない、やられる――
バウっ!!
その時、先んじて動いたのは――ポチだ。
「何っ!?」
手に持っていた神機が一瞬で狼形態となり、ポチは僕を乗せてガトリングの砲撃を間一髪でかわしてみせたのだ。
「何だお前! その神機は!? 暴走!? いや違う! 何なんだお前は!!」
なおも
「馬鹿な! 旧型が変形だと――ぐわっ!」
地面に着弾したグレネード弾が炸裂。衝撃でヴェントは吹き飛び、周囲に砂煙が広がる――これでしばらくはこちらへ攻撃できないだろう。僕はアレックスとイリアの様子を確認した。
「どうしたロートル! どうしたどうしたどうしたっ!!」
ユージーンからの激しい攻撃に、アレックスは防戦を強いられていた。
まるでボクサーの
アレックスは分厚いタワーシールドでそれらを上手く防ぎ続ける。が、それも長くは続かなかった。
「ならこれはどうだ!? インパルスエッジ!」
瞬間、ユージーンの長剣型神機の刃が二つに割れ、中心から大きな銃身が姿を現した。
インパルスエッジ——新型の長剣型神機使いのみが使用できる、至近距離でオラクルの弾丸を叩き込む、必殺の一撃!
「……っ!!」
小型アラガミを一発で消滅させるほどの威力。
「そこだ!」
「チッ!」
ふらつく足元へ向けてユージーンが長剣を振るう。アレックスは寸前で地面を踏み跳んで攻撃をかわした。
しかし、それは相手も予測済みであった。
「死ねやあぁっ!」
神機を捕食形態にし、空中で逃げ場のないアレックスへ放つ――!
悲鳴があがった。
それはアレックスのものではなく――ユージーンの持つ、神機からだった。
ギピイイイィィッ!!
神機の
古典的なカートゥーンのごとく、ユージーンの神機は顎に刃を刺され、悲鳴を上げて引っ込んでしまった。
「……」
アレックスは沈黙したまま着地。その瞳は鋭く細まり、抑えきれない
「旧型が! まぐれで調子こくんじゃねえぞ!! うらあっ!」
ユージーンの左から右への袈裟斬り。しかしアレックスは神機を持ち上げ、必要最小限の動きでそれを防いで見せた。
「……いい加減にしろよ、お前」
「はあ? 俺の動きに付いてこれねー鈍足が! 何イキってんだあ!?」
ユージーンが再び神機を振るう。
だが。
先んじて、アレックスが巨大な大剣を
「ひいっ!!」
とっさにユージーンが盾を展開しブロック。しかしその威力を受け止め切れず、奴は神機ごと後方へ吹っ飛んでしまった。
「ぐあああっ!! なんだ!? その神機!? 俺の神機の盾が焼け
「知るか。ピーピーうるせえんだよさっきから……遊びがしたいなら勝手にしろ。俺は
……どうやら彼は大丈夫そうだ。
ではイリアは? クラウディアとロメロの二人は彼女へ向かっていた。つまり2対1だ。彼女が危ない!
しかし、僕の懸念は完全に
「クソっ! クソぉっ!!」
クラウディアがハンマー型神機を振るいながら、憎々しげに怒声を上げる。
「こいつっ!! ずっとわたしとロメロの間に入り込む! ロメロの
ブースターで加速させ、速度と質量を兼ね備えたハンマー型神機の一撃! しかしイリアは余裕の動きでそれをかわす。
「お姉ちゃん!」
ロメロがガトリング砲を撃ち込もうと動く。しかし寸前でイリアが元の立ち位置に戻り、再び射線の先にクラウディアが現れた。
「うう……!」
もしもそのまま撃てば――仮にイリアを倒せたとしても、同時に射線の先にいるクラウディアすらも撃ち殺してしまうだろう。
「撃って! ロメロ!! わたしは大丈夫だから!! 撃ちなさない!!」
「…………できない。できないよお……お姉ちゃん……!」
今にも泣きそうな顔で、ロメロは首を横に振った。
「ロメロ……!」
「昔、教えられた言葉がある。感情なんて、戦場ではクソの役にも立たない……本当だね」
「……ッッ! 殺してやるっ!!」
逆上したクラウディアからの乱打を冷静に正確にかわし、同時にロメロの射撃を封じ続ける。どうやら彼女にも手助けは必要なさそうだ。
ほっと息を吐くと――
『リーダーさん……あたし、あたし、どうしたらいいっスか……?』
必死な声だった。今すぐこの馬鹿げた争いを止めたい。そんな気持ちをひしひしと感じた。
『こんな戦い止めないと……! あたしなら敵の神機のコアを直接狙い撃てます!
誰の神機を撃つっスか!? アレックスさんと戦ってる奴っスか!? イリアさんと戦ってる人たちっスか!? 命令してください、リーダーさん……!』
――君の存在は連中に気づかれていない。つまり、君は完全なダークホースだ。カンナ、君には悪いけど、ひとつ僕から指令を与えさせてもらう。
『指令……!? な、なんスか、あたし何をすれば……!』
――今は撃つな。機会を待って、撃て。
『え……?』
――君の一発はこの
『……!?』
――その時は必ず訪れる。
『……せ、責任重大じゃないっスか……あたし、でも、あの牧師さんも……!』
その時だった。
『リーダー! 背後から敵が!!』
レインさんの声に素早く反転! 周囲に散る砂煙を割って。ヴェントが凄まじい勢いで長剣型神機を振り下ろす!
——ぐううっ!!
僕は盾を展開し、ヴェントの攻撃を防ぎ切る。上段斬りの威力がそのまま踏みしめた地面へ伝わり、足元の砂が破裂したかの如く空気中に散る。
「受けたな。助かったと思ったか? それが命取りだ」
僕は見た。今なお刃を僕の盾へ押し付けるヴェントの神機が――大きく、禍々しく、変形していくのを……!
「プレデタースタイル……超広範囲改式・カガチ! 全てを喰らえっ!!」