異世界で私だけが、カードをドローする   作:三葉乾酪

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明けましておめでとうございます。
今年も頑張って創作活動していきたいと思います。


九枚目

 

 

 

 フェレモッドの森からの脱出、自体はずいぶんと容易く終えることができました。

 ネツァクによる先導に加え、後詰めで召喚したカハルオスらによる警戒、レサセフそのものが纏う強者の雰囲気。それらがウェアトードやトロールといった邪魔な魔物たちと鉢合わせることなく森を突き進むことが出来た要因だったのでしょうね。

 霧ばかりが邪魔をする帰り道は、レサセフに荷車を引かせていたのもあってか嘗ての仲間たちとこの森を入ってきた時よりも早く。今思えば、そういうタイミングに私がレサセフのような優秀な足を用意できたのでしたら、追放などされなかったのか。

 などといった考えも何度か過ぎったものの、その度に空気を悟ったのかネツァクに笑われる始末。……気を使わせてしまいましたね。

 

「ふふっ、是非とも恩を感じていて欲しいな」

「前言撤回しましょうか」

 

 大人しくお礼を受け入れることが出来ないのでしょうかね、このシャチは。

 さて、こうして森を出られましたがここからだいたい半日ほど歩くことになります。以前にも言ったように、フェレモッドの森には決して無視できないような貴重な約束等々の他にも基本的な素材となるようなモノも採取できる都合上、森から半日程度の距離にそこそこの街があります。

と言っても、私たちが今回のトロール調査を請け負うことになった領主の住む街とは別の街ですが。

 所謂、宿場町ですね。

 

「と、言うわけで問題は起こさないでくださいね、ネツァク」

「まあ、キミ以外の人間にわざわざ興味を抱くこともないからその辺は気にしなくても大丈夫だよ」

「……本当ですか?」

 

 既にネツァクに対して、心を開いている自覚はありますし彼女のここまでの態度・言葉から憶測するに、その言葉は事実なのでしょうが…………。

 百、信じれるかと聞かれれば、NOと口にしても許されそうですね。

 

「興味がないのは構いませんが、だからといって何もかも無視するなんて無法は通りませんからね。最低限度のことは」

「大船に乗ったつもりでいて欲しいな」

「……その船、竜骨しかなさそうなんですがね」

「骨だけでも、私は泳げるよ」

 

 どうしてこんなにも自信があるんだ?

 まあ、コレのことは横に置いとくとして、私の懸念は別のところにあります。

 

()()と鉢合わせしない、と良いのですが」

 

 宿場町エレット。

 そこが、フェレモッドの森に最も近い街。私たちももう眼と鼻の先にある街なわけですが、恐らくその街に()()もいるはずなのです。

 嘗ての仲間たち。

 昨晩まで共に過ごしていた同じ日本からこちら側へと召喚されてしまった同郷である彼ら。私よりも早くに森を後にしているに違いませんが、だからといってエレットを無視して領主街へと向かっているなんてこともないはずです。

 

「会った時が気まずくなるのが目に見えていますよ」

 

 ネツァクについてもぐだぐだ絡まれる可能性すらありますね。

 いえ、そこまで面倒な人間ではない、と信じますが……それに彼らも彼らで森の奥に置いていったことに対し多少なりとも罪悪感を抱いてくれているでしょう。

 仮に私を見かけても、誰かに助けられたんだな、とそのまま私に声をかけないでもらえればいいのですが。

 

「声をかけられても、別にいいんじゃないかな?」

「ッア゛!?……人の心内を読むな、と言ったはずですが!?」

「言われてないと思うよ?」

「だとしても、いきなり背後に立って声をかけてくるのはやめてください」

 

 考え込んでいた私が悪いのは認めますが、流石に後ろからいきなり話しかけられるのは心臓に悪い。

 そもそも、なんでコレは人の肩に顎を乗せてるんですか?

 

「舌噛みますよ?」

「ふふっ、心配してくれてありがとう」

 

 クソッ、顔が良い。

 まあ、そんなのはどうでもいいんですよ。

 

「それで、どうかしましたか?」

「もうすぐ街に着くよ。レサセフはどうする?」

「グルル……」

 

 ああ……確かに。

 召喚師や彼らの契約する魔物に対して宿場町という環境上、理解はありますが……ローカヴたちは別ですからね。

 誰も彼も見た目が異質、レサセフは……比較的大人しめな見た目(デザイン)ですがデカい。パッと見、魔物が街を襲いに来たとしか見えません。

 

「すいません、レサセフ。私としては実に不本意なことですが、一度退去してもらってもいいでしょうか……」

「グルゥ」

「……ええ、次は今回のような荷車引きなどではなく、戦場で召喚します」

 

 体高四メートルの恐竜、それもアロサウルスやティラノサウルスのような肉食恐竜型のレサセフが顔を近づけてくるのはきっと私たちのように魔物と相対するのを慣れている人間だとしても恐ろしいものでしょう。

 ですが、実際はこうして鼻先を撫でられると犬や猫のような甘えた声を出すぐらいには可愛いものです。いえ、私が召喚者だからかもしれませんが。

 

「それじゃあ、また召喚されたらね……おい、それは悪口だよ」

「グルゥ……」

「ネツァク。レサセフを怯えさせるのをやめなさい。パワハラですか?」

「それは濡れ衣だけど?」

 

 なにやらネツァクがうるさいですが、それを無視してレサセフをこちら側へ繋ぎ止めている楔、いえ繋がりを解いていきます。

 私の召喚術がカードゲームである以上、基本的に盤面のカード(魔物)を能動的に退かすのは難しい。ですので、二回目のリセットを行い手札も盤面もマナも戻していく。

 そのうえで、改めてデッキ(召喚術)を展開していき━━━

 

マリガン(引き直し)します」

「え!?」

「なんです、ポーカーでもしますか?群生する甲虫(カハルオス)と『苗木』で迎え撃ちますよ」

 

 流石に荷車を引くのをカハルオスに任せるのは難しいと言いますか、大型犬ぐらいのサイズですよ?いえ、引く分には問題ないと思いますが今回は見た目(デザイン)採用をさせてもらうといいますか。

 引き攣った表情を見せるネツァクに私は大仰に肩を竦めながら手札をデッキへと戻していく。カハルオスたちの抗議の鳴き声が聴こえる気もしましたが、まあ、聴かなかったことにしましょう。

 

「カハルオス三体に、『苗木』連打で増やしても構いませんが」

「いや、嘘でしょ。それは流石に嘘」

「うるさいですねぇ……そんなことは私がよくわかっていますよ。というよりも、私のドローに干渉していませんよね」

「それに関しては、もう呪文も引けるし、意図的に引きを触っていないから安心して」

 

 なるほど、それなら安心ですね。

 ()()?いま、呪文って言いましたかこのシャチ。やっぱり私が追放されたのコレのせいですよね。

 許せませんが?

 本当に色々と聞きたいことが増えてきましたが……それは、街について落ち着いたら根掘り葉掘りと聞かせていただきましょうか。

 改めて手札の五枚を引きまして、視線をそちらへと向ければ五枚の内二枚は残念ながら『苗木』でしたが残りの三枚はまずまずと言ったところ。

 と言っても、初期マナに加えて一度『苗木』をセットする必要はありますが……

 

「今度は良い手札を引けたかな?」

「まずまず、ですね。レサセフをどうこう言うつもりはありませんが、街へ近づくに過剰な警戒はされはいモノは引けたので」

「え、熊?巨獣(ベヒモス)?」

『前者はともかく、後者は蜥竜(カドモス)よりも問題ですよ』

 

 ネツァクが挙げ連ねていくローカヴに思わず口もとが引き攣りそうになるものの、『苗木』をセットする。

 正直に言えば、ここまで来たのなら後は街で面倒ごとが起きないことだけを祈るばかりでしょう。それと、しばらくの宿も取れれば良いですが。

 私だけなら最悪、動物型のローカヴをそれこそネツァクが言ったように熊をはじめとする大型哺乳類なんかを召喚して寝床代わりになってもらえれば良いですが……いまはネツァクがいますからね。

 

「いくら、中身はシャチとはいえ傍から見れば女性なのは変わりませんし……これぐらいは必要経費として諦めましょう」

「?どうかしたかな」

「ついてくなら、働いてもらわねば、と思っただけですよ」

 

 そう、話を切り上げて私はここからの荷車担当のカードを手に取りました。

 

 

 

 

 

━━━━━◇◆◇

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