英雄たちのヴィクトリーロード〜ドラゴンvsタイガーvsフェニックス〜 作:梟帥
「…………んっ」
ここは……? ……そうだ、あの時発作が起きて倒れて……!
「雲明!!」
「雲明っ!!!」
「母さん……え?」
あれ? 母さんはわかるけど、なんで?
「立花……さん?!」
「立花でもタツキでもいいよ? よかったあ……死ななくてよ……!!」
「えっと……何がどうなって」
「ちょっと待ってて!」
立花はスマホを出し、部屋から出た……。
「……母さん?」
「貴方が倒れた時、さっきの人と
その時に二人とも同伴で来たの」
「二人って……」
もしかして、立花さんと桜咲先輩が?
「雲明! お待たっ!」
「立花さん?」
「おーい! 早く入ってこいよ!」
「うるせえな、病院の中は静かにするもんだろうが……!」
「……!」
部屋に入ってきたのは桜咲先輩だった。
「二人とも、ありがとう」
「いえいえ奥さん! 元を辿れば俺が
「だから何度もそう呼ぶなって……てか友達じゃねえだろうが……!」
「いいのよ……雲明君を助けてありがとうございます」
「んにゃあ〜。っていうけどあの時マジで焦った、いきなり倒れたからマジで慌てたよ、マジで」
「慌てたって……お前が大袈裟に騒いでいただけじゃねえか?」
「はっはっはっ! 本当に焦った!」
「笑い事かっ!」
なんとなく想像が付くな……?
多分心臓マッサージや人工呼吸を施している間に救急を呼んだ、幸い二人いたから応急役と緊急電話をやったんだろうな?
「……とまあ、身体の方は?」
「! そうだった、大丈夫なのか?」
「ええ、おふたりが雲明君を手当てしてくれたおかげで別条はないわ」
「そうか……」
「そいつはよかった……!」
その後、明日から無事に学校に行けれるらしく、応急手当てと119番をした立花さんと桜咲先輩の二人は先生にお礼を言われた。
その時、立花は雲明と桜咲に話をしたいがために海公園に移動した。
「……なあ? 一つ聞いて良いか?」
「……なに?」
「この前、あんたサッカーがどうこうの話さ?」
「…………」
「母親から聞いたぜ? ‘心疾患’なんだってな?」
「……そうだよ」
「……だからあんなにキレていたってわけね?
やりたくてもやれない……心臓病のせいでできないってのは辛えな……!」
「…………」
そう、僕は小学校の時に発作が起きて倒れた……。
診断の結果‘先天性心疾患’であることを告げられた。
幸い日常寺の生活は支障は無いが、サッカーを始めとした激しい運動を有するスポーツ等を一切禁じられることとなった。
「……それで、サッカーとは疎縁になって嫌うようになったってわけね?」
「…………」
「立花さん……あなたが何故桜咲先輩を猛アタックしていたその理由、わかったんです」
「あ?」
「ん?」
「立花さん、
「はあ? 何言って……はぁっ!?」
「……え? お前、なんでそれを?」
「あなたのことを調べたんです。
立花龍樹、アメリカのカルフォルニア州ロサンゼルスの出身。
少年サッカー界隈で活躍した天才選手、ポジションはDF……それも
そんなあなたが何で日本に?」
「なんでって……? 訳ありの一言だな?」
「ちょっと待てっ!! お前アメリカンハーフなのか!?」
「まあな、身体の方は親父譲りで頭と遺伝子は母親が強くてな?
ところが、こんな髪と眼で揉めてたからなぁ……!!」
「…………。話戻しますけど、さっきの話」
「……10万人中たったの一人。10〜100年にお目にかかれない天性のものだな?」
「……?」
「そう……言うなら‘天空を切り裂く神脚’。
或いは……」
「‘天下無双の脚’FWの人が桜咲の脚と身体能力見たら喉から手が出るな?」
「ハッ……なんだそりゃ? ポエマーかよ?」
「…………」
「要するに、立花は俺のことを‘サッカー選手’としての価値で
「まあ、そうですね……」
「イカレテやがる……」
「…………」
「……立花、これだけは言っておく」
「?? サッカー?」
「んなわけねえ。これ以上俺に関わるな……」
桜咲はそう言って、家へ帰って行った……。
「…………」
「……立花さん」
「ん?」
「これ……」
笹波は自身のスマホから
それは、少年時代……小学校時代の桜咲丈二が映っていた……。
「へえ……あいつ可愛い頃あったんだ」
「可愛いだけじゃないですよ」
笹波はそう言ってアーカイブを再生した。
「……この頃からか?」
「でしょうね……。……そろそろ、時間だね。
……それから、一つだけ教えてください」
「ん?」
笹波は立花に
「……そいつは、明日辺りだな。俺にとっては心の痼だからな……」
「わかりました……」
そう言って、二人はそれぞれの家に帰った。
「…………」
天空をも切り裂く……か。
昨日のことが、脳裏に残ってから何故か離れられなくなっていた……。
サッカーか……。
ー昨日の晩:桜咲丈二宅ー
『丈二、学校は楽しいか?』
「…………(全然)」
『校長からは、素晴らしく模範的な生徒だと報告は受けている。その調子で頑張れ。
進学先の高校は、アメリカの学校を手配してある』
「…………(そうかよ、あの校長ども……大嘘にも大概にしろ)」
『お前の行く道は、輝かしい未来しかないのだから』
「…………(何が‘輝かしい未来’だ、実情も現場も知らない癖に……!)」
昨日のことが鮮明に思い出しちまう……。
校長ども……親父の機嫌を取るために大嘘の忖度を……!!
(…………)
by立花龍樹
by笹波雲明
……なんで俺の頭から立花だけじゃなく、あの時の後輩……笹波雲明が浮かんでくるんだ?
イカれてる、何だってあいつらは……!!
「やっほー! サクラちゃん!」
「……っ!?」
その時、目の前には立花が立っており、後ろには後輩の笹波が立っていた。
「おっお前ら!?」
「先輩のこと、念に調べましたよ?」
「……!」
「かつては成績優秀で文武両道、特にサッカーにおいては周囲が一目置かれる注目視レベルの選手だった」
「鍛えれば全国、いや世界に通ずる天才ストライカー。
昔のやつ見たぜ? 後方からもの凄い勢いで走ってからのダイレクトシュート! GKはそんなフルパワーシュートの前に吹き飛んでゴールを決めたっ!
かの豪炎寺や吹雪以来の逸材と話題になっていた……」
「……なのに、一年前までは学校の汚点となって落ちぶれた」
「いきなりなんだっ! 二人して!!
俺に関わるなって言っただろ!!」
「サッカーの天才として生まれたお前が、なんで
「そうですよ、ケンカの時に助けたお礼に聞かせてもらえませんか?」
「っ!? 助けられるわけねぇだろ!! そもそもあの時、テメェらがっ!!」
「首を突っ込んだ? ……一度乗った船は港に着くまで降りられねえからな?」
「っ! …………はぁ……」
桜咲は観念したか、自身の実情内情を打ち明けた……。
「お前らにはわからねぇだろうが……ウチみたいな家だと、父親は絶対なんだ。
進む学校も習い事も、付き合う相手すらも……全ては親に決められる……」
「ふうん? 桜咲コーポレーションの御曹司だからってか?」
「そうだよ、全ては親に敷いたレールの上。
どんなに意見をしたって、俺自身に選択権はない……。
桜咲コーポレーションの御曹司として、生まれてからずっと……」
「だから先輩は、その
「路地裏のさっきの輩と喧嘩……喫煙や飲酒すれば一発だぜ?
未成年者であり、学生の時にそれをやりゃあいいのに律儀ものだな?」
「けっ、やっていたらとっくにやっているよ?」
「けれど、学校側は
そうならない、そうさせないように徹底している……」
「そうだよ、去年のころからそれをやろうとしたが先手を打たれていた」
「持ち物検査やそれの店に入らせないように先回り……よくやるぜ?」
「それくらいしないと、学校側も必死になる。
学校へ多額の寄付をしているからね?」
「サクラちゃんはよ、サッカーセンス持ってるのに何でやめたんだ?
まさかその頃から……!?」
「ちげぇよ!! てか! 何度もサクラちゃん呼びしてんじゃねえっ!!
……‘やめた’わけじゃない……‘取り上げられた’んだよ」
「……はっ?」
「…………。
小学校時代の俺は‘雷門’に憧れていたんだ。
お前らが言っていた通り、俺は元々
サッカーは、俺の最後の砦だった……。
だが父親は、体をぶつけ合う野蛮なスポーツはダメだと……」
「…………」
「やるなら紳士のスポーツ……テニスにしろってな……」
「……それさ、学校側が大嘘を吐いているってことバレたら笑い話になるのは気のせいか?」
「笑えそうにはないけどね? 学校側からしたら……」
「言えてるな? 父親……親父の為ならでっち上げも厭わないな? 進学校の名が泣いてるぜ……。
……そのおかげで、俺自身アツくなれるものなんてなんもなくなっちまった。
役に立たないと見なされれば、どうせまた取り上げられるだけだからな……」
「…………」
わずかな沈黙の中、立花は立ち上がって桜咲の前に立った。
そして、手を差し伸ばした。
「だったら、認めさせてやろうぜ?」
「あ?」
「認めさせてやろうって言ってんだよ! サクラちゃん……あんたの脚力ならエースになれる!」
「お前……俺の話を聞いていたのか?!
親には逆らえないってことをっ!!」
「聞いた。
「…………!」
「テメェ……っ!」
「サクラちゃん! 俺とサッカー部を創って見返してやろうぜっ!!
路地裏だろうと海辺の大げんかでやるより、フットボールフロンティアで名を上げればお前のことを再評価できる!」
「…………」
「何度も何度も言っても、俺の答えは変わらねえ……答えはNOだ」
「サクラちゃん……」
「…………勝手にやれば?」
「あっ?」
「ん?」
「仮に二人がサッカー部を創ったとしても
「……知ってんのか?」
「…………」
「立花さんがどれだけ努力しても、学校はそれを許さない。
生徒会にマークされていることを忘れないようにね?」
笹波はそう言って、その場を去った……。
(僕はなんでこんなにイラついているんだ……。
とにかく、帰るか……)
立花さんは
わかっているからこそ活動をしている……。
彼のサッカーPR動画を見たが、アレは『ね? 簡単でしょう?』の感覚でやっている。
初心者向けにリフティングの方法やコツを語ったり、シュートやドリブル等を事細かく解説をして熱弁をしているけど……。
どう見たって『できるかっ!!』としか言いようがない……。
(あの人、感性がズレているというより180度向かっているっていう
それでも「応援ありがとうっ!」と返信していいねをしている……)
「サッカー! サッカー部の創設のご協力をお願いしますっ!」
「またやってるよ……」
「相変わらずなにやってんだよ……」
「…………」
そんな時、立花龍樹は大きなプラカードを使ってサッカー部創設の活動をしていた……。
「私! 立花龍樹はサッカー部を創りっ! フットボールフロンティアの制覇を宣誓します!
サッカーをやってみたい方! やりたい方! 千客万来でございますっ!!
選手マネージャー募集中っ!! なんなら監督やりたい方も大歓迎っ!!
お通りの方々のご声援ありがとうございます!! 揶揄罵倒誹謗中傷ありがとうございます!!
立花龍樹! 立花龍樹でございます!!」
「選挙活動ですか?」
「ん? おおっ! 雲明!」
「それで、どうなの? 当選の見通しなしの落選落第の落伍者の立花龍樹先生?」
「全然だな! それでもめげない曲げないのが私っ! 立花龍樹でございます!! ってやつさ!」
「…………」
プラカードを片付け、付近の公園にて……。
「そんなんじゃあ誰も寄って来ませんよ?」
「……やっばり?」
「はっきり言って、怪しいことをしていますと言ってるようなものですよ?
そんなことで来たらみんな苦労しませんよ?」
「……まあ、入学式の頃から言ったことだしよ?
動画投稿して音沙汰も成果も実らず……これでも手加減してるんだけどよ…………?」
「あの動画の‘何処’が手加減なんですか?
アレをレベル1の感覚でやってる貴方が異常なんですよ?」
「そうか?」
「そうですよ、貴方は天才。
天才だからこそ異常なんですよ」
「がびーんっ! って感じなんだろうけどよ?
そんなにか?」
立花は動画を見直していた……。
「「そんなにか?」じゃないですよ……。
ハッキリ言えば別校で行けば即戦力になりますよ。
西ノ宮や北陽、東異国館等なら大歓迎しますよ?
それなのに南雲原でサッカー部を創るなんて異常ですよ、ハッキリ」
「そんなに……?」
「そうですよ」
「……それならよ? 見てくれないか?」
「見てくれないかって……立花さんのリフティング?」
「ああ」
立花はリフティングを始めた……。
立花がリフティングを始めたその時、近くにいた子供たちと主婦と帰りの学生たちがそのリフティングに注目していた……。
「…………」
PR動画で見たものと比べると、その迫力と衝撃はこの場にある人たちの心を奪った。
基本的で忠実にして普遍的なリフティング、だけど
(……そうか! 動画で見たからわからなかったけど、立花のリフティングは
本人は気づいていないんだ、無意識にそのリズムを入れているから難しく感じてしまうんだ!)
恐らく、ジュニアリーグ時代から染みついたんだろう。
それ故に自分のセンスがズレているんだ、周囲と自分の能力差に……!
「っと……。どうだった?」
「……結論から言いますと
「……っ!」
笹波は立花のリフティングの粗の箇所を指摘した……。
「マジかあ……」
「あとはそれを改善すれば、多少違ってきますよ。
最も、それを改善できたらの話だけどね……?」
「OK。それなら……」
その時、周囲の人が拍手をしていた。
「……あれ? 何これ?」
「貴方のリフティング、結構注目度がありましたね?」
南雲原の生徒たちと公園の子供達と付近の住民たちが拍手をしているそのとき。
「いやあ〜お見事お見事!」
拍手喝采の中、一人の男子が拍手をしながら近づいてきた。
「流石立花君! 例の動画とは違う迫力と違っていいねっ!」
「お前……生徒会の高森!!」
「おやあ、覚えていたのね? 嬉しいなあ!
っと、君は初めましてだね? 僕は
生徒会の事務担当兼新聞部の副部長をやっているよ!」
その男子の人相は悪人なれど憎めない愛嬌な雰囲気を持ち、その裏腹に似合わない悪辣さを持った気質をしていた。
「知り合いですか?」
「知り合いも何も
新聞部の‘影の部長’なんて呼ばれている」
「そして‘蝙蝠’なんて呼ばれている悪い奴って言われているよ?」
「自分で言うか?」
「褒め言葉だから」
「あっそ」
笑顔で接しているだろうけど、この人の目つきの鋭さと奥深さ……まるで‘蝮’のような感じがする……!
「お前が来たってことは、上の奴らから?」
「ピンポーン! それもだけど、この人のこともあるからね? おいでおいで? サクラちゃん?」
「だぁかぁらぁっ! 何度もその名で呼ぶなって!!」
「ありゃ? サクラちゃん?」
「桜咲先輩!?」
「ちっ……昨日も今日もまた……! 厄日を通り越して厄週厄月かぁ!?」
高森と桜咲、二人が立ち並ぶその光景に南雲原の生徒たちの間にどよめきの空気が包まれていた……!
「実はね、蜥蜴と蜘蛛たちから君たちのことを探っていたらしくてね? 何を探っているのか聞いてね?」
「はあ?」
「昨日のこと」
「…………!」
「昨日……?」
「そう……これのこと」
高森は自身のスマホを出した。
「……っ!」
スマホの写真には桜咲の喧嘩の一部始終が写っていた!
「どうする? って言ってもこれを公にしないでくれって
「……で? 何が言いたいんだ?」
「取引をしようと思ってね?」
「取引?」
「そう、取引の内容は……」
高森の発言に、三人は驚愕したのであった……!!
南雲原中学二年男子
生徒会の事務担当をしており、新聞部の副部長を務めている。
記事の内容のほとんどはブラックジョークやスキャンダル等を扱っている為に‘南雲原の黒箱’と呼ばれている。
情報収集能力に秀でており、調査の為に探し顔負けの口説きを得意としている。