謎生物を拾ったんだが 作:異形に性癖を破壊されし男
前回と前々回言い忘れたけど9話目ッス。
あの日からまた数週間。私は中学校の卒業式を迎え、現在春休みの真っ只中である。厳しい冬の長さも今は春の暖かさに変わりつつある。
アゲハの成長も最近は緩やかであり、そろそろ私のお古ではなく新しい服を買ってやるとしよう。ソファーでテレビを見ながらそんなことを考えていると、私の部屋にいたアゲハがこちらに近づいてきた。アゲハは私の手を掴み、こっちこっちと私の部屋へと指を差した。私が着いていくと、アゲハは私のパソコンの画面を見せる。画面に映っていたのは通販サイトの画面であり、アゲハは画面の中の商品のひとつに指を差す。これが欲しいということだろうか。とりあえず私はアゲハの指差した商品をカートに入れた。するとアゲハは関連商品をクリックしてはまた別の関連商品をクリックすることを繰り返していた。なにか探しているように思える。するとまたアゲハが商品を指差してきた。私はそれをカートに入れる。するとまたアゲハは関連商品を漁り始めた。それを何回か繰り返すといくつかの衣服や布製品があった。アゲハは満足したのか私に席を譲ってマウスを押し付けてきた。どうやら買って欲しいらしい。丁度アゲハの服も買おうと思っていたし、金額も高いというわけではないため別に良いかと、カートの中身をポチった。
2日後、通販サイトで買った商品が家に届いた。それをアゲハへと渡すとアゲハは中身を確認してから私の部屋の中へ行き、裁縫セットをもって戻ってきた。棚の奥に閉まっておいたものをいつの間に掘り出したのだろうか。しかし困った。私はハッキリ言って裁縫が出来ない。針に糸を通せないし、すぐに自分には針を刺して怪我をしてしまう。もしアゲハが私を頼りにしていたのなら問題だ。そう思っていたのだが、アゲハは道具を取り出して一人で作業を始めた。どうやら私をあてににしているわけではなさそうなので助かった。アゲハは迷い無くというわけではないが、着実に作業を進めており危なげなくというわけではないが、器用に作業をこなしていた。最初はアゲハが裁縫を出来ることに驚いたが、アゲハも集中していることだし、邪魔しないように私は自分の部屋に戻った。それにしても今回の事でアゲハの知能が人間と同等以上であることが分かった。服の良し悪しやパソコンの画面の情報を理解する、買ったものが届くことを前提とした裁縫の観念や道具を扱う知識、などこれらをこなして実行に移すほどの知能と技術がアゲハにはある。
そうなるとやはり不自然なのはアゲハとコミュニケーションがとれないことである。前は言語を理解できていない可能性があったが、パソコンの画面の情報を理解できるのならば言語を理解しているとしか思えない。アゲハが私とコミュニケーションをとることに興味がないのか、私とのコミュニケーションを拒否しているのか、実は私が理解できない別のコミュニケーション方法を行っているのか。私には分からないが、少なくともコミュニケーションが不可能というわけではないはずだ。アゲハは今は裁縫に集中しているようだし、聞き出すのは後ででも良いだろう。
翌日、私が起きるとアゲハは私のとなりにいなかった。どこにいるのかと部屋を出ようとするとアゲハが扉から入ってくる。そこには黒を基調とし白と紫の飾りが付いたゴスロリ系の洋服を身に纏うアゲハがいた。右目の裂けた眼孔は眼帯のような布で隠されており、パッと見ただけでは普通の人間と大差無い。それ以外のアゲハの異形な部分はうまく隠されておりこれならば外に行っても少々目立ちはしても問題ないだろう。しかし、いくら器用とはいえ立った1日でここまで仕立てるとは思わず、少し驚いてしまう。
アゲハは私の手を引っ張って玄関のほうへと指を差す。本当に外へ出るためにこの服を仕立てたらしい。今は朝も早く、人通りも少ない時間帯だ。少し家の回りを回るぐらいなら問題もないと思い、私はアゲハとの散歩に出掛けた。
家を出ると、アゲハは私の腕を取り寄り添ってきた。私は少し動揺したもののなんとか平然を保つ。アゲハは不安定な下半身の足を支えるために腰の足も使っているため四足歩行で動いている。そのため、私に寄り添うのはバランスを保ちやすくするためと、四足歩行ゆえの歩行の不安定さを誤魔化すのに一役買っているため、とりあえずはこのままでも良いだろう。しかし、洋服を身に纏い、異形な部分を隠した服装はなんとも女性らしく自分の鼓動が早くなるのを感じる。それから私たちは家の近くの公園へと来た。少し回った後、公園のベンチにアゲハと座る。何度か人とすれ違ったが、物珍しげにアゲハを見ることはあっても、強く不審がる事はなかった。
家を出てからだいたい30分程経っただろうか。そろそろ帰ろうか、とアゲハの方を見るとアゲハはおもむろに私に手を伸ばして顔を近づけてきた。アゲハの意図に気付いた時にはもう遅かった。私は咄嗟の事と、アゲハの顔が急に近づいてきた動揺で一瞬動きが止まった。
しかし、その一瞬は私とアゲハの唇が触れ合うのに十分な時間であった。
チューしたんだ!コイツらチューしたんだ!