TSロボ娘は何周してでもハッピーエンドを目指したい   作:第616特別情報大隊

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初めての戦闘

……………………

 

 ──初めての戦闘

 

 

 私たちは上空にいるドローンオペレーターの指示で、不審な車両をというものを確認しに向かった。

 

「目視した。映像を送る」

 

 ベルが左手の道路から報告にあった中国製のトラックが接近しているのを目視し、彼女はそれを撮影しながら映像を司令部に送信していました。

 

 私たちが何かを撮影するのにカメラは必要ない。私たちの眼球は無菌室で組み立てたられた高性能な光学機器であり、この目玉こそがカメラの役割を果たすのですから。

 

『ガーディアンよりアルファベット・チーム。停車させて積み荷を確認せよ』

 

「了解。アリア、行こう。クレアとデイジーは援護して」

 

 ドローンオペレーターからの指示で私たちは動く。

 

 私とベルは装甲車を問題の車両を進路妨害する形で停車させて降車。クレアとデイジーは私たちを援護可能な位置に車両を進め、そこから援護に当たる。

 

「そこの車両、止まってください」

 

 ベルは問題の車両に向けて手を振る。

 

 車両は中国製の6輪トラック。軍用ではないのか塗装は白だけど、かなり荒く運用されていたらしく塗装は部分的に剥げ、泥まみれになっている。

 

 荷台にはコンテナ。何が入っているのかは分からない。

 

 また運転席には2名の男性がいて、武装はしていない様子です。彼らは私とベルの方を見ると顔を見合わせたのちにゆっくりとトラックを停車させて降車してきました。

 

「おい。どうして俺たちのトラックを止める?」

 

 男性はそう私たちに尋ねてくる。この人たちからは私たちに対する敵意というよりも、困惑を感じます。

 

「荷台を調べさせてください」

 

「どうして止めるんだって聞いてるだろう」

 

 いや、困惑というよりも恐怖なのかもしれない。彼らは非武装で私たちは武装している。この国の軍隊でも警察でもない私たちが、武装して車両を止めるのに彼らは恐怖しているように感じられた。

 

「大丈夫、大丈夫ですよ。すぐに終わりますから、荷台を調べさせてください」

 

 そう思った私はにこりと笑って、これまで固く握っていたアサルトライフルから手を放し、それをスリングで吊ってそう呼びかけた。

 

「あ、ああ。分かった。調べてくれ」

 

 そのことで落ち着いてくれたのか、男性たちは私たちを荷台まで案内する。

 

「何を積んでいるんですか?」

 

「さあ……。俺たちは運べと言われただけだ」

 

 私が尋ねるのに男性は肩を竦めてそう答える。

 

「ベル。自動車爆弾(VBIED)の可能性は?」

 

「まだ分からないね。調べよう。コンテナを開ける」

 

 ベルはそう言ってトラックの荷台に積まれたコンテナを開いた。

 

 そこにはあったのは──。

 

「作業用アンドロイド……?」

 

 中にいたのは私たちより簡素な構造で、金属が剥き出しの、いかにもロボットなメカメカしいデザインをしたアンドロイドが満載されていました。中国製で工場などに導入されている作業用のアンドロイドだ。それが20体ほどラックに並んでいる。

 

 しかし、私がそれを確認した横で、ベルがすぐに声を上げた。

 

「違う。武装している!」

 

 ああ! 作業用アンドロイドは中国製のアサルトライフルを握っています!

 

 そして、ブウンッとモーターが起動する音がすると作業用アンドロイドたちは一斉に自らを固定していたラックから動き始めました。

 

「ど、どうすれば……!」

 

「一旦、車両まで退避するよ! おじさんたちも逃げて!」

 

 動揺する私にベルが手を握って叫び、2名の男性も慌てて逃げ始めます。

 

 ガシャンガシャンと機械の動く音がし、ラックから解き放たれた作業用アンドロイドがコンテナを降りて私たちの方に向かってきます。

 

 それからけたたましいアサルトライフルの銃声が響き、私は悲鳴を上げそうになる。だが、幸運なことに私にもベルにも銃弾は命中しなかったみたいです。

 

「射撃を受けた! クレア、デイジー、応戦して!」

 

『了解だよぉ!』

 

 クレアとデイジーの車両から私たちを追う作業用アンドロイドに向けて50口径の重機関銃が火を噴いた。

 

 それは装甲なんてものがない作業用アンドロイドを一瞬でばらばらにし、金属辺が、機械を構築していた部品が、あちこちに散らばる。

 

 それでも死を恐れない──というよりも、死の概念がない作業用アンドロイドたちはアサルトライフルを乱射し、私たちを攻撃してくる。アサルトライフルの銃声が響くたびに私は泣きそうになった。

 

 しかしながら、その作業用アンドロイドたちの攻撃は著しく精密さを欠き、その射撃はまるで私たちに当たらりませんでした。

 

「作業用アンドロイドは軍用小銃を扱うようには作られていない。いくらソフトウェアをそれようにアップデートしてもハードウェアに無理がある。だから、心配はいらないよ。私たちの敵じゃない」

 

 ベルは車両まで私を引っ張って行ってくれると車両を遮蔽物にしてから、私に向けてにやりと不敵に笑ってそういう。

 

「そ、そうですね。それなら……」

 

「うん。やっつけてやろう!」

 

 私とベルは装甲車を盾にして、アサルトライフルを構えると身を乗り出して作業用アンドロイドを銃撃する。戦闘用アンドロイドである私たちの射撃は、作業用アンドロイドのそれとは違って正確であり、作業用アンドロイド撃ち抜く。

 

 6.8x51ミリ弾の威力でも作業用アンドロイドを撃ち抜くのにはオーバーキルという具合であった。そもそも作業用アンドロイドは銃撃されるような状況は想定していない。彼らは作業中の事故などは想定しているが、それだけだ。

 

 クレアとデイジーの50口径の重機関銃による支援を受けながら、作業用アンドロイドを破壊していく。アサルトライフルを腰だめで構え、作業用アンドロイドは撃つ、撃つ、撃つ、撃ち続ける。

 

 でたらめに放たれる銃弾でも弾幕を張られるのは厄介です。ガンガンと装甲車に銃弾が叩きつけられる音がして、ヒュンッと銃弾がすく脇を通り過ぎていく音すらもする。

 

 怖い。怖い。怖い。怖い。怖い!

 

 一歩間違えば私の疑似ニューラルネット・プロセッサは破壊されてしまう。そうなった場合、()()であれるのか分からない。

 

 最悪、()という存在は消えて、私たちを銃撃しているあの作業用アンドロイドのような存在になってしまうかもしれないのだ。

 

 だから、怖い。とても怖い。

 

 そんな心理状態でも射撃はどこまでも正確だった。

 

 私に無理やり叩き込まれた戦闘アルゴリズムは、私が動揺していても正確な射撃を可能にしている。恐怖で手が震えることもなく、焦りで撃ちすぎてしまうこともなく、作業用アンドロイドを最小限の弾薬で撃破しています。

 

 作業用アンドロイドの弱点はセンサー類が内蔵された頭部、または腹部のバッテリー。そこに2発銃弾を叩き込めば、彼らは機能を停止する。そのことも便利で便利なARに表示されていました。

 

 これはまるで死の恐怖におびえる私に()以外の何者かが乗り移って恐怖することなく戦っているようであった。そんな離人感があります。

 

「不味い! RPG!」

 

 そこでベルが声を上げる。

 

 作業用アンドロイドの1体が対戦車ロケット──RPGを構えて私たちを狙っていた。

 

 RPGは盛大なバックブラストを吹き上げて発射され、その弾頭が私とベルが遮蔽物にしている車両に迫る。

 

「アリア、こっち!」

 

 ベルは私の手を掴んで、建物の陰に逃げ込む。それと同時に車両はRPGの直撃を受けて爆発炎上した。衝撃波が私たちを襲い、私が頭がどうにかなりそうだった。

 

 泣き叫び、武器なんて投げ捨てて、この場から逃げ出したい。そんな思いを私は辛うじて押しとどめ、ベル、クレア、デイジーとともに戦う。

 

 クレアとデイジーの車両からの機関銃掃射が作業用アンドロイドたちを薙ぎ払い、作業用アンドロイドたちは瞬く間に数を減らしていく。

 

「手榴弾!」

 

 さらにベルが残る作業用アンドロイドに手榴弾を投擲。知性化信管(スマートヒューズ)のそれはセンサーで周囲の戦況を読み取り、AIの判断で最大の殺傷力が期待できる位置で起爆するようになっています。

 

 そのため手榴弾は空中で炸裂し、作業用アンドロイドたちを一気に薙ぎ払いました。

 

 その爆発を最後に不意に静寂が訪れた。遠くで常に聞こえていたような銃声も、近くで鳴り響いていたアサルトライフルの銃声も、今は何も聞こえない。自分の聴覚センサーがバグってしまったんだろうかと思うような静けさです。

 

「────ッ!」

 

 そこで私は肩が揺さぶられていることに気づいた。気づけばベルが心配そうにぼうっとしていた私の方を見ています。

 

「え、ああ。敵は、どうなりました……?」

 

「全滅したよ。クリアだ」

 

 私が間の抜けた声を上げて尋ねるのにベルはにこりと笑ってそう言った。

 

 私が建物の陰から先ほどまで作業用アンドロイドたちがいた場所を見れば、あるのは機械の残骸。その残骸の山が焦げて、千切れて、炎上して転がっていた。

 

『ガーディアンよりアルファベット・チーム。敵性集団の壊滅を確認した』

 

「了解」

 

 そこで上空から私たちを見守っていたドローンのセンサーが周囲に不審な動きがないことを共有してくれる。

 

「終わったね」

 

「ええ。でも、この作業用アンドロイドと武器はどこから……」

 

 私は未だに残る作業用アンドロイドの残骸と壊れた中国製アサルトライフルを見てそう疑問に感じる。これも新政府を恨む軍閥の攻撃なのでしょうか?

 

「それについてはボクがインテルの回収を命じられた。なので、あとは任せといて~」

 

 ここでデイジーがやってきて、壊れた作業用アンドロイドの部品をじっくりと眺めるとその一部を拾い上げて警察の鑑識が証拠を入れるような袋に入れていきました。彼女はどの部品を集めればいいのか分かっているみたいで、迷うことなく残骸の山からその一部だけを拾い上げています。

 

 作業用アンドロイドが持っていたアサルトライフルに関しても彼女は破損していないものを選んで回収していきました。

 

「それで何か分かるのでしょうか?」

 

 この世の中の大抵の品はIDタグが付いている。コンビニのポテチ、自販機のコーラ、私たちアンドロイド、そして武器。そのIDタグを辿れば、その商品がどこで作られ、どこで誰に渡されたという履歴が見れます。

 

 たけれど、紛争地帯に流通するような武器にはIDタグなんて付いていない。兵器を製造しているメーカーが、その売買を仲介する兵器ブローカーが、それを使用する軍閥が、その手の物を邪魔に思っているから。

 

 善意でしか成り立たないシステムは、あっさりと無視されてしまう。

 

「さあ? ボクもAICの情報部門に指示されてやってるだけだから」

 

 ただ、とデイジーは続ける。

 

「見る人が見ればちゃんと武器やアンドロイドの出所は分かるはずだぜ」

 

 デイジーはそう言いながら、回収作業を続けた。

 

『ハンドラーよりアルファベット・チーム。被害はないか?』

 

 と、ここで久慈さんの声が聞こえました。ハンドラーは久慈さんのコールサインだ。

 

「全員、被害ありません、ハンドラー」

 

『了解。何よりだ。パトロールは別の部隊が引き継ぐ。基地に戻れ』

 

「はい」

 

 私はそう久慈さんに報告し、みんなの方を向いた。

 

「仕事はとりあえず終わりのようです。基地に戻りましょう」

 

「了解!」

 

 私が言うのにベルたちが笑みを浮かべて応じた。

 

 そして、デイジーが集めた品を装甲車に詰め込んで、私たちはAICの基地に戻る。

 

 私の初めての仕事は、無事に終了した。

 

 しかし、まだバルカラフ共和国の内戦も、そして私の戦争も終わることはない。

 

 私が今回戦った戦闘は、バルカラフ共和国で起きている万を超える戦いのほんのひとつにすぎないのだから。

 

……………………

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