TSロボ娘は何周してでもハッピーエンドを目指したい   作:第616特別情報大隊

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先制攻撃

……………………

 

 ──先制攻撃

 

 

「──アリア」

 

 私はベルに呼び起こされる。

 

「ベル……」

 

 ベルはいつものように私を起こし、私の様子を見る。

 

「AIC司令部と連絡している。必要な装備があればドローンで送ってくれることになったよ。みんなに必要な装備を確認したいから、アリアも来て」

 

「ええ」

 

 今回の私はループを打破できるかもしれない選択肢を得ている。

 

 これが成功するかはまだ分からない。だけど、間違いなく成功するまでこのループは終わらない。だから、やり遂げる。ベルもクレアもデイジーも、そして学校のみんなも誰も殺させない。

 

 私は司令部になっている教室に入った。

 

「アリア。今の状況を共有するからZEUSで受け取ってくれ」

 

 今回のループでもデイジーの説明から全てが始まろうとする。

 

 しかし、私にはやるべきことがあるのです。

 

「デイジー。まずは久慈さんに連絡を取ってください。彼に伝えたいことがあります」

 

「久慈さんに……? それはベルに頼まないとな」

 

 デイジーはそう言ってベルの方を見る。通信強化モジュールを入れているベルならば今すぐにAIC基地にいる久慈さんと連絡がとれるはず。

 

「了解。繋がったけど、何を話すの?」

 

「重要なことです」

 

 ベルがすぐにAIC基地に連絡を取ってくれるのに私はそう言う。

 

『ハンドラーよりアルファベット・チーム。緊急の連絡と聞いたが、どうした?』

 

 久慈さんの顔がARで表示され、私は彼の顔をじっと見る。

 

「ハンドラー。私たちはこれから5時間後に旧政府軍の大部隊に襲撃され、警護対象もろとも全滅します」

 

『何……?』

 

 私の言葉にそう言ったのは久慈さんだけではなく、ベルたちもだった。

 

「どういうことなの、アリア?」

 

「ぜ、全滅ってぇ……?」

 

 ベルもクレアもそう尋ね、デイジーも理解できないという顔をしています。

 

『どういう経緯でそういう結論に至ったんだ、アリア。説明してくれ』

 

「私は()()にそれを知ったんです。ハンドラーが手足を失った理由も効かされました。東南アジアで捕虜になったときに拷問されたせいだと」

 

『!?』

 

 そういうと久慈さんが目を見開いて驚く。

 

「私はループしています。何度も、何度も、何度もここで全滅してはやり直してるんです。だから、私には分かるんです。ここに向かってくる大規模な敵について。それから私たちの辿る結末について」

 

 私がそう語ると久慈さんもベルたちも言葉を出せずにいる。

 

『……信じよう』

 

 それから数十秒後に久慈さんはその口を開いた。

 

『何が必要だ? どうすれば敵を撃退して、そこを守り抜ける?』

 

「カラルグラード国際空港への攻撃は陽動かもしれないとハンドラーは言っていました。だから、それが分かれば援軍を派遣できるかもしれないと。私はあらゆる手を試しましたが、この場にとどまっていて攻撃を退けられたことはありません」

 

『なるほど。分かった。こちらですぐに派遣できる援軍を手配する。私がすぐに動かせるのは4名だけだが、そいつらはすぐにそちらに送ろう』

 

「ありがとうございます。敵は大通りから戦車4両、装甲兵員輸送車(APC)4両、それから1個歩兵中隊を先頭にしながら接近してきます。また市街地を移動してドローンなどによる監視を逃れて別動隊が正門にアプローチしてきます」

 

『待て。今、こちらからドローンを改めて飛ばした。それすぐにそちらの方面について確認する。攻撃は確かに5時間後なんだな?』

 

「はい。間違いなく5時間後です。まずは迫撃砲が撃ち込まれ、それから正門への攻撃、戦車による大通りからの攻撃と続いていきます」

 

『……よし。いいぞ。情報は確かだ。こちらのドローンが戦車を捉えた。お前の報告した戦力の他にもさらに大部隊がいる。こうなるとカラルグラード国際空港は陽動か……』

 

 久慈さんはすぐにドローンを飛ばしたおかげで私の報告通りだということを確かめてくれた。ドローンの映像は私たちにもZEUS経由で共有され、ドローンが映した96式戦車をはじめとする敵部隊を見ることができた。私たちを何度も皆殺しにした憎い敵を。

 

『今、私が動かせる4名のオペレーターをそちらに派遣した。AIC司令部を説得して緊急即応部隊(QRF)を投入させるつもりだ。それまでそちらでできる限りのことをして、何としても護衛対象を守り抜き──そして生き残れ』

 

「……了解!」

 

 私は決意した。今度こそ生き残り、仲間たちを誰も死なせないと。

 

 

 

 まず最初に派遣されて来た4名の援軍は小型ヘリで運動場に降り立ちました。

 

「スペクター・チーム指揮官の敦賀才人だ。コールサインはアズール」

 

「援軍に感謝します」

 

 私たちにそう挨拶するのは壮年の日本人男性で、やや小柄ながら筋肉質な体型をした人物だった。体には私たちと同じようにAICの軍服を身に着け、私たちとは違う種類のチェストリグとプレートキャリアを装備している。

 

「同じくスペクター・チームのメンバー。コールサインはバッカスだ」

 

「よう、お人形ちゃんたち。俺はサイファー。よろしくな」

 

 続いて挨拶するのはラテン系の滅茶苦茶にマッチョなサングラスの男性とそれと対照的なアジア系のひょろりと長身で耳にバチバチにピアスをつけた男性。ふたりはやはりアズールと同じような装備をしており、手には私とほぼ同じ6.8x51ミリ弾を使用するアサルトライフル。

 

 だが、ふたりはでっかい軍用リュックサックを背負っていました。

 

「……ダイアウルフ」

 

 そして、最後のひとりは北欧系のスレンダーな女性で、バブルガムを噛みながらときどきをそれをぼんやりを膨らませています。手には他のメンバーと違って.338ラプア・マグナム弾を使用する物々しい狙撃銃を握っていました。

 

「アルファベット・チーム。そちらの指揮官は?」

 

「決まった指揮官は特にいませんよ。私たちはアンドロイドなので」

 

「ああ。そうだった。お前たちはアンドロイドっぽくないから忘れがちだ」

 

 アズールはそう言って首を横に振ると、改めて私たちを見た。

 

「では、この場は俺が指揮を執る。未来の見えるアンドロイドってのは誰だ?」

 

 久慈さんは派遣した4名に何と説明したのか分かりませんが、未来が見えるというのはある意味では嘘ではありません。私はこれから起きることを知っている。

 

「私です。残り4時間30分で旧政府軍の攻勢が開始されます」

 

「正確だな。ドローンの映像から見ても、間違いなさそうだ。お前が未来が見えるってのはマジなのか」

 

「ええ。私はある程度のことは分かっています」

 

 アズールが感心するのに私は今度こそ皆を救うべく気合を入れていた。

 

「さて、久慈大佐はカラルグラード国際空港は陽動で、こっちこそが本命だと見ている。そのことは俺たちも間違いないと思い始めているところだ。空港の方はまだ砲撃合戦とドローン攻撃が行われているだけで、地上部隊の侵攻はない」

 

 やはりカラルグラード国際空港への攻撃は陽動かもしれない。

 

 地理関係について整理しよう。

 

 カラルグラード国際空港はカラルグラードの東部にある。カラルグラードの市街地からは幾分か離れた位置にあり、そのカラルグラード市街から空港までのルートは激しい攻撃に晒されている場所でもある。

 

 一方の私たちがいるカラルグラード市立第11中等学校はカラルグラード市内の中心部の西部にある。大きな道路がずっと通っている場所があり、その大通りは学校の他に政府機能がある首都中心部に繋がっている。

 

 学校が突破されれば、次は政府機能が脅かされる。だから、AICとしてもこの場所で敵を食い止める必要があるのです。

 

「敵の配置が分かっていれば、やるのはここに立てこもることじゃない」

 

「では?」

 

「こちらから仕掛ける」

 

 アズールはそう言った。

 

「敵がここを攻撃する前に攪乱し、敵の進軍を遅らせる。そうやって時間を稼ぎながら、緊急即応部隊(QRF)の投入までの時間を作る。緊急即応部隊(QRF)が投入されれば、旧政府軍の攻撃を頓挫させられるだろう」

 

「敵はかなりの戦力ですが、可能なのでしょうか……?」

 

 これまでやれることは全てやってきた。少なくとも私はそのつもりだ。そのうえで私たちは何度も全滅してしまったのです。

 

「確かに俺たち8名じゃあ、厳しいところがあるだろう。だが、幸い支援はある。久慈大佐が航空支援と砲撃支援を確保した」

 

「おお」

 

 私たちにも久慈さんが確保した航空支援と砲撃支援の情報が回ってくる。

 

 上空に対戦車ミサイルを装備した3機のハンターキラードローンと口径155ミリの自走榴弾砲3両を装備した砲兵小隊。久慈さんが取り付けたこれらが私たちの支援に当たってくれることになったのです。

 

 これならば行けるかもしれません……!

 

「早速だが砲爆撃を叩き込むのに適した位置に移動するぞ。この辺の地理には詳しいか? 詳しいなら大通りを見渡せる場所を教えてくれ」

 

「それならあのマンションがいいですね。しかし、敵の別動隊は大通り以外の場所を進んでいるのですが……」

 

「別動隊は本隊が途中で攻撃を受ければ撤退する。ここは空けても問題はない」

 

 アズールはそう言い切った。

 

「了解。では、私たちは何を?」

 

 私としては護衛対象である学校を空けるのは不安だったが、私よりこういう経験の長いアズールがいうのですから間違いでもないと思うことにしました。

 

「大通りの封鎖だ。手伝ってもらうぞ」

 

 アズールはそう言ってにやりと笑いました。

 

 

 

 それから7階建てのマンション屋上にクレアとダイアウルフが配置され、私たちは大通りの両脇にある3階建てノ低いビルに陣取りました。

 

 私たちから見て右手のビルに私とベル、そしてバッカス。左手のビルにデイジーとアズール、そしてサイファーと3名ずつに分かれて行動しています。

 

「人形諸君、それぞれこいつを持っておけ」

 

 そう言ってマッチョな男性であるバッカスが、一見すると小口径迫撃砲に似た装備を渡してくる。私はこれに見覚えがあった。

 

「自爆ドローンですか」

 

「ああ。砲爆撃に合わせて展開させ、敵のアクティブ(A)防護(P)システム(S)の類を飽和させるのが狙いだ」

 

 そう、これは自爆ドローンとそのランチャーだ。

 

 この迫撃砲に似た筒から自爆ドローンは射出され、センサーの情報をAIが分析して人員または装甲戦闘車両(AFV)に突っ込んで自爆する。その威力は主力戦車が相手でも上面装甲に突っ込めば、破壊できる可能性があるほどです。

 

「相手がアクティブ(A)防護(P)システム(S)の類を装備していなくとも、砲爆撃に合わせて展開すれば混乱を生めるだろう。こちらの航空戦力や砲兵戦力を誤認して勝手に撤退するかもしれないぞ」

 

 そう言ってバッカスはにやりと笑った。

 

 意地悪な攻撃ではありますが、散々私たちを蹂躙してくれた敵にやり返せるのは魅力的です。それにいくら支援があろうと私たちは寡兵であり、取れる策は何だろうと取らなけらば生き残れません。

 

『……ダイアウルフから各ユニット。お客さんが来たよ。9時方向からドローンが見張っていて通りの敵戦力が接近中。現在、敵との距離は約12キロ』

 

『アズールよりダイアウルフ。航空支援と砲撃支援の誘導を開始しろ』

 

『了解』

 

 ここでダイアウルフとクレアのチームがレーザー照準器を使って砲爆撃の誘導を始めたことが知らされました。

 

 第2.5世代主力戦車である96式戦車には第4世代主力戦車には装備されているレーザー撹乱装置の類はなく、レーザーが照射されても敵は気づいていない。

 

『照準完了』

 

 クレアとダイアウルフが装備するレーザーによって照準された敵の情報は、ZEUS経由でAICの戦闘ネットワークにアップロードされ、この場の指揮官であるアズールにも、兵士である私たちにも、司令部にいる久慈さんたちにも共有された。

 

『アズールよりダインスレイブ。指示した目標に砲撃を要請』

 

 ここでアズールが砲撃を要請する。後方にいる砲兵──コールサイン・ダインスレイブがその求めに応じた。

 

「今だ。自爆ドローンを発射しろ」

 

「了解」

 

 それに合わせて私たちも迫撃砲のようにランチャーを敵に向けて傾けて、自爆ドローンを射出する。自爆ドローンは砲弾のような形状で射出されたのちに、翼を開いて上空に飛び立ち、上空から目標を狙います。

 

『ダインスレイブ、了解。砲撃開始、砲撃開始』

 

 さらに後方から自走榴弾砲が砲撃を開始。

 

 その砲弾はレーザー誘導のそれで、さらにはAIによって目標を識別する知性化砲弾(スマートシェル)であった。砲弾はカラルグラードにあるAICの砲兵陣地から発射され、カラルグラード市街地上空を飛翔。

 

「自爆ドローンと砲弾が突っ込むタイミングはほぼ同じだね」

 

 ベルがすぐさま距離を分析してそう言う。

 

 私たちのいる場所からはクレアが送ってくれている情報でしか敵の姿は見えない。だが、そこからでも突然の自爆ドローンの飛来に混乱する敵の姿は見えた。

 

 自爆ドローンが突入していく中、自走榴弾砲から放たれた砲弾は上空から無防備な戦車の上面装甲に向けて飛翔を続け、そして──。

 

 

 爆発。爆発。爆発。

 

 

……………………

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