どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
この世界には”個性“という特殊な力があり、ほとんどの人が不思議な力を持っている。
だが
そこの頂点として君臨しているのが平和の象徴であるオールマイト。
何故突然そんなことを言ったのかと言えば、気が付けば子供の体になっていたからだ。
言っている意味が分からないと思うが、俺も分からない。完全に某探偵すぎる展開だ。
ただ今まで普通に生きていた記憶があるため、どちらかと言えば前世の記憶を取り戻した形になるのだろうか。
一番最初に思ったことは──ここ、ヒロアカ世界じゃん……だった。
チート能力もなしにどうすればいいんだ。この世界、たとえヒーローを目指さなくても終盤死ぬ危険性あるしなんなら普通に生きててもワンチャンヴィランに殺される。
俺の個性次第で脳無化不可避すぎる。無個性ならお察し。多分虐められる。
まぁ待て。落ち着け、原作主人公である”緑谷出久“やネームドと関わりがない上に離れていたら影響は少ないだろう……と言う人もいるかもしれない。
しかし残念だったな、生きてきた記憶から考えるに俺の母親、まさかの原作主人公の母親だった。
外見が似てるだけかもしれないと最初思ったが、それを否定するかのようにインコって呼ばれてたし緑谷引子確定だろう。
何より俺には弟が居るらしい。
つまり緑谷出久。
さようなら俺。死亡確定! 絶望の未来へレディ・ゴー!
どう足掻いても緑谷出久がOFA継承した時点で終盤狙われるの確定です、本当にありがとうございます。
というかなんでAFOが狙わなかったんだってレベル。なんでだろうね、余裕なかったんかな。志村転孤を狙ったのはオールマイトへの嫌がらせが強いしOFA最優先だからってのはあるだろうけど。
あ、原作主人公から立場を奪うつもりはない。当たり前だろ、そうなったら歴史ぶっ壊れてどうなるか分からなすぎる。
そもそも俺が無個性だったとしても、OFAを継承したところで転生者である俺が使える気がしないし。
はぁ、ヒロアカは読んでいたが別にやりたいことないしな。楽に生きて楽に死ねたらいい。
少なくとも前世のように社畜は勘弁願いたいし、身の振り方次第で考えないとな。前世の記憶があるから人殺しとか忌避があってヴィランになる選択は絶対ないし、あとは俺の個性次第か……。
それ次第で楽に生きられるだろう。
とにかく好きに出来るようになるまで大人しくしとく──
「おにいひゃん! あそぼ?」
俺が思考の海に沈んでいたところで、まだ上手く話せず口足らずな二つ下の弟が俺の裾をにぎにぎしてつぶらな瞳で見つめてくる。
は?
は?
なんだこの可愛い生き物。
さてはこの世界に舞い降りた天使?
そうか……俺は兄。
俺はお兄ちゃん。
緑谷出久の、原作主人公のお兄ちゃん。
だが待て……この天使がいずれの未来で無個性だと診断されて虐められ、憧れの人から力を受け継ぎ、腕や足を何度も壊し、巨悪と戦い、孤独に使命を背負って、休むこと無く戦い続け、市民に拒まれ、戻るとはいえ両腕を失うだと……?
ようやく分かった。
俺がこの世界に転生した理由は単純だったんだ。
出久をどんな脅威からも守る──それが俺の使命。
俺が出久のお兄ちゃんだぞ!!!!
個性が発現した。
ジャングルジムから足を滑らせたマイエンジェルこと出久を守るために手を伸ばしたところ、驚くくらい俺が加速して、もはや瞬間移動と言っていいほどの速さを生み出した。
そのお陰で出久が落ちるより早くキャッチ出来たのだ。
正確には別だと思うが、表現するならそれが正しい。
ええい俺の個性などどうでも良い!! 弟!! 出久の怪我はないか!?
「大丈夫か、出久ーっ!」
「……い」
「怪我か! 何処か痛めたのか! 足か!? 手か!? 痛みがあるなら俺に」
「すごい!!」
「え?」
「おにいひゃん! いまの、個性!?」
「ああ、うん多分……?」
「うわあー! やったあ! すごいなあ! おにいひゃんの個性! どんなの!?」
まるで自分のことのように喜んで、嬉しそうに目を輝かせている。
そのうえで身内の個性が発現したことに自分のことのように喜べる優しさも備わっている。
やっぱりうちの弟って世界一可愛いのかもしれない。
見なよ、俺の弟を。
「おにいひゃんならおーるまいとみたいになれるよね!! すごいひーろーに!」
思考が固まる。*1
既に出久はオールマイトに憧れを持ってしまったらしい。
これが正しい流れなのは理解しているが──
おのれオールマイトォオオオオオ!!
貴様! 貴様だけは許さんぞ!!
出久は俺に言った!
オールマイトより凄いヒーローになれると!*2
俺なら最強のヒーローになれると!*3
オールマイトを超える最高で最強のヒーローになれると!*4
超える! 俺は貴様を超えるぞオールマイトォ!!
俺に個性があったことを後悔させてやろうじゃないか! 今日から俺はヒーローを目指すぞ!
ふはは、恐怖しろ! そして慄け!
No.1は出久がヒーローになるまで俺のものだぁ!!!!
やべえ。
この後病院で個性検査することになるだろうけど黒幕の仲間居るんだっけ?
なんか俺瞬間移動してたしバレたら奪われるじゃん。これAFOに渡ったら下手したらバッドエンド直行では? 俺の力で速攻で近づいてOFAが奪われる未来が見える。
なに? あの汚らしい手が出久に触れるだと!! 許さん!!
母親が物を引き寄せる個性だからそれっぽい感じで力セーブしとこ……。俺ならやれる!
いいや発現したてであろうとやらねばなるまい!!
可愛い可愛いマイエンジェルブラザーのために!!
「どうやら検査の結果、
「そうですか……よかったね、
成功した。
ちょっろ。このハゲ。
お前がAFOと繋がってんのは筒抜けなんだよ! エッグマンみたいな顔しやがって!
本当はさっさと暴いて何とかすべきなんだろうが、発現したての俺が動いたところで殺されるだけ。
プロヒーローに話しても取り付く島もないし子供の妄言と言われるだけ。
この頃って全盛期だからオールマイトと接触出来たら別かもしれないが、現実的では無い。*5
第一、俺が離れたら誰が出久を守るというのか。
出久に何かしようと考えてみろ、命を犠牲にしてでも髭をちぎってそこもハゲにしてやる。生えてこないようにしてやるからな。
まあ結局そのあとは不審者という名のAFOが干渉することもなければ何事もなく、俺の個性は有用と扱われなかったようだ。
使えない個性ということで報告しなかったんだろう。
そりゃ手が届く範囲なら今の俺だと数cm程度だからな。成長させたとしても数mが限界と思うはずだ。
馬鹿め。普通の子供なら発現した喜びで全力でやるだろうし、まさか滅茶苦茶加減されるとは思わないだろう。
俺の前世が大人でよかったぜ、中学生や高校生だったらやらかしてた。
許してないが社畜時代に今日だけは感謝しとこう。責任も仕事も全部押し付けてきやがったクソ上司覚えてろ。
……と、もうその話はよくて。
あいつも無数に持てるわけじゃないから最初からしょぼいやつ興味ないだろうし、これでノーマークになるはずだ。
無数に持てるなら今頃世界中の個性奪って”魔王“として君臨してるわ。
特にあったら数十年後、滑走なんて奪われてるよ、流石原作出禁の人。*6
ひとまずオールマイトを超えるヒーローになってという出久の願い*7を叶えるために訓練するしかないな。
しかし原作改変を起こす訳には行かない。というか子供の体じゃどうやっても原作改変するために動けない。
うちの母親心配性だし。そもそも明確な場所描写されてないのと日付不明なの多いし。
なら俺が強くなること最優先だな。
轟家に産まれたりとかしてたら別だったけど。
それから二年後。
今年で誕生日を迎えれば七歳だが、まだなので六歳になった俺の個性の修行は順調であり、普通に使えるレベルには至っただろう。同年代ならかなり上澄みだと自負している。
無論、個性を使って出久とも遊んでやった。軽く浮かせる程度だが、キャッキャッと楽しそうだった。かわいい。母さんに言って写真撮ってもらった。今度現像しよう。
え? 失敗しなかったのかだって? 馬鹿野郎俺の天使に傷なんてつけさせるかよ。俺の肉体で完全に安全を確認してからやったに決まっている。何より俺が出久に怪我させるわけがないだろ。
だが……順調だった俺にも悲惨な運命が待ち受けていた!!
それは……幼稚園を卒業したせいで出久と離れ離れになってしまったんだ……クッソぉおおおお!! 同級生などどうでも良いわ!
どうやら俺は容姿は優れてるらしい*8からな、クソほどどうでもいい。
何よりどうせ小学校なんて将来道が分かれることが多いしこの世界なら尚更。
経験者を無礼るな。
ま、普通に幼稚園に入ってるんですけど。*9
それはそうと今はオールマイトのパワーを超えられるように試行錯誤中。*10
そうして出久が四歳となり、出久にとって運命の日がやってきた。
「──諦めた方がいいね」
やっぱこいつ髭ちぎってやろうかな。
このハゲ!!
バーカバーカ!
十二年後覚えとけよ!
子供に乗せられた愚か者め!! やーい節穴アイアイ! お前の母ちゃんでーべそ!
ついでにお前が心酔する友人の顔面、
家に戻ってからというもの、出久は俺の言葉すら届かずに部屋に引き籠ってしまった。
何度か声を掛けたが、虚無を見つめては耳に入ってないようだった。
情けない。弟を救えずして兄を名乗っていいものだろうか。
ダメに決まっている!!*12
「母さん。出久は?」
「ずっとあの調子……どうすればいいのかしら。どうすればよかったの……?
私がちゃんと転間のように個性を持って生まれさせてあげたなら……そう産んであげられたなら……私の個性をあげられたなら……!!」
俺に見せないためか顔を両手で覆って涙を隠している。
母は膝をついて悲しんでいた。
自分のことを責めていた。
俺は少しでも気が楽になればと背中を撫でる。
だが、悲しいことにこれは決定事項なのを俺は知っている。
と言っても俺の存在も含めて原作にはない展開があるため、この世界と原作は違う。
だから俺も出久にも個性があるのでは?と思ったことはあったが……物語の根本に関わる部分はそうはならないらしい。
事実、無個性でなければOFAは継げない。
今度は世界を敵に回さなければならないかも知れないが、行動に出るとしよう。
──全力でお兄ちゃんを遂行する。
「母さんは悪くない。大丈夫、出久は俺に任せて、ご飯の用意をしてくれる?」
「て、転間……? どうする気なの……?」
「母さん。母さんが俺を産んでくれた。出久よりも先に産んでくれたのはきっと、この日のためでもあったんだと思う。出久はきっとお腹を空かせてるだろうからさ、ここは俺に任せといてよ」
「転間……。そうね……情けないお母さんでごめんなさい。誰より近くにいた貴方の言葉なら届くかも知れないものね。出久のこと……任せていいかな……?」
「当たり前だ! 俺は出久のお兄ちゃんだからな」
母にそう告げた俺は閉じられたドアを開いて中に入った。
暗い部屋。
椅子に座っていて泣きながらモニターに映るオールマイトの動画を見続ける出久の姿があった。
弟の泣き顔なんて見たくない。出久は笑顔こそ似合う。
そして出久が言ったオールマイトを超えるヒーローというのは涙を拭い、笑顔にする最高のヒーローのことを言うはずだ。*13
「……てんまおにいちゃん、見てよ。オールマイトはね……どんなに困ってる人でも、いつだって笑顔で助けちゃうんだよ……超カッコイイヒーローさ。僕も……なれるかなぁ……?」
「……………!!」
涙をいっぱいに浮かべた瞳で俺を見ながら、モニターに映るオールマイトを指さす出久を俺は全力で抱きしめた。
これから俺は取り返しのつかないことをする。
原作のまま行かせるべきだとは思う。それがきっとこの世界にとっては正しい選択なのだろう。
だが……それがどうした。
弟が辛い目に遭うくらいなら改変なんていくらでもしてやる!
出久の運命は俺が変える。出久は俺が守る!!
だから誰よりも、家族である俺が、お兄ちゃんである俺だからこそ出久に言わねばならない一言──!
「なれる……! 出久はヒーローになれるんだ……! 無個性だの個性があるだの関係ない! 必ずヒーローにさせてみせる! 心配ないぞ、出久! お兄ちゃんがついている!」
「おに、いちゃん……ぼくも、ヒーローに……う、うう……うわぁあああああああ!!」
決壊したように大泣きする出久は力強くしがみついてきて、俺は優しく抱きしめたまま頭を撫でていた。
OFAを受け継ぐまでにやるべきこと──これがどんな影響を引き起こしてしまうか分からないが、出久を鍛えさせて中学生三年生までに器を完成させる!! 無理はさせたくないから雄英入学時までに10%までいけば御の字だろう。
ここからは忙しくなるぞ、転間!
身体の鍛え方を勉強しつつ自分の肉体と個性の成長! 勉強!
出久の守護! 写真撮影! ついでにいじめるヤツら全員ぶっ飛ばす!
歴代個性を発現後、すぐ扱えるように似た経験を積ませる練習!
俺の個性であれば”浮遊“の真似くらい練習しまくれば再現出来るはずだ。どちらにせよ最終決戦じゃ浮くことが出来なければ戦力外。やらなくちゃならないことが早まるだけ!
”変速“と”発勁“はどうにもならないが、”危機感知“に関しては処理能力を上げればいい。”煙幕“は砂埃で何とかできる。”黒鞭“はサポートアイテム……買う金や技術はないから手作り。
それの勉強!
やってやる! やってみせる!
何故なら俺は--
出久のお兄ちゃんだ!!!!
言い忘れてたけれど、これは出久を最高のヒーローにし、俺が最強のお兄ちゃんになる物語だ。