どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
今考えてもハイになってたことは誰にも見られなくてよかったと心から思った。
綺麗になったコスチュームはボロボロで使い物にならないようだった。
また申請を出すことにしよう。ありがとう、大した機能もない服。
俺の個性の都合上大した機能が付けられないからな……。
体もまあ何とか血を流せたし。
臭いは取れたと信じたいところだ。
次の日。
沖マリナーはダメージこそあったものの、あれから異常気象も無くなり海も正常と化していた。
海域を出るまでは危険だったので保安庁にも引き渡せなかったが、シーサーペントはポーチの中で大人しくしてるしクラーケンは人の頭の上でプルプル震えるのでもう悪さをしないだろう。
――なんで頭に乗ってるんだこいつは。頭が高すぎるだろ。
頭を鷲掴みにして地面に叩きつけた。
お前は十分人を殺したんだから罪は償うべきだ。保身から俺に懐いたとしたって許さんぞ。
せめて罪を償ってから来い。
可愛いアピールしても無駄だ。俺がヒーローでなければ間違いなく殺してたぞ、お前。
――この後もめちゃくちゃやってきたので意識を奪った俺は悪くないと思う。*1
そして最終日。
捕らえたクラーケン――はやけにしがみついてきたが、シーサーペント共々受け渡した。
検査の結果こちらもまたトリガーによるものだったようだ。
クラーケンが話せたのはまだ意識があった頃なのだろう。今じゃ全然小さいし。
で、俺にやられて喋ることも出来なくなったようだ。自業自得。回復するまで後悔してろ。
メガロドンと違い、俺がゾーンに入ってた影響か弱ることなくそのまま生きているとのこと。
俺の個性が個性だし、改造された悪影響のある部分だけ消し飛ばした可能性が高い。色々とハイになってたとはいえ、そんなピンポイントで破壊するなんてよく出来たなと思ったが。
何はともあれ、これにて事件は無事に解決。
俺も期間が終わり、帰る頃だ。
沖マリナーが港に戻ってきて、停船したあとは荷造りしていた。
するとシリウスさんが俺の隣に座り込んでくる。
「もう終わりかぁ。なんだか早かったね」
「1週間だけですから」
「そうね、1週間。されど1週間。オリジンと、転間くんと航海したのはきっと忘れないと思うわ。今までの人生で一番インパクトがあったかも」
「それは言い過ぎじゃないですか?」
いや確かに俺も忘れなさそうだけど。
あの異常気象。それにあの感覚。
狙って出せるかと言われれば無理だと勘が告げる。
あの時はハイになってたが、その時は出来たと思う。
次に同じ状態になればある程度は引き出せるだろう。100%は無理だが。
「きっとオリジンはこれからもっと凄いヒーローになって行くと思う。貴方が来てくれたから私たちは無事だった。来なければ命を落としてたと思う。この出会いは運命だったのかもね」
「運命、ですか」
「その方が素敵でしょ?」
そう言って片目を閉じるシリウスさんに、俺は首肯した。
そうかもしれない。
俺がここに来なければ俺自身もあの感覚に辿り着くことも個性を拡大することも出来なかった。
であらば、運命と言ってもいいかもしれない。
ここに来る選択をしたあの日の俺にも感謝すべきだな。ある意味ではねじれや甲矢にも感謝だ。
次会った時は放課後にでもケーキでも奢ると伝えよう。
「ちょっと寂しくなるけれどヒーローである限りまた会うと思うの。その時はまたよろしくね」
「ええ、約束もありますから」
「覚えてくれてたんだ」
「これでも約束を守ることには評判があるので」
「じゃあ期待してるわ、転間くん。いいえ、オリジン」
差し出された手を握って肯定の意を示すと、互いに笑った。
――たまに忘れかける時もあるが、ちゃんと最終的には破らずに果たしてはいるのでそう言っても良いだろう。うん。
出久が関わらない限りは忘れない。関わった瞬間には俺の優先度は全て出久になるからな。
港ではセルキー船長やシリウスさん含め、お世話になった船長たちも全員が見送りに来てくれた。
なんかこう、変な感じ。
有名人が来た時みたいな感じになっている。
「オリジン。お前が来てくれて本当に助かった。感謝してるぜ。その実力ならすぐにでもプロでもやってけるだろうさ。判断力や実力、冷静に戦況を見極める目。お前には必要な部分が既に備わっている。このままサイドキックとして受け入れたいくらいだ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですが、俺はまだ学生なので」
「そうか、そうだな。困ったことがあったら言ってくれ。海においては俺たちが沖マリナーで何処までだって連れてってやる!」
「その時はお願いします。もしかしたら人を避難させるために必要になるかもしれませんし」
「おう!」
セルキー船長と握手を交わす。
今度は力を試すようなこともなく、ただ普通に握手をしただけだった。
すると急に引っ張られ、声を潜めて耳打ちされる。
「ところでシリウスとは随分仲良くなったみたいだな。どうだ?」
「どうと言われても優秀な人ですね」
「まぁな……いやそういう意味じゃなくてだな。女性として、だ」
「素敵な女性だとは思いますけど」
「そうかそうか!」
何処か満足気に頷くセルキー船長は背中をバシバシと叩いてくる。
だから痛えつってんだろ。*2
というか、そう質問されてそれ以外に答えたらクソ酷い人間では? お世話になった人だぞ……。
「船長何を話してるんですか?」
「いやーうちのシリウスはどうだと思って――」
「なっ……もうっ! 何を言ってるんですかッ!!」
本人たちは理解してるのかシリウスさんが顔を真っ赤にしたかと思えば、セルキー船長の背を叩いていた。俺は仲良いなぁと微笑ましげに見ていた。
冗談を言い合える、ここまで信頼関係を結べているのは凄いことだ。部下と上司という立場なのに。
実際に痛くないだろうに痛い痛いと言ってるし、俺には出来なかった。
改めて自分はリーダーには向かないんだと突きつけられる。
うーん才能なし。
「こ、こほん。元気でね、転間くん。また連絡するから」
「はい、いつでもどうぞ。シリウスさんもお元気で。皆さんも、また五体満足で生きて会えることを願ってます!」
まだ赤みが引いてないものの、1度リセットするように咳を入れたシリウスさんとも改めて握手をしたのち、俺は1歩下がりながら全員に聞こえるように声の量を大きくすると、どっと笑いが起きた。
間違ってないけど怖いことを言うな、や縁起もないこと言うんじゃねーっと、そんな声が聞こえた。
この人たちにはこういったノリの方が合っているな。
目の前にいるセルキー船長やシリウスさんも小さく笑っている。
「さぁ! お前ら! 今日でオリジンとお別れだ! 最後までビシッと見送るぞ! 我が同志。そしてかけがえのない友に敬礼!!」
まるで軍隊のように揃い、統率のとれた動きは一切の乱れもない。
圧巻な光景だ。
俺もまたお世話になったこと、経験を積ませてくれたことへの感謝を込めて背筋を伸ばして敬礼する。
みんなに比べて不格好だが、踵を返して俺は家族が待つ家へと歩みを進めた。
振り返ることは、ない。
――職員会議。
雄英の教員たちがほぼ集められた。居ないのは婆さんとハウンドドック、ランチラッシュなどだ。その3人は残ってもらっている。
特にハウンドドックの嗅覚は頼りになる。
だが、わざわざこの時期に集まるとなれば、題はひとつしかない。
職場体験の件だ。
根津校長先生が話を切り出す。
「みんなに集まってもらったのは他でもない。彼に対しての話さ」
モニターに映し出されたのは雄英の問題児こと、“緑谷転間”だ。
今回、職場先からインターン生として受け入れたいという話があり、あいつはそれを承諾して向かった。
確かに問題児だ。だがあいつが何か体験先で問題を起こすような人物ではないことを俺はよく知っている。
それどころか1年間担当していた俺が1番あいつを知ってると言ってもいい。
“海の怪物”事件を無事に解決したとは既にニュースになっていたが……。
「緑谷がどうしたよ? あいつが悪いやつじゃねえってのは俺とイレイザーが誰よりも知ってるぜ。ノリもいいしな!」
「私も同感です。騒ぎの中心と言えば中心だけれど、あの子はしっかりする時はちゃんとしてるもの」
「ええ、俺もクラスの中心となって他の学科を巻き込んでまで皆が楽しそうにしてるのはよく見ますね。やりすぎな時が多いですが……」
セメントスの言っていることは間違いない。
元々1年の時から誰よりも中心に居り、人を巻き込んでいたやつだ。人に頼られていたし、実力においても突出していた。
人を惹きつける才能があいつにはある。ヒーローの素質、とも言うべきか。
弟が関わると向こう見ずになることだけが欠点と言ってもいい。それ以外ではあいつはあまりに優秀すぎる。
「それは僕も分かっていることさ。本題はここから! 悪いことでは無いといえば悪いことじゃないんだけどね……」
どこか渋る校長の姿を見て、教員の中で緊張が走る。
悪いことでは無い。だが、良いことでもないのは確かだ。
静寂が支配する空間で動く時計の針がやけに遅く感じた。
「彼は入試を歴代最高記録を叩き出し、体育祭で優勝し、職場体験で解決した事件の数々。さらに1年で仮免を取得、2年では1年生の意識の改革。体育祭で優勝したのはここにいる教員全員が知ってることだと思うのさ。正直、当時のオールマイト以上の逸材と言っても過言じゃないだろうね」
「まぁ……そうですね」
「アノ時ハ、驚イタナ。入試試験ヲ見タ時ノ衝撃ハ今モ忘レラレナイ」
「体育祭の活躍も凄かったですからね」
「緑谷らしいといえばそうだが、性格は1年から変わってないようだがな」
「くけけ、あいつはサポートアイテムを作る力もある。不思議なやつだ」
「俺はあまり知らないが……とんでもないやつってのは3年でも何度も聞こえてきたな」
「うん。それで今回、セルキーのところで解決した事件が後押ししてしまったようでね。
この場の全員が驚くほどの、予想外な言葉が校長の口から出てきた。
公安も絡んできている――となれば話は変わってくる。
大方、象徴が崩れる前に
既にこの場にいる全員がオールマイトが24時間も活動出来ないことを知っている。
公安は知らなくてもオールマイトの年齢が年齢だ。
正気じゃない。緑谷の実力は高いが、まだ子供だ。そんな重圧感を、平和の象徴と同じ荷をあの小さな背中に背負えと言うのか?
「みんなにはその事で意見を聞きたいのさ。最終判断は彼の意見を聞いてからになると思うけどね」
「俺は反対です」
迷いなく否定した俺は椅子が倒れることすら気にせず勢いよく立ち上がり、机を両手で叩いた。
全員からの視線が集まる。そのためにやったとも言えるが。
「あいつは確かに実力はプロヒーロー……いえ、オールマイトにすら届く――超えうる逸材だと思います。だが、まだ学生で子供なんです。プロの世界へとわざわざ2年から招き入れるべきではない。俺たち大人の身勝手さで人生に一度しかない高校生という大事な時期を、大人になっても影響のある時期を。緑谷から奪うのは違うでしょう……!!」
「イレイザー……」
「相澤くん……」
――俺は知っている。
いつも軽い様子ではあるが困っている人を放っておけない緑谷を。
多くの人を笑顔にしている姿を。
誰よりも強くなろうとしている姿を。
あいつがいるクラスがどれだけ成長したのか。そして今の1年にどれほど影響を与えているのかを。
現に1年の中でも緑谷と関わっていたらしい不和は体育祭で異常とも言える成績を残すほどに大きく成長した。
常に中心の人物。
だが最初からそうだったわけではない。
入学したての頃、あいつは何処か一人だった。表面上こそ取り繕っていたようだが、今と違って心から笑えていなかった。
人と繋がりを持つことに諦めてるようにすら見えた。
しかしそれでもあいつは自らの足で歩みを進めた。その歩みはどれだけ大きな一歩だったのか。
だがそこに
波動、天喰、甲矢と次々と仲を深め、クラスメイト全体へと。
さらに別のクラスの通形や他の学科すらも巻き込んで、緑谷はまるで台風の目のようだった。
そんな緑谷が居なくなれば起こり得る影響力がどれほどのものなのか。
無理矢理にでも雄英から追い出せば1年や2年を主に、3年すら動く。
何より。
「教師が生徒を守らねば誰が守るんですか。ここは生徒を受け入れるための、守るための――」
「
俺たち大人が子供の未来を奪うなど、何がヒーローだ。そんなことはあっていいはずがない。
ヒーローというのは他人の死を多く見る職業でもある。
あいつなら覚悟はしているだろうが、それでも雄英の3年間、誰にでもある学生という資格をあいつだけ剥奪するのはあまりに不合理だ。
特に本人の意思を無視するなど、以ての外。
「――俺もイレイザーに賛成だ。ほとんど言われちまったが緑谷はまだ雄英に居るべきだと思うぜ。俺、またあいつとイレイザーと出掛ける約束しちまったしな!」*4
「そうね、子供から青春を奪うのは良くないわ。そんなの誰にも取り上げる権利なんてない。まだまだ思春期の子供を戦場に立たせるのは、ね」
「確カニ、彼ノ影響ヲ考エルノデアレバ得策デハナイ」
「あれほど全体で仲の良い学年も珍しいですけど、緑谷くんの存在はあまりに大きいですからね。反感をたくさん買ってしまうと思います」
「色々と問題は起こす生徒ですが……俺もまだ彼とお別れはしたくありませんね。あんなに毎日を楽しそうにしてる生徒たちを見ていたら特に」
「話を聞く限りは俺も同じ意見ですね」
「だな。サポートアイテムを使わないのに知識はある。たまにだが手伝ってくれる上に、生徒である限り見捨てられない」
「うん……君たちならそう言ってくれると思っていたのさ! 僕も同様。最初から渡す気なんてないよ。あの子はまだ学生で、子供だ。雄英の生徒である限り彼は僕たちに守られる立場。皆の総意とみなして、彼が拒否したなら全力で守るとしよう。皆にはこういう話があったということだけ頭に入れておいて欲しい」
あとは緑谷次第、か。
あいつがプロになりたいと願ったならば、俺たちに止める権利は無くなってしまう。だが願わないならば俺たちが守らないと公安があれこれプロにさせる可能性もあるだろう。
その時は全力で守るだけだ。
――イレ先! そんな難しい顔してるとストレスで大変なことになりますよ。根を詰めたってしんどいだけでしょ。それより最近出来た猫カフェがあるらしいので行きません?
――大切な人を守るには力が必要です。俺が強くなれば守れる数はその分増える。そりゃ今はまだオールマイトに敵わないですが、来年にはイレ先すら守れる存在になってみせますよ。何よりも弟を守るのはお兄ちゃんの役目なので!!
――安心してください。
だからイレ先ももっとリラックスして肩の力を抜いて、先生やった方がいいのでは? ということで、まず小手調べ代わりにこの俺だけ3倍になった課題の数を減らしてですね……。え、問題起こした罰? それとこれは別? くそっ、ダメか……ッ!
生意気なやつだが妙に人の心に聡くて、人に温もりを与えられるような、心を解かすような、そんなやつだ。
その力の根本にあるのはあいつの心と、その態度から来るもの。笑顔から来るもの。
あの光はこんなところでは失ってはならない。ヒーロー全体の未来のためにも。これからの未来のためにも。
――挟んではならないと決めていた私情が入っているのは、認めるが。
――職場体験が終わり、次の日は普通に登校だ。
イズクニウム*5を1週間空けてようやく摂取出来た俺はほくほく顔で学校に向かっていく。
疲れはもうない。一瞬で回復した。
出久からしか得られない栄養が確かにあるのだ。
帰ってきた時は思わず速攻で抱きしめてしまった。
寂しいと思っていたのは俺だけじゃなかった。
仕方がないことだが、弟に寂しい思いをさせてしまうとは。自分を殴りたい! というか既に殴った。
ただ俺が首から上を除いて包帯ぐるぐる巻きになってるの見てめちゃくちゃ出久と母さんが慌てていたが。
怪我は治ってることを伝えたらすぐに安心したけど、船員やシリウスさんが過保護だっただけだ。
それから察知したとはいえ個性の進捗を聞いたとき、出久がフルカウルを身につけたことを聞いた。
どう扱うのか、どうコントロールしていっているのか詳しいことを嬉しそうに語っていたのだが、一言も教えてくれた人について出なかったことから、オールマイトは俺の予想通り無能だったらしい。*6
――フッ、教え方については勝ったな。*7
それはそうと、登校しているとなんだか学校が慌ただしい気がする。
有名人でも来てるのだろうか。職場体験明けなのもあって話したいことや話題には尽きないと思うのだが……。
不思議には思いつつも俺はいつものようにおはよう、と言いながら2-Aの教室を開けると全員の視線が一気に集まった。
――え、何。怖いんだけど。いつもならおはよーとか返ってくるのに何も返ってこない。
それどころかみんな幽霊でも見たかのような顔だ。
思わず足を止めてしまった。今回は個性を使って登校してないし何も悪いことはしてないはずである。
とりあえずねじれが居ないことに珍しく思いながら親しい仲である環に声を掛けた。
「環、何かあったのか?」
「て、転間……その、あの話は……。あの話は……本当なのか? 嘘だと、言って欲しい……」
――は?
全く脈略のない、何のことかすら分からないことを言われて困惑する。ただ環の表情が今にも泣き出してしまいそうな顔だ。
なぜそんな顔をするのか。話とは何なのか。そのことについて追及しようとすると慌ただしい足音が聞こえて咄嗟に振り向く。
長話になりかねない。ぶつかっては大変だ。
「転、間くん……?」
そこには俺の姿に驚いてるねじれが居る。息を切らして、髪や服すら乱れている状態。
まるで全力疾走で走り回ったかのような様子だ。
校舎は走り回ったらダメだぞ、いいのは窓から飛び降りるくらいだ。*8
それよりもこの反応からして、お前もかよ……と思ったが、話は全く理解出来ない。
ひとまずはいつも通り挨拶をしようとしたら、俺の思考が完全に固まる。
あのねじれが、
長いこと一緒に居たが、こんな姿はあまり見た事がない。
「転間くん……ッ!」
そしてねじれが飛び込んできた。
ねじれの涙を見たのといつもとは違う様子が気がかりだったのもあるだろう。
踏ん張ってなかった俺は後ろに尻もちを着き、咄嗟にねじれにダメージが行かないようにするだけで精一杯だった。
あれから個性の常時発動状態を維持しては脳を回復させて、と伸ばしているため、咄嗟に許可した自分をいつもなら褒めていたところだろうが、今は自分を褒めることはできなかった。
――マジでどうした!? この空気……誰か亡くなったのか? そうであるなら元凶のヴィランを捕まえることくらいしか俺は出来ないが……。いや昨日普通にLIKE全員から来てたし、視線が俺に集まった時点で俺のことだろう。
となれば……死んだとでも思われていたのか? それもおかしいと脳が否定する。
なぜなら俺は昨日普通にメッセージを送ったからだ。だが死んだと思われてないならこの反応もまた意味が分からないものである。
マジで何があってどうした?
「よ、かったぁ……!!
よかった? まだ?
誰かに説明をお願いしたいところである。俺は別にどこにも行くつもりないのだが……。
置いてきぼりにされてるとはいえ流石に泣いてる異性を放り出すほど人の心は捨ててない俺はひとまず慰めるように頭を撫でていると。
「転間! 居るよね!?」
今度はミリオが慌てた様子で入ってきた。
酷く焦ったような顔。普段にニコニコしてるやつがここまで切羽詰まった顔をしているのは珍しいな。
ちょうどいい、助けてくれミリオ。
そう、口にしようとしたら。
「よかった! 居たっ!! あの話は嘘だよね!?」
「待て、さっきからお前ら何の話してる?」
またこいつも意味が分からないことを。
どいつもこいつも説明しないのはどうなってる?
「何って……分かるだろ!?」
「転間、
「――は?」
何その話。
転間ってやつ居なくなる……転間って俺では?*9
俺全く聞いてないんだが。雄英から居なくなる? 俺? 朝からやけに慌ただしいというか騒ぎになってたのってこの話?
もしかして俺、除籍されるのか?
そんな、除籍されるようなことなんて俺……俺……。
――マズイな。身に覚えがありすぎて*10全く否定が出来ないぞ……?*11