どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
ブラフに上手く引っかかってくれた。だけどこれは私の個性が知られてないから出来たこと。
条件が同じであったなら、彼はまず警戒して私が触れることは出来なかっただろう。
そこは少し不公平だと思うが、こうでもしなければあの子の虚を突くのは無理だと思った。
なんたって防御を突破した直後に私の拳を避けるほどの者だ。
先の技は、私の1000倍の大きさの空気巨人を形成して叩きつける必殺技。
巨人は空気で出来ているため特別な目でもなければ視認できず、現状私が単独で引き出せる全力だ。
当然、彼には視認不可能。
「やったか……?」
「い、いやいや……殺った方でしょ!? 何しでかしてんだアンタ!? 国際問題!! 流石に俺もどうにも出来ないですよこれ!!」
ホークスが降りてきて騒いでいるが、私は油断せずに見ていた。
数10メートル以上はあるであろう深いクレーター。
あの質量で押し潰されたなら無事だとは思いたくないが……それも
攻撃を相殺することは間違いなく不可能。
身体能力の強化は既にルールから外れている。それに他者の個性を消すことまでは出来ない。
だが不思議と出来る確信があって、成功した。テンマミドリヤの防御、あの収束は解釈で可能にしたものだろう。
なら私にも出来るのでは、と。*1
現に制限時間を設けることで一時的に発動を防ぐことは出来た。
しかし感覚としては短時間だけだと思う。それにデメリットとして私自身もルールを1つしばらく使えなくなるらしい。少なくとも倍は。等価交換のようなものか。*2
しかし。
違和感。
私がこの一撃をわざわざ作り出さなければならないと思わせた少年。
確実に当てる必要がある、とそう判断しなければならなかったほどの相手。
なんでだろうね――
「
「……は?」
死んだと全く思えないのは。いや確信があるのは。
そう、思った瞬間だった。
ゾクッと悪寒が走る。
久しく感じてなかったもの。
今日1日でこんなにも感じることになるなんて。
汗が流れるのを感じながら私は何時でも動けるように構えた。
「嘘でしょ……」
彼はゆらり、とまるで幽鬼のように歩いてくる。
頭から足にかけてまで全身が血だらけだというのに、本来ならば動けないはずのダメージ。
なのに歩いている。
それどころか、眼光が私を貫いた一瞬。
「速いっ!?」
「スターさん!?」
既に懐に接近されていた。
咄嗟に巨人を消して肉体の強化をすると、物凄い速さで数発体中に打ち込まれる。
体が吹き飛び、着地しながら見据える。
視線の先では剛翼を盾にしたホークスが弾かれ、蹴り飛ばされているところだった。
咄嗟に移動して両手でホークスを受け止めるが、打ち込まれた攻撃がヒリヒリとした痛みを残していた。
「う、ぐぅ……でぇ……す……すみません、ありがとうございます」
「いいや、問題ない。それより」
「……個性使えなくなってるんですよね?」
ホークスの疑問に私はテンマミドリヤを見ながらゆっくりと頷いた。
そう、新秩序は未だ発動されたまま。
無個性の状態なのは間違いない……!
実際に一撃一撃は個性を使用していた時よりかは弱い。だが身体能力そのものは底上げされている!
「ただ分かったことがひとつあります。あれ、意識飛んでますよ」
「
どうなってんだ、最近の若者は。
意識を飛ばして動けるものか? それも無意識でこんな攻撃を的確に叩き込めるとは。どれも全てが強力な一撃だった。勝利の執着心……ってやつか。
普通のヴィランならばあの一撃を受けたら戦闘不能に追い込まれているだろう。
どちらにせよ、動くなら動けないようにさせるしかない。
「来な!」
接近してきたテンマミドリヤの拳を左手で逸らし、顔面を鷲掴みするとそのまま地面に叩きつける。
地面が少し陥没し、動きを封じるように腹部に跨ると握りしめた拳を叩きつける。
感触がない。
首を逸らしてギリギリのところで避けているッ! 頬を掠めた程度ッ!
拳。
放たれた拳を両手で受け止める――
「スターさん!」
ホークスが地上へと降ろしてくれたが、着地した私は両手を見つめていた。
両手が小さく震えている。恐怖などではなく、純粋にダメージが残っているだけだ。
直撃していたらどれほどのダメージだったか……! それになんだ今の黒いのは。
私が封じたのは“収束”。まさか収束以外にも何らかの力を持っている? 個性を2つ持っているというのか!?
弾丸のように突っ込んできた。
咄嗟にホークスを押してその場から左右に分かれて離れたが、叩きつけられた踵がアスファルトを砕き、地面が大きく陥没すると衝撃が巻き起こる。
あまりの衝撃波に堪らず吹き飛ばされた。
個性頼りじゃなかったのか! それどころかパワーが増しているッ!?
「
「本当に! だけど個性が使えないならまだ何とかなる!」
ホークスが高速で背後を取って斬りかかると、首を逸らして避けていた。
だが避けられると思っていたのだろう。
ホークスはもう一本の剛翼を突き出していた。致命傷を避けた、肩に向けられた一撃。
「マジで?」
それに対し、テンマミドリヤは振り向いて手で受け止めた。
当然貫通し、手の甲まで貫いている。
だというのに血が出ることすら気にせず握りしめた彼はホークスをそのまま地面に叩きつけていた。
地面が沈むほどの威力。
そのまま踏みつけようとしていたところで。
「隙だらけだ!」
私の声にテンマミドリヤが反応した一瞬。
ホークスが離脱するタイミングで頭上から迫った私はかかと落としを後頭部に叩きつけた。
私が着地したタイミングで彼もまた立ち上がると、振り向きながら腕を振るってくる。
後方にスウェーで回避。
顎を打ち、両手で側頭部を掴んで顔面に膝蹴りを与え、鼻血が吹き出ている。
付着することを気にせず腹部を蹴り上げた。
斜めに飛んでいき、受け身を取ることなく地面に落ちた。
これなら流石にもう起き上がれないはず――
「
「言い得て妙ですね……普通あれ避けるでしょ。なんでまともに受けるんだ。しかも掴むって。一瞬呼吸出来なかったし。起き上がり方も完全にゾンビですよ、あれ。いつから少年漫画からホラー漫画に変わったんですかね」
そんな私の期待を裏切り、彼はまたすぐに立ち上がっていた。手を使わずに足だけで。背中が曲がった状態。そしてゆっくりと前のめりになって、がくん、と両腕が宙ぶらりんになるような脱力した状態。正直血だらけの少年がそんな動きをする絵面はヤバイ。
動きも動きだ。
あれほどのダメージがありながら、立ち上がればゆらゆらと動いている。
動きもまあ捉えづらいと来た。
再びホークスに目を向ける。
確実に動けなくするほどのダメージを与えるなら私一人の火力じゃ身体能力の強化を解かねば不可能。だが今の彼にそれは少々博打だ。
そしてホークスじゃまず勝てない。先の攻撃のダメージもかなり残っている。
ならひとつしかない。
「本気ッスか……そうッスよね、ああもう分かりましたよ! 絶対! 殺さないでくださいね!!」
「
テンマミドリヤを殺す気で戦ってはいるが、本気で殺すつもりはない。
ヴィランでもなくヒーロー、それも学生の命だ。
問題はそうしなければならないほどの脅威ってところなんだけどね。
実際に彼なら耐えられると確信してたから死なない程度の攻撃力で殴ったわけで。
「行きますよ!!」
ホークスの用意と共に私は脚に全力を込めて地面を蹴る。
地面が砕けるほどの脚力に剛翼による加速。
その一撃ですら受け止められたが、このまま押し――。
「切れない……!」
受け止められた掌から拳が全く動かない。
俯きがちで表情は見えないものの、ようやく理解する。
今のテンマミドリヤは
人が出せる100%ではなく、120%! ポテンシャルを限界以上に引き出している!
意識が無くなったことで完全にブレーキが死んだってわけか!? だが逆に。
「さっきに比べて弱い!!」
彼の武器である思考能力がほぼ停止している。
本能で動くだけの存在。
左拳で叩くことで受け止められていた手を解放し、両足で顔面を挟むと地面に叩きつける。
すぐに接近して起き上がろうとするテンマミドリヤに頭突き。起き上がらないように腹部に膝を打ち込んで追い打ち。
血と唾を吐き出していたが、普通に拳を放ってきた。
――これでも止まらないか!
顔を逸らして避けると首根っこを掴んで上空へ投げ飛ばし、落ちてくるまでの間に準備を整える。
意識がない以上は意識を止めて動けなくさせることは出来ない。だがあまり攻撃を繰り返していたら流石にマズイ。大気で拘束したところでこのパワーを封じるのは不可能。
ならば動けないほどのダメージで止めてとっととリカバリーガールの元へ運ぶ!!
「大気は私の100倍の大きさで固まる! いい加減止まりな!」
「流石にそれは――!」
もう一度殴る!
ボロボロだというのもあって出力は流石に抑えたが、下から突き上げるように空気巨人が拳を打つと、あっさりと打ち上がる。
両手を重ね、薙ぐように動かすと直撃して吹き飛び、建物を貫いていた。傍に来たホークスが本当に大丈夫なのかと心配していたが、まぁ彼なら大丈夫だろう。
崩れゆく建物を見ながら――
「
「おぉいッ! ああ、もう! 急いでリカバリーガールの元へ――」
完全にやりすぎたと血の気が引いた。冷や汗が止まらなくなる。勝手に私が戦いの場を設けておきながら殺したとなれば問題。大問題だ。
あまりにもの頑丈さ、それこそ
とにかく救助しなければ、と動こうとしたタイミングでルールが消えたことに気づく。
制限時間。
3分の経過により、テンマミドリヤの個性は再び復活する……!
「避けろっ!!」
「ッ!?」
同時に再び地面が砕けた。
飛んできた瓦礫を弾きながらホークスを遠くへ投げ飛ばす。
砕けた地面の上には両膝を曲げて着地しているテンマミドリヤの姿があった。
変わらず血だらけだが。
「――ってえ。やっぱり意識飛んでたか。よく分からないが死ぬかとは思った……」
違う点と言えば腕を回して、首を手で傾けさせたり、足を回したりとまるでダメージはないかのように動いているところ。
先と違って目も見えるし、話すことも出来ている。
無事と言えないが無事なことに私は、ほっ、と静かに胸を撫で下ろした。
「あー……なるほど……理解した。お返しだ、No.1」
周囲を見て、そして落ちていた窓の破片を見て状況を理解したのだろう。
彼は右手の掌を向けてきた。
何か来る。
そう警戒して攻撃を受け止める姿勢へ入り。
「
「ッ!?」
生み出された赤い光を見た途端。
当たってはならないという勘に従って咄嗟に身を逸らして避ける。
空気巨人をたったの一撃で消し飛ばすほどの威力。それどころか背後にある建物すら崩壊させている。
あまりの威力に驚きを隠せない。
おいおい。本当に昔の
しかも
――いくら個性の使用が戻ってるとはいえ私が封じたのは収束のはずだ。確かに収束で傷を治す、なんて芸当を出来てもおかしくはない。なんでもザ・スカイクロウラーも骨折した際に力場でギブス替わりにしたりとかしてたらしいじゃないか。彼の個性と目の前の彼の個性はかなり似ている。あれも何らかのエネルギーを操作してるなら出来てもおかしくはない。
だが
それも本人も
――真っ暗だ。
暗闇。
俺は死んだのだろうか。
いやたったの一発で死ぬほど軟な鍛え方はしていない。つまり意識が飛んだのか。
目の前には映像。
俺の体だけが動いている。まるで魂と肉体が切り離されたような。
幽霊のような。
これで終わりなのか……? あっさり負けて、それまで?
ふざけるなよ、俺はお兄ちゃんだ。出久を守らないで誰が弟を守る!?
『――転間兄ちゃん』
振り向く。
弟が居た。最愛の弟だ。
俺の全てであり、生きる目的。弟の存在が俺の人生そのものと言ってもいい。
『転間兄ちゃんは居なくならないよね? 僕、ヒーローになるって決めたんだよ。いつか転間兄ちゃんを守れるようなヒーローに! だから転間兄ちゃんが居ないと僕の目標が果たせなくなるんだよ……?』
悲しそうな顔をしないでくれ。
分かってる、出久に言われたことはずっと覚えてるんだ。
どんなヒーローになりたいか。
俺を守れるようなヒーローになりたいと言ってくれた。
嬉しかった。
弟を守るのは俺の使命だ。でもその言葉は弟が兄の前を歩むと超えると言ってくれたもの。
――だからこそこんな簡単に負ける訳にはいかない。
出久が誰にも負けないくらい強くなる時まで。最高のヒーローになるまで。
俺は、お兄ちゃんは強くなって生きなくちゃならないんだ。弟を守るためにも。生きるためにも。
『ありがとう、出久。やっぱりお前は俺の宝物だ。本物じゃないと分かっていても――それだけでお兄ちゃんは頑張れる』
近づいて頭を撫でると、どこか照れ臭そうに笑った。
それは俺が生み出した幻影が自身を幻影と理解してるように。
目の前にいる出久は出久だ。でも本当の出久じゃない。俺の中の出久の記憶が本人の再現率ほぼ100%で形成したもの。
『お兄ちゃんを応援してくれてるよな、出久』
分かる。
どれだけ離れていても出久は試験に臨む俺を応援してくれてるだろう。
死なない。負けない。
その決意を新たにし、俺は駆け出した。
記憶がない。何が何だか分からない。
どうやらとんでもない一撃を受けて立ち上がったらしい。だが出久のお陰で短時間で戻ってこれたのだろう。それだけは分かる。
もし出久がいなければ目覚めていたのは戦いが終わった後。
やり返しに赫を撃ったが、直撃はしなかった。
すぐ動けるようになったのは個性が使えるようになった際に生命維持のために全力で治癒に力を割り当てたお陰で回復が成されたからだろう。
気が付けば喀血していたし全身血だらけだったし。
俺が自己治癒覚えてなければ割と致命傷というか動けなくなっていたんだが、正気かよ。速攻運ばれてるレベル。
流石アメリカだ、あっちは日本と違って凶悪なヴィランは殺害したりとかしてるんだったか。常に殺す気でやれるってわけか。
多分死なないギリギリのラインを見極めていたんだと思う。思いたい。
意識が無くなってたとはいえ無個性でよく3分間も戦えたものだ。流石最悪個性が無くなっても戦えるようにしてただけある。
傷は治せた。失った血まではどうしようもないからかなり消費されたと思うが、貧血ではない。
もう1発受けて大量出血したら限界を迎えるだろう。それよりも防御の方だ。
個性因子に影響でもあったのか。まだ防御技の方が回復していない。回復までに時間が掛かりそうだ。あのバチッと言ったのが原因か。表現としては焼き切れた、って感じだな。
脳のオーバーヒートに近い感じだ。多分急に使えなくなった際にダメージがあったのだろう。回復はしたから後遺症はないが。
「なんでまだ立ち上がれるのかね……普通なら動けないよ」
「そんなものも分からないのか?」
「全く。参考に聞かせてもらえたりする?」
「フッ――」
「俺がお兄ちゃんだからだ」*3
「
「俺も分かりませんよ……」*5
そう、なぜ立ち上がれたのか。
いくら俺でも無個性にされてしまえばあんな一撃意識は当然飛ぶ。戦闘不能だ。
であらば何が俺を動かしたのか。動かし続けていたのか。
ひとつしかないだろうッ!
――出久に対する愛情。つまりお兄ちゃんの矜恃!
それ以外にあるわけが無い。
お兄ちゃんが倒れたら弟を守る人間が居なくなるだろう。理由なんてそれだけで十分だ。俺が生き返るのもそれで十分だ。
昔、仮死状態になった時も同じように生き返った前例もある。
馬鹿め、俺は全身の四肢を捥がれ失ったところで身体ひとつになっても食らいつくぞ。本当に止めたいならば
まあ、これも職場体験の経験がなければ傷が治らずに出血多量で倒れてただろうが。そもそもオート前だと加速した時にぶん殴られて負けてたからこうなることすらなかったけど。
なんだっていい。
知らん間にまた例の力を出していたようだ。
力が溢れるこのゾーン状態。試さない手はない。
今回はハイにはなってないようだ。黒歴史増やさずに済みそうで助かる。
「第2ラウンドといこうか。もうバテたとは言わないよな?」
「
「いや、もうやめにしましょうよ」
「するわけないだろ、焼き鳥にするぞ」
「なんで俺にだけ当たりが強いんだ君は……」
「
「俺が悪いんですか!? いやいや、あれ重傷じゃんか! 俺絶対怒られるんですけど!? それにこれ以上巻き込まれるのは勘弁――」
ちょっとうるさいので瓦礫を集めた蒼い光球をホークスに向かって放つ。
慌てて避ける姿に思わず舌打ちした。
「あぶなっ!? というか舌打ちしたでしょ!?」
「チッ」
「敢えて大きくやる必要ないよね???」
心配しなくても動けなくなる程度には出力は抑えてある。
流石に俺も殺すつもりはない。
しかし今の俺はオートもマニュアルでのガードもない。
だがこれは逆手に取れることだ。
スターは俺の個性が回復したと思い込んでいる。だからルールを1つ防御を消すために使うだろう。
ただ肉体は治癒こそ出来ているが、消費量が多かったのだろう。
回数が犠牲になった。残り少ない。
だが――体が軽いな。
何とかなりそうだ。
ずっと気になってたんだけど、なんか体中を変な青いオーラっぽいのが覆ってるし、これなに?
お兄ちゃん知らない! 知らないぞ出久!
いや、違う。まさか、そうなのか。そうなんだな、そういうことなんだな!!!!*6
やはり、やはり俺は……っ!
「お兄ちゃん……ってことか……」*7
「SMASH!」
「ごふっ!?」
人が納得して両腕を組んでうんうん、と頷いてたら殴り飛ばされ、手を地面に着いて体勢を変えながら勢いを殺すように着地してブレーキを掛ける。慣性によって完全に止まりきることは出来なくて摩擦力で減速したが、ダメージは少ないな。
おおよそ身体能力の向上ってところか。多分俺にしか見えてないんだろうけど。スターもホークスも違和感ないみたいだし。
だが理解した。これもまた“核心”ってやつだろう。
このオーラは間違いない!!
お兄ちゃん力だ!!!!*8
うーん、ついに俺はお兄ちゃん力を極めすぎたあまり、超能力作品によくありそうなオーラを纏う技術すら身につけてしまったらしい。
確かにジャンプ作品でよくあることだ、この世界にもあるドラゴン
1番最後に挙げたやつの色に似てるな、ちょっと黒いのあるけど。
この黒いのは恐らく俺の社畜時代の闇だろうか。なんてもん出しやがる。
俺の出久愛ですら抑えきれない闇ってなんだ……普通に怖すぎる。
もうどうしようもないだろ。
だがこの力のお陰で今までより身体能力が上がってる気がする。鍛えてたのは無駄にならなかったようだ。
魅せてやる、俺のお兄ちゃん力!
「くたばれホークスッ!!」
「俺ぇ!?」
殴りかかったら避けられた。
上がりすぎて制御出来ずに瓦礫に突っ込んだ件。ちっ、頬を掠めた程度か。
ホークス、頬に大きな切り傷が出たくらいだ。殺せなかったか……間違えた。倒せなかったか。
しかしダメだこれ、慣れていない影響か今の俺じゃ吸い寄せの反応乗せたら制御出来ない。しかもあまり使わない方がいい気がしてきた。脳の回復に使ってるのと同じっぽい気がする。やはりお兄ちゃん力が俺を再生させていたようだ。
つまり俺はこのお兄ちゃん力――以下、オーラをお兄ちゃんパワーと呼称しよう。
お兄ちゃんパワーは度々無意識に使ってたことになるな。全身に纏うのではなく瞬間的に。
全然自覚してなかったけど。
ただ常に纏うのは消費的によろしくなさそう。普段通りにしとくか。
俺のお兄ちゃん力は無限にあるはずだが、流石になんらかの法則が働いて制限が掛けられたのだろう。お兄ちゃんパワーなら潰せよ。もっと気合い入れろお兄ちゃんパワー。俺の出久愛に負けてんじゃねぇよ。お前ならもっと出せるだろ、頑張れ! 出力増やせ!!
Plus Ultraしろ!
まあいい、そのうち無限に使えるようになってもらうぞお兄ちゃんパワー。覚悟しとけよ。
だが個性が使えないところではありだな。俺の個性って必殺技クラスになると結局被害が大きくなりがちだし。
殴る蹴るで倒しきれない相手は被害の方がな……。といってもだいたいそれで解決するので余程強力なヴィランか脳無とかネームドでもない限り技なんて使わないが。
それでも自覚出来たのは大きいだろう。もしかしたら回復に使う消費量も減らせるかもしれない。
ということでお兄ちゃんパワーを元に戻して改めて対峙する。
二人を相手取るならどちらかを戦闘不能にしなければならない。
スターは現実的では無い。
なら先に倒すのは……こっちだ!
「次は私をご指名かい!? さっき触れたからね! テンマミドリヤは距離を引き伸ばすことは出来ない!」
――かかった、と口角が上がる。
先のは不意打ちで個性を封じられたから俺はダメージを受けた。しかしそれは初見だから通じたこと。
制限時間有りの封印など俺の鍛え上げた身体能力を持ってすれば耐えることは可能。
故に封じるのは制限時間なしで可能の防御のみ。おおよそ個性という曖昧なものは何の縛りもなく完全には封じれないのだろう。
でなければ大気を操ったりせず身体能力と加速の2つのルールだけを付けて触れたら加速解除の個性封じ、身体能力で殴るだけでいい。
人類は未だ個性を理解しておらず、謎に包まれてる部分が大きいのもあるだろうが。
どうであれ、確実にひとつを潰した今、特殊能力を気にする必要は無い!
一定の距離に辿りついた途端地を蹴り、一気に加速する。
迎え撃つ気満々のスターに対し、正面から拳を叩きつけると互いの拳がぶつかりあった。衝撃波が周囲の建物にヒビを入れる。
――圧倒的な体格差。不利なのは俺。だとしてもッ!
同時。
右拳を突き出すスターと左拳を突き出す俺。
ぶつかり合い、そして既に拳を打ち出している。
何度も何度もガトリングのような高速の乱打が衝突し合い、足場の方が持たなくなってくる。俺は僅かに視線を動かした。
位置把握。
ホークスは参加しようとはしていない。巻き込まれないように距離を図りながら狙いを定めている。
当たり前だ、この中に突っ込むなんて自殺行為。しかし警戒もしなくちゃならない。
「余所見とは随分余裕じゃあないか!」
来た。
身体能力で負けてるが故にダメージは俺の方が多く、足場が悪くなった影響で足を取られた俺に対し、渾身のストレートパンチ。
それを見た俺は拳を解いて真っ直ぐに手を伸ばす。
相殺するのではなく、スターの右腕に沿うように、さながら蛇のように腕を動かして円を描くように力を受け流す。
「なっ!?」
この人の攻撃。動きが完全に軍人だ。
体格差や技術も含めて投げ技では勝てない。だからこそ最大の攻撃を受け流した。といっても狙ったわけでないのだが。
腹部に掌を添え、一気に打ち出す。いわゆる掌底。
「し――っ!」
「来ると思った!」
スターを引き離した途端にホークスが剛翼を振り下ろしてきたのが見えた俺は両手で叩くように受け止める。
「白刃取った!?」
「やるもんじゃないなこれ!」
フィクションなら普通にやるが、実際にやるものではないと実感した俺は奪い取って投げ捨てると蹴りを突き出す。
武器を奪われた時点で後ろへ大きく跳んで避けていたホークスを引き寄せることは出来たが、わざと無視して即座にスターに駆けながら跳ぶ。
空中で体勢を変え、足を突き出す。
受け止める気満々だったようだが俺の蹴りはスターには届かずに寸前で地面に吸われる。
「何を――まさか!?」
目眩しと衝撃波による妨害。
そして俺の体は一気に後ろへと引っ張られた。
気づいたスターが捲れあがった地面を殴り壊して駆けてくるが、無視して俺は振り返る。
猛スピードで接近する俺に対し、こちらに加速していたホークスが驚いたような反応を示していた。
しかしプロというのもあるのだろう。
すぐに羽根を飛ばしてきた。
上空に反応を作ることで瞬間移動。さらに瞬間移動前にいた位置に収束の反応を作る。
となれば、どうなるか。
「くっ、そういうことか! ホークス!!」
何個かは操作によって逸らされたが、引き寄せる力によって羽根がスターに襲いかかる。
両腕を交差して防御している。
時間稼ぎは十分。
「スターさんすんません! 最初から俺狙いってわけね、緑谷くん!」
「正解。褒美に旅行させてやる、雄英をな!」
「確かに俺は雄英生じゃないけど、今度ゆっくり見て回るから遠慮しとく!」
羽の力で急ブレーキしたホークスが空気を下方と後方に押し出すことで推進力を得ながら空中へと逃げるのを俺は高速移動で追いかける。
真っ直ぐ逃げていたら追いつかれると思ってるのだろう。
正解だ、視界上に建物があれば俺は使えない。ただ俺の防御を封じてる以上、スターに俺たちを追う力はない。つまりタイマン。
建物を利用するように逃げるホークスに俺は建物を蹴って加速しながら方向転換。
壁キックするようにジグザグに繰り返してバネのような感覚で加速しながら何も無いところでは自身を引き寄せて加速し、追いついて拳を振るう。それをホークスが羽根を飛ばして妨害してきたので避けてはまた拳を。剛翼を武器にしてガードしたホークスが建物に叩きつけられ、瞬時に迫った蹴りが避けられる。
それを幾度か繰り返すが攻撃は掠る程度で大打撃にはなっていない。こちらはダメージはない。
むしろ建物だけが崩れていく。
再び追いかけ、切断された建物にお兄ちゃんパワーの強化を乗せて破壊しながら足を突き出す。
寸前でホークスが大きく上下に旋回したために避けられるが、すぐに後を追う。
小さく圧縮することで威力ではなく物量だけのほぼハリボテ球体を放出していくが、上手いこと建物を盾にして避けている。掠ったら体勢が崩れると理解している。
――空中機動では向こうに分があるか。だが。
誰も自身から離れている空間は不可能だと言っていない。射線など必要ない。あくまで座標だ。
そういえばこの能力は使用してなかったな、と思い出した。
ビルに目を向けて高速で演算し、引き寄せる。
窓ガラスが割れる音。建物の損壊。
建物の中にはホークス。そして窓側には俺。
「ビル!? 厄介な……!」
「大人しくしといてくれ――No.3!」
確保テープ。
ルールが“捕縛”である以上、ホークスにそれを無視することは出来ない。
X字に2つのテープ。
最低出力の“弾く力”によって吹き飛ばすと、建物に備え付けられた部品共々放たれ、当然ホークスは敗北を防ぐために斬るだろう。
それを予測しておきながら俺は下の階に落ち、天井を破壊しながらホークスの足を掴んだ。
視線の先には体を後ろに向けていたホークス。予測通り。
首を下に動かして驚いたように俺を見ている。
俺が目眩しで背後を取ると判断していたのだろう。
一気に足を引っ張り、同じ空間へと引き込む。
「――なんて。既に位置は特定してるんでね!」
「悪いな、それは想定済みだ」
俺を囲むように向かってくる羽根の数々に対し、周囲を薙ぐように掻き消す。
剛翼を鋭利な形へと変えたホークスが突き刺そうとしてきて、拳にお兄ちゃんパワーを全集中。なおかつ蒼。
2つの力を流し込んで剛翼ごと腹部を打ち抜く。
「がぁっ……!? なんんんっ……っつー、い、威力……!」
咄嗟に羽で自分を抱きしめるように折り畳んで身を守ったようだが、腹部を押さえながらホークスは片膝を突いた。
その隙に強引に引っ付けた確保テープで体を包む。
「で、これで負けってことでいいんだな?」
「げほ、お、え゛っ゛……そ、そういう、こと……」
正確に鳩尾に打ち込んだからダメージはかなりのものだろう。致命傷にならないようにはしたが。
吐いてるので軽く背中をポンポンと叩く。
それから俺はホークスと共にその場から消える。
外に瞬間移動した結果、さっきの建物が削られていた。
まるで巨人に手刀でやられたかのようだ。
とんでもないことしてくるな、あの人。何気にホークスを巻き込まないギリギリの位置にしてるのは流石No.1といったところか。
――直撃したら俺死ぬのでは? 無個性状態にされて一発で俺の意識を持っていった技だぞ、あれ。威力というより質量の暴力だ。あの質量をもう1発は勘弁願いたい。
相手からしたら防御が回復してると思ってるから仕方ないか。
でもリカバリーガールが待機してるとはいえやりすぎだろ。
とにかくホークスを解放する。
既に負けという判定の以上、もしもの時はこの人が自由でなければ俺かスターの身が危ない。
本人もそれを理解してるのか腹を擦りながら壁を手で伝ってめちゃくちゃゆっくり移動していた。顔が真っ青だった。
ごめん、やりすぎた。
「残りはNo.1だけか」
その瞬間、一気に瓦礫が飛んできた。
出力を半分以上にし、吸い込んで適当な場所に放り捨てる。
場所を変えたお陰で戦いやすい地形。先までいたところはもうボコボコだし建物もなくなってしまったからな。
「――避けたってことは既に使えないってことか。これはしてやられたね。警戒しすぎたみたいだ」
「お互い様だろ。俺もしてやられたからな」
方向性は似ている。
出来ないと思わせていたスターと使えると思わせていた俺。
つまりはまあ、やり返し。
「俺はやられたことはやり返すタイプでな。そうしたら後腐れはないだろう?」
「ふっ、それは間違いないね」
思ったより消費している。
お兄ちゃんパワーも限界。回復はほぼ不可。個性の負荷を治すために脳くらいなら片手で数えられる程度は治せるか。
既に防御は回復して発動出来るようにはなっているが、こっちは負荷が大きすぎる。使えてもせいぜい1回だ。
それじゃ勝てない。他の分に残りの力を振り絞る。戦いにおいて、久しぶりに個性の限界が近い戦い。
面白くなってきた。
こっからは正真正銘の正面戦闘だ。
「最初に言っとく。もう防御は使わない。次で決着をつけてやるよ、
「受けて立ってやるよ、
原作
-
入る
-
もっとお兄ちゃん読みたい
-
作者の好きなようにやって欲しい