どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
だんだんと形態が戻っていくの滅茶苦茶好き(隙自語)。数年前に初見で見た時はカミナの兄貴が主人公と思ってました。
――ただ逃げて、逃げ回る。
個性が使用できない。
イレイザーヘッドの個性から逃れないと。
初撃で勝つことが出来なかった。
個性を封じられた状態でブラドキングと戦うのは分が悪い。戦ったけど返り討ちにあった。
既に体の節々も痛い。視野が血によって少し赤く染まっていて殴られた際に出た口回りの血を拭う。
イレイザーヘッドの視界から外れなければ俺は個性が使えない。住宅街だからこそ視界を封じれるが、逆に言えば逃げ道がなくなる可能性もある。
それに視界に映らないように動かないと。
建物の裏に隠れて息を整える。
止まった影響か汗が噴き出る。
頭の中はごちゃごちゃだった。
――どうやって、どうすれば。何をすれば。
ああダメだ、俺じゃ出来ない。
俺はミリオじゃない。俺は転間じゃない。あの二人ならこの状況下でもどうにかして攻略法を見つけたはずだ。
でも、無理だ、無理なんだ……。ダメなんだ。やっぱり俺じゃ勝つことなんて――そう、思ったとき。
俺の脳内に溢れ出した、
『そんなことないって。環が本当は明るくて面白くてすげえ強いんだって俺は知ってる! 間違いなく俺よりも才能もあるんだ! 俺を太陽だって言うけど、それならお前は
――ミリオの凄さは俺がよく知っていた。
小3の春、転校先で声をかけられて以来の付き合い。
いわゆる幼馴染だった。
難しい個性で、なのに出来なくても明るく前を向いて周りも笑顔にする、俺とは正反対な人物。
太陽のようなヒーローになれる、そんな人物だった。
『環、お前は強いよ。確かに今は俺の方が強いかもしれないが、お前ならいずれ俺に並び立てるヒーローになれる。それほど凄い才能を秘めてる。無論、ミリオにもな。だからこうして一緒に調べてるんだろ。心配すんなって、お前には俺やミリオやねじれ、甲矢――みんなが居るんだ。お前が自信がなくたって、自信が持てないなら俺たちがお前を肯定してやる』
――転間はいつも前に居た。
クラスメイトだけじゃなくて、学年の中で1番前に。
人を引っ張って、誰かに手を伸ばし続けていた。
誰よりも強くて誰よりも強くなろうとしている。だけど決して人を置いていくことはせずに、いつだってみんなを見ていた。
『だから――もしもの時はこのことを思い出すといいよ!』
『だから――もしもの時はこのことを思い出せ』
俺を雄英まで引っ張ってくれたのはミリオだ。
クラスが分かれて、ネガティブになる俺をいつも陽の当たる場所へと引っ張ってくれたのは転間だ。
俺にとって二人が“太陽”なんだ。
そうだ。
そうなんだ。太陽だけど、俺は決めたんだ。
置いていかれないように。超えられるように。
だから俺の名は――
『――個性の解釈ってのは拡大出来るもんだ。俺の力がそうであるように、誰だって出来る。理論上はな、難しいけど。でもまあ、強い想いさえあれば出来るんじゃないか? 俺はひたすら鍛えてやったけど、環の才能ならいつか出来るだろ』
転間が言っていた通りだ。
その通りに、個性を拡大しろ……!
今日食べた数じゃない!
今まで食べてきたもの全てをこの身に集約させろ! 俺の個性が“再現”であるなら
大量の鱗粉を撒いて目眩し。イレイザーヘッド対策に花粉。
「ブラド! 抹消を封じられている!」
「分かっている!」
建物から出た俺は巨大な砲台を作り出していた。鳥の目ならよく見える。二人は警戒して固まっているところを。
だからこそ作り、作り、作って作り上げる!
俺の全てを、ありったけを集約させた全部!
巨大な砲台。俺が食らってきたもの、植物や生物や果物。全部が重なった、俺の人生を体現した新しい力。
エネルギーは空気。
周囲に漂う空気を吸い込んで砲身内部に溜めていく。
「
圧縮空気を一気に解き放ち、視界を封じていた鱗粉や花粉があまりの風圧に全て吹き飛んでいた。
俺自身が押し負けないように背中からは翼があったり尾が地面に刺さっていたり足が刺さっていたりなどしているが、射線上の建物を倒壊させるほどの威力。
ブラドキングが血を固めて守っているが、一気に押し出す。
建物が崩れ、埃が舞う中で俺は一気に加速する。
ナマコを押し付けてゴーグルを覆うと首元にカジキの上顎を突きつける。
「これで……どうですか……」
「……参った。合格だ、天喰」
ブラドキングは完全に気絶していて、イレイザーヘッドだけが無事だった。
ブラドキングが全力で守ったからだ。ほんの僅かな時間でイレイザーヘッドは射線から逃れていたのを俺は見逃さなかった。
両手を挙げて降参を示すのを見た俺は再現したものを全て戻す。
そしてイレイザーヘッドは周囲を見渡すと、ゴーグルを降ろしながら視線を向けてきた。
「――まるでオールマイトが拳を振った際に残る跡みたいだな」
言われて見渡すと、射線上にあった建物が全て倒壊している。
――俺が、やったのか? まるで転間みたいに……。
それに今日食べてないものまで再現できた。今だってシャコを再現したりカジキを再現したり、過去に食べたものを再現出来るようになっている。
「どうやら一皮剥けたらしいな……全く、どこの問題児のせいなんだか」
転間。
ミリオ。
これで俺も、少しは追いつけたかな。待っててくれ……必ず俺は、追いつくから。隣に、並んで……必ず……。
安心したからか。
体から力が抜けて、意識が遠のいていく。
――次々と生み出されるコンクリートの壁を破壊しながら分身のエクトプラズム先生を波動で撃ち抜いたり手に纏わせて攻撃を逸らして反撃して、空中に逃げたらコンクリートの壁が迫ってくる。
両掌から波動を放って破壊した。
「もぉー!!」
キリがない。
絶対転間くんのせいっ! セメントス先生、去年の倍以上はコンクリート扱えるようになってて範囲広いもん! 強度もすっごく固いんだけど!
「セメントス先生強くなりすぎ!」
「ええ、波動さんや緑谷くんの“お陰で”散々鍛えられたからね」
「不思議! 私よりも転間くんの方が多いと思うな!」
「確かに彼は敷地内を吹き飛ばしてたね。ええ、雄英に就任して以来初めてだ、こんなにも学校で個性を使わされたのは……!!」
怒ってる?
さっきよりも範囲も広くて射程距離も伸びてる。
波動を足から出して加速して避けながら避けた先を狙ってくるエクトプラズム先生の分体を流して地面に投げる。
私の波動は活力が無くなれば使えなくなっちゃう。このままやり続けても負けるだけ。
――嫌だ。
負けることが嫌なわけじゃない。悔しいとは思う。でも次に勝てばいい。
そう思ってずっと努力してきた。
私が嫌なのは負けることじゃない。
置いていかれることなんだ。
転間くんはずっと前にいる。
私は彼と入試試験の会場が一緒だった。
不思議な子だと思った。
みんな緊張してるのに、転間くんは緊張なんかしてなくて自然体で、むしろ緊張して物を落としたり無くして慌ててる子を助けてあげたりしてて、その場の会場に居た人たちはみんな、口々に何をしに来たんだ、とかバカなのか、とか色々言ってたし本人の耳にも届いてたんだと思う。
でも彼は全く気にせずに、困ってる誰かを見たら放っておくことはしてなかった。
だけど私が話しかけたら。気になったことを言ったら。聞いたら。近づいたら。また同じことになる。
だから心を閉ざしていた。
自分の心を押し殺して我慢して、試験のことだけを集中するようにしてた。合格が決まってない以上、会えるかも分からなかったから。
私の個性は“なんでも出来る”から。試験は問題なかった。転間くんもスタートの合図が言われたタイミングで誰よりも先に動いて奥に行ったから問題なかったんだと思う。
そうして合格ラインのポイントを稼いだ後半。
0P、倒しても意味がない試験のロボットが出てきたって私には何の問題もなかった。
そう、“私は”。
パニックになって周囲が逃げて、私も倒す意味はないからわざわざ破壊しようなんて思わなかった。
でも――
『逃げないならその子のこと、頼めるか。問題ないと思うが何があるか分からない。連れて行ってやってくれ』
『……え?』
『――あいつは俺がスクラップにする。その子、足が瓦礫に挟まってたから動けないんだ。俺の個性は他者の怪我を治せない』
『……なんで。別に意味無いでしょ』
『意味無いって?』
『……ポイントにならないなら戦う必要なんてない。一緒に逃げれば?』
『あのな……ヒーローが逃げたら誰が戦うんだよ。じゃあお前、目の前に救える命があっても逃げるか? 大切な人が襲われたりしたら逃げるのか? あいつを放置してもし他の人が巻き込まれたら? そんなのを繰り返したら危険な目に遭う人が増えてただ後手に回るだけだろ』
『それは……』
言ってることは間違っていなかった。
試験である以上はあの巨大仮想ヴィランを倒す必要はない。確かに私も危ない子を助けるくらいはした。でもそれだけ。
わざわざポイントにならないロボを倒す必要はないと思ってた。
ヒーローが逃げれば市民は何も出来ない。ヒーローが勝てない相手に勝てる市民の方が少ない。それこそ、才能の差がない限り。
彼はこの試験を、本当の実戦だと思って動いていた。
――意識の差。受験だと思っていない。簡単なように見えてそれは、とっても難しいもの。
『その時逃げた自分をお前は一生後悔するぞ。勝てなくたっていい、ただその時の最適な行動は出来るだろ。時間稼ぎでもなんでもな。まぁ、あのロボには個人的な怨みがある。絶対負けないからその子を連れてとっとと行ってくれ』
『――』
こんな子も居るんだな、なんて場違いなことを思ってしまった。
他の人はみんな逃げた。
一目散に勝てないからって我先に逃げていた。
私がここに居るのは、逃げた人たちに巻き込まれないために一緒に逃げなかったから。
そっちの方が危ないと分かってたから。
『お前もヒーローになるために来たならそのための行動をしろ。俺たちがヒーローになったとして、怪我した誰かがヒーローであろうと守るべき人間に変わりは無いだろ?』
だけど彼だけは違った。
パニックになって倒れたり怪我した子を逃がしたりして、瓦礫に挟まっていた子すら見逃さなかった。
人を救う。当たり前の行動を当たり前のようにして。
その通りだと思ったから言われた通りに背負って連れて行ったけど、私は一人残した彼が気になってずっと見ていた。
見惚れてしまうくらいに綺麗な蒼の光。
ううん、見惚れていた。その力に。その姿を扱う彼の姿から目が離せなかった。
円を描くように生成したそれはとっても大きくて。
周囲のビルや残っていた小型の仮想ヴィランすら巻き込んで、
ロボによって覆われていた空が青い空を映し出す光景。
宙に浮かぶ彼の圧倒的な実力と、この場の誰よりもヒーローだった姿。
行動に力も伴っていて、決して無謀ではない行動。
その日の私の記憶には、その姿が深く焼き付いた。
それは受験が終わったあとも、家に帰ったあとも。
――彼の姿を忘れたことはなかった。会える日を楽しみにしてしまうくらいに。
その時から変わらない。
誰よりも前にいる。
前にいて、強くて。だけど隣には――誰も居ない。
後ろに人はたくさん居ても、彼の横には誰も居ない。それは彼が溺愛してる弟くんですら。
だって“守るべき存在”だから。
私も、天喰くんも、通形も、有弓も、同じ。
それじゃダメなの。
彼を独りにしたくない。
独りになる気持ちを知ってたから。みんな離れていったから。
でも転間くんは離れていかない。離れてはいかないけど、違う。
それは転間くんが優しくて人を思いやれる人だから。
甘えてばかりじゃそのうち独りにさせちゃう。本当の意味では、隣に居られない。孤立させられるような状況が“もしも”あったとき、誰が彼の傍に居られるのだろう。
だから私は強くならないといけない。
転間くんを独りにしたくないから。傍に居たいから。
――思い出す。思い出せ。
あの時の、体育祭の感覚。
いいの、私? 転間くんはこれからも強くなる。なのに置いていかれて、後ろに居て。ずっと近づけなくて。
嫌。
もっと傍に居たい。近づきたい。
大切な人だから? その気持ちも、ある。
精神的にも肉体的にも、私は近づきたい。
そのためにはこれくらい突破しなくちゃならないんだ。
――お前なら勝てるだろ。
転間くんの信頼。
不思議。本当にね、不思議なんだよ転間くん。
君にそう言われたら。そんな一言だけで私、頑張れちゃうの。たった一言なのに胸がね、きゅーってなるの。
転間くんが弟くんに応援されたら絶対に勝つ……なんて言ってたのはこういうことなのかな。
うん……勝たないとだよね。君に少しでも近づくなら。負けてられないもんね。
「手も足も使えるなら――こうも出来るってこと!」
自分の個性を、“波動”のイメージを固める。拡大していく。解釈を、こうやれるんだって。
足から放出するのではなく、全身に波動を纏うイメージ。
囲むように迫り来るコンクリートの波を高速で駆け抜けて避ける。弱いコンクリートの部分は私に触れることなく弾け飛んでいた。
スピードも防御力も引き上げた状態。
たくさんいるエクトプラズム先生の本物を見つけて撃ち抜くのは今の私じゃ不可能。
だったら。
もっともっともっと強い波動の力をより細かく正確に、より強く一気に放出する!
「
「コレハ……!」
全身に纏った波動が四方八方に拡散する。
指向性を持った波動は40人近くいるエクトプラズム先生に次々と直撃し、残る本体のエクトプラズム先生に向かっていく。
「壁を作って――!!」
「グゥッ……!?」
セメントス先生が守るようにコンクリートを作る。
けれどコンクリートを避けるように波動を操作した私の攻撃はエクトプラズム先生に直撃していた。
確認するまでもなく、動けないのが分かる。
威力も調整済み。
ただ。
――すっごい疲れる。それにそれぞれの操作をするのは頭も疲れる。転間くんの気持ちが分かった気がする。
糖分が欲しくなる……終わったら転間くんと食べに行こうかな。転間くんも個性の都合上、甘いの結構好きなんだよね。
食べたとき、ちょっと口角が上がってる姿。思い出すだけで微笑ましく感じる。
会いたいな。話したいな。もっと、もっと。近くに居たいな。ずっと――傍に。
不思議。
不思議。
力が出てくる。いっぱいいっぱい溢れてくる。
限界なのに、不思議だな。
「驚いた。こんなにも的確に個性を制御するなんて上手いという一言じゃ言い表せないな……。それも威力まである。トップヒーローでもこれほどの量と正確な操作をする人は見たことがない」
「ごめんね、先生。私追いつきたい人がいるの。すっごく遠くて前にいるから。だから限界を超えるよ。超え続けるよ」
「そうか……であるなら俺もこれに全ての力を注ぐ! 乗り越えられるかい!?」
セメントス先生が今までより遥かに大量のコンクリートを操作する。
地形がぐにゃりと歪んで、地面そのものが襲いかかってくるようにも感じる。
でもこれを破れないなら転間くんに攻撃を当てることすら出来ない。
転間くんは距離を操って無限に伸ばしてるからどんな攻撃も届く前に減速して力を失う。それは転間くんがたくさん勉強してたくさん個性を練習したから使えるようになった“最強”の防御技。唯一の弱点は、今となっては制限時間のみ。
だからそれを突破出来るような攻撃を考える。考える。考える。
全身の波動を両手脚に集約させていく。
普通の波動じゃダメ。
貫通力。速度。威力。継続力。――無限。
どれにおいても私の持つ技を全て上回る攻撃に。
イメージ。
イメージはドリル。そして転間くん。
巨大な、螺旋を描くような。
願いと希望。
転間くんを独りにしたくないという願い。彼の傍に居たいという希望。
二つの思いを二重螺旋に織り込むように、私の波動はどんな壁も貫く矛に!!
「
両腕両脚から放つ極限の回転を伴う巨大な波動をひとつにまとめて解き放つ。
ドリルのような回転力を誇るそれは何十層にも形成されたセメントス先生のコンクリートを止まることなく進み続ける。
そして最後の壁。
今までより強固に作り上げられたコンクリートに対して回転力を増し、摩擦によって起きた熱が溶かして貫く。
「俺の負け、か。見事……!」
セメントス先生に直撃する。
流石に危ないから直撃前、威力を極限まで減らしたから大丈夫だと思うけれど活力を限界まで使い切った私はゆっくりと地面に落ちていき、ぺたんと座り込んでしまう。
「転間くん……」
絶対。
絶対独りなんてしない。私は転間くんから離れないから。離さないから。君の隣に居られるようにこれからも強くなるから。
だから転間くんも試験、頑張って。
流石に……疲れちゃった。
――次元が違う戦いってこれを言うんだろうなぁ。
真下で繰り広げられる戦いを見て、俺はその感想しか出なかった。
用意されたはずのグラウンド∑。足場がもうほぼない。ボコボコ。
建物もほぼ崩壊していて解体後の土地のようになっている。
どうしよう、これ。あんなちゃんとしていたグラウンドの“グ”の文字もない。
敷地内から出てないのが唯一の救いか、それとも二人の意識の中にそれが残っているのか。
「水は噴射出来る!」
「チッ!!」
羽根のお陰で声は聞き取れる。
排水溝の水を円筒に纏めたスターさんから放たれた一撃は避けた緑谷くんの背後で残っていた建物を大きく貫通していた。
次に放たれたのは赤い光。
射線上に向けられていた瞬間には逃げてたから助かったけど、何もしてない俺が衝撃で弾かれて吹き飛ばされる。
羽を広げて何とか堪えて周りを見ると、また平坦になっていた。
――無茶苦茶すぎんだろ……!! というか巻き込まれただけで腕から血が流れたし、なんで戦ってない俺がボロボロにならなくちゃならないんですか!?
こんなのどう報告したらいいんだ……!
いやいや無理ですって。こんなの俺じゃ止められませんって! イレイザーヘッド呼ぶべきでしょここに!! なんで俺なんすか!? オールマイト呼べないんですか!?
互いの拳と移動だけで地上が地震でも起きたかのように揺れては地盤が崩れる。
なんだこの、世紀末。
ははは、夢だといいなあ。夢だと思いたいなあ、これ。
色々と処理が……うっ、治ったはずの痛みが再発してきた。
緑谷くんのあれ、やばかった。マジで吐くかと思ったというか吐いた。
胃も腹も痛い。泣きたくなってきた。
俺じゃなければ胃痛で倒れてると思うんすけど。
ゴーグルに付けられたサポート機能でスターさんが空気巨人を腕にだけ纏わせて殴ってるのが見えた。
緑谷くんは見えてないはずだけど、当たるギリギリで背中から倒れて避けている。
――なんで避けられるんだよ。怖いよ。
そして蒼い光が空気巨人を巻き込んで消し飛ばしていた。
光が消える。
――どんな火力してんだ。怖いよ。
崩壊してて地上と言っていいか怪しい地上の瓦礫に降り立った緑谷くんを追うようにスターさんも降り立つ。
互いに消耗しているのか息を切らしてるように見えた。
――いや、まず前提としてアメリカのNo.1と殴り合う生徒って何?
「く、そ……体力が……っ!!」
「おや……限界かな? というか、私としてはもう止まって欲しいのだけど……こっちは片腕使えなくなってるってのに。全く……君は不死身なのか、テンマミドリヤ。もう満足だろう?」
個性の限界なのかそれとも体力か。
緑谷くんが頭を抑えて膝を突いている。
……多分、両方。一方でスターさんは傷こそあるがまだ余力はある感じだ。
恐らく緑谷くんは個性を封じられた時の攻撃が効いているんだと思う。
――傷治ってるけど。
でも消耗はしていたはずだ。だとしても個性の扱い上手すぎない? 収束で無理矢理傷でも治したの? そんなこと出来るの、君?
「まだ……まだだっ! まだ終わってねーよ。最強を超えるから意味があるんだろうが! それまで止まるとでも思ってんのか!? 降参しようものなら俺があんたを殺すッ!! 逃げられると思うなよ! それともなんだ!? 俺に勝てないからって尻尾を撒いて逃げるわけじゃねぇよなァ!?」*1
立ち上がった緑谷くんは目がガン開きになっていて完全に興奮状態になっている。動けなくなるまで止まる気はないのだろう。というか、完全に正常じゃない。
「全力でッ! 殺す気でッ! 来いよ! No.1ッ!! 今は他のことなどどうだっていいだろうが! みんななりてえもんなるために本気でやってるッ! 全力を打ち砕いてこそ俺は自分の目標にたどり着ける! 俺があんたの最強を打ち砕く! 心配しなくても俺は死なねぇよ。だから――」*2
「全力でかかってこい!!!!」
「なんだかいい感じに言ってるけど全っ然いい感じの発言じゃないからなッ! というか、ずっと思っていたけどッ! さっきからテンションおかしくないか……!?」
「あ゛―――……? そうか? そうだな……そーかもなあ!!」*3
「正直怖いんだがな! 仕方ない……何を言っても止まらないんだろう!? 私が降参したところで間違いなく止まらないだろうね! だったら今日1日動けなくなる覚悟くらいしときな! 残る力全部使って、全力で行かせてもらうッ!」
だからかスターさんが再び空気巨人を作り出した。
それが地下に埋まっていた電線に触れる。
――いや、もう埋まってるってよりかはめちゃくちゃ剥き出しなんだけど。既にビリビリしてるし。
「電気は! 持てる!」
すると巨人の手には大量の電気が纏わりつく。
空気で見えなくても電気は見える。
緑谷くんが驚いたように目を見開いて、すぐに待ち望んでいたものを得られたかのように笑みを濃くしていた。
ちなみに俺も見開いていた。
というか俺は絶望していた。
――雄英停電してるのでは?
え、俺これの責任取らなくちゃならないの? マジで? というか、俺死なない? これ見てるだけでやばいよね? 巻き込まれるよね? 仮に生き残っても首飛ぶんじゃない?
……うん、まあ何とかなるか! 俺が楽観的で良かったと思うよ、あっははっは……。
――この先のこと考えたくねー。とにかく動けなくさせるレベルの火力で叩くみたいだし俺に出来ることはすぐにリカバリーガールの元に運ぶくらいか……。*4
原作
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入る
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もっとお兄ちゃん読みたい
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作者の好きなようにやって欲しい