どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
うーんこれは青春。
海行って林間合宿はカットして原作に必要なフラグ踏んで修羅場して必要なフラグ踏んで実質転間くん最終回のラストバトルで原作ですかね。文化祭はどうしようかな、原作に早く行くならやらない方がいいけど。
何はともあれ、あとはただ気持ち悪くて強くて弟のために何でもするお兄ちゃんが生まれるだけになるので、まだまともな転間くんを読めるうちに読んであげてください。
期末試験が終わっても学校が終わることはない。
今度は林間合宿が残っている。
夏休みも学校があるが、毎日あるわけではない。
というか学生で人間だからな。流石の雄英も休みをなしにはしていない。
そんなことしたらヒーローになる前に倒れる人間の方が多い。世間からバッシングを受けること間違いなしである。そもそもヒーロー目指してるのに体壊したら意味ないし体調悪い状態で訓練しても危ないだけで本末転倒。
というか改めて感じたのが治癒系の大切さ。
現代社会においても数が少なく、リカバリーガールの存在がどれだけ大きいのか。
怪我を負っていた人たちはほぼ皆完治しており、俺は自己治癒で既に回復済みだ。何やらお兄ちゃんパワーは想像以上よりも回復能力があるらしいしな。
血液も補填されるなら自爆特攻やれるのでは? やらないけど。
分かるのは俺の出久愛は留まることを知らないらしい。お兄ちゃんを極めるぞ!*1
「転間くん今日ね、水着買いに行くんだけど一緒に――」
「断る」
ねじれの誘いに即答だった。
いや、女子の水着を買いに行くとしよう。俺がついていくとしよう。周りは女性ばかり。恐らく男性は居ない。もし居ても本当に数えられる程度のはず。
その中で放置されるとかただの苛めでは? いたたまれなさすぎる。*2
「えー」
「他と行け、服屋ならまだしも水着とか死んでも行かないぞ。むしろ殺せ」
「むぅ……それは、や。でも確かに当日の方がいいかな。うん、楽しみにしててね」
「何を?」
そういえば俺も水着を買いに行かなくちゃならないか。といっても男性の水着ってどれもこれも似たようなもんだけど。
林間合宿が始まる前に行くことになったし、環とミリオを連れて一緒に買いに行こう。
林間合宿が地獄の個性訓練だとみんな知ってるからその前に高校生を満喫したいのだろうな。
ちなみに実技で普通に落ちたのは3組くらい。
座学は全員無事に赤点回避したようだ。よかったな、俺が難問押し付けることはなくなったぞ。
実技はまぁ、プロヒーロー相手だからな。しかも特にハンデとかないし。相性さもあるし。
いくら2対1でもキツイ。*3
授業を終えると荷物を持ってぶらぶらする。
今日は珍しく弁当。
普段は母さんの負担になるから作らないでいいと言っているのだが、たまにこうして作ってくれる時がある。その時はミリオやねじれたちに誘われても断っている。
俺が食堂で食べたら席が困る人が出てくるかもしれないからだ。あそこ人多いし。
今日はどこで食べようか。教室で食べてもよかったけどせっかくなら外の空気を吸いたかった。
期末試験は7月の上旬に毎年行われてるので、当然今の季節もすっかり夏だ。
環やねじれ、ミリオや甲矢やクラスメイト。
ほとんどのみんながそうだが、俺の制服も半袖になっており、暑いので日陰になるところで食べたいところ。個性発動すれば暑さもちょうどいいくらいに軽減出来るが、昼飯くらいは操作せず食べたい。
時折話し掛けられるので軽く手を振ったり一言返したりして歩いていると、人気の少ない場所に出た。
この辺りでいいだろう。
荷物を傍に置いたところで、ふと背後から何かの気配を感じた。
――不意打ちか? いや悪意も敵意も感じない。じゃあいいか。
問題ないと判断した俺は避けることもせず個性の発動もしないでいると、背中に重みが増す。
後ろから首に手を回され、柔らかい感触が背中から感じる。
完全におんぶみたいな形になっていたが、女子だということだけは分かった。
視線だけを向けると、水色の髪が見える。
見覚えがあるな。
確か……。
「泡原沫だっけ」
「ふふーんせいかぁい〜。前も言ったけどぉ、沫でいーよぉ?」
ひょこ、という文字が浮かんでそうな様子で顔を向けてくる。眠そうな目だが、時折泡のような瞳が見える。
伸び伸びとしている子だが、真綿と仲のいい生徒だったはずだ。彼女が楽しそうに話してたのは覚えてるし、初めて会った時や真綿の職場体験先を見つけるのを手伝う時に1年に行った時も結構グイグイ来てたから覚えている。
「そうか、じゃあ沫。急にどうした?」
「それはねぇ、たまたま先輩が見えてねぇ、いいん……じゃなくってぇ、綿ちゃんが一緒におべん――」
「わあああああ! そげん言わんでよか! ダメッ!!」
いつの間に来たのか、真綿が大声で叫んでたかと思えば物凄い速度で迫ってきた。両手にはリュックサックがあることから、自分と沫の物だろう。
しかし軽くビビる。
お前いつからそんな身体能力を手に入れた……? 見た感じ最後に会った時に比べても別に筋肉とかついてないぞ。いやよく見たら綿を発生させて加速してんなこいつ。職場体験と期末試験でまたレベルアップしてるらしい。
後輩までめちゃくちゃ成長してる件。
「せ、先輩。ごめんなさい、その、沫ちゃんが……」
「いやいいけど、よく俺ってわかったな」
「でしょぉ〜? 綿ちゃんがねぇ、すーぐ見つけてたよぉ?」
「沫ちゃん!?」
「そりゃすごいな。まぁ確かに結構この髪色は目立つか」
「そんなんやなくて……先輩を見間違えたりなんて絶対せんっちゃ……」
どうやら違ったらしい。緑ってのは雄英でも珍しいから目立つといえば目立つんだろうけど彼女にとっては関係なく俺を遠くから識別出来るようだ。
普通に聴こえてしまった。難聴じゃなくて申し訳ない。難聴だと社会人やっていけないんだ……。
まずい、吐きそう。
「そ、それよりっ! 沫ちゃん早く先輩から降りて! うらや――迷惑なるけん!」
「えぇ〜やだぁ。せんぱいの背中、がっちりしててぇ、すきぃ〜」
「もうっ! 我が儘言わない!」
人の背中でじゃれ合うのはやめて欲しい。
真綿が沫を引っ張って、沫が抵抗するように俺に強く抱きついてくる。
なんだこれ。
というか普通に暑い。そのうち汗搔くから離れた方がいいぞ。
「はぁ、はぁ……や、やっと……引き離せたばい……」
「むぅ〜」
沫が両手をばたばたと動かして俺に伸ばしてくるが、真綿が後ろから抱きしめていて離す気はないらしい。汗搔きつつ息切れを起こしてることから苦労が分かる。俺は下手に動く訳にはいかなかったし。
とりあえず、ここに居るってことは彼女たちも弁当を食べに来たんだろう。
自由がある間にレジャーシートを敷いた。
「そこで遊んでないで敷いたからそこ座れって。食べる時間なくなるぞ」
「え……いいの?」
「食べに来たんだろ?」
「わぁーい〜」
「もう、沫ちゃん……! えっと、じゃあ……その、ご相伴に与ります……」
真綿から抜け出した沫が靴を脱ぎ捨ててレジャーシートに座り込んだので、落ちる前に咄嗟に引き寄せて靴を傍に揃えて置く。
真綿は何故か敬語になってたものの、流石に3人も座れるほど広くないので、2人が座るのを見てから俺は地面に座った。*4
女子を地面に座らせる訳にはいかないし、俺は汚れても気にしない。
すると座った瞬間になんでか真綿が見つめてきたので見つめ返したら逸らされた。
用があるわけじゃないらしい。
「あ、相変わらず先輩は……」
「?」
相変わらずとは。
何が言いたいのか。
まぁいいか、と弁当を取り出すと二人も取り出していた。
ご飯とおかずが分かれた2段重ねになってる男の俺と違って彼女たちの弁当箱は小さい。
別に女性でも食べる人は多く食べるので、彼女たちはそこまで食べないだけなのだろう。
俺の部下はよく食べるみたいだったしな。度々思ってたより多く作りすぎたからと俺に渡してくることが結構あった。食べてくれなければ勿体ないけど捨てると、食べ物に同情させるためか、そう脅すように言われてしまったから食べることはあったが……味は美味かったな。*5
「せんぱいの、おっきい〜」
「男だからな。と言っても俺からしたらこれが普通なんだけど」
「先輩は手作り?」
「母さんが作ってくれた。俺は料理はからっきしだ。レシピ見ないと無理だな」
「そげんか……うん、もっとかんばろ……!」
「私はねぇ、私が作ったんだよぉ〜すごいでしょ〜?」
何を頑張るのだろう。
真綿は両手でガッツポーズを胸元*6で作っていたが、自慢するように沫が弁当箱を見せてくる。
性格から意外なことに、バランスも良いし弁当に対する入れ方というか見た目が綺麗だ。
こういったところは案外ちゃんとしてるらしい。
いや、もしかしたら本来はこんなにもちゃんとしてるからこそ、友人の真綿が近くに居る時は甘えてるのかもな。*7
「せんぱいにもお裾分けぇ〜。あ〜ん」
「いや沫の分が――むぐっ」
「へっ!?」
減るからいい、と遠慮する前に口に入れられてしまった。
仕方ないので箸が口から抜けたのを見てから咀嚼する。
だし巻き玉子。ちょっと甘めだが、焼き加減が絶妙だ。丁寧に巻けてることも食感から分かる。
料理上手いなこいつ。卵焼き系統って簡単そうに見えて難しいものなのだが。
「どぉ?」
「美味い」
「やったぁ〜!」
味レポは出来ないので素直に感想を述べたら小さな子供のように喜んでいた。
とりあえず貰った分は返さないといけない。貰ったの卵だし、ゆで卵でいいだろうか。
卵はこれしかない。
「ゆで卵でいいか?」
「いいの〜? じゃあ〜、あ〜ん」
両手をレジャーシートに着いて前のめりになると、顔を近づけて口を開けてきた。
そういう意味じゃなかったのだが、閉じる様子も離れる様子もないので滑らせて落ちる前に口の中に入れる。
小さくて入るか心配だったものの、まんまゆで卵じゃなくて切られてるから無事に入った。
体勢を戻した彼女はニコニコとした笑顔を浮かべている。
「おいひ〜。えへへぇ、せんぱいにあ〜んされたぁ。ちょっとぉ、恥ずかしいねぇ」
「沫、一応言っとくけど他の男性にはあまりこういうのはやらない方がいいぞ」
「大丈夫だよぉ? せんぱいだからかなぁ〜他のぉ、男の人にはねぇ……流石にぃ、しないもん〜」
それなら心配しなくていいか。いいのか?
多分俺は信頼出来る相手と彼女の中で決まってるのだろう。そもそも友人の真綿が関わってる先輩という立場なので、彼女にとっては十分信頼に値するのか。
「はっ……! せっ、先輩……私も、私のも、食べて欲しいばい!」
やけに静かだった真綿が急にそんなことを言い出した。
そんなおかず交換したいのだろうか。あまりその気持ちは分からないが、断るものでもないか、と頷くと早速と言わんばかりに箸で摘んで落とさないために手で受け皿を作って、こっちに伸ばしてきた。
「あ、あーん」
恥ずかしいならやらなくていいだろうに。
ただ待たせて落とす訳にはいかないので大人しく従う。
アスパラベーコン。
胡椒が辛すぎない程度にピリッとした旨味を出していてアスパラガスの甘みとベーコンの脂と塩気がちょうどいい。味付けはバター醤油だろうか。白米が大変進みそうな味付けだな。
「ど、どう……?」
「美味い」*8
「え、えへへ」
しかし代えのものがない。
適当に唐揚げを箸で摘むと、真綿も近づいてきて口を開けていた。
食べさせろという意味らしい。
大人しく従うと、真綿は口を手で隠すように押さえて俯いていた。
「お、美味しい……」
「そりゃどうも」
俺が作ったわけではないが、まあ母の料理が美味しいと言われたら悪い気はしない。わざわざ作ってくれたものだし、俺の好みの味付けにまでしてくれてるからな。
と言っても元々食にうるさくないのでこれといった要求はないのだが……出久が美味しそうにしてたら俺はなんでもいいぞ!!
「あはは〜綿ちゃん真っ赤ぁ〜えいえいー」
「いっ……言わんで!?」
頬を突く沫に真綿は俯いていた顔をあげて抗議の目を向けている。
仲睦まじいのはいいことだ。
微笑ましく感じる。
そう思ってたら、なんだか真綿が驚いたように俺を見つめていた。
「……先輩。なんか柔らかくなっとる?」
「急にホラーな話か……?」
「先輩はぁ、硬いよぉ? カチカチだしぃ、太くて、立派なぁ、男の人って感じぃ」
「確かに先輩は逞しいけど……そうやなくて、うーん」
「……なんだろうか、この会話を誰かに聴かれていたらまずい気がするのは」
普通の会話のはずなのだが、妙にとんでもない会話になってるような気がした。
しかし期末試験後というか、とんでもない戦いをした後なのもあって、後輩とこうして一緒に食べるのはねじれたちと過ごすのとはまた違う、あまりの平和さにちょっとリラックス出来た気がする。
弁当を片付けるとまだ昼の時間は全然残っていた。食堂は並ぶ必要あるけど弁当はないから、その差も大きいのだろう。
「せんぱぁ〜い」
「ん?」
「こっちきて〜?」
中身を突っ込んだら、手を急に引っ張られる。
弁当もないのでシートのギリギリに座る。靴は抜いだ。
「えいーっ」
「あっ、ちょ……っ」
そうしたら急に人の膝上に乗ってきたかと思えば背中に手を回されて、人の膝上でもぞもぞと動いてくる。
傍から見たら色々とやばい。俺は無になった。
そうしてると自分なりに座り方に満足したようで動くのを辞めた彼女はしがみつくようにして見つめてきた。
顔が近すぎる。なんで俺の周り、距離感バグってるやつしかいないんだ……?
俺の個性が誰も触れられないようにしてるのが逆に作用してるのか?
「寝てもいい〜?」
「まだ時間あるし問題ないんじゃないか?」
「やったぁー」
「せ……先輩にくっつくまでは必要なんかないっちゃろ? 膝枕とか私がするけん、こっちに……」
「やぁ。今はせんぱい独り占め〜」
顔を胸に埋めてきたかと思えばグリグリしてきた後にそのままゆっくりと落ちていった。
最終的に辿り着いたのは膝。うつ伏せからくるり、と反転して俺を見上げる形になっている。
いや使うのは俺の膝かよ。普通に寝るから起こしてということかと。
「撫でてぇ〜?」
人の手を取ってきたかと思えば沫の頭の上に置かれる。仕方がないので動かすと目を閉じていた。
本当に寝るつもりらしい。
「むふー」
「……むー……」
あっさりと眠りに落ちている。俺とは真逆のタイプらしい。すぐに寝れるのは普通に凄いと思う。
助けを求めるように真綿に目を向けると、彼女は頬を膨らませて、そそくさと近づいてきた。
伝わったのだろう。助けてくれ……なかった。
何故か左腕を抱きしめるようにして肩を寄せてくる。
なんだこの状況。流石に暑い。しかも沫は気持ち良さそうに寝てて、真綿は喋ることなく、くっついてくるだけ。
こんな気持ち良さそうに眠られると流石の俺も起こすことへの罪悪感が半端ない。
……会話しないとやってられないな。
期末試験の話でも聞こう。
「そういえば期末試験は大丈夫だったのか? こいつも」
「あ、うん。試験はなんともなかったばい。沫ちゃんも。……そういや先輩、ばり大怪我しとったって聞いたけど、大丈夫たい?」
「怪我はもう治ってるから大丈夫だ」
「よかった……。先輩がそげん怪我するなんて……そんな手強い相手やったと?」
「相手は……話せないが、プロヒーローが相手だったからな。しかも俺と2人、それに別クラスの1人は単独で2対1。他はハンデなしで生徒2人の教師1人だったな。1年はロボじゃないのか? 去年はそうだったはずだが」
「そんな試験やったん!? えっと、私はハンデありで先生が相手やったとよ? 倒せなくてもゲート潜ったら……って感じやったばい。優勝した私と2位と3位の人を除いて他の子はロボだったけど……沫ちゃんも私と一緒」
沫は3位なんだったか。3位は2人いる。
まぁ泡生成ってことは泡の弾ける力で高速移動出来るし相手を拘束出来るし、相手に与えたりとか、元は石鹸だから滑らせたりとか出来そうだし、使い方次第でクソ強い個性だ。そこまでは使えてないみたいだが……それでも泡の物量の暴力は出来るだろうし、鍛えたら強くなれるだろう。
しかし去年と違って体育祭の上位者は教師たちが相手になることになったのか。
俺たちが1年の頃にロボをぶっ壊しすぎた影響だろうか。主に俺が。次点でねじれ。
予算の削れ方がやばいのかもしれない。一体誰のせいなんだ。*9
だがロボを許せないのは仕方がないだろう。
この世界のことじゃないとはいえ出久の腕と脚を怪我させた*10やつだぞ?
そりゃあお兄ちゃんとしてはぶっ飛ばすしかないだろ。未だに許さんぞ。
「でもちゃんと突破したばい、大丈夫っちゃ!」
「そうか、それはよく頑張ったな」
「あ……えへへ」
空いている右手を動かして労わるように頭をぽんぽんと叩く。
嫌じゃなかったようで、普通に受け入れてくれていた。
やってからやらない方が良かったのでは、と思ったが……反応から考えたら問題ないらしい。
危うく除籍になってそのまんま刑務所に収容されるところだった。
いや俺の場合タルタロスかも。
仮に収容されたとて、出久の危機にはタルタロスだろうが脱走して向かうが。
「でもね、先輩。私、もっと強くなりたいばい……。だ、だから、あの……また見てくれん? ちょっとでも先輩に近づきたくて……」
何処か緊張を宿しつつ、真剣な顔で言ってきた。
今の真綿は間違いなく1年の中ではトップクラスだし既にプロヒーローレベルだろう。というか今のプロヒーローより世代的にも個性が強いしな。
はっきり言って俺たちに追いつく必要はない。いずれ強くなれるだろう。
「強くなりたい気持ちは否定しないが、何か急ぎで強くなりたい理由があるのか? 無理する必要はないだろ? ゆっくりと、無茶をしない程度に強くなるのもお前のためになることだ」
「ううん、無理してでも強くならんとダメな理由があるけん」
どうやら本気らしい。
俺の今の実力を考えると、頼るのは理解出来てしまう。
推定No.1ヒーローレベルだし。流石の俺もあそこまで戦えてしまったら自分はオールマイトより弱い……なんて思えないわけで。
それでも油断も慢心もするつもりはないけど。相性によってはスターのように大打撃を受ける可能性だってあるし。
流石にあんな無法な個性が世の中に溢れてると思いたくないけど、空間に作用されたら結局防御は削られるか無効化されるだろう。
「そこまでの理由、か」
「うん……その、先輩には恥ずかしくて……話せんけど」
僅かに目を逸らしたかと思えば、抱かれている腕に力が入れられた気がした。
しかしすぐに向けられた瞳は不安に揺れつつも確かな熱がある。
別にそこまで聞こうとは思っていない。俺が出久のために強くなりたいように、人にはそれぞれ強くなりたい理由がある。
「まぁ時間ある時ならいいぞ」
「ほ、本当?」
「お互いの予定が空いてたらな」
「やった……約束やけん、忘れたら先輩にイタズラするっちゃ、覚悟しといてね?」
「それは怖いな、約束である以上は守るから心配すんな」
「うん……先輩がそういう人だってよく知ってるばい。先輩ん横に立てるくらい、強くなるから」
「そうか。それは期待しとく」
「……え?」
「なんだその反応」
「う、ううん。まさかそんなん言われるとは思っとらんくて……ドキッとしたというか……せ、先輩はやっぱりずるい! 不意打ちばかりで……っ。もう……!」
真綿の才能は俺が1番理解している……つもりだ。
たったの1週間であれほど練度を高めてたし、根を上げることなく努力し続けていた。天才ってわけではないが、努力が出来る。それだけで十分だろう。もしサボるような相手だったならば、俺はここまで面倒を見ない。
そんな相手なのだから期待してるという本音を言って何が悪いのだろうか。
「そっ……そういえば、先輩のヒーロー名って聞いてもええと?」
話を変えてきた。
確かに教えてなかったか。わざわざ学校で自分から名乗るものじゃないしな。
「“オリジン”。つまりはまあ、原点ってことだな」
「……弟さん?」
「……なんで分かった?」
「ふえっ、あっ、いや。せ、先輩ならそうかなあって!」
何故か真綿が顔を赤くしていたが、俺は改めてお兄ちゃん力が高まってるのだと実感した。
良いことだな!*11
俺のヒーロー名は出久のことを考えて付けたしな。だってお兄ちゃんにしたら拒否されたし。
「真綿は……時期的にもう決めたんだろ?」
「うん……えっと、“フラッフィー”って名前にしたばい」
「なんというか、ミ〇フィーみたいで可愛らしい名前だな。意味的にも真綿らしくていいと思うぞ」
「え、あっ、か、かわっ、ぇっ……!? せ、先輩が……っ」
「……お前、本当に大丈夫か? 名は体を表すって言うだろ?」
なんだろうか、そう、お湯が沸騰するイメージ的な感じで真綿の顔が真っ赤になっている。
流石にここまで赤いとなると熱があるのでは、と思って自分の額に触れながら彼女の額に触れる……が、熱はなさそうだった。
「っ〜!!」
ばっ、と勢いよく俯かれたので、額に当ててた手が空気に触れる。
熱がないなら大丈夫だろうと手持ち無沙汰になった手を降ろしたが、相変わらず腕は俺に巻き付けたままなので、空いてる手で胸に手を当てて深呼吸してるのが見えた。
とりあえず伝えきれてないから伝えよう。
「まぁ、なんだ。人気が出そうな名前でもあるしな」
「そ、そう、かな。私も、その好きやけん……」
「ああ。好きなものを名前にするのもいいことだ、モチベにもなる」
英語の“Fluffy”。
ふわふわしたような、綿毛のような、柔らかい。
つまりはふわふわ、もこもこ、とかだ。
そういった意味がある。
ふわふわしたものはいい。心地良いし、俺も好きではある。主にイレ先とマイク先生と一緒に猫カフェに入り浸っていたせいで。
ボウリングとかカラオケとか、そういったところも行くけど。
「んーっ、ふわぁ〜」
突如欠伸が聴こえた。どうやらお目覚めのようだ。
やっと膝が空きそうだ。そろそろ痺れそう。
「……何の話ぃ?」
「あ……沫ちゃん、起きたんだ」
「うん〜お目覚め〜。ねー何の話してたのぉ?」
「ヒーロー名。俺がオリジンで、真綿がフラッフィーって互いに話し合ってな」
「そっかぁ、オリジン、オリジンかぁ。かっこいいねぇ。私はぁ、シャボンだよぉ〜」
「なんかイメージ通りだな。分かりやすくていい」
「褒められちゃったぁ」
しょぼしょぼの目を擦りながら嬉しそうに笑っている。
彼女の場合は個性もそうだし、現場においてはやりやすいだろう。
「せんぱいのお陰でぇ、よく眠れたぁ」
「それはよかったな」
数十分程度だが、安眠出来たのだろう。
実際寝息は小さかったから気にならなかったけど、沫がゆっくりとした動作で背中を起こしたため、俺の膝がようやく解放された。
「じゃあ、次は綿ちゃんねぇ〜」
「え?」
「……ん?」
大きな泡を生み出した*12かと思えば、真綿を包み込むとゆっくりと倒すように降ろしていた。
そこで泡が解かれ、俺の膝に真綿の頭が乗せられていた。
「……えっ、あっ、なん……っ」
理解が追いつかないのか、俺の膝上で瞬きしている。
「あ、あああ沫ちゃん!?」
悲報。俺の膝は解放されなかった。
というか、今見た沫の個性制御、俺から見てもかなりのものだぞ。1つの制御技術だけなら2年でも通じるレベルだ。それも集中しまくってるわけでもなく余力を残しまくっている。日常的にやる感覚、というべきか。
包み込まれた真綿は特に濡れてすらないし。
あとは個数を増やしたり、並行して扱えるようになったり動きながら集中力を保てるようなら、まず間違いなく真綿と同じレベルに到達するだろう。
つまりプロヒーローレベル。
「綿ちゃんにもねぇ、せんぱいの膝枕の良さ、分かって欲しいなぁ〜」
「俺の膝、枕じゃないからな?」
「ん〜でもぉ、それくらいよかったよぉ? 安定感があってぇ、ガッチリしてるというかぁ……それとも〜私は良くてぇ、綿ちゃんにはダメな理由、あるの〜?」
「そういうのはないが……まあいいや」
「先輩!?」
もう膝はダメだろう、俺は大人しく諦めた。さようなら俺の膝。今度はもっと強く生まれ変わるんだぞ。
それはそうと沫って案外頭回るんだな、と失礼なことを思ってしまった。
全体的にこう、掴みどころがないというか……本当にシャボン玉みたいというか。
ぶっちゃけ頭良さそうには見えないわけで。
「綿ちゃんは、嫌ぁ?」
「い、嫌じゃなか。でも唐突過ぎてちょっと心の準備が……!」
「はぁーい。せんぱいの手は、ここぉ〜」
「沫ちゃん!? 私の話聞いとると!?」
諦めた俺は特に抵抗せず、沫が勝手に動かして真綿の頭を撫でるように俺の手を動かしていた。
介護されてる気分。されたことないけど。
満足したのかニコニコとした笑顔の沫は俺の腕から手を離して、俺の肩に背中からもたれかかってくる。
寝るらしい。まだ寝るのか……。
呑気というか。
やはり1年はすごいな。彼女は特に。自由すぎる。
結局、休み時間ギリギリまで膝枕してたせいで痺れたのでダウンした。
沫が面白いとか言いながら痺れた足を突ついてきたのでお兄ちゃんパワーで治したあとお仕置きをしてから、瞬間移動を利用して二人を間に合わせた。
予鈴だから問題なく、午後の授業は受けられたけど。
――昼休みの短い時間なのに、今日1日分一緒に過ごしたような気持ちになっていた。
心がぽかぽかしてるというか、ぼうっとしちゃうというか。
お陰で私は午後の座学が全く頭に入ってなく、HRですら体だけが無意識に習慣をこなしてただけに感じる。
少なくとも気が付けば放課後になっていた。
――いやだって、好きな人にあんなんされて冷静に振る舞うんとか無理に決まっとるやん……?
というか先輩、職場体験前に会った時に比べて雰囲気が優しくなっとったいうか、前も優しかったっちゃけど、そういうんやなくてなんかふわっと柔らかくなっとうたっていうか、私に対してもその、ヒーロー名とはいえ『可愛い』って言ってきたわけで、そんなのずるいっちゃ……!
そもそも沫ちゃんが私の心ば乱してきたのもあるっちゃけど、原因はやっぱり先輩なんやもん。
いや膝枕してくれたんはめっちゃ嬉しいし、私も自分からくっついとったわけやけど……!
あ、汗とか大丈夫やったかなぁ……今更なのにばり気になってきてしもうた……!
わ、我ながら自分でもちょろすぎるっちゃけど、思い出すだけで胸がきゅんって……ドキドキが止まらんやん……。膝枕まで受け入れてくれて……ばり心が乱されとるけん。
と、とにかく先輩はやっぱりずるいばい……!
私たちが座っても汚れんように、自然とレジャーシートの上に誘導してくれて、自分は外に座って気遣ってくれとったし……! 気遣い細かすぎて、ほんま、ほんまそういうところが……っ!!
「いいんちょ〜?」
「うひゃあ!?」
「わ〜!?」
「な、何!? 何も言ってなかよ!? せ、先輩のことを考えてたわけじゃ……!」
「ふええ? 何も言ってないよぉ?」
「……あっ」
どうやら沫ちゃんが声を掛けてきただけみたいで、自ら自滅したことに気づいて、思わず机に伏する。
おかしい、最近の私は自分でもおかしい。
ヒーローになるために雄英に入ったのに……。
いや、ほんま……先輩が悪いと思うばい……。
「せんぱいのこと、考えてたのぉ?」
「……聞かんで」
多分、耳まで赤くなってる気がした。
こんなに恋愛脳になったんは、いつからやったろうか。
最初はただからかうつもりやったばい、あの1週間で先輩の心に触れて、気が付けばばり惹かれとったっちゃ。
多分、完全に持ってかれたんはあん時のデート……よね。
でも……私、まだ弱かよ。先輩の隣に居られん。
もっと強くなって、先輩とちゃんと並べるくらいになりたいんよ。
守られるんばかりは嫌やから。
確かに乙女心として嬉しか。
やけど……ほんまは先輩と対等になりたい。まだ弱い私やけど、隣に立てるくらい強くなりたくて。
それまで気持ちば仕舞っとかなきゃ。
……続くと仕舞えんかも。あ、溢れてないっちゃろうか……!
そう煩悩と脳内会議してると、ふと1-Aが騒がしくなってる気がした。
委員長としての意識へと切り替わり、顔を上げた。
すると。
「……え?」
「ん〜人、たくさ〜ん」
そう、沫ちゃんの言ってた通り教室の外が凄い人数になってる。
見たことない人たちばかり。
多分、上の学年の人達……やろうか。
「ふっ、どうやら僕の魅力に充てられたらしいね……」
「いや違うでしょ」
とにかくこのまま居ても状況は変わらないため、私は席を立って近づくと声が聞こえてくる。
「おい誰だ?」
「二人だって。絶対どっちかだと思うぞ」
「ふわふわしてそうな子だった」
「もうちょっとちゃんとした情報ないのかよ」
「役立たずめ」
「特徴的にあの子じゃない?」
「というか人多すぎでしょ」
「いや是非ともアドバイスしないと」
「あのバカを止めてくれるなら願ってもない話だろ」
「波動さんでも無理な時点であいつだけ1人に向ける愛情がデカすぎるんよ」
「つまりもう一人強力な仲間が必要だ……!」
「あのラスボスを止めるにはそれしかない……!」
――なんか、ゲームみたいな話しとるんやけど。
波動さんって、波動先輩、かな?
噂には聞いとるし、去年の体育祭を見たけど、綺麗な人やった。先輩と戦えてた人。
何か関係あるんかな。
……ちょっと、チクッとした。
「あの……どげんしました? 誰か探しとるなら呼んできますけど……」
とにかく誰かが動かないと変わらないため、委員長として私は先輩方と思わしき人達に声を掛けた。
「あー、いやそういうんじゃなくてだな」
「人多いのは申し訳ないというか、ここまで集まるはずなかったんだ」
「……ん? というか博多弁?」
「あれ、この子じゃね?」
「あー! だと思うわ!」
「もう一人居たけど、特徴的にこの子だよな」
「……あ。その子! 体育祭前に居た子その子だ!!」
「この子が噂の……!」
私? 噂?
一体どういう――
「えー、緑谷と弁当食べてた女子って君かな?」
「へぁ……っ!? え、ど、どうして……」
「この反応間違いない……」
『『『この子かぁ!!』』』
急に先輩の名前が出てきて思わず吃驚すると、声がハモっていた。
男子生徒を押しのけるように、女の人に囲まれる。
「わーすごい可愛い子!」
「え、緑谷こんな子に近寄られて全然平気なん?」
「わ、ギャルっぽい〜」
「へえ、目尻は地雷メイク系なんだ」
「目、すごい綺麗ね!」
「耳元の綿もチャームポイントかも」
「え、あ、あのっ!?」
まるで観察するかのようにじろじろとした目を向けられたかと思えば、突然抱きしめられたり撫でられたりと、意味が分からなくてどうしていいか分からなくなる。
な、何この人たち!?
「あいつやっぱバケモノだろ」
「あいつの理性どうなってんだよ」
「流石究極のブラコンだ」
「こんな美少女に言い寄られても全く靡かないだと……?」
「いやまあ、波動さんにあんなグイグイ来られても平常心保ってるやつだからな……」
「ちょっとみんな落ち着いて! ほら早く離して!」
「あっ、ごめんね、可愛くてつい」
「い、いえ……」
やっと解放され、乱れた髪の毛を整えていると、申し訳なさそうな表情を浮かべながら止めてくれた人が前に出てきた。
「ごめんね、この場のみんな貴女のこと気になってたから。えーと……差し支えなければ名前教えてもらってもいい?」
「私、ですか……? えっと、不和真綿です……」
「へえー可愛い名前!」
名前を褒められるのは悪い気はしないけど、それよりも私のことを知っていたと言うような発言が気になる。
「あの、それで一体私に何の用が……」
「ああ、ごめんね! 警戒しないでね。不和ちゃんでいいかな、ひとつ言わせて欲しいの」
周りが静まり、空気が少し重たくなった気がした。
あれだけ騒がしかったのに静まり、まるで嵐の前の静けさのような。
一体何を言われるのかと思わず身構えるほどで、息を呑む――
「……緑谷くん。難易度高いけどめちゃくちゃ頑張って!!」
「……へっ!?」
その瞬間、私の頭は理解することに遅れが生じた。
なんで先輩が。
頑張ってってどういう。
「いやもう本当に応援してるから!」
「とにかくグイグイ行くべきだと思う!」
「緑谷くんのこと受け入れられるってことはそういうことなんでしょ!?」
「あのブラコンっぷりを前にしても諦めないなんてすごいわ!」
「うんうん」
「な、なんで……そのこと……」
普通知り得ないことのはずで、まるで私が先輩がブラコンだと知っててなお受け入れてることを知られてるかのようだった。
それも、好意を抱いてることも。
「いや緑谷が体育祭で君のこと話してて」
「正確には名前とかは不明だったし1年生ってことしか聞いてないんだけどな」
「ただ美少女ということといい雰囲気になってた1年がいたという噂があって」
「そうしたら体育祭で優勝した子だって広まって、弁当を一緒に食べてたって今日話題になってさ」
「そうそう、弁当を一緒に食べてたのが見た生徒がうちのクラスに居てな。あの1年のうちのどっちか二人じゃね? ってなったわけ」
「それで気になったんだよ。あの緑谷が押されるほどの1年がどんな人物なのかって。期末試験も終わってピリピリした空気がなくなってるのもあったからな。ぶり返しってわけだ」
「せ、先輩ぃ〜!?」
話した!?
話したの!? 私のこと!? え、体育祭で!? というか弁当食べてたところ見られてたの!? も、もしかしてあーんしてたところとか……。
それにバレとる!? もしかして私の気持ちってそんなにバレとると!?
明らかに私の気持ちがバレてそうなことに、思わず顔が真っ赤に染まっていく。
「ああ、その反応はやっぱり……」
「……まあ緑谷くん普通にしてたらイケメンだし」
「あ、大丈夫よ。緑谷くんは気づいてないから。いやそこは問題だけど」
「……え、可愛すぎない?」
「波動さんとはまた違った良さ……これなら波動さんとこの子にアタックさせまくってたらいける……?」
「あ、ちなみに緑谷なら多分まだ向こう辺にいるぞ」
「なんかうきうきだったな」
「なんだって弟に夏休みの予定を聞いて出掛ける日を決めるんだとかほざいてた」
「ブレないのすげーわ」
「っ……! あ、あの、ごめんなさいっ!!」
流石に文句の一言は言いたかった。
ひ、人の気持ちを知らず……!
逃げるように教室の中に戻ると、私は急いで窓の方を見た。
下には人の苦労も気も知らず、妙に足取り軽く歩いている先輩。
――なんか可愛いかも。やなくて!! もう! もう、私のバカ! そうやないやろ!?
「先輩!!」
大声で呼びかけると、先輩は周囲を見たあと、私に気づいたみたいだった。
私は話しかけてくるクラスメイトたちに断りを入れつつ、自分の席に戻ってカバンを手に取ると窓側に行き、足を上げて窓に足をかける。
「え、ちょ、ちょちょっと待って。不和ちゃん!?」
「危ないよ!?」
「待て待て!」
「飛び降りる気か!? それは緑谷だけの専売特許だぞ!?」
急いで教室に入ってきて制止してくるような先輩方の声を無視して私は飛び降りた。
「うっそぉ……」
「……いや想像の斜め上だったわ」
「見た目に反して噂通り強いわ」
「思ってたよりアクティブつーか……ああ、確かにこれなら緑谷が押されてたって噂も本当かもしれん」
そのまま落ちたら怪我するため、途中で足元から綿を生成してクッションのように小さく展開すると衝撃を殺して次々と踏むように空中から降りていくと、先輩の目の前に着地した。
ハッ、としてスカートを押さえる。
「み、見た……?」
「……ノーコメントで」
「っ〜!?」
目を逸らしてそう答える先輩だけど、それはもう答えを言ってるようなもので。
普通の下着だけど、気になる人に見られたという事実に強い羞恥心が生まれる。
でもこれは私が原因なわけで。先輩を責める権利は、このことはない。
でも……ちょっとは意識しとる……? 前に比べて柔らかくなってる、から?
だっ、だったら見られても……い、いや無理! 恥ずかしか!!
「あー……うん。そうだ、真綿。お前、窓から飛び降りるのはダメだぞ?」
「せっ、先輩だけには言われたくないっちゃけど!?」
「それもそうか。で、お前らは何してんだよ」
話を変えるためか、先輩がさっきまで居た、私のクラスを見上げるとそこには先輩方がこちらを見下ろしていた。
自然と、それはもう自然と私を庇うように先輩は腕伸ばして私を後ろにすると、何処か呆れたような目を向けている。
――そう、いうとこっ……!! 先輩は、もう! もう……文句言う気持ちなんて消えるたい……!
「えっ、い、いやぁー気にすんなってー!」
「そ、そうそう! 別に緑谷が体育祭で話してた子が気になったとかそんなんじゃないからな!」
「……なるほど、間抜けは見つかったようだな。お前ら後輩の1年に迷惑掛けるなよ。殴られたいか?」
「緑谷が常識人っぽいこと言ってる!!」
「それはごめん! でもお前も原因のひとりだからな!」
「は?」
先輩からしたらきっと、意味分からないんだと思う。
本気で理解してなさそうな様子だった。
「よく分からんが……悪いな真綿。2年が迷惑を掛けたらしい。後であいつらはぶん殴っとく」
「そ、そこまではせんでも……」
「あいつらはそのくらいがちょうどいいんだ。で、怪我とかはないか?」
純粋に心配してくれる先輩に心が温まる。こくり、と私が頷くと無音の空間が出来上がったからか、ふと教室が騒がしくなっていた。
「――おい、お前らうちのクラスで何してる?」
「――やべ! イレ先だ! 解散解散!」
「なんでもないっす!」
「い、イレ先も元気そうで」
「ごめんなさーい!!」
どうやらイレ先が戻ってきたらしい。
多分だけど、騒がしくなってたのと誰かが先生を呼んだんだと思う。
「あれは、自業自得だな……」
先輩も察したのかフォローする気はないようだった。
――同級生相手ならこんな感じなんやね。壁とか全然ないっていうか、ありのままっていうか……また新しい一面見れて、そのことが嬉しくて口角が上がる。
「……何の騒ぎかと思えば不和? いや、不和が原因じゃないか。ということは……やはりお前か緑谷!!」
「ちょっと待てイレ先! それは誤解だ!!」
窓際に居たのもあり、窓を覗き込んだイレ先に先輩は弁解していた。
事実、今回先輩は何もしていない。
「詳しい話は職員室で聞く! 起きた事柄を全部話せ。お前が騒ぎの中心なんだってな?」
「いや誤解ですって! 俺が信用出来ないんですか!?」
「今までやったことを思い返しても言えるのか?」
「…………よし逃げるぞ真綿!」
「先輩!?」
そこは話術で何とかするところなんじゃ……と思ったところで、そういえば先輩って問題児と言われてたことを思い出す。
説得力が、ない……!
でも逆に言えば、それは先輩の行動が周りは巻き込んで、騒がしくて毎日が“青春”だと言えるような空気感を作り出してるとも言えるわけで。
忙しくて大変なヒーロー科でもここまで笑顔が溢れてるのは、先輩のお陰な部分もあるんやと思う。
「捕まったら地獄だ! おい真綿、一緒に……って走ったら置いていってしまうか。仕方ない……!!」
そうこうしてるうちに、イレ先が飛び降りてきた。
――私もそうだけど、飛び降りるのって流行ってるんかな。
なんだかついていけなくて、変なことを考えていたら体が突如浮遊感を覚えた。
「きゃっ……!?」
――あ、やばいかも。
先輩にお姫様抱っこされてることに、気づいた。
気づいた途端、心臓の鼓動が突如早まる。
「緑谷、逃げるってことは認めることになるぞ。大人しく話せ」
「くそ、理不尽すぎる!嫌だ、俺はすぐに帰ると決めてるんだ!! あいつら覚えとけよ! 俺に罪を擦り付けやがって!! しっかり掴まってろ!」
「は、はい……」
同級生に文句を言ってる先輩やけど、先輩に包まれた私は余裕がなくなった。
今回は私がぼうってしてたのもあってかスカートを押さえるように抱えられてるから、スカートの心配もなくて。
先輩には申し訳ないとは思うけど、役得……と思ってしまっていた。
「――今走っていったのってイレイザーヘッドと転間くん? それに抱えられてたあの子って、前見た子と同じ子……だよね?」
原作
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入る
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もっとお兄ちゃん読みたい
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作者の好きなようにやって欲しい