どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!!   作:俺もお兄ちゃんだぞ!!

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この話は最初から考えてたからやっと辿り着いた感ありますね。
原作の展開は物語が長くなるようにちょっと考えてるけど、どう足掻いてもオリジナル話になりますね、いいかな、いいか。
とりあえずは原作に関わってくる重要ポイントその①になります。②と③が一番関わってくるとは思いますが。









海へ

 

 

クラスメイトたちをぶん殴ったりイレ先に叱られたりとして結局聞く時間がなく待ちに待った夏休み。

故に出久との時間を過ごせると思って予定を聞いたのだが――。

 

「……I・アイランド?」

「えっと……なんというか、僕に個性を教えてくれてる人がね、知り合いがそこに居るから息抜きにどうかって話になって。だから2日くらい家を離れることになっちゃって……」

「なるほど……」

 

どうやら出久はオールマイトと共にI・アイランドに行くことになったらしい。

確か世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市……だったか。俺はサポートアイテムを作ることはあっても使わない人だから行ったことない。

今の俺だと赫と必殺技は全く使わないが、使わなくても蒼が強力だし、お兄ちゃんパワーで出力上げられるしな。ぶっちゃけ俺の体に耐えられずにサポートアイテムの方が先に壊れる。むしろ邪魔になる。あくまで俺のコスチュームは耐久性があるだけの服なのだ。

いや俺のことはどうだっていい。

だが。

だが!!

 

 

 

 

 

 

 

また貴様かオールマイトォ!!!!

 

 

出久と過ごせる貴重な夏休みを!! 雄英の夏休みは一般高より遥かに少ないというのに!! 悉く妨害しやがって! なんだお前は!!

やはり許せん……!! 覚えてろよッ!! お前は俺の獲物だ! ヴィランじゃない! 俺だッ!! 誰にもやらせるか……ッ!! それまで誰にもお前は殺させないからなテメェ!!*1

――もうオールマイトに対する憎しみが日々増えてきてるせいで天元突破して個性が極限進化するかもしれない。

これ、俺が4歳の頃から抱いてる感情。もう今年で12年間だしあと数ヶ月もすれば誕生日。つまり誕生日を迎えれば決意して13年になるわけだ。溜めすぎてやばい。

 

「ごめんね……転間兄ちゃんと過ごせる時間がやっとできたのに」

「俺と出久は家族だ。いつだって会える。お兄ちゃんのことは気にせず、学んできたらいい。お兄ちゃんもクラスメイトと海に行くしさ。ただ夏祭りは一緒に行こうな」

「うん! それは絶対行く!」

 

申し訳なさそうにする出久の頭を気にしないでいい、というように撫でると夏祭りは一緒に行くことは約束した。

今回は出久の将来にも繋がるしサポートアイテムの勉強にもなる。出久は悪くない。

オールマイトは許せんが、せっかくの経験だ。出久のこれからのためなら俺との時間よりも有意義に使えることに使って欲しい。オールマイトは許さないけど。

出久優先だ。

本当は俺も行きたいところだが、俺とオールマイトは未だに顔合わせたことないからな。

どうせ来年会うだろ。

ただ出久の身に何かあったら色んな問題全部気にせずにオールマイトを速攻で殴りに行くから覚悟しておいて欲しい。

 

それにI・アイランドとなると遠すぎてすぐに駆けつけることは出来ない。そもそもあそこって移動するせいで面倒なのだ。*2

流石の俺も心配だ。しかし常に最悪を想定するのはお兄ちゃんの役目。こんなこともあろうかと俺は予てから開発していたものがある。

だからこそ。

 

「出久、何があるか分からないからこれも持っていってくれないか?」

「これは……?」

 

自分の部屋から持ってきた物を渡す。

コソコソとパワーローダー先生の元で作っていた“発勁”を再現したグローブだ。

サポートアイテム作成時に何度もサポート科の研究室で暴発させたり爆発させたり周囲を吹っ飛ばしたりとか数えたらキリがないが、これはつい最近作り上げたもの。

測ってないが、今の出久の手にもピッタリのサイズだろう。*3

違ったらお兄ちゃん失格なので切腹しようと思う。

 

「簡単に言えば力を“蓄積”出来るサポートアイテムだ。問題ないとは思うんだが、遠出となると何が起きるかは分からないからな。もしどうしようもないことに陥ったら使ってくれ。最大出力で一度きりだけど出久の力になるはずだ」

「転間兄ちゃん……うん、ありがとう。必要になることがあれば使わせてもらうね!」

 

使い捨てのサポートアイテムだが、あの力は同じ動作をして溜める、という力。

俺の個性の集める性質を利用して作ったから1発だけならかなりの出力を出せるだろう。

OFAの力を俺は受けたことないから分からないが……。

今の出久が8%だからサポートアイテムの限界を考えたら40%くらいか?以前壊れたと言ってた“黒鞭”も改良してあるから機動力は問題ないだろうし、まだ歴代個性が発現してない出久でもプロヒーローと変わらない戦闘力を発揮出来るはず。

まぁグローブに関しては壊れた際に秘密兵器が発動するから、相手は死ぬ。いや死なないけど。

正確には出久のOFAの40%に耐えれるヴィランでない限りワンパン出来るようなものだ。耐えれるやつでもダメージは入る。

拳が当たれば、だが。

俺の睡眠時間など出久のためなら幾らでも犠牲にするぞ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――I・アイランドに行くことになった僕は飛行機に乗っていた。

コスチュームはまだないけど、サポートアイテムはあるからそれを持ってきて、今オールマイトに見せたところだった。

 

「へえ、サポートアイテム! 確かこれ、ヘドロヴィランの時にも使ってたやつだよね?」

「はい、僕の兄が作ってくれて……あの時壊れちゃったのでまた作ってもらったんです。長いこと使ってたから、劣化してたのもあると思うんですけど……」

 

転間兄ちゃんは無個性でも戦えるように色々としてくれていた。

空に浮くことに慣れるように転間兄ちゃんが引力を発生させたり手に僕をくっつけたり。

サポートアイテムのロープで機動力をあげたり。

視界が見えない中で動けるように訓練を考えてやったり。

テレフォンパンチとかにならないように、体の使い方を覚えたり。

武器を扱えるように訓練したり。

せっかく頑張ってくれたのに無個性じゃなくなって個性を受け継いで、それも秘密にしてるのは心苦しいけど……。でも転間兄ちゃんは個性が発現したことを素直に喜んでくれた。

 

「お兄さんか! これほどのサポートアイテムを作るなんてすごいな!」

「オールマイトから見ても、ですか?」

「うん。今日会いに行く私の友人に見せても評価を貰えると思うよ。以前壊れたからか、改良されていて頑丈になっているみたいだね。瓦礫程度なら持ち上げれるかな。それにかなり伸びそうだね、建物に伸ばして軌道を変えたりも出来そうで機動力を上げるには最適だ」

 

何処でも身につけて持っていけるようにサイズも変えられ、両手首に装着する装置となった。本体はステンレス製みたい。

その装置、ウィップシューターから黒い鞭のようなものが出ている。*4

少し出した程度だけど、オールマイトからもお墨付きを貰える出来みたいで兄を褒められると誇らしい気持ちになれる。

僕の自慢のお兄ちゃんだから。転間兄ちゃんに直接言うのはちょっと恥ずかしくて言えないけど、本当に凄い人なんだ。

あのスターアンドストライプを追い詰めるほどの強さ。転間兄ちゃんは目標に向かって邁進している。僕も負けてられない。

転間兄ちゃんと一緒に、最高のヒーローになるために。

 

「こっちは力を溜めれるグローブ、だっけ……使い心地は良さそうだね。性能は確かめてみないと分からないが。こっちは逃走用の煙玉かな?」

「はい、視界を封じて市民の救助を優先したりヒーローを助けたりと使えますし……普段はロックが掛かってるので誤って散布したりとかはないので大丈夫です。催涙にも機能を変えれるので鎮圧にも使えるかと」

「確かにね! 実際に逃走時に利用されることはある。あっても困ることは無いだろう。しかし催涙に切り替え? どうやってやってるんだろうか。すごいな……。じゃあこの……クラッカーみたいなものは?」

「拘束用の電磁網ですね」

「じゃあ、これは……」

「反重力の機能が取り付けられたブーツです」

「ふむ……この防犯ブザーみたいなものは?」

「防犯ブザーですね」

「防犯ブザー! ……緑谷少年のお兄さんって技術者?」

「そういう訳ではないんですけど……」

 

どれもこれも無個性で有利に戦えるように色々と考えて作ってくれたもの。自分のことで忙しいのに、僕のために頑張ってくれた。

他にもあるけど全部は持っていけないから手軽に持っていけて、利便性の高いものだけにしてある。

防犯ブザーは防犯ブザーだけど、軽い音波で相手を一瞬怯ませるくらいの性能はあるらしいので、捕まった時とかには使えると思う。

見た目は本当にただの防犯ブザーだからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い間飛行機の上で時間を過ごして、ようやくI・アイランドの中に入ると、その規模に圧倒された。

人工島なのに広々とした道や、個性的な建物達。今はエキスポの期間じゃないから人は多くないけど、その分オールマイトの長身長は凄い目立つ。

 

「あ! あれはオールマイト!」

「ナンバーワンヒーローだ!」

「うそ、ほんとだ!」

「画風が違ぇ、すげぇ!」

「サインプリーズ!」

 

一瞬で囲まれるオールマイトから慌てて離れて巻き込まれないようにする。

人の群がり方が凄い。まるで餌を出されたかのような……。

 

「HAHAHA! みんな、何時も応援ありがとう!」

 

それに全く動じること無く、目にも留まらない速さでサインを書いて写真を撮っていく。

さ、流石No.1ヒーロー……! サインや撮影にも慣れてる!

しばらくすると人の波が収まり、ようやく静かになった。

 

「いやあ、今日は人が少なくて助かったよ! さて、そろそろ来ると思うのだが……」

「迎えの人ですか?」

「ああ。日時は教えてあるからね。……それと、ワン・フォー・オールの事は話してないからそのつもりで」

 

オールマイトの親友、デヴィット博士。

デヴィット博士と言えばオールマイトのアメリカ時代の相棒なのに、そんな人にまで秘密にするなんて……。

僕がそんなことを考えていたのが顔に出てたのか、オールマイトは真剣な顔で口を開く。

 

「緑谷少年、ワン・フォー・オールの秘密を知るものには危険が付き纏う。 そしてワン・フォー・オールを受け継ぐということは巨悪といずれ対峙する運命を背負うことになる。言いたいことは私も分かるさ。だが……あまりに危険すぎるんだ」

「……はい」

 

そうだ。

オールマイトだって隠したくて隠してるわけじゃない。

僕がお母さんだけじゃなくて、いつも全部話してる転間兄ちゃんにすら僕は話していない。

そうしなければ僕が大切な人を巻き込んでしまうから。

僕が受け継いだことも悟られちゃダメなんだ。

せめて僕がオールマイトの力を身に付けて、オールマイトを超えられるくらい強くならないと……。

 

お互い少し気まずい空気が流れる中で、遠くから変な音が聞こえる。

空気が空気だったのもあり、僕らが視線を向けるとホッピングのような乗り物みたいな、どう表現すればいいか分からないものに乗って女性がやってきたかと思えば、オールマイトに抱きついた。

 

「マイトおじさま!」

「OH! メリッサ!」

 

明らかに知り合いの反応。

おじさま……って事はオールマイトの知り合いの人の娘さん……かな? メリッサって呼ばれた人は凄く嬉しそうだ。

僕よりも身長が高くて、綺麗な人だと思ってしまう。

 

「そうだ! 紹介が遅れたね、緑谷少年。彼女は私の親友の娘で……」

「メリッサ・シールドです。はじめまして」

 

僕の存在に気づいた女性はテクテクと近寄ってきて、人懐っこい笑顔で手を差し出してくる。

彼女からは悪意も敵意も何も感じないことを理解していた。

な、何か凄いドキドキする……そ、そう言えば僕、お母さん以外の女の人と話したことが全然無い……!

無個性だったからやっぱりそのことを言われることが多かったし、僕に悪意を持って近づいてきた人は転間兄ちゃんがいつも守ってくれてたし……!*5

 

「は、はじめまして。緑谷出久と言います。今は中学3年で、来年ヒーロー科のある高校に受験予定です」

 

僕が挨拶と一緒に緊張しながら手が震えないように意識しながらそっと握手をすると、メリッサさんは何故か驚いたように目を見開いていた。

うわっ!? 手が凄い柔らかい!? お、女の人の手ってこんなに柔らかいんだ……って、そうじゃないだろ僕!!

 

緑谷……ってもしかして……? 来年に受験予定……じゃあまだヒーロー科に在籍してないのね? でも、手、凄いゴツゴツしてるし腕もしっかりしてる……無駄のないくらいにちゃんと考えて鍛えられてるわね……」

 

メリッサさんが握手していた手に触れて僕の手を確かめるように触れてくる。

半袖なのもあって見える腕にも視線が向けられていて、顔に血が集まるのを感じる。

心臓の鼓動が外に出てるんじゃないかってくらいバクバク鳴っているのを自分でも理解してると、ハッとしたメリッサさんが慌てて手を引っ込めた。

 

「あ、あら、ごめんなさい。中学生って言ってたからここまで鍛えられてるって考えたら凄いなぁ、と思っちゃって……えーと、じゃあイズクくんはどうしてここに?」

「彼は私の弟子でね。訓練続きだから息抜きに一緒にどうかと誘ったわけさ。サポートアイテムも使うみたいだから1度会わせたくてね」

「なるほど、ヒーロー科にまだ通ってない子がと思ったけど、おじさまの弟子……。じゃあ個性はパワー系かしら……?」

 

真剣な顔に変わり、僕の身体を眺めるメリッサさん。

今度は腕だけじゃなくて全身をまじまじと見られてるのもあって、女の子にこうやって見られることがなかったのもあって恥ずかしくなってくる。

僕が困ってると、オールマイトが注目を集めるように咳払いの助け船を入れてくれた。

 

「メリッサ、そろそろ……」

「あっ、ご、ごめんなさい!」

 

ペコリとお辞儀をして、自立していたホッピングのボタンを押すと紐状になって、ポケットサイズまで巻き取られた。

あのサイズをここまで小さく……! 凄い技術……!

 

「あはっ、興味有るのね? それじゃ、これから行く研究室もきっと気にいるわ! これ以外にもガジェットがたくさん有るのよ!」

 

そう笑顔になったメリッサさんは歩き出す。僕とオールマイトも顔を見合わせて笑顔になった後、メリッサさんの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――出久の方が先に行くことになったので近くまで見送り、その後に現地集合の場所に向かった。

クラスメイトたちは何かとイベントごとが大好きで、去年と違って慣れてきたのもあるだろう。

2年に入ってからは程よく息抜きが出来ている。

というか去年の秋くらいからは既に息抜きしていた。慣れ、だろうなぁ。

何が言いたいかと言うと、案の定ヒーロー科全員、海に来ていた。

流石に他の学科も合わせて2年全員は来れないからな。誘ったら来そうな人多いけど。

まぁヒーロー科っていうか雄英はいつも訓練やら個性伸ばしやら勉強やらで忙しいので、たまにはこういう息抜きも必要だろう。

俺はいつものメンバーで来たけど。今は女子は着替え中。男子はそんな時間掛かってなかったので既に遊んでる人もいる。

 

一方で俺は普通にパラソル建てたり荷物をまとめたりしていた。一人でやってるのは俺がやっとくから遊んどけ、と言ったからだ。

しかしまあ、夏特有の陽射しが凄い。

何故か視線を多く感じるので、居心地が若干悪い。*6

俺はサングラスを掛けた。

水着に関しては紺色の膝くらいまでのボードショーツと赤色のパーカーを着ている。

 

「転間、手伝うよ」

「ん、サンキュー」

「相変わらず転間って世話焼きだよね!」

「いや純粋に俺が早くこの中で休みたいだけ。そのついでだ、暇潰しにもなるし」

「うーん俺はそういうところだと思うけどな。でもお節介なのはヒーローらしいよね」

 

それは確かに、と思った。

ヒーローは他人を助ける。その人が望んでなくても。

まぁ実際その人が我慢してるだけだったり助けを求めることができない状況下にある場合があるわけで。

助けを求めてなくても手を伸ばす、余計なお世話を焼くのがヒーローだ。

ヴィランだってヴィランになる理由がある。どうしようもないやつも中にはいるけど、それは人間が人間である限り必ず存在する。

この世界でも前世でもそこは変わらない。

まぁ、俺は別にヴィランだからぶっ飛ばすとは思ってないので、話し合いで解決したり俺が力になれるなら手を伸ばすつもりだが……残念ながら俺が対峙したことあるヴィランは話聞かないやつばかりだ。

ある意味俺は呪われてるのでは? ヴィランになるのはだいたいそういうやつらってのもあるけど。

特に一番酷かったのは去年の職場体験で戦った2()m()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったな。話を全く聞こうとすらせず殴ってきたし。

あの時はまだオートじゃなかったから普通に苦戦した。こいつ本当に1年が相手するヴィランか? とは思ったけど、あの場には俺しか居なかったから仕方がないだろう。ヒーローを見殺しにする訳には行かないし、もちろん仮免前なので現場に辿り着く前に戦闘許可は貰っていたが。

 

クーラーボックスを設置したりシートを敷いたり、荷解きしたりと3人でしばらくしていると、少しずつ女子の数が増えてきていた。

ねじれたちもそろそろ来るだろうか。

 

「転間くーん!」

 

噂をすればなんとやら。

大声で呼ばなくてもいいだろうに、無視する訳にはいかないのでサングラスを上げながら振り向くと、大きく手を振っているのが見えた。

――いやなんか空間がごっそり空いてるんだけど。というか周囲の人間が避けている。

注目度半端ないな、流石ミスコン2位だ。

傍には甲矢が居るし、心配する必要はなさそうだ。威嚇がすごい。

駆け足でねじれが近づいてくると、周囲の人々も解散していた。

男連れだと理解したからだろうか。それを考えて俺の名前を呼んだのか。

そこは少し配慮不足だったかもしれない。俺が先に向かうべきだったか。

 

「天喰くんも通形も一緒に何をしてたの?」

「荷解きとか設置だよ。転間一人だけにこんなことさせるわけにはいかないからね」

「俺もミリオと同じ」

「俺は好き好んでやってるんだけどな。暇だったし」

「そうなんだ……ごめんね、私も何かやることある?」

「いや、もう終わったから大丈夫」

 

一人だったらもうちょっとやってたと思うけど、ミリオと環のお陰で無事に終わっている。

これで休めそうだ。

 

「じゃあ全員揃ったことだし俺達も遊ぼうか!」

「うん……そうしよう」

「俺も……?」

「当然!」

「通形と天喰は先に行っといてくれる?」

「オーケー!」

 

せっかく休めると思ったのに。

座った俺はまた立ち上がることになったが、競走だと言いながら走るミリオと環を追うように俺は歩いていこうとしたら手を掴まれた。

 

「あんたは待ちなさい」

「なんだ甲矢。休んでていいなら喜んで休むが」

「いや遊びなさいよ。そっちじゃなくて――」

 

何故か止められた俺は訝しげに見つめると、俺の手を離した甲矢がねじれの背後に回って、軽く押していた。

 

「有弓?」

 

そうなると位置関係上、ねじれが俺の目の前に来ることになる。

何がしたいんだ?

 

「何か言うことあるんじゃないの?」

「何か……?」

「! 有弓。私は別に――あ……その、どう、かな」

 

何か、と言われて正面にいるねじれを見つめると、彼女は何処か不安げな表情で水着を見せびらかすように体を軽く左右に動かしていた。

そこでようやく理解する。

水着のことか、と。

 

「ああ、いいんじゃないか」

「このバカッ!」

「イッテッ!?」

 

勢いよく頭部を叩かれた。

理不尽すぎる。感想が欲しいということでは……? 

何か間違えたというのか、俺が……!

 

「ねじれの水着姿を見てそれだけ!? もっとあるでしょ、普通! 感想を聞いてんのよ?」

「だ、大丈夫だよ有弓。その、十分嬉しいもん」

「ダメよ。こういうのはちゃんとしておかないと! せっかく時間かけて選んだんだから。ということよ、ちゃんとした感想を述べなさい」

「そう言われてもなぁ……」

 

殴られた頭部を擦りながら考える。

なんて言えばいいのかって話。

発言によっては普通にセクハラになる。

可愛いやら綺麗とかはなんか違う気がする。水着姿のねじれを褒めろってことだろ?

じゃあ天使。

これは絶対違う。水着姿を褒める言葉ってなんだ……そもそも何から何までが褒め言葉になる? まず服装を褒めるって何? その人が可愛いとか綺麗とかじゃなくて? 前提として褒めるってなんだっけ?*7

ダメだ、思い浮かばない。

しかし甲矢の発言も否定出来ない。

俺はどうかと聞かれたわけで。

チャンスはくれるようなのでリベンジするか……。しなければ殴られるし。*8

 

「じゃあ……ねじれ」

「う、うんっ」

 

そのために、改めてねじれの全体を見る。

いつもよりも全体的に肌が露出しており、水着は水色のフリルの着いたビキニトップス*9と同じくフリルの着いたビキニボトム。

去年とはまた異なる水着のようだ。去年は透明なもの*10を纏って下には腰巻きみたいなのがあった。*11

髪型は長い髪を後頭部付近で青いゴムでひとつに纏めて、ポニーテールにしている。

いつもと印象が違うし、彼女の瞳がよく見える。まるで海のような、そんな瞳の色。

若干頬に赤みがあるのはこうしてじっと見てるのが原因だと思われる。

さて、ここから褒めるとなるとなんだろうか。身体的特徴は避けるべきだろう。

となると――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「普段もそうだが、また違う魅力があって魅力的に見える。似合ってると思うぞ」

「――」

 

時を止めてしまった。いや止めたことはないんだけど。

目の前にいるねじれが完全に動かなくなり、身動きひとつ取らない。俺たちがいる空間だけ止まっていて、俺はようやく理解した。

 

――これもダメだったらしい、と。

いやだって、じゃあ他に何を言えばよかったんだよ。水着だから布面積が少なくなるわけで、そういうもんだと理解してはいるが露出が多いとか褒め言葉じゃないし。むしろ何処見てんだって言われかねない。

普通にアウト。

何よりねじれの容姿は雄英の中でもトップクラスに良い。俺からしてもアイドルのような、整った容姿だと思うレベル。出てるところは出てるし引っ込んでるところは引っ込んでいる、スタイルが良いと言えるだろう。

しかし幼少の頃から強くなるために全てを捨てた長年ぼっちを貫いた俺を無礼ないで欲しい。

ちゃんとした回答なんて出来るわけねえだろ。発言できるのこれしかなくない?

思ったことを言ったんだからこれで怒られたら俺はもう無言を貫くぞ。*12

 

「み……緑谷……? あんたもしかして偽者じゃないでしょうね!? 一番好きと言えるのは誰!? 答えなさい!」

 

肩に掴みかかってきたかと思えばめちゃくちゃグラグラ揺らしてくる。

あまり揺らすな、吐くだろ。

こいつは人をなんだと思ってるんだ、おい。俺も何かを魅力的に思うようなことはあるぞ。海とか星とか。

確かに俺は弟一番だが、別にねじれの容姿が悪いとか一切思ったことないし、むしろ逆だ。

だが聞かれたならば答えるしかない。

 

「馬鹿野郎! 当然出久に決まってるだろうッ!」

「緑谷だったわ……嘘、本物だと言うの……?」

「お前の判断基準なんなんだよ」

 

全く失礼なやつだ。

俺が一番好きなのは出久に決まってるだろう。俺と血の繋がりがある、大切な弟だぞ?

 

「そっ、そうだわ。ねじれ……っ! 大丈夫!?」

 

そういえばさっきから静かだな、と思ったらねじれがその場に座り込んで両手で顔を隠していた。

体調でも悪いのだろうか。

 

「む、むりぃぃぃ……っ」

「あっちゃー……手遅れだった……。もうっ、緑谷は早く行きなさい向こうに!」

「止めたのお前だろ……」

「いいから!」

「はいはい」

 

なんか今日当たり強くない?

ちょっと納得出来ないが、まぁ行けと言われたので行くとしよう。

その前に体調が悪そうなので着ていたパーカーをねじれに被せる。

こいつ注目されるし、ちょっとでも隠しておいた方がいいだろう。*13

隠したあと、俺はクラスメイトたちの方に駆け足で向かった。

 

「おっ、緑谷! ビーチフラッグスしようぜ」

「やっと来たか、真打登場だな」

「何してたん?」

「いや特に何も。というか海に入るんじゃないのかよお前ら」

「どうせなら遊べることは遊びたくない?」

「まぁまぁ、まだ一日もあるしいいじゃん、やろ」

「いやいいけど……吹っ飛ばしても知らないからな」

「これそういう競技じゃねーから!」

「緑谷だけ鉄球足につけた方がよくね?」

「待て、こいつは鉄球くらいなら力づくで壊すぞ」

「とりあえず距離を離してだな……」

「なんなら車を引っ張らせた方がよさそう」

「車が危ない」

「車が危ない? 危ないか……」

「お前ら人をなんだと思ってる!?」

「何しても死なないやつ」

「ブラコン」

「女誑し」

「人誑しじゃね?」

「問題児」

「お兄ちゃん」

「いい度胸だな、全員まとめて吹っ飛ばしてやる」

「やべぇ!」

「ガチだ、ガチの目だぞ……!」

 

どいつもこいつも好き勝手言いやがって。

俺はかのクラスメイトたちを必ず狩らねばと決意した。

個性が使えないから安全とは思うなよ。*14

ビーチフラッグスではスタートした瞬間に脚力で吹っ飛ばしたのは余談。個性は使ってないしただの身体能力なのでセーフ。

 

 

*1
ある意味オールマイト絶対安全宣言では?

*2
普通は飛行機しか無理。まぁお兄ちゃんなら弟の危機を感じたら海面を走って横断したりすると思われる。

*3
キッショ。

*4
突如転間の脳内に親愛なる隣人が浮かんだために参考にして作られたサポートアイテム。

*5
正確には兄目当てで。察して守るのは流石お兄ちゃん。

*6
整った容姿に鍛えられた腹筋が動く度にチラチラ見えるので。

*7
哲学かな?

*8
防ぐか避ければいいだけの話なんですけどね。

*9
フレアビキニやでお兄ちゃん。

*10
シースルーだよ。

*11
それはパレオ。何も知らねえなこいつ。

*12
※クソ早口。

*13
それはただの追い討ちなのよお兄ちゃん。

*14
暴走時が素でオールマイトかよと思われるレベルなので誰も思ってないと思う。





今のところ。

オールマイト→誰か知らないけどいいお兄さんがいるんだなと思ってる。技術者なのかな?
転間→オールマイト絶対許さんと思ってる。秘密知ってる。
出久→体育祭で二回優勝してるため、オールマイトは転間のことを知ってると思ってる。実際にはプロ活動や教員のために動いたり訓練見てたりで忙しくて見れてない模様。

全 員 何 も 知 ら な い 。

原作

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  • もっとお兄ちゃん読みたい
  • 作者の好きなようにやって欲しい
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