どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
というか、じわじわランキング上がってるやんけ。
いくら人手があってもその人手が動けなければ意味はない。
しかしそこは流石は雄英。
バイト経験などなくたってやることさえ教えればある程度は出来るようになるらしい。
外には今日限りの仮設スペースを作って広げ、立って待たせないようにして、座標設定することでそこに料理を俺が持って行けるようにすることで提供を可能にしたり、と想定外の客数だがクラスメイトたちが臨機応変に行動してくれるのもあり、先とは違って俺があらゆることを引き受ける必要がなくなった。
溜まっていた皿も任せることが出来るようになったのも大きいだろう。
雄英が容姿が良い奴らばかり集まってるのもあって、たまに変な客はいるが、面倒事になる前にすぐご退場願った。
実力行使に出てくるなら捌くだけで敵わないと思って逃げるしな、ギャラリーがめちゃくちゃ写真撮って来るのは困ったものだが、無修正でネットに上げないようには一応お願いしたとはいえ。
まあ俺だけじゃなくてA組とB組が揃った結果、またしても人が増えたが間違いなくトップレベルの売上だろう。改めて雄英の知名度を思い知らされた。
他の人からすれば有名人が働いてるのと、他の生徒もだが、やはりその中でも突出してるねじれの容姿で新規客が来てるのもあるかもしれない。ミスコン2位の称号は伊達ではないようだ。
俺の中では出久が常に1位だけど。*1
それはそうと、古参の客はうみちゃんの顔を見て満足していたしな。
そうして捌いてるうちにピークを終え、徐々に人の数は減ってきた。
減ってきたと言っても未だ満員だが、外で行列になるほどではないという意味では減ったと言っていい。
「うみちゃん、もう俺一人で十分やれる。君は休憩を取った方がいい」
「え? でも……」
「心配せずともどうしても無理ならそこにいるバカどもに頼むよ、だから休んでくれ。君まで倒れてしまえば俺は湊さんに合わせる顔がなくなる」
「緑谷さん……分かりました。ただ……」
「ただ?」
「休むならここで休んでいいですか?」
「……ん? ああ、うみちゃんがそれで休めるなら別に構わないけど……外に行ったりしなくていいのか?」
休憩するなら海の家の外に行くと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
彼女が休めるならなんでもいいのだが。
「はい。その、緑谷さんを見ていたくて……」
「俺を見ても面白くないと思うんだけどな……」
「いや絶対そうじゃねーよ」
「ある意味見てても面白いでしょ」
「お前またなんかやったのか……」
「待て、常に俺が何かしてる前提で考えるのはおかしい」*2
「あの顔見てよくそれが言えるなッ!?」
「は?」
外野が何か言ってきたが全く意味が分からない。
そもそもうみちゃんとは初対面のはずだし、何かやらかすわけがないだろう。
ちら、とうみちゃんを見たら顔を逸らされたのであの顔とやらが何なのか全く分からないが。
どちらにせよ、俺が求めるのは休んでもらうこと。彼女にとってそれで休まるならそこは好きにしたらいい。
「ま、水分はちゃんと摂るようにな」
「は、はいっ!」
労わるように軽く頭をポンポンと叩くと、うみちゃんが俯いていたが元気がないわけではなさそうなので、俺は俺で仕事に戻る。
「緑谷さぁ、お前そういうとこじゃね?」
何がだよ。
「何がだよ」
「緑谷くんはいつか刺されそうね……3人目?」
「いやいや3人目って。今の会話から1人目は誰か分かるが、まず他2人誰だよ。そもそも刺されるようなことしてないし、うみちゃんもしないだろ」
1人は会話の流れからうみちゃんということになるが、そんなことをするような子ではないというのは関わってたら分かる。
というか暴力とか得意そうに見えないしな、外見的にも。
どちらかと言うと守ってあげたくなるって感じの子だ。
「緑谷さんを傷つけたくはないですね……」
「やだ、この子素直で可愛いし優しい」
「うみちゃんはいい子なんだ。関わりのあるのは短時間だがそれだけは俺が保証する」
「そっ、そんな。えへへ……」
両手を頬に当てて照れている姿に厨房メンバーは全員微笑ましそうにしていた。
二個下の女の子というのもあって、純粋さが癒されるのだろう。
弟と同じ年齢というのもあり、俺も微笑ましくなる。
同級生たちとは大違いだぜ、この純粋さ。
お前らも見習えよ。
いや中学生はこんな感じの可能性……ないな。俺が知る中ではうみちゃん除いたら出久くらいだわ。あのトゲトゲ頭は純粋でもないし。
「照れてる姿もGood……! このお兄ちゃん、本気と書いてマジって言っていいレベルで思ってることしか言ってないからね」
「はい! それはよくわかってます! 緑谷さんはとっても優しくてかっこいい方ですから!!」
「緑谷、マジで刺されないようにしろよ」
「だからそうなる要素がどこにあるんだよ。ただ……刺されるのは痛いから嫌だな」*3
「普通は死ぬ危険性も高いのについに痛いで済むようになってしまったのかお前……いやよくよく考えたら俺らが来るまでほぼワンオペでやってた時点で既に人間やめてたか……。その癖して全然疲労してないしな。時折人間か怪しい動きするからさ、俺疑問だったんだよな……」
「それはちょっと分かるなぁ」
何故かクラスメイトが俺を人間かどうか疑わしく思っていたということが判明した。
全く意味が分からない。確かにこの世界の人間ではない記憶はあるが、立派な人間である。
「お前割と失礼だよな
「そこは普通じゃないと思うんだけど」
「そういえば緑谷さん、よく弟さんのこと言ってましたよね。前の体育祭でも自分のことをお兄ちゃんって言ってましたし、去年の体育祭や職場体験で凶悪なヴィランを捕まえた際だったり、今月のインタビューでも答えてましたよね?」
「よく知ってるな、うみちゃん」
「緑谷さんの記事やニュースは逃さないように毎日チェックしてるので!! ふんす!」
「そ、そっか」
急接近してきたかと思えば目を輝かせて両手で握り拳を作りながら力強く告げるうみちゃんに、その勢いに僅かに気圧される。
ハッ、として顔を赤くしながら縮こまっていたが、自分を正当に見てくれて、画面の向こうからでも助けになれてるならば俺はヒーローとしてやれてるのだろう。他人の評価はかなり重要だ。現代社会においては人気に直結する。その辺は正直どうでもいいのだが、最高のヒーローを目指すならば人々に受け入れられなければ最高とは言えないはずだ。
まだ候補生だけど。
けどまあ、それならこれからも頑張らないといけないな、最高のヒーローになるために。
今はこの仕事を最後までやり遂げるのが俺のヒーローとしての活動だ。
◆◆◆
「うわあ、凄い……」
「イズク君、そんなに珍しい?」
「はい! こんな最新の研究施設とか入ったこと無かったので!」
服を着替えたあとご飯を一緒に食べた。
女子と食べるということにドキドキしまくって変になってないか心配だったけど、その後にメリッサさんに連れられて、アカデミーの研究室の方へ来ていた。
見たことがないものもあれば、物珍しい物もあって右へ左へキョロキョロと視線をやると、ちょっとからかうように笑われてしまった。
ここで過ごしてる人からすれば田舎者っぽく見えてるんだろうけど、こんなの僕じゃなくてもこうなると思う……うん、シカタナイ。
「着いたわ。ここが私が使っている研究室。散らかっていてごめんね」
「いえ、そんな事は無いです! こんなところで研究できるなんて、やっぱり凄いんですね!」
実験器具はもちろんのことモニターや大量の資料と研究資材に囲まれて、雑然としてるけど、逆にそれが研究室らしさがあって男心が擽られるというか、わくわくする。
それにメリッサさんは謙遜してるけどこれほど最新鋭の研究室を使えるってことは彼女自身が凄い優秀なんだろう。
難しそうな専門書がぎっしりと並ぶ本棚の上には恐らく何らかの賞で取ったであろうトロフィーや盾も飾られている。
作業台の方には走り書きした付箋や計算式のメモまでも書かれていた。
「実はね、私そんなに成績が良くなかったの。だから一生懸命勉強したんだ。どうしてもヒーローになりたかったから」
「プロヒーローに?」
2重の意味で驚いた。
成績が良くなかったということ。ヒーローになりたかったということ。
今の僕から見て、彼女は全くそう見えなかったからだ。
ふと転間兄ちゃんの顔が浮かび上がる。
似ているから、なのもある。
転間兄ちゃんも何でも出来るようには見えるけど、正確には全部自力で、時間を犠牲にして努力して身につけたもの。
「ううん。それはすぐに諦めた。だって、私無個性だし」
「! ……“無個性”……」
何でも無い様に話す彼女に、胸が針で刺されたかのような痛みを感じた。
その辛さはよく分かる。この世界で無個性がどれだけ夢見ることすら許されないのか。
ヒーローという一番人気の職業に就くことが絶対に出来ないのが、“無個性”という旧人類とも呼ぶべき存在だから。
「5歳になっても〝個性〟が発現しないから、お医者さんに調べてもらったの。そしたら、私の足の小指には関節が二つあって……個性が発現しないタイプだって診断されてね……」
そう、個性は通常4歳までに発現する。大小あれはあれど、だいたいの人は4歳だ。
たまに個性によっては気づかなかったりする場合もあるけど。
けれどごくごく稀に、本当にレアケースで無個性として生まれることもある。
僕はきっと、オールマイトに個性を授からなくても目指してたけど、それでも恵まれた。
恵まれたから個性を譲渡され、その力でヒーローを目指している。だけど気持ちが分かるから、自分と重なって表情が歪むのを感じた。
そのことが顔に出ていたんだと思う。
自分だけが周りと違うことにどう思いましたか、と。
「勿論ショックだったわ。でも、私にはすぐ側に目標があったから」
「目標、ですか?」
「ええ、私のパパよ」
そう言って微笑むメリッサさんはとても誇らしげで、とても綺麗で。
メリッサさんは力の籠った熱い眼差しで本棚の一角に置かれた写真立てを見つめていた。
デイヴィットさんや幼いメリッサさん。一緒に写っている優しそうな女性は彼女の母親なのだろう。
みんなとても素敵な笑顔をしている。
同じだ。
僕も目標が、導いてくれた人が居たから。
僕を支えてくれた人が居たから。
僕は今、継承者としてここに居る。
転間兄ちゃんが居なければ僕は現実を見ないように、見ないようにって現実逃避して、心のどこかでは諦めてただろう。
何も努力せず。
ただ趣味のヒーローノートに縋って。
現実を直視しないまま。
「パパも、ヒーローになれるような“個性”は持っていなかったけど、科学の力でマイトおじさまやヒーローをサポートしている。間接的にだけど、平和のために戦っている」
「ヒーローを助ける存在……」
「そう。それが私の目指すヒーローのなり方」
そういいながら、メリッサさんは棚を物色し始めた。
その背中が僕にはやけに頼もしく感じられる。
そうだ、直接
彼女たちのような科学者がサポートに尽力してくれるからヒーローは戦えるんだ。
僕も転間兄ちゃん作のサポートアイテムを使ってるから分かってたつもりだった。だけど転間兄ちゃんはサポートアイテム専門家ではなく、ヒーローだ。イメージとしてはやはり、そっちの方になってしまう。
だけどメリッサさんと話して、改めて実感した。
より自分の個性を生かして、間接的にだけどヒーローや市民を守っている。
つまり。
「……メリッサさんたちはヒーローを守るヒーローなんですね」
「ヒーローを守るヒーロー?」
きっと、そういうことなんだと思う。
少なくとも僕が憧れる、胸を張って自慢出来るあの人なら、きっと彼女にこう言ったのだと思う。
だから僕は目を瞬きさせる彼女に、頷いた。
「はい、メリッサさんたちのような方々がいるから僕たちは戦える。ヒーローとして活躍出来るし、命を守ってもらってる。ヒーローが誰かを救うならメリッサさんたちのような人たちがヒーローを救ってる。だから……メリッサさんもヒーローだと、僕は思います」
「イズクくん……ありがとう、そう言ってくれてとっても嬉しいわ。」
そう、僕が言いたいことが上手く言えたかなんて分からないけれど。
伝わってくれたらいいな、と笑みを浮かべて。
何処か赤みのある顔で笑みを返されて、その顔は、なんだかいつも以上にとても綺麗だと思った。
「……ふふ、イズクくんは時折普段よりもかっこよく見えるわね。流石ヒーローね」
「へっ!? そ、そんな、僕なんてまだまだ全然!」
そう、僕はまだまだ。
オールマイトにも、転間兄ちゃんにも、足元にも及ばないんだ。
ヒーローというのはあの二人のことだ。
「いいえ、少なくとも私は今の言葉をもらって嬉しかったし、救われたような気持ちになれたもの。謙遜しないでいいのよ」
「え、えと……あ、ありがとう、ございます」
「それはこっちのセリフなんだけどね……っと、あったあった!」
目当てのものを見つけたらしいメリッサさんが弾んだ声をあげると箱を持ってきて、僕の目の前で開けてくれた。
中にあるのは、ボタンの付いた赤く輝くメタルフレームのバングルだった。それを、僕の手に巻きながら説明してくれる。
「これはね、マイトおじさまを参考に作ったものなの」
「オールマイトを?」
「そう、ここのパネルを押してみて」
言われた通りにピッとボタンを押すと、形を変化させて僕の腕を覆うように何重にも巻き付いて、籠手みたいになった。
軽く動かすけど、一体感がとても凄い。
「これは……」
「名付けるなら、“フルガントレット”かしら? イズクくん、テストの時もサポートアイテムを結構付けてたし、意図的に“個性”をセーブしてるように感じてね。多分、イズクくんは強すぎる個性に体がついていってない状態なんじゃないかなって」
「あっ、はい、その通りです」
そこまで見抜かれていたなんて思わなかった。
あの1回っきりしか僕は“個性”を使ってないのに、それだけでここまで見抜くなんてメリッサさんはやっぱり凄いな。
オールマイトの100%を僕は扱えない。限界値は分からないけど、今は少ない出力で慣れることからやっている。
まだ8%。これは常時許容範囲内。頑張れば15%は出せると思うけどコントロールが乱れて力が扱い切れなくなるかもしれない。
ブレる出力なら安定した出力を維持出来るようにして体に慣らした方がいい。
「このフルガントレットは、マイトおじさま並のパワーを出しても、3回は耐えられるくらいの強度が有るわ。きっとイズクくんの本気にも耐えられると思うの。だから、是非イズクくんに使って欲しい」
「えっ、でも大切なものなんじゃ……」
「だから使って欲しいの。おじさまの弟子なんでしょ? あなたに渡せば、きっと人を救けるために使ってくれると思うし……私にイズクくんを守らせて欲しいな」
「メリッサさん……」
じっとまっすぐ見つめられる。その表情はとても真剣で。
色んな思いが込められた言葉というのは僕にもわかっていた。
「……はい。大切に使わせて頂きます」
僕の返事にメリッサさんは微笑んだ。
この装置は彼女の心の形だ。
僕は彼女の意思も受け継いで、ヒーローになる。
僕が立派なヒーローになれたらメリッサさんの名前も自然と広がっていくから。
「よかったわ。だけどイズクくんサポートアイテムにグローブ使ってるのよね、イズクくんが良ければなんだけど調べさせてもらってもいい? フルガントレットにその機能を搭載してもいいかもと思ってね。そうすれば嵩張らないでしょうし」
「あ、はい。多分大丈夫だと思います。僕が作ったわけじゃないので僕自身もどんな機能があるかまでは把握してなくて」
「じゃあ調べちゃいましょう」
転間兄ちゃんは説明してくれたけど、調べて貰えるならその方がいいだろうと僕はグローブを手渡しするとメリッサさんは受け取って作業台の方へ向かっていった。
次々とコードが取り付けられていく。
「少し時間は掛かるから待ってね。けど……自分で作ったわけじゃないってことは、もしかしてお兄さん?」
「えっ!? 兄を、転間兄ちゃんを知ってるんですか!?」
「やっぱりっ! 確証があったわけじゃないけれど、初めて会った時に“ミドリヤ”って名乗ってたでしょ? だからもしかして、あのテンマさんの弟さんなんじゃないかなって思ってたの。面影もあったしね!」
「な、なるほど……」
流石転間兄ちゃんだ。
あのI・アイランドにも名前が届いてるなんて。
やっぱり凄い……!!
「やっぱりそうだったのね。私、テンマさんのファンなんだ。行き詰まってた時に職場体験の学生さんが活躍したって記事が偶然目に付いてね、その時の動画を見てからすっかりとファンになっちゃって。勇気を貰えたっていうのかな? 見てるうちにとっても強くてかっこよくて、こんな凄い学生さんが居るんだって驚いちゃった」
メリッサさんが言ってるのは去年の転間兄ちゃんのことだと思う。
今年は船に居たみたいだから撮影者は居ないけど、去年のは街中で起きたことだ。
I・アイランドにいるメリッサさんにまで届いて、人知れず誰かを励ましていたという事実に僕は自分のことのように嬉しかった。
「そうなんです! 転間兄ちゃんはとっても強くて優しくて! 僕にとって家族だけどヒーローのような存在なんです。自分のことだけでも大変なのに僕のためにたくさん時間を作ってくれて、あのサポートアイテムの数々も全部転間兄ちゃんが作ってくれてっ!」
思わず早口になってしまい、目を丸くするメリッサさんに気づいて顔が赤くなる。
「うふふ、イズクくんはお兄さんが、テンマさんのことが大好きなのね」
「す、すみません」
「ううん、素敵だと思うわ。私もパパのことは目標だけど大好きだし。そういう人がいると頑張ろうって思えるのよね」
「分かります。隣に立とうって思うから、そのために努力しなきゃって思うんですよね」
「そうそう、背中は遠いけれど、諦めたくはないから」
「僕も同じです。でも……手本になってくれるから、安心して着いてきていいって言われてる気がして、大きい背中だけどあったかくて」
考えてることが同じみたいで。
それがなんだかおかしくて、僕とメリッサさんは互いに顔を見合せて笑った。
メリッサさんは父親だけど僕は兄で。
共感を得られたのは僕らが似た者同士だから、というのもあると思う。
これは明かせないけど、本当は僕も“無個性”だから。オールマイトと出会わなければ個性を受け継ぐことなんてなかったから。
いつか……いつかは本当のことを告げられたらいいな。
「テレビや記事でしか分からなかったけど、家族であるイズクくんがここまで言うならテンマさんは本当にありのままの人なのね」
「転間兄ちゃん自身、あまり嘘をつくのは好きじゃないというのもあると思いますけど……だいたいは見ず知らずの人になんて思われようが気にしてないというのもありますね」
「なるほど……自分を貫くって難しいことよね。普通は周りの目って気になるもの。一度会ってみたいなぁ……サインも貰いたいし。けど、実際に会うとなれば緊張してしまいそう」
「あはは……I・アイランドに一緒に来ることがあればいいんですけどね」
「来年のエキスポならどうかしら」
「どうでしょう……転間兄ちゃんはサポートアイテム使ってないんですよね。なので興味があるかどうか言われれば……」
「へえ、それは初耳ね。マイトおじさまのようにサポートアイテムが壊れちゃうのかしら」
それもあると思うけど、サポートアイテムも機能があっても使わないというのもあると思う。
医療用の物は持ってるらしいけど、本当に最小限でほぼ服だけなのだ。
服くらいには搭載してもいいと思うんだけど、耐久性さえあれば何でもいいと言っていた。
「っと、こっちもこっちで終わったみたい。後はデータ化して……と……」
突然完了を知らせるような音が響くと、メリッサさんはキーボードを素早く打っていた。
モニターに表示されているのはグローブの絵。
「当然パスワードが掛けられてるみたいね。8桁……何か覚えがあったりしない?」
「8桁……もしかしたら」
転間兄ちゃんの考えそうなことを考えてみると、ひとつ思い浮かんだものがあった。
だからこそ、それを伝えて打ってもらう。
「ビンゴ、生年月日って……結構典型的なのね」
「あはは……多分、雄英の先生に言われたとかそんな感じじゃないでしょうか」
本人自身がスマホにパスワードを設定しておらず、誰でも自由に開けられる状態だ。
そこの辺りは杜撰というか無頓着というか。
見られて恥ずかしいものがないと真顔で言ってのける人というのもあるんだろうけど。
だからもしもの時にパスワードは設定しろだの言われたんだとは思うけど、実際には分からない。
「まぁ今回はお陰で開けたのだから助かったけどね」
「ですね」
「それよりこのグローブについて……」
何かを見たらしいメリッサさんが固まった。
それから素早く目を通していく。
技術者とも言うべき、真剣な顔。
普段の優しそうな表情とのギャップに少しドキッとする。
静かになって少し経っただろうか、読み終えたのかメリッサさんは背もたれに背中を預けて一息ついていた。
「想像以上だわ……イズクくん、テンマさんって何者?」
「……へ?」
「これ、見てくれる?」
再びパソコンに向かうメリッサさんの横から覗き込むようにモニターを見る。
どこを見ればいいかわかるようにか、選択範囲を示す青い枠の部分があった。
「だいたいは装着者の安全を第一に考えられて作成されているわ。正直、ここだけでもかなりの技術を必要としてる。イズクくんを大切に思ってるんだってそこだけで十分伝わるわ。それに力を貯めて維持し、解放する。これだけでもこんなコンパクトなものに搭載するのは難しい。実際に耐久性に難があるからか高すぎる出力だと耐えきれずに壊れると思うわ。けれどここ、問題はこのグローブが壊れた際のものね」
「壊れた際……ですか?」
僕はサポートアイテムに関しては作成方法はよく知らないけど、メリッサさんがそういうならきっと、難しいものなんだろう。
確かに最大出力だと壊れるみたいなことは言ってた。でも壊れた際?
「うん、簡単に言えば……そうね、イズクくんがパンチしたとしましょう。例えばマイトおじさま並のパワーだったとして、その火力ではこの装備は壊れる」
「まぁ……オールマイトのパワーに耐える装備ってなかなか見当たるものでもないですしね」
「ええ、でもね。これは壊れた際に貯めた力と同じ一撃を同一世界上に再展開させる……といえばいいかしら」
「ええっと、つまり?」
「さっきの例えだけど、マイトおじさまの攻撃が一度に二度放たれるということね」
「え……」
とんでもない発言に声が出なかった。
つまり今の僕がこれに力を貯めて、15%以上の力を溜め込んだとするとその状態で殴って壊れた際にそれと同じ出力が僕の拳が届くのと同時に放たれるということだ。
オールマイトなら片腕で竜巻を起こす一撃が一気に二発飛んでくる。つまり両腕で計四発。
メリッサさんが固まった理由も分かる。
そういえば転間兄ちゃん、なんか引き寄せながら殴る技術を身につけたとか言ってたっけ……それの応用かな……。
「正直専門家じゃないというのが信じられない。きっと凄く勉強して努力したのね……このグローブから伝わってくる気がする。パパに見せても驚くと思うわ」
「デヴィット博士でも……!?」
「うん、ヒーローとしての実力も高くて、サポートアイテムの作成までも上手なんて、本当に凄い。正直技術者としてもやっていけるレベルよ。技術者としての血が騒ぐし解体して確かめたいとは思うけど……これはいっそ合体させちゃいましょう」
「合体……ですか?」
「下手に触ると機能を無くしてしまいそうだし、私じゃこれは作れない。というか、多分パパでも解体してしばらく研究しないと無理だと思う。だからいっそのこと、私のガントレットと一緒にしようかなって。時間掛かると思うけど……いいかな? もちろん嫌なら断ってくれて大丈夫だからね」
作るのに数年掛かってたみたいだけどまさかそんな機能があるなんて。
というか転間兄ちゃん技術の先取りしてない? 擬似的に個性を再現してるってことだよね、これ。
デヴィット博士でも無理って……どうやって作ったんだ?*4
だけどメリッサさんは僕のためになるから、提案してくれたんだ。
断る理由なんて、ない。
転間兄ちゃんには申し訳ないけど、何かあった時は素直に謝ろう。
「お願いします……!」
「ええ、預からせてもらうわ。少なくとも片腕だけでも明日までには最高の物に仕立てるから!」
「そ、そこは無理はしない程度で……もしメリッサさんが体調崩しても大変ですから」
「ふふっ、それもそうね! 程々に頑張るわ!」
◆◆◆
客の足が減って問題なくなって行ったら人を余らしても色々と無駄なのと対応出来る人数だけ残して解散してもらった。
ミリオを含む、いつものメンバーは最後まで居てくれたが昼時ほどの客はもう来ることもなく。
せいぜい店内が満員か満員に近いレベルが保たれていただけで問題なく終わり、17時30分。
閉店の時刻になった。
「本日は終了となります! ご来店いただき、誠にありがとうございましたー!!」
元気な声が響き渡る。
流石に精神的に疲れてしまったのもあり、ようやく一息つけた。
と言っても個性はまだまだ使える。脳を休める必要はあるけど
ただ疲労感は純粋に久しぶりに仕事というものをした疲れだ。
「片付けは俺らでやっとくから緑谷は休んでろよ。お前休憩なしで働いてただろ。個性も使いまくってたしもうヘトヘトなんじゃないか」
「んー……ああ、まあ引き受けた俺が抜ける訳にはいかないしな。あとそこは全然問題ないな」
「は? バケモノめ……」
「聞こえてるぞ椛木」
「ひえ地獄耳」
「いや普通に必須スキルなだけなんだが」
聴き取れなかったら社会人として終わりだよ。 営業しに行く際に取引先の人が声小さかったり電話の声が小さかったりと遠かったりと色々とあるからな。何より聴き間違いが発生したら面倒なことになってしまう。
そんなこと言えるはずもないので言えないけど……また思い出してしまった……!!
パパっと去っていく姿を見送り、湊さんには今日無事に乗り越えたこと。
それから精算などを見てもらわなければならない。
事務的な作業は俺がやっておくとして、お言葉に甘えて他に任せてうみちゃんも休ませよう。
それから先は少し仮眠でも取るか。何も摂ってないし。
重要フラグその①。
出久くんフルガントレット入手+その強化イベントです。
オールマイト並のパワー3回も耐えれるってやばいですよね。つまり個性、それも変速を一度きりとはいえ擬似的に再現出来るサポートアイテムを作ったお兄ちゃんは変態です(無慈悲)
例の秘密兵器とやらはこれ。
作中の説明通り、40%が限界→壊れる→釘パンチ擬きによって両手でやれば計4発の40%のスマッシュが遅れて、ではなく同時ヒット。
なお技術的にもブラックボックスすぎて再現不可。
多分三日くらい徹夜して偶然生み出したんじゃないですかね、なお作ったのもそうだけどこんなヤバい情報のパスワードが弟の生年月日というガバガバセキリュティにパワーローダー先生の胃は死んだ。
ちなみにお兄ちゃんが過去含めて再現したもの→変速擬き。発勁擬き。黒鞭。浮遊。
技術的なやつ→危機感知(というよりは気配感知)。
煙は別に煙玉とかでも発せられるので……実質OFA以外の歴代個性再現。
もし原作と変わってOFAが継承出来なかった場合でも出久をヒーローにさせるという本気度が半端ないですね、なんだこの完璧超人。キモすぎる。
アーマード作ることになったら自分のオートバリアとかつけそうなんですけど。
あっ、ちなみに誤解生む前に言うと、メリッサさんは普通に転間くんに対しては恋愛感情は一切なくただのファンです。
ユニ子様から支援絵を頂きました! これは……イケメンですね。そらこんな見た目でハイスペック(になった)な上あんな言動すればヤバいわ、お兄ちゃんがブラコンじゃなければヤバかった(確信)
だいたいイメージ通りなの凄いと思います。大人っぽく男らしい顔つきですね。
素敵な支援絵ありがとうございます。初めて頂いたので滅茶苦茶嬉しかったです。
ぜひ見て、見ろ(豹変)
夏服
↓↓↓
【挿絵表示】
冬服
↓↓↓
【挿絵表示】
原作
-
入る
-
もっとお兄ちゃん読みたい
-
作者の好きなようにやって欲しい