どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!!   作:俺もお兄ちゃんだぞ!!

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ランキングちょっとずつ上がってたから頑張るかと3日投稿して一瞬で力尽きました。
日が空くの早すぎる。そういやこの小説何気に1位行ったことなかったっけ。あの時はタイミングが悪かったんだよなぁ……1位が強敵すぎた。おのれガンダム。
ダブルオーとSEEDとビルドファイターズくらいしか知らんぞ!!




秘境

 

海の家に居た時とは違い、白い水着になっている。特徴的なのは布*1が上と下にも付いていることだろう。

そんな彼女と俺は海を走っていた。

そう、文字通り走っていた。

 

「緑谷さんって海の上でも平気なんですね」

「一応落ちてるよ」

「じゃあしっかりとエスコート、しないとですね」

「頼む」

 

別にほぼ停止してるようなものなので問題ないが、うみちゃんと手を繋いでいる。

エスコートを頼んだが、実際にはいつでも俺が彼女を守れるようにだ。

海の危険性はセルキー船長のところで嫌になるくらい学んだ。というか一度死にかけたし。

俺と密着してたり触れ合ってるものには俺と同等の力を付与することが出来る。離れられたら効力は無くなってしまうので、セクハラにならないようにするなら手を繋ぐくらいしか出来ない。

 

「それよりも俺はうみちゃんの個性に驚いたよ」

「えへへ、艤装って言うんですよ。訓練とかも鍛えたりとかもしてないのでせいぜい駆逐艦レベルしか出来ませんけどね。長時間も無理ですし」

「いや普通に十分すぎるぞ、凄い立派な個性じゃないか」

「ありがとうございます。やっぱり緑谷さんならそう言ってくれますよね……嬉しいです」

 

彼女は水上スキーのように移動している。

船の力を借りてるとは言っていたが、訓練次第ではとんでもない個性に化けるだろう。

正直ヒーロー向きな個性だとは思うが。

速さもなかなかのもので、海の上なら救助速度も十分だろう。

今は装備してないが、魚雷やら主砲やらも身につけることは出来るらしい。重たくてあまり持てないらしいが。

 

「イケナイことしてるのは分かってるんですけど、こうやって海に出れて気分が上がりますね」

「個人の個性使用は黙認されてるだけで褒められたものではないからな。良いことではないのは確かだ。ただまあ、迷惑をかけない程度なら大丈夫だろう。人を傷つけるわけでもなければ夜中だし、何かあったら俺が守る」

「ん――さ、サラッとそういうこと言いますよね緑谷さん」

 

はて、何か悪いことを言ったつもりはないのだが。

頬を赤くする彼女を不思議に思う。

 

「で、でもこうやってデートみたいなことをするのもアレですよね、ロマンチックですよね!」

「ああ、普通は出来ないことだな。ま、うみちゃんとデートするなら退屈しなさそうだ」

「はう……っ!?」

 

話してて思ったのだが、割とうみちゃんはロマンチストらしい。

救われた発言も何だかお姫様と王子様らしさもある気はしなくもない。

ただ実際海をこうやって男女で駆けるのは中々出来ないことだ。

 

「なんでそんな発言簡単に出来るんですかぁ……」

「そりゃ思ったことを反射的に答えてるだけだしな。嘘つく会話なんて疲れる」

「追い打ちはやめてくださいっ!?」

 

そんなつもりはなく、本当に思ってることを言ってるだけである。

嘘にまみれるのは社会だけで十分だ、あれほど疲れる世界を俺は知らない。

しかしこうして海を駆けてるのはいいが、目的地を俺は知らない。うみちゃんは慣れた様子なので道は覚えてるのだろうが。

分からなくても最悪俺が彼女を抱えて浮遊して駆ければ帰ることは出来る。

空いている手で胸を押えて深呼吸する姿を横目で見つつ、空を見上げる。

隠れていた月が姿を現しそうだ。

サポートアイテムの光力のお陰で外は見える。

というか職場体験で痛い目を見たので、もうダメージは受けないとはいえ暗いとやりづらいと分かった俺は改良したライトを使っている。

ライターひとつで明るいフリーゲームのホラゲー並の光はある。

 

「み、緑谷さんって……その、彼女さんとか居るんですか? 何だか慣れてる感じがするというか」

「居ると思うのか?」

「むしろ居ないと思わない人の方がいないと思います……」

「居ないよ。慣れてるように見えるのは俺が弟のために何か起きないように導いてきたからだろう。てか、それならうみちゃんだろ。見た目はもちろんのこと、明るくてコミュニケーション能力も高い。人気なんじゃないか」

「へぁ――わ、私は居ませんよー。好きな人は居ますけどね」

「へえ、そりゃ上手くいくといいな。相談なら乗るぞ」

「それで解決するなら今してます……」

「……???」

 

俺に相談出来ないということだろうか。

いや、確かに今までの会話から恋愛面で俺は頼りにならないだろう。実際頼りになる自信は全くない。

なんならこの数十年間、おおよそ14歳まで友達すらいなかった人間だぞ。

 

「けど緑谷さんって彼女さんは大切にしそうですよね。スパダリですもん。紳士的ですし、全然誰かに不快な視線も向けないですしね」

「すぱ……銭湯か何かか? いたことはないからその辺は分からないな。不快な視線に関してはどういう意味かは分からないが、邪な目は向けるつもりはない。失礼だろ」

「そういうところがそうなんですっ」

 

急に銭湯の話をしたのは意味不明だが*2、そういうところとはどういうところなのだろう。

この件に関しては口に出すだけ無駄だと諦めた。

 

「なんて話してる間に――ここです」

 

辿り着いたのは秘境とも呼べる場所だった。

陸に向かっていくので先に上がるとうみちゃんに手を差し伸べ、引っ張りあげる。*3

改めて周囲を見渡すと、深夜なのもあって真っ暗だ。

木々に囲まれている割には、なんだか空気が澱んでなく澄んでいて、嫌な気配ひとつ感じない。

聖域というのがあればこんな場所なのだろうか。

人の手がかかってないというのはよく分かる。

照らすライトを頼りにうみちゃんが歩いていくので、彼女を守れるように位置しながらついていく。

何度も来たことあるのか足取りは悪くなく、普通に歩くのと変わらない。

しばらく歩いていると、うみちゃんが足を止めて振り向いた。

目が合う。

 

「私が緑谷さんに見せたかったのはこの先です。普段も綺麗なんですが暗い時だからこそ、とっても素敵な場所なんです」

 

そう言って歩を進めたため、俺はその後ろをついて行った。

途端に眩い光が発せられ、思わず手で隠しながら進むと――

 

 

 

 

開けた場所に出た。

木々に囲まれた、大きな湖。

黄金の光、恐らく蛍と思われるものと泉自体が水晶の如く青い光を発している、まるで別世界にでも来たのではと思うくらいに幻想的な景色。

水には汚れひとつなく、清浄だ。

思わず目を奪われて、その光景を目に焼き付けていた。

 

「緑谷さんは妖精さんって居ると思いますか?」

「……妖精? 御伽噺にでも出てくるような、アレか?」

「はい。ここは湖の妖精が居ると言われてる場所なんです。こんなにも綺麗なのはその妖精さんが住んでるからという言い伝えです。真偽は私にも分かりませんが……私はそうだったら素敵だなと」

 

言い伝え、か。

妖精とやらは居るか分からない。会ったこともない存在を居るとは思えないが……。

 

「そうだな……俺も居ると思うよ。こんなに綺麗な泉は俺も見たことない。人の手が加わってないからこそ、自然の良さがそのままにされている。だからこそ、こういった場所は守らなくちゃならない。その妖精がいるから護られてると思う方が、悪くない」

「はい……そうですね」

 

その場でしゃがみ込んだ俺は、両手を合わせて目を閉じた。

いるか分からなくても、この光景を見せてくれたことに感謝を示したかった。

 

「ここは私のお気に入りの場所で、誰にも話したことがない秘密の場所です。私の先祖がここで妖精さんと暮らしていた……って私もおばあちゃんから聞きまして」

「それ、俺に教えてよかったのか? 明らかに他人に話してなかった、うみちゃんたち家族だけに語られてきたことだろ?」

「緑谷さんなら平気です。だって今もそうでしたけど、何かしようだって思いませんよね? それに……話していい条件が一つだけあるので」

「話していい条件? それって……」

「そこは内緒、ですっ」

 

俺の前に躍り出て、シーっと自分の口の前で人差し指を立てていた。

けれどその時の顔はとても明るくていい笑顔で。

泉が応えるように、一層強い光を解き放っていた。

それは俺ですら綺麗だと感じてしまうほどで。

 

「……あながち間違いでもないかもな。妖精か……もしかしたら神様か。うみちゃんたちは多分だけど、祝福されてるんだと思う」

「そうだと素敵ですね……いえ、その通りかもしれません。だって、こうして私は貴方に出逢えました」

 

にへら、とあどけなさを感じる表情を浮かべるうみちゃんに、突如何かかが重なった。

5年前の記憶がやけに鮮明に思い出される。

茶髪の女の子が転んで、巨大なヴィランがその少女を捕まえようとしていた。

俺はそこに割り込んで、俺に触れることが出来なくしていた。

そうして茶髪の女の子を安心させるように、出久が小さい頃に言っていたように、『俺が来た』と安心させるように告げて恐怖を消し去って、触れることが出来ずに混乱しているヴィランを蒼で吹っ飛ばして、その後にオールマイトパーカーを着た、ゴキブリみたいな体勢でこっちに向かってくる男の人とアイドルっぽい衣装に身を包んだ女の子と明らかにカタギではない大男が来たので、捕まったら不味いと少女と一緒に逃げた。

その時に相談されて答えたあと、名前を聞かれたような気はしたが、電車の時間があったのですぐに帰ったんだ。

相談内容までは明確には覚えてないが……助けた理由とか聞かれたような気はする。

ただその時に答えた時、その女の子は面白おかしそうに笑ったんだ。何かに絶望するかのように暗かった女の子が無邪気に。

5年前だから変わっていてもおかしくはない。

だが。

 

「うみちゃん、君はもしかして……」

 

彼女があの時の少女だったのではないか、と。

俺を知っているかのような口振りだったのはテレビで見たとかで説明出来るが、思い出した記憶と彼女が語ったことがあまりに似ている。

俺の意図を読んだのかうみちゃんは微笑んだかと思えば俺の手を取って引っ張ってきた。

 

「さぁ、帰りましょう? 緑谷さんっ」

「……ああ」

 

ふとホタルとは違う、青白い光球が俺の周囲をぐるぐると回って、額にぶつかってきた。

それからすぐに泉の中へと消えていく。

まるで、やっと思い出した俺を叱るように。

 

「今のは……」

 

――祝福されてるとは言ったが、まさか本当にそうらしいな。

仕方ないな、みたいなことを言われた。

それにどうやらうみちゃんも見えていたらしくて、酷く驚いていた。

土地に神は宿ると言われているが、ここではその役目は妖精が成しているようだ。

恐らく急に思い出したのも妖精の悪戯というものだろう。

全く粋なことをしてくれる。

俺に返せるのはもしもこの土地に何か起こったり悪人が踏み入れたら護るくらいしか出来ないが……その時はそうするとしよう。

 

その想いすら筒抜けなのか、泉は眩いほどに光を発していた。

普通に眩しい。

 

「こんなこと初めてですけど……緑谷さんも祝福されたのかもしれませんね」

「つまりうみちゃんたちの家族になったと」

「ふぇええっ!? か、かぞっ」

「……いや冗談だ」

「心臓に悪い冗談はやめてくださいよぉ……」

 

顔を真っ赤にした彼女にポコスカ殴られるが、ギャグアニメや漫画のポカポカ程度で全く痛くない。

しかし冗談にしてはやりすぎたかもしれない。彼女もいくらファンだろうと俺に助けられた過去があろうとそういう扱いは嫌だろう。

とりあえず手首を掴んで動きを止める。

 

「帰ろうか」

「――はい」

 

いい経験が出来た。

きっとこれ以上の光景を俺は見ることはないだろう。

帰りの海の上に立って、改めて泉があった方向へ軽く頭を下げる。

それから俺とうみちゃんは元の砂浜目指して海をまた駆けていた。

 

「……うみちゃん」

「はい」

「うみちゃんがうみちゃんでよかった」

「……はいっ!」

 

あの時の俺の行動にも、意味があったのだから。

暗かったはずの彼女はこうして明るくなって、俺自身も足りないことを知るきっかけになって、俺の成長にもなった。

何より彼女の笑顔を守ることが出来た。

 

「でもうみちゃんはヒーローを目指してるわけじゃないんだな」

「そうですね、傷付くのが怖いですし傷付けられるのも怖いです。ヒーローだけが人を助ける仕事でもありませんし……私、料理人を目指してるので」

「料理人?」

「はい、いつか緑谷さんに食べて貰えたら……って。きっとすごいヒーローになるから、私も凄い料理人になったら会えるかもしれないしお腹をいっぱいに出来るかなって。間接的にだけど、力になれるかなって。 ……えへへ、もう叶っちゃいましたけどね」

 

照れ臭そうに頬を掻いている。

彼女にとってヒーローではなく、料理人か。

今時の子にしては珍しいだろう。人気職なのもあってやはりヒーローを志す者が多い。俺は弟が歩むための道を作るためにヒーローを目指しているが。

自身の個性によって諦める者や現実を知る者も居るが、彼女の場合はそうではないようだ。

 

「……そか、じゃあこれからは?」

「これからも頑張ります。だって私、人の笑顔が大好きなので」

「ならいつか食べに行かないとな。それも一番乗りで」

「是非っ! 絶対ぜっーたい連絡するので! あっ、その時はサービスしますね、もしかしたら胃袋掴んじゃうかも」

「そうなったら毎日作ってもらわないとな」

「はい――へっ!?」

 

時間差で何故か顔を真っ赤にしていたが、彼女が料理人になったときが楽しみだ。

どうやら俺も、生きる目的が増えたようだ。

彼女が料理人になれるその日まで、ヒーローとして頑張っていかなくちゃならないな。

それがきっと、彼女の“夢”の手助けになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

親族や家族の方たちが来るとのことで、事情を説明するために俺はうみちゃんや湊さんが経営する海の家に来たのだが。

何故か食卓を囲むことになった。

いや全く何故。

対面にはうみちゃんの両親で、俺の隣にはうみちゃん。誕生日席には湊さん。

これあれだろ、両親に挨拶する的な囲み方だろ。前世で経験したぞ。

と言っても俺じゃなくて頭の固い後輩の両親を説得するために同席する羽目になっただけなのだが。

……今更だけどそれっておかしくない? 当時は気にしてなかったけど。

まぁ無事結婚してたからいいか。

 

「いやーまさかあの緑谷さんに会えるとは。娘がお世話になったようでありがとうございます」

「お店の方も手伝ってくれたようで。本当にどう感謝すればいいのか」

「い、いえいえ。勝手にやったことですし、本来知るべきではない情報だったり金銭関連だったりとやるべきではないことまでしたのはこちらなので。ちゃんと誓約書も書いてきたので取っていてもらえば」

 

見ていて貰ったとはいえ、部外者がやるべきではないことだ。

もし俺が悪人だったら金銭をくすねたり外部に情報を漏らす可能性もある。

昨日秘境から帰ってうみちゃんを送ったあと、暇だったので書いたのだ。

それからずっと起きてるので睡眠時間2時間だが、ぶっちゃけ若い肉体だしもとより昔から寝てないことが多かったので全然平気だ。

とりあえず料理については記憶から抹消したし、この店の情報は墓まで持っていくつもりだが、それだけでは足りない。

この誓約書を破れば俺は間違いなくヒーローになれなくなる。だがそれくらいのことをせねばダメだろう、社会人として。

どちらにせよ、文句や怒られるならまだしも感謝されることではない。

 

「いえいえ、緑谷さんなら問題ないでしょう」

「その信頼はどこから……?」

「緑谷さんがテレビに出たりニュースになる度にうみが耳にタコが出来るんじゃないかってくらい語っててねぇ。それも貴方に出会って帰ってきた時から――」

「わーっ!!」

「どうか娘をよろしくお願いします。良ければ貰ってやってください」

「そうねぇ、良い人だしいいんじゃないかしらねえ」

「パパッ!? おばあちゃんまで何言ってるの!?」

「いやいやっ! うみちゃんの意志が大切ですしよく出会ったばかりの人に言えますね!?」

「ハッハッハッ、実は私もファンでね。むしろ大歓迎さ、それにうみなら――」

「お店!! 早くお店の開店準備しないと!!」

 

うみちゃんが振り回されてるなぁとか思いながら、やっぱり親は強いものなのだと感じた。

ただし誓約書は押し付けたが。

けどなんかこう、見ず知らずの人からここまで好意的な対応をされると俺も戸惑いがある。

文句のひとつふたつ覚悟していたし土下座でもなんでもして許してもらうつもりだったが、無茶苦茶大歓迎ムードだ。

というかうみちゃんが俺を好いてくれるのは知っているが、それはあくまでファンとしての感情だろう。

俺にはないが、いわゆる推しとやらに向ける感情に過ぎないはずだ。

本人からは聞いてないから分からないが、まだ中学三年生。出会いも待ってるのだからそんなこと言ってはダメじゃないかな。

 

「そのことなんだが、うみ。今日は休みなさい」

「……え?」

「昨日大変だったし、せっかく憧れの人に出会ったんだもの」

「で、でも私が抜けたら……」

 

俺に入る権利はないため、蚊帳の外になった。

こればかりは彼らの問題。

手伝いが必要なら今日も手伝うが、今日の夕方には帰らなければならない。

最悪俺にはタクシー(ホークス)を呼ぶ手*4もあるが……来てくれるかは知らん。その時は俺が休みになるだけである。

 

「緑谷さんが良ければなんですけど……うみと遊んでやってくれませんか?」

「それはいいですけど、本当にいいんですか?」

「ええ、これは既に三人で話したことなの」

「夏休みなのに毎年来てくれてねぇ……うみにとっては今日は特別な日だと思うわ。昨日も頑張ってくれたし、緑谷さんがいいならお願いしたいねえ」

「そうですね。うみは昨日頑張ってくれた。その褒美もないとね、何。今日は私たちもいる……それにたまには息抜きしないとさ」

「そういうことなら……分かりました。うみちゃんのことは俺が責任を持って預からせてもらいます。ですが、結局決めるのはうみちゃん自身だ。君が選択すればいい。どんな答えだろうと、この場の誰もが納得するよ」

「緑谷さん……」

 

どんな事でも決めるのは自分自身でしかない。

少なくとも人は居るみたいだし、俺も手伝う必要はないだろう。

居ないならば今日も俺が入るつもりだったが。

 

「パパ、ママ、おばあちゃん……」

 

うみちゃんの答えを三人は見守っていた。

優しい面持ちで、決断を待っている。

それだけで家族仲の良さが分かる。

それはきっとうみちゃんがいい子だというのもあるのだろう。

 

「……緑谷さん。本当に、いいんですか? 私が緑谷さんたちと一緒に遊んでも、ご迷惑になるんじゃ」

「子供が迷惑を気にするもんじゃないって。それにみんな歓迎してくれる。心配せずとも俺が傍にいるから大丈夫だ」

「……はい。でしたらその、不束者ですがよろしくお願いします」

「ああ、任せろ」

 

頭を下げる彼女の頭を撫でて、改めて両親と彼女の祖母に向き合う。

 

「ということですので彼女は俺が必ず守るので、安心してください。お店に関しても何かあったら俺の連絡先に連絡してくれれば手伝いに来るので」

「ええ、その時はよろしくお願いします」

「是非娘を幸せにしてくださいね、緑谷さん」

「ママまで!?」

「それはなにか違うと思うのは気のせいですかね」*5

 

とまあ、何かズレてるような気もするが預かることになった。

誓約書の方に連絡先はあるから何かあったら電話してくれるだろう。

これならうみちゃんも状況を知れるしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――意識が覚醒する。

何となく感覚として自分が寝転んで寝ているという自覚はあるけど、いつ寝たのだろう。

確か昨日はあの後凄い緊張したけどオールマイトたちと食事を共にして、明日から訓練に移るって話を聞いて、メリッサさんのところでサポートアイテムを作るところを見せてもらっていたところだったはずだ。

メリッサさんは面白くないと思うみたいなことを言ってたけど、僕は転間兄ちゃんが今までどう作ってきたのか知れたし情報を知るのと間近で見るのとではやっぱり全然違う。

だから新鮮でメモを取るくらいには楽しかったんだけど、寝た記憶がない。

となると恐らく寝落ち的なあれだろう、と状況を把握するために目を開けると暫くして朧気だった視野が回復してきた。

金色の何かが映り、徐々に鮮明になっていった。

 

「……んんっ!?」

 

目の前にはメガネを外した、端正な顔がある。

息遣いが聞こえるくらいの距離で、あまりに無防備な姿だ。昨日と違って寝間着姿なのとメガネがないというだけで印象が変わって、ドギマギしてしまう。

う、うお、ちか……じゃなくって、なんで。なぜ!? なにが!? い、いやここは僕の用意された部屋じゃない。服は……うん、大丈夫。過ちは犯してないみたいだけど色々とやばい!

デヴィット博士に見つかったら殺される!

そーっと、そーっと離れて、掛けられていた毛布が落ちそうになったのを慌ててキャッチしながら、メリッサさんにそっと掛けた。

自分の心臓に手を当てると、二重の意味でバクバクとしている。

深呼吸して落ち着くと、ふと作業台に目が向かった。

まだ途中なのは見て分かるけど、きっとギリギリまで頑張ったんだと思う。

サポートアイテムを作る人も、転間兄ちゃんもこんな感じで作ってくれてたのかな……。

本当に僕には勿体ないくらい、凄い兄だ。

特に転間兄ちゃんは周りに教えてくれる人も居らず、独学で作り上げた。

一体どれだけ勉強して努力したのか本当に想像が出来ない。

それも自分は必要としてないのに、僕なんかのために。

だから。

だからこそ、なるんだ。

今度は転間兄ちゃんを守れるくらいに、その力でみんなを守れるように。必ず助けて勝つ最高のヒーローに。

決意を新たにするように、僕はそう心の中で思いながら握り拳を作っていた。

 

「ん……ふわぁ……」

 

びく、と思わず振り返る。

起こしてしまったのでは、と思った。

メリッサさんは寝起きの目を擦ると、ぽわぽわと綿でも出てそうな様子で。

 

「あ……。ご、ごめんね。何だか恥ずかしいところ見せちゃったみたいで」

「い、いえっ……気にしないでください」

 

僕の存在に気づいたのか、視線が固定されると恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

その姿に胸を抑えながら顔を逸らす。

ね、寝起きというのもあって破壊力がやばい……!!

 

「改めて……おはよう、イズクくん」

「は、ハイ。オハヨウゴザイマス……」

「どうしてカタコト?」

 

くす、と小さく笑うメリッサさん。

今度は何だか僕が恥ずかしくなる。

 

「それでその、着替えたいのだけど……」

「し、失礼しましたっ!!」

 

言われて初めて気づき、僕は慌てて部屋から出ていった。

気遣いができなくて申し訳ないけど、このままここに居たら居たらで心臓が持たなかったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

と、そんな1幕はあったけど、それより。

 

『準備はいいかな、イズクくん』

「はい!」

 

今日は僕の出力の限界を知ることから始めることになった。

なんでもOFAのことはデヴィット博士に話したらしく、そのことに謝罪されたけれど僕は僕で思うところがあったから気にしてないです、とオールマイトに答えた。

少なくとも僕の母さんとかに話すよりかは安全だし、サポートアイテムを扱うデヴィット博士の力と知恵を借りれるなら十分すぎるほど見返りはある。

メリッサさんには話してないみたいだけど……。

 

『緑谷少年、100%は出さないようにね!』

 

少なくともわかっているのはオールマイトよりも強化されている100%を使えば僕の腕は怪我する可能性が高いということ。

ひとまず許容範囲内の8%をフルカウルで纏った。

 

『ふむ、8%か』

「はい、今は8%でコントロールの精密さを強化してる最中でして」

『イズクくんにはその方がいいだろうね、君はどちらかというと頭で考えるタイプだ。トシとは違う。……もしかしてトシは教える時に感覚で教えてなかったかい?』

「ええ、まあ……」

『トシ……』

『分かってる、分かってるんだよデイヴ。反省してるからそんな目で見ないでくれ……』

 

どうしよう、僕のせいでオールマイトの情報が流れてしまっている。

僕のせいで喧嘩になったりとかしないよね、大丈夫かな……。

 

『さて、ここから限界まで上げていこう。やばいと思ったら解除してくれ』

「分かりました!」

 

8%はあくまで許容範囲内。安定して扱える出力だ。

安定せず使える出力ならまだ先にいけるはず。

両足を開いて重心を落とし、腰部に握り拳を作りながらOFAのさらなる力を引き出す。

8%で満足なんてしてられない。僕が転間兄ちゃんに追いつくにはもっともっと強くならなくちゃならないんだ。

オールマイトがいつ引退してもいいように。

兄が、母が、家族が安心出来るように。

誰にも心配かけないように!

 

『10……11……12……13……――』

 

 

 

 

『20!』

 

そのカウント共に、出力の上昇が止まった。

体の方は昔から鍛えられてきたお陰で問題ないけど、コントロールが難しい……!

これ以上は油断したら出力がブレブレになって最悪全開で使ってしまいそうで、保つのだけで精一杯だ。

 

『1度解除して構わないよ』

「は、い……!」

 

出力を落とし、安定した範囲まで落とすとドッと疲れがやってきた。

やっぱりまだコントロールが弱い。

まだ4ヶ月くらいしか受け継いでないと言われればそれまでなんだけど。

 

『凄いじゃないかトシ。彼、まだ4ヶ月なんだろ?』

『まぁね! ただまともに扱えるのは15%ほどだろうね。無理すれば20%……ってとこかな』

『それもこれも彼の兄のお陰だろうけどね』

『ぐう……っ! それは言わないで欲しいな……』

『はは、からかうネタにちょうど良くってね』

『私は罪悪感に苛まれてしまうよ』

 

秘密を話したからか、なんだか昨日よりも気が合う友人、って感じになってる気がする。

二人の中で意識の変化でも起きたのかな。

 

『話を戻すとして、イズクくんは全力で使ったことは?』

「まだないです」

『ふむ……本当はその経験も積んでおくべきだが、怪我をさせる訳にもいかないな。なら、今は20%を安定して扱えるようになる。それを目標にすべきだ』

『20%でいいのかい?』

『トシ、こういうのは遠い目標よりも程よく近い目標の方がいいものだよ。いきなり全力を目指したら雄英入試までに彼が焦るかもしれないだろ』

 

――否定は出来ない。

もしそう目標を定めたらきっと僕は無茶をすると思う。

ただでさえ僕が目指す場所は遠いのだから。

 

『確かにそれもそうか……なら後は反復になるのかな?』

『そうだな、後はイメージする力を鍛えるのとサポートアイテムを含んだ、今までの戦闘スタイルを強化していけばいいだろう。他には出力を補う戦い方だろうか?』

「戦い方……」

 

僕の脳裏には二人の人物が浮かび上がる。

一人はオールマイト。拳ひとつで数多くのヴィランを打ち倒し、人々を救助してきた平和の象徴。

もうひとりは“蒼”と“赫”という力を使い、手足を使って近接戦闘を行う僕の兄。

そういえば。

 

『――出久。出久ならこんなこと言う必要ないと思うけど、戦いにおいては硬い思考はむしろ邪魔になる。柔軟に物事を考え、先入観にも囚われないようにしような。ヒーローなら特にそれは大事だと思う』

 

そう、柔軟な思考。

僕は未だ何かに固執してるのではないか。

転間兄ちゃんは別に足を使う必要はないはずなのに、足で戦うこともある。

足の筋力は腕の3倍とされている。

だったら、足りない分をサポートアイテムだけでなく……!!

 

「博士、オールマイト。何か的、お願いします!」

『緑谷少年。何か思いついたのか? ならデイヴ』

『分かった。今出せる1番硬いロボを出そう』

 

射出され、出てきたのは一機のロボット。

見るからに頑丈そうで、鉄のアーマーを纏ったロボットといった感じだ。

とりあえず今引き出せるギリギリの15%で!!

 

「SMAAAAAAAASH!!」

 

振り下ろしてきたロボのアームを蹴り壊し、流れるように胸部を蹴り、着地と共に駆け出すとアッパーカットで打ち上げ、跳んで足を突き出しながら貫く。

オールマイトは拳ばかりだけど、足りないなら攻撃出来る場所を増やして選択肢を増やせばいい!

腕と足を使った、僕のスタイル。

今のは高速機動と威力を両立させた技。

名付けるなら、安直に。

 

「シュートスタイル……!」

 

ときに腕。ときに足に集中的に強化することで高速のコンボ火力を引き出せる戦い方。

これならもし腕が使えなくなったり100%を使わなければならない事態に陥った時でも機動力は残したまま戦うことが出来る!

オールマイトを倣うだけではダメなんだ。今までも足は使ってたけど、今度からは腕と足のふたつを使って成長していく……!

足をメインにしたスタイルと腕をメインにしたふたつのスタイル!

僕には参考に出来る人が、前に居てくれる人が身近にいるんだ。

 

『そう来たか! 一撃を高めるのではなく、連撃!』

『ゴリ押しのトシとは違う戦い方だね。だけどイズクくんにはそのスタイルが合ってるようにも僕は見えたな。腕よりも足の方が力は強いしね。それに相手に簡単に戦い方を学習されないという利点もある』

『私も基礎でゴリ押しされる方が怖いね』

 

二人からも概ね好評のようだ。

よし。それなら20%を扱えるようになること。パンチとシュートスタイルを両立させる。

これが僕が掲げる目標!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
フリル。

*2
スーパーダーリンの訳。非の打ちどころがない完璧な男性を意味し、決して銭湯ではない。

*3
つまりは行動ならばこういうところとか。

*4
流石に冗談だが、No.3をタクシー扱い出来るのは多分こいつだけ。

*5
なんでそこは鋭いんですかね。





前話の終わり方は狙ったけどえっちなのだと思った人は心が汚れてます、私は汚れてました。


紹介。

・白鳥うみ

個性:艤装。
漢字のままだが、船の力を借りれる。アズ〇ンとか艦〇れをイメージすれば分かりやすい。
鍛えたら潜水艦やら軽巡やら重巡やら戦艦やらとだいたい装備出来るが、本人の力量的にも技量的にも駆逐艦レベルで精一杯。
ただし性格がヒーロー向きではないため、彼女にとっては海の上を走る用の装備。ちなみに個性の影響で夜目が利くというメリットもある。
鍛えたら海の上ではクソ強い。
作品が違えばまず間違いなく主人公。

・祝福:海を守護する妖精さんとやらの祝福。
その泉は海面から光が立ち昇っており、青い光が発せられている。
あの転間くんが目を奪われるレベルで綺麗な幻想的な景色。
祝福された者は健やかに生きられるとされる他、海の加護を獲られるらしい。
この土地が無事なのは妖精のお陰。キレたら街一つ普通に滅びる。
お兄ちゃんなら勝てるが、逆にお兄ちゃんが必要な相手ってことはクソヤバいということ。

・正体。
チームアップミッションにおいて、神木を守る巫女が登場するがこっちはうみちゃんが巫女のような存在であり、実はガチめに神様に近い存在。
心が清らかな者のみが見ることが可能であり、ここ数十年ほどは表に出ることはなかったがあまりにお兄ちゃんがクソボケ過ぎて見てられなくて出てきた。
うみちゃんは幼少の頃に何度も見てるが、小さすぎたので覚えてない。
が、妖精さんにとってはうみちゃんは娘のようなものなので干渉した。
人類の味方ポジではあるものの、どっちかというと白鳥家のためにそうなってる節はある。
願うのは白鳥家の者が幸せに生きて幸せに死ぬこと。

ちなみに白鳥家以外の者に話して良い条件とは、“生涯を共にしたい”と思える相手にのみ。
“他に誰も愛さない”という自身を縛る誓いでもあるとかないとか。

うみちゃんが設定盛り盛りなのも強いのも劇場版ヒロイン枠なだけある。




・緑谷出久
・シュートスタイルについて。
メインは基本殴るだったため、一撃一撃が足りないので連撃のために編み出したスタイル。
原作と違い、ふたつのスタイルを使い分けたり合体させてくるので動きが読めづらくなる……が、それは原作に入ってからになる。
ちなみに20%でもコントロールを諦めたら普通に使えるが、力の流れによっては怪我するため、危険なので最終手段。
流石にお兄ちゃんに鍛えられてもオールマイトより高い出力を出せるOFAの100%は厳しい。

原作

  • 入る
  • もっとお兄ちゃん読みたい
  • 作者の好きなようにやって欲しい
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