どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!!   作:俺もお兄ちゃんだぞ!!

33 / 33

この話を抜いてあと3話で最終章になります。
そのうち、次で海の話と出久くんの方も終わり。
オリジナルキャラであるうみちゃんが意外と好評で嬉しかったです。流石この作品の救世主のひとりだなーと。
恋愛系の描写とかはっきり言って苦手なんで、甘く出来てるかどうか。




最終日の海水浴:前半

 

ということで、一度水着に着替える必要があるため、港さんの家の前でうみちゃんを待ってペン回ししてると、暫くしてうみちゃんが出てきた。

Tシャツを上に着ているが、下は何も履いてないことから既に着てきたのだろう。

手に持つ荷物を代わりに持つと、何故か動かないうみちゃんを見つめる。

 

「あの……ど、どうでしょうか」

 

どうと言われてもシャツの姿だ。

いや、よく観察すれば靴は履いてある。

リボンも別のにしてるらしい。色は同じみたいだが。

 

「いいデザインだな。うみちゃんにはリボンも靴も全部似合ってると思うよ」

「……!」

 

そう言うと、何故かうみちゃんは黙ってしまった。

あれ、間違えた?

 

【挿絵表示】

 

ちょっと無言の空間が出来上がり、彼女の口元がピクピクとしていて目を逸らされていたが、咳を入れるとハッとしたうみちゃんに、行こうかということを伝えるように手を伸ばすと、クラスメイトたちが待つ場所へ向かった。

既に連絡はしてあるので驚くことはないだろう。

問題はあの問題児共*1だが。

 

「ん? おーい、転間ー!」

 

歩いて向かってると、ミリオが一番先に俺に気づいたらしい。

手を振ってきたので手を挙げて応える。

 

「その子がうみちゃんって子だよね。昨日は自己紹介する時間なかったよね! 俺は通形ミリオ! 転間とはクラスは違うけど親友なんだ!」

「友達だ」

「あ、はい。白鳥うみと言います。通形さんのことも存じて上げてます。緑谷さんと仲良いなーと思ってたので! 個性も中々印象的でしたし!」

「ハハ! これでももう2年の付き合いだからね! 一緒に遊んだり訓練したりしたし“親友”と言っても過言じゃないよね!」

 

この野郎ゴリ押ししやがって。

そもそも友達も親友も変わらなく無いか?

定義として分ける必要ある?

 

「転間くんやっと来た! ねえねえ、その子って昨日の子だよね。名前は? 昨日は凄かったねぇー! その髪って地毛? とっても綺麗! 目はもっと素敵! 昨日は休めた? 凄く頑張ってたもんね、疲れてない?」

「は、はわわわわ……っ!?」

「落ち着けお前」

 

めっちゃ間近で質問責めされているうみちゃんが狼狽しているため、間に挟まって落ち着かせる。

 

「転間くんは何の話してたの? もっと早く来るかなーって思ってたのに結構時間掛かったよね。というか聞いたよ、転間くん今日寝てないんでしょ? 体調崩さない? 大丈夫? 倒れる前に言って?」

 

つもりがヘイトを貰ってしまった。

顔を覗き込むように接近してきていて、クソ近い。

まあ慣れてるので今更取り乱すことはない。

 

「彼女の家族に捕まってな。睡眠に関しては昨日お前も知ってるだろうがちゃんと寝てるから問題ない」

「転間くん、2時間程度で人はちゃんと寝てるとは言わないと思うの」

「寝たら寝てるだろ。なんなら10分でも寝てたら十分だろ」

「それはおかしいと思う……転間」

「アハハ! 10分だけに十分って転間もやるね!」

「くたばれ」

 

やってきた環にさえ否定されてしまったが、1分でも寝たら寝てるということだろ。1時間や2時間寝ようが8時間寝ようが12時間寝ようが睡眠という扱いなんだから。

 

「それより大丈夫か、うみちゃん」

「は、はははい! 波動さんが想像以上に眩しくって……と、とっても可愛いし綺麗……!」

「あれ、私のこと知ってる?」

「それはもちろん!! 波動ねじれさん! 緑谷さんと“とっても仲良し”な姿が映ってましたし、去年も今年も体育祭の決勝戦でぶつかり合ってましたよね! 去年のミスコンでも2位で入賞してましたし、こうして会うと想像以上でしたけど! そちらの方は天喰環さんですよね! 凄い個性だなーって思いながらずっと見てましたけど、複数の能力を扱う難しさは知ってるつもりなので本当に凄いなと思ってまして!」

「転間、彼女眩しい……」

「俺に言うなよ、そこは同意するが」

 

目を輝かせて早口で話すところは弟に似ているな、と聞いていて思ったが、環は早速陽キャオーラにやられてしまったらしい。

なんというか後光が指しているというか、本人が発光してない?

珍しくねじれが静かだな、と思ったら何故か照れていた。

これもまた珍しいな。いつもならカウンターしてそうなんだが。

そうなったらついていけないので助かる。

どちらかと言うと環寄りの俺はミリオやねじれのようには行かないのだ。

まあ俺の場合は社会人スキルしか持ってないのが大きいだけなんだけど。

 

「あ、申し遅れました。私白鳥うみです! 白い鳥と書いて、白鳥です。今日はよろしくお願いします!」

「うん、よろしく!」

「よろしくね〜この子いい子だね、転間くん」

「ああ、要領も良くて丁寧だし気遣いも出来る良い子だよ」

「そ、そんなに言われると恥ずかしいです……」

「転間くん……またやったの……?」

「何をだよ」

 

まるでいつもやってるみたいな言い方をされたが、何をしたのか。

俺は俺に聞いても分からん。

誰か答えを教えてくれ。

 

「なに、また緑谷が何かやらかしたの?」

「何もしてない、無実だ」

「そっ、ならいいけど」

 

甲矢も俺が本気でなにかしたとは思ってないようで、特に騒ぐこともなく。解散を促す。

明日からはまた忙しくなるだろう。

最後の羽根伸ばしと行こう。

 

「じゃあ行こうか、うみちゃん」

「はっ、はひっ」

 

緊張した様子で俺の手を取っていた。

雄英生に囲まれてるし緊張してるのだろう。*2

だが遊んでいたら緊張もほぐれるはずだ。

うみちゃんが転けないようにそっと引きながら、テントの方へ向かう。

自分たちの位置する場所に荷物を置くと、流石に今日は俺も参加する必要があるので上着を脱ぐ。

すると視線を感じた。

何故かうみちゃんが両目を隠しながら、両手の指の隙間から見ている。

 

「どうした?」

「い、いえその、なんだがイケナイ気がして……」

「よく分からないが上着を着てたら水中は動きづらいからな。それに俺の体くらい昨日見てるだろ?」

「そ、それはそうですけど、今回はまた別というか。あの時は忙しくてそんな暇はありませんでしたし、とにかくその、あの……緑谷さんは魅力がありすぎます……っ!!」

 

顔を真っ赤にされてそう言われてしまった。

昔から鍛えてきたのもあって筋肉は確かにかなりあるだろう。腹筋もちゃんと6つに割れてるし。

腕もそこまで太いってわけではないけど、筋肉はしっかりとある。

この辺りは体質なども含まれるが。

俺は個性頼りにしない戦い方もするため、攻撃力を増すには筋肉が必要なのだ。

個性にかまけて使えない状況にされたら何も出来なくなる。それでは最強で最高のヒーローにはなれない。

 

「そうは言うけど、ほらあいつらだって上半身裸だし」

「いえ緑谷さんの価値は他の人の数百倍、数千倍以上は余裕であるので。というか国宝級です」

「お、おお……そ、そうか」

 

突然真顔になったので困惑した。

どうやら彼女の中に意識が替わるスイッチのような単語があるらしい。

 

「で、でも確かに堪能出来るのは今だけかも……生で緑谷さんの身体を見れるのは今だけ? けどこれが許されていいの……!? 凄くがっちりしてて頼りがいがあるし触ってみたらどうなんだろう。やっぱり硬いのかな。触る? 私なんかが触ってもいいものなの!?」

「え、えー……減るもんじゃないしうみちゃんが触りたいならいいぞ?」

「いいんですかっ!?」

「あ、ああ」

 

めちゃくちゃ食いついてきた。

弟の早口に慣れてるので全部聞き取ることは出来たが、言ってることはぶっちゃけ触りたいことしか分からなかった。

だがヒーロー志望でもない限りここまで鍛えないだろうし、年頃の女の子となるとやはり筋肉は気になるものなのかもしれないな。*3

 

「じゃ、じゃあ失礼して……」

 

ゴクリ、と唾を呑み込んだうみちゃんが恐る恐る俺の腹筋に触れた。

女の子らしい柔らかい手の感触と少し暖かい体温を感じられる。

擽ったくはない。

 

「ほわぁ……す、凄いです。もう手を洗えません……!」

「いや洗ってくれていいからな?」

 

なんなら食材を扱うのなら手の清潔さは大切だろう。

 

「カチカチだぁ……バキバキですっごく硬い。それに腹筋だけじゃなくて胸筋も硬くて引き締まってるというか……逞しさしかなくって。もうなんというか……エロいです!!」

「えッッ……そんな言葉がうみちゃんから飛んでくるとは想定外だよ」

「手に触れた時もがっちりしてるとは思ってましたけど……そうとしか言えないくらい魅力があると言いますか……そう、色気! 色気があります! って……ご、ごめんなさい。変なこと言っちゃって」

「うーんまぁ……褒めてる、んだよな。素直に受け取っておくよ」

「は、はい」

「…………」

「…………」

 

なんだこの状態。

沈黙した空間の中で男性の体を触る女子中学生。

もしかしなくてもアウトだ。

主に俺が。

 

「ハッ!? お、思わず夢中に……!」

「ああ、うん。ずっと触ってたな」

「うう、すみません。お詫びと言ってはアレですけど……」

 

面映ゆそうにうみちゃんがTシャツを捲っていた。

案の定水着を着てきてたようで一般的な普通のピンクの水着だ。

これで3着目だが、明るめの色は似合うなと思いつつも、わざわざ別の水着したんだなーと思った。きっと服装とか変えるのが好きなんだろう。*4

 

「わ、私のお腹を触ってくださいっ」

「待てうみちゃん。それは色んな意味で俺がやばい」

 

誰かに見られた瞬間、余裕でしょっぴかれる。

それに別に体を触られた程度で何か代わりを要求したりはしない。

 

「それより」

 

いつまでもここに居ても仕方がないため、彼女の両腕を上げさせてTシャツを脱がすと、折り畳む。

 

「息抜きに来たなら遊ばないとな。日焼け止めとかは大丈夫か?」

「あ、はい。その辺はしっかりと」

「それならいいか。日焼けすると中々大変らしいからな」

「そ、そうみたいですね……緑谷さんは焼けてる方が好きとか……ありますか?」

「いや特に。痛いならやめた方がいいんじゃないかな。好きにしたらいいと思うけど、俺は今のうみちゃんでもいいと思うよ。俺はだけど」

「そっ、そうですか。えへへ……」

 

仕事以外で行ったこともなければ、日焼けを経験したことがあるわけでもない。ぶっちゃけ今は日焼けすることなんて絶対にないし。

ただ大変だという話はよく聞く。焼きたいならいいと思うけど。

とにかく準備が問題ないようだったので、なんか嬉しそうなうみちゃんを連れてクラスメイトたちが遊んでる方角へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

昔はともかく、今のうみちゃんは完全に陽キャに分類されるタイプだ。

本人は純真だし愛嬌もあるため、あっさりと受け入れられていた。

 

「緑谷さぁ……女子中学生をナンパするのはどうなのよ?」

「してねーよ。うみちゃんの両親から頼まれただけだ」

「もう挨拶を済ませたのか!? 段階飛び越えすぎだろ!」

「なんでそうなる!?」

「いやいや今のは緑谷も言葉足りてないだろ」

「つーかモテるくせに全然身を固めようとしないじゃん」

「それな」

「俺が……モテる……? 大丈夫か……? 病院行くか……?」

「ガチで心配された!?」

「ダメだこいつ、早く何とかしないと」

「お前が病院行けよ」

「波動さんでアレだからな……」

 

人が真面目に心配してやったのに逆に病院行けとか酷いやつらだ。

俺は至って正常だしファンはいるかもしれないが、モテてはいないだろ。

関わりが深い身近の女子だと三人しかいないし、甲矢とは色々言い合える友人。ねじれは騒がしいが、入学して初めて出来た大事な友人。真綿は大事な後輩。

これでそう捉えるのは頭おかしい。*5

 

「流石弟しか見てないやつだ」

「当たり前だろ」

「そこは即答するんかい」

「ここまでブレないと一種の尊敬すら覚える」

「分かる」

「それより競争しね?」

「いいね! 転間勝負だ!」

「馬鹿野郎! 海でそんなことしたら危険に決まってるだろ!!」

「正論!!」

「やるなら俺の目が届くとこでやれよ、じゃなきゃ数秒で数人程度しか助けられん。範囲外に行かれると100人救うのに数分はかかる」

「十分すぎるわ! オールマイトかお前!!」*6

 

沖まで競争とかやりがちかもしれないが、実際にやるのは本当に危険だ。海無礼んなよ。すぐ荒れるし 離岸流(リップカレント)に巻き込まれる危険性もある。

はるか沖まで流されることはないが、リップカレントのスピードは秒速2m以上になることもある。

“沖に流される”という恐怖感からパニックに陥ったり,岸に戻ろうとして流れに逆らって泳ぐことにより,疲労して溺れてしまう危険性だってある。

海水温や波の抵抗で急激な疲労や熱中症や脱水症、危険性物やヴィラン。急深な地形――航海でなくても危険はどこにだってある。

 

「まぁ俺は今回は見守っとく。気をつけろよ、何かあればすぐ呼べ」

「はーい先生」

「承りました先生」

「よろしい、なら行け。あと先生じゃない」

「じゃあお兄ちゃんで」

「よーし、いいサンドバッグがあるな?」

「躊躇いがねえっ!」

 

指をポキポキと鳴らすと逃げるように泳いで散っていった。

わざわざ追いかける必要性はないため、追いかけたりはしない。

それに俺にはうみちゃんを守る仕事があるからな、目を離す訳にはいかない。

時間帯的にまだ大丈夫だろうが、彼女をナンパしようとする者が現れる可能性もあるわけで。

男が居た方がいいだろう。

彼女に指ひとつ触れさせるわけにはいかん。

 

「相変わらずお人好しだなー」

「それが転間だから」

「お前らは居るのかよ、向こう行け」

 

ミリオと環だけは残ったらしい。

しっ、しっ、と追い払う仕草をするが、動く気はなさそうだ。

完全に入水してるだけになっているんだが。

いいか、とうみちゃんの方を見ると、ねじれと完全に打ち解けている。

これが陽キャ同士の力か……。

 

「それよりさ、転間も遊ばないと勿体ないよ。昨日はほとんど遊んでなかったし、楽しい思い出作らないと!」

「十分だって」

「気休めも大事だと思うよ……転間」

「そんな疲れてるように見える?」

 

特に疲弊してるわけではない。いや、出久に会えなくて寂しいけど。

今はタスクを受け持っているため、考えないようにしている。

考えたら無理、マジ無理。

今すぐ帰る。

なんならI・アイランドに行く。弟がいるであろう方角的には……東側か。*7

 

「あっ、転間くーん! こっちこっち!」

 

結構離れてるのに普通に声が届く。

見える位置に居るとはいえここまで鮮明に届かせるとは。

 

「ほら、波動さんもそう言ってるって」

「いやまだ何も言ってないだろ」

「俺は転間とも遊びたいな……」

「行くだけ行ってやるか……」

「転間って環に結構甘くね? 俺には俺には?」

「俺を笑わせるギャグが出来るようになってから言え」

「たはー、そりゃ難解かも。何回もやるけどね!」

「おもんね」

「手厳しい!」

 

すんっと真顔になって言ってしまったが、俺たち三人は話しながらスーッと泳いでねじれたちの方へ向かった。

 

「うみちゃんは大丈夫そうだな。楽しいか?」

「はい! 皆さんが良くしてくれてますので」

「そっか、ならよかった」

「うみちゃん泳ぐの上手なんだよね」

「そんな、ねじれさんはフォームが綺麗です」

「泳げたら何でもいい気はするが……」

「そういう問題じゃないのよ。相変わらずねぇ」

「そうそう、水泳ってなるとフォームって割と大切じゃないかな?」

「それも意味が違う気がするけど……フォームは俺も大事だと思う」

「いや基本泳がないから分からん」

「転間くんの場合泳ぐよりも走った方が速いもんね」

「それ言えばお前や環は浮いた方が速いだろ」

「俺は無理だなあ」

「海の中で透過すればいいんじゃない?」

「落ちて死ぬからね!?」

「あんたなら平気そうよね緑谷」

「ん? あー……まぁ深海に沈められても問題ないと思う」

「無事で済むのは転間くんくらいじゃないかな〜オールマイトでも私は無理だと思うな。私は無理」

「俺は深さに寄るかな……少なくとも数千mとか問題ないのは転間だよ」

「やってみるか?」

「いやいや。そんな気軽に言っていいことじゃないって!」

「こ、これがヒーロー科……!」

 

俺としてはやって何処まで行けるか試してもよかったが、ダメそうなのでやめておこう。

それよりうみちゃんのキラキラした眼差しが眩しい。

こう言っちゃあれだけど、俺らは参考にしない方がいい。

普通学生の時点でNo.1と戦えるやつなんて俺くらいだろ。そんなにいるとは思いたくない。*8

俺だけじゃなくて環もねじれもレベルだけで言えば上位のプロヒーロー並だろう。ミリオも個性の制御上手くなってきてるし、化けたらトップヒーローと遜色ないようになるはずだ。

今はトップヒーロー相手だと三人とも経験の差で負けるとは思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

それからリラックスしたり、一緒に泳いだり何故かねじれから泳げるのに手を引くように言われて手を引いたり、うみちゃんにお願いされたので同じことをしたり、流されていた人が数人居たので一瞬で助けたり、ナンパを防いだり、俺の存在がバレて連れていかれそうになってねじれとうみちゃんに両手を引っ張られて助けられたり*9、どうしてもと言うので範囲を決めてクラスメイトと競泳することになったりとトラブルはあったが、疲れたので砂浜に帰った。

なんで勝ち抜き戦なんだよ。褒美がジュース一本とか割に合わねえ。

……が、うみちゃんが喜んでいたのでぶっちゃけ報酬としては十分だった。

もちろん勝ったけど。

水泳も無論修行済みだ。

ふ、幼い頃に出久に教えていた頃が懐かしい……やばい思い出すだけで可愛すぎて血を吐きそうだ。

手を離さないでね、と不安そうに言われて俺は安心させる為にも絶対に離すものかと離さなかったな……練習終わっても。

もし出久が誘拐されたり怪我したらどうしてくれるっ!?

 

休むなら休むで、クラスメイトたちの顔色や様子を観察して水分補給が必要そうなやつにはやらせる。

しないやつには俺が力付くで飲ませるが、その際は咳き込んでも責任は取らない。

倒れるよりマシだよ。

 

「付き合ってください!」

「ごめんなさい! 好きな人が居るので!」

「そらな」

「撃沈しててウケる」

「キッパリ言ったなー」

「というかちょっと遊んだだけで告白はないわー」

「お互いほとんど知らないのにそれは無理でしょ」

「勢いがやばかったな……即答とは」

 

なんか知らん間にアホがうみちゃんに告白したらしい。

何やってんだあのバカ。

 

「これで50人目、か……」

 

やりすぎだろ。

雄英は確かに女子より比率的には男子の方が多いが。

もうそんなに断られててたらショックとか受けなさそうだが、普通に落ち込んで水の中に沈んで行った。

うみちゃん困らせるなよ、殴るぞお前。

 

「悪いことしたでしょうか……」

「いーよいーよ。気にしないで」

「自業自得だしな」

 

問題はなさそうなので特に動きはしないが、ねじれが近づいてるのが見えた。

 

「うみちゃん、好きな人居るの?」

「私も女の子ですのでっ」

「そうだね〜うみちゃんなら付き合えそうだけど、告白とかしないの? 同じ学校の人? それとも別の人? 親戚の人とか? あっ、でも好きにも色んな意味があるよね、恋愛だけじゃないもん!」

「それはそうですね。でも、その……誰かまではちょっと」

「……あっ」

「またあいつか……」

「誰?」

「ねじれは知らない方がいいと思うわ」

「えぇ〜なんでなんで? 気になる!」

 

普通に会話が聞こえてるが、何故か俺に視線が集中した。

今の会話から察するに……なるほど、俺のファンだということは隠したいのか。*10

俺が納得していると、うみちゃんが砂浜に近づいてくるのが見えた。

託された身としては何かあってはいけないので、すぐに近づく。

疲れたなら抱えてでも急いで休ませねば。

 

「どうした?」

「えーっと……そのぉ……」

「休むか?」

「……えいっ!」

 

突如腰を曲げた彼女は両手で掬った水をかけてきた。

目視してから回避することも個性で防ぐことも出来たが、敢えて解除すると普通に水が掛かる。

 

「ごめんなさいっ! で、でもやっぱり緑谷さんとも遊びたいなって……」

 

申し訳なさそうにしながら、それでも懇願するように上目遣いで見つめられる。

水を掛けたのはその意図があったようだ。

 

「そういうことなら……分かった。言わせて悪かったな」

「い、いえ。……えへへ」

 

大人として理解してやるべきだったが、こういったことには慣れてない人間なので許して欲しい。

そんな想いを込めて頭を撫でると、うみちゃんがはにかんでいた。

嫌ではないようだ。

ということなので、改めてうみちゃんと一緒に戻って行ったのだが。

 

「……むー」

「どうしたリス」

「リスじゃないもん」

「いやどう見たってリスだろ」

「じゃないもん」

 

頬を膨らませてるねじれが居たのでそう言ったが、リスが不満らしい。

リスいいだろ、見てる分には。

 

「もしかして――」

「ん?」

「いっ、いえいえっ! そ、それより皆さんで遊べる方がいいですよね!!」

 

俺と違ってうみちゃんは何か気づいた様子だったものの、話すつもりは無いらしい。

ただねじれとうみちゃんの視線が合わさっていて、見つめ合っているのは少し印象に残る。

なんだろう、仲は悪くなったわけじゃないが、互いに何かに気づいたような。

全然敵意とかはないんだけど、俺の語彙力の問題だ。

一瞬だけバチッと火花が見えた気がする。

 

「その言葉を待ってたんだよね!!」

「水中から生えてくるなよミリオ」

「ごめんごめん」

 

突然目の前に出てきたので思わず殴りかけたが、殴らずに済んだ。

でも反射的に殴られても仕方ないと思う。

 

「それで待ってたってのはどういうことだ?」

「うん。というか誰も言ってくれなかったからさ、てっきり出番ないんじゃないかって思ってた。だけどやっと出番が来たみたいだ!」

「出番……ですか?」

「もしかしてミリオ、あの荷物のことか……?」

「荷物? なになに? 通形何か面白そうなものでも持ってきたの?」

「嫌な予感がするわ」

「はよ言え」

「こういうのは焦らすのも大事だと思うんだよね、俺」

「帰る」

「わー! 待って待って!」

 

俺の仮拠点であるパラソルに帰ろうとしたら片腕を両手で引っ張られた。

俺の腕で綱引きする気か?

仕方なく残ってやると、大半の人がそわそわざわざわと言った様子になっている。

ただ何人かは知っているようで、両腕を組んで頷いている。

なんかちょっとムカつくから水掛けていい?

 

「えーということでね! これを大量に持ってきたんだ!」

 

そう言って砂浜に戻ったミリオが布を広げた中から出てきたのは水鉄砲。

全く見た事ないんだけど、市販のやつじゃなくない?

 

「サポート科からもらったものだよ」

「絶対改造されてるだろ」

「そこはちゃんと試したから大丈夫!! 威力は普通の水鉄砲だった!」

 

えらい。

 

「確かに皆さんで遊べますね! あっ、でも雄英の皆さんとやるなら私だと何も出来なさそうです……」

「まずルールどうする気なんだよ」

「そこも決めてるから安心して! ということで頼むよ白台!」

「はいはいー」

 

白台と呼ばれた女子がミリオの横に並び立つ。

とりあえず全員砂浜に集合して座った。

しかし失礼なのは承知なんだけど、昨日から思ってたがお前女だったのか……。水着を見て初めて知った。

いやごめん。だって顔ないから分からないし……こう、顔文字になっている。今はこんな感じだ。*11

怒るなって。あとでジュース奢るから。

 

ということで、彼女の個性によってホワイトボードが生成されたのだが、書かれていたルールは単純だった。

ウォーターバトル。

それぞれ2人1組のチームを作って行われるバトルロワイヤル。

武器は用意された物ならどの武器種でも使用可能。

個性は当然使用禁止だが、回避や防御のみ一度だけ可能。

勝敗は(ポイ)が破れたらおしまいだが、どこに取り付けるかは個人個人に任されるようで、見えるところに付けるのが条件。これは異形型の人とかもいるからだろう。

だいたいこんな感じ。

ぶっちゃけ個性を自由に使っていいなら俺が絶対勝ってしまうからな……。

 

「基本的には一般的なものと同じなんですね」

「5人じゃないだけか」

「……の、はずだったんだけどこれ俺らだけで考えてたルールだからうみちゃんが不利になっちゃうんだよね」

「確かに不利すぎるよな」

「個性は?」

「緑谷と組めばいいんじゃない?」

「それだ!」

「素の力がバケモノだから問題なさそう」

「むしろ緑谷にとってはいいハンデでは?」

「え、ええっ!? 私がですか!?」

 

驚くうみちゃんだったが、チーム戦の時点で俺は元々そのつもりだった。

彼女を庇うように引き寄せる。

 

「もとよりそのつもりだが、お前ら覚悟しとけよ。うみちゃん狙ったら頭ごと的を吹っ飛ばすからな」

「み、緑谷さん……」

「本当にやりそうでこえーよ!」

「それでどうすんの?」

 

彼女の両親から託されてるため、こういった場でも守らねばなるまい。

そう思いを込めて周囲に告げるが、頬を赤くしてるうみちゃんを見てちょっと焦った。

セクハラになってしまう。いやもう引き寄せた時点で手遅れだ。

気づかなかったことにしよう。

 

「うーん3人にしてもいいけど、転間がそれでいいなら俺はいいと思うよ」

「いいよ、どうせ一人だろうと俺が勝つから」

「すげー自信」

「囲んで始末した方がよさそう」

「緑谷は決定か」

「転間くんはダメかぁ。残念」

「波動さんと組まれたら……どうしようもなくなる」

「それ」

「協力したり連携は?」

「全然いいよ! じゃないと成績優秀者で固まると勝てないし」

「はーい。集中的に誰かさんを狙うのは?」

「転間から殺気しか感じないからそこはなし!!」

「通形が嫌なだけじゃねーか!」

「チッ」

 

チッ。

何人か似た反応したけど、お前らそんな狙いたいヤツいるのかよ。

俺もいるけど。

 

「とにかくチームはそれぞれ組んでもいいしくじ引きでもいいよ!」

「じゃあそれぞれ組むか」

「俺抜けたら1人余るくない? ミリオ、お前は1人でやれ」

「いやいや3人にしたらいいだけの話だよね!?」

「なんだ勝てる自信がないのか」

「その手には乗らない!」

「……まぁいい。どちらにせよ叩きのめすだけだ」

 

煽れば乗ってくるかと思ったが、無意味だったようだ。

俺が回避タンクしつつうみちゃんにトドメを刺させたらいいか。

やろうとすれば多分ひとりで勝てるけど。

個性なしでも戦えるようにした俺を無礼るなよ。

 

「ご、ご迷惑をかけないように頑張りますね……!」

「いや、気にしないでいいよ。楽しんだもん勝ちだし、もしもの時は俺が勝たせてやる。大船に乗ったつもりで楽しんでくれ」

「……はい。ふふ、緑谷さんにそう言われると安心感が凄いです」

「だろ? 俺は負けないからな」

 

そう、例え遊びだろうと。

誇れるお兄ちゃんでいるために俺は全力でやるのだ。

 

「頼りにさせてもらいますけど……私も簡単にやられないように頑張りますね!」

「ああ、一緒に頑張ろう」

 

 

 

*1
おまいう。

*2
違うそうじゃない。

*3
数秒前に言われたことを忘れるとかマジ?

*4
平常運転。

*5
お前がな。

*6
※オールマイトは10分も経たずに100人以上救ってる。

*7
なんで移動している島を特定出来るんですか?

*8
それはそう。お兄ちゃんがバグってるだけなんで。

*9
逆ナンされてセクハラ回避のために下手に動けず、何とかなるだろとは思ってた。最終手段としては個性使って逃げるつもりではあった。

*10
アホはここにも居たらしい。

*11
( ・᷄ὢ・᷅ )

原作

  • 入る
  • もっとお兄ちゃん読みたい
  • 作者の好きなようにやって欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

星の白金(ひかり)で断つ運命(作者:クルセイダース)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ある日、スタープラチナになった男が超常が当たり前になった世界でオラオラする話。


総合評価:6145/評価:8.45/連載:9話/更新日時:2026年03月12日(木) 11:12 小説情報

主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね(作者:しおんの書棚)(原作:僕のヒーローアカデミア)

原作のあらすじすら怪しいような転生オリ主の勘違いから始まる、僕と私のヒーローアカデミア。


総合評価:7147/評価:7.93/連載:16話/更新日時:2026年02月04日(水) 06:00 小説情報

雷神は最強を指名する(作者:あいあい)(原作:僕のヒーローアカデミア)

鹿紫雲一は、死滅回游の果てで燃え尽きたはずが、個性社会の日本で目を覚ます。この世界では「最強」がランキングと称号で掲げられている。なら、話は早い。最強の場所へ行けば最強がいる。▼そんな感じで始まる鹿紫雲さんカッケェっていう話です。


総合評価:3278/評価:8.2/連載:10話/更新日時:2026年02月24日(火) 21:20 小説情報

魔法科高校の熱を愛する者(作者:パクチーダンス)(原作:魔法科高校の劣等生)

呪術廻戦の秤金次っぽいオリ主を登場させました。


総合評価:3583/評価:8.18/連載:16話/更新日時:2026年05月06日(水) 02:30 小説情報

宿儺もどきはスローライフを夢見たい(作者:表梅)(原作:僕のヒーローアカデミア)

呪いの王、両面宿儺として転生した男。▼男は個性社会の裏を知る元公安としての名を捨てて、定食屋を営んでいた。


総合評価:6746/評価:8.45/連載:3話/更新日時:2026年02月26日(木) 08:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>